1. ハッピーエンドが書けるまで
《ネタバレ》 邦題を見て映画を見ました。「ハッピーエンドが書けるまで、Stuck in Love」と英語の題名も書いてあるのですがおそらく多くの人は「ハッピーエンドが書けるまで」という邦題を見て鑑賞するのではないでしょうか?でもこの英語の「Stuck in Love」こそこの映画の主題でありしっくりきます。グーグル翻訳で「Stuck in Love」を翻訳すると「恋に立ち往生」と出てきます。ニュアンスとしては「Stuck」はStickの過去分詞で「動けないくする。はまりこむ」という意味あいになります。愛にはまり込み、動けないそのような感じの題名になります。この「Stuck in Love」という題名にこそこの映画の本質をついていると感じます。 主軸となる家族が作家一家なので邦題の「ハッピーエンドが書けるまで」という邦題を見てしまうと私の場合は作家としての物語ということが全面に出てしまいました。しかしそうではなく作家一家がはまり込んだそれぞれの愛の形が恋愛を通してどう変化をしていくのかそのようなことを描いた映画ではないかと感じます。 3年前に離婚をした有名作家の父ビルはあることをきっかけに元妻を待ち続け、長女は父の離婚を体験し「愛」や「恋愛」を否定、弟はイケイケ姉さんとは反対に控え目でロマンチストで大麻中毒というキャラクター達が異性との出会いによって変化をして行きます。 そして最後にこの3人が見事にそれぞれのハッピーエンドを迎え思いもよらない清々しい感動が同時にやってきます。このようなところにとても洗練された脚本を感じます。 随所にアメリカらしい感覚がありそれぞれの個性が際立っています。それぞれでいいんだとも感じさせてくれました。そして作家一家ということもあり文学的なことも随所に出てきてどこか知的に感じさせることでとても上品な映画に仕上がっています。 父が娘のお祝いの席で「鼓動が聞こえた。みんなの鼓動が・・・誰一人動かない。部屋が暗くなっても」という自分の好きな詩を紹介します。そしてまさにこの描写がぴったりなラストシーンへと誘われて行きます。このラストシーンで「鼓動が聞こえた みんなの鼓動が・・・誰一人動かない。部屋が暗くなっても」というナレーションが流れます。この時「詩」というものはその情景や体験したものを「言葉にしているんだ・・・」と改めて言葉の深さを知りますした。その人の体験の深さで詩の味わいも別の次元に昇華して行くんだと感じました。 個人的に好きなシーンは、ビルの娘の祝賀会に出席したビルの元妻に対して確執から一年以上話していない娘との対面のシーンです。ビルは元妻がなかなか娘に近寄れずにいる時、「勇気をあげよう」と言って娘のあるエピソードを話します。そして母と娘の久々の対面を果たします。しかし娘のつっけんどんな対応を受けてしまいます。 そして今度はある日ビルは娘に対して母のあるエピソードを話します。この時娘は「今更そんなこといわないで、憎んだままでいいのに・・・」と困惑しながらも今まで自分は誤解していたことに気付かされるシーンです。 人はなかなか認識や自分のスタンスを変えられないものです。でもこのような自分に変化を起こすことはとても勇気のいることだと気付かされます。そして一見何の取り柄もなさそうなビルの存在が際立ったシーンでもありました。これによって最初抱いていた「おバカ娘」的なイメージも払拭されそれぞれが成熟されたものへと変化を遂げたシーンでもありました。 とても淡々とした中に飽きさせないストーリー展開があり見入ってしまう作品だと思います。音楽で言えば思わず聞き入ってしまう心地よいフォークソングのような感じです。この作品はおそらくまた見てしまうと思います。その時にはまた新たな違う見方ができそうなそんな深さもある作品です。 [インターネット(字幕)] 8点(2018-10-19 11:50:41) |