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プロフィール
コメント数 254
性別 男性
自己紹介 直接的に「内容」に向かうのではなく、「スクリーンへの現れ方」を語る言葉(技法論的な言葉)をなんとかめざしたい。

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1.  犯罪河岸 《ネタバレ》 
「フランス版フィルム・ノワール」なる呼称自体が奇妙ということになるが、モノクロの美しさ、殺人理由のリアルな偶発的些末さ、遊び心のある重厚さ、つまり立派な「フィルム・ノワール」作品である。
[ビデオ(字幕)] 7点(2015-11-01 11:28:31)
2.  パニック・ルーム 《ネタバレ》 
立場が逆転して、監視システムの画像を今度は犯人側が見るというのが最大のアイロニーで、これは、フーコーのパノプティコンを連想させる、監視の二役である。つまり誰もが監視の二役を演じる近代以降の社会というもの。
[ビデオ(字幕)] 6点(2015-08-30 00:24:46)
3.  バーバー 《ネタバレ》 
寡黙な主人公がナレーターを兼ねて、ナレーションも寡黙気味だ。弁護士を擁して、真犯人たるナレーターの側から真犯人を捜すかのようなスタイルをとっており、当たり前のことだが、何も判明しはしないし、とくべつ名案が浮上するわけでもない。アイロニカルなすべてがいいのは、いつも通りのコーエン兄弟。
[ビデオ(字幕)] 8点(2015-04-03 08:32:59)
4.  バートン・フィンク 《ネタバレ》 
たったこれだけの設定でこの引き込む力はたいしたものだ。「バートン・フィンク」という固有名詞はユダヤ系だなという台詞とともに意味ありげに急浮上したりするのに(古典的ハリウッド映画はことごとくユダヤ人起業家に支えられていたしこの映画の舞台たる1941年でもまだその事情に大きな変化はなかったはずだとしたら、この映画のハリウッド批判は時代考証的にはちょっと的外れかもしれない)、隣人の親ナチであることがやがて判明する暴力的な大男とはずっと奇妙に共存していたことになる。預けられた小箱の中身がついに明かされないのも作品全体の意図された曖昧さを象徴している。
[ビデオ(字幕)] 8点(2015-02-17 14:36:49)
5.  ハンナ・アーレント 《ネタバレ》 
かたやハンナ・アーレントという人が凄いのは判っている。強烈な変化球だ(「悪の凡庸さ」などとたいへん穿った知見だ)。こなた「女性映画」ムーヴメントの中心にいまも居るのであろうトロッタは、しかし、世界を変革しようとするような積極的な「主体」が、皮肉にも映画向きではないことに夙に気がついている筈である。見るジャンル(映画)にあって主体というものはことごとく客体性へと転がされざるを得ないし、転がされてこそ生きる。だからトロッタもまた自覚的に変化球で勝負すべきだろうし、そうならたとえばヘビースモーカーであるアーレントという描き方は、もっともっと生かされなくてはならない。決して、立派な演説が映画なのではない。
[映画館(字幕)] 6点(2015-01-03 15:05:46)
6.  ハートに火をつけて 《ネタバレ》 
気位の高いはずの「フィルム・ノワールの女」があっさり殺し屋に従属するのはなさけない。大安売りの暴力なんかより他者性(思い通りには決してならない他者というもの)ほど怖いもはないという描き方でなければ駄目である。遊びの映画ならなおのこと、本質的な他者性のゆえにかるーく凍りつくような感じでなければならない。
[ビデオ(字幕)] 4点(2014-01-19 19:35:14)
7.  巴里の女性 《ネタバレ》 
このヒロインは、恋人をきちんと追求しない。つまらないプライドが邪魔をしているのか、欲望に忠実なのを浅ましいと感じるのか、要するに相手の男をたいして好きでもないのか。親への縛りに苦しむ男に対してつい短気を起こして、「そうならべつにいいわよ」とばかり身を背ける(二度も)。それが本人を含めて皆の不幸になる。 Pride can hurt you, too(ビートルズ)
[DVD(字幕)] 6点(2013-08-03 10:30:10)
8.  万事快調 《ネタバレ》 
ゴダールの登場人物にありがちなカメラ目線の意味が、この作品ではなんとも判り易い、という感じ。人物たちはカメラ目線で観客に自分のモンダイを延々と(長い!)訴え、観客はずーっと聞き役、という感じ。しかしながら、撮影カメラの場所に観客は絶対にいないのだ、とはふとぞっとする事柄ではないだろうか。 つまり・・・コミュニケーションに向けるかのような人物たちのふるまいは、たんなるふるまいとして撮影カメラの前で凝固している、それだけのものにすぎない。
[DVD(字幕)] 6点(2013-03-25 16:02:51)
9.  八月の鯨 《ネタバレ》 
老年のリリアン・ギッシュをなんとか確認できるが、ベティ・デイヴィスにいたっては全く同定不可能である、しかし、それはベティ・デイヴィスの知ったことではない。ひとはせっかく長年に渡って対世間用に作り上げたペルソナを老いとともに失っていくというのではなく、老いという名の熟成の時間が「あらためて自分のために深く生きる」顔へと作り直していくのだ(と思いたい)。それは絶対的で神秘的な時間だ。二人の往年の大女優に失礼のない美しい撮影である。 
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-20 11:43:46)(良:1票)
10.  バーレスク 《ネタバレ》 
かつてヘイズコードは、セクシーな踊りや声を抑圧し爽やかなミュージカルに変えたと言われるが、そういう事情が飲み込める作品だ。迫力ヴォイスのセクシーな主役に実力があるのは明瞭だが、映画としては物足りないのは仕方がない。
[DVD(字幕)] 4点(2012-11-26 20:34:53)
11.  バーダー・マインホフ 理想の果てに 《ネタバレ》 
ドキュメンタリーにみえるくらいに作り込んでいる。ドイツ赤軍のこんな映画が作られていたこと自体が驚きである。誰が作り、誰が観たのか(客観的な視点から観るということはいいことではある)。こういう度外れな活動がドイツ的な理念主義・ロマン主義の一種であるとするなら、有効性を厳密に目指すことから遠いのもうなずける。が、日本人にそう言われたくないと、ドイツ人は言い返すだろう(現今の原発問題一つとっても)。 
[DVD(字幕)] 6点(2012-10-14 10:32:39)
12.  浜辺の女(1947)
あのルノワールであり、ジョーン・ベネットであり、ロバート・ライアンである。最高の顔合わせで、雰囲気も盛り上がるのだが、スジが足りない、惜しい。フィルム・ノワールの女ジョーン・ベネットの登場で、ルノワールの「ノワール」な部分に触れることが出来るのかなと期待したが、スジ違いの期待であったらしい。
[DVD(字幕)] 6点(2012-10-01 06:38:38)
13.  ハピネス(2007) 《ネタバレ》 
鏡像の巧い利用の二例。1)男への恋愛感情が定着した段階で、女が自らを鏡に映して幸福感を確かめる。2)男が去っていくとき、見送る女の背後のガラス戸に男の後ろ姿が写っている。後者の例は、この監督ホ・ジノの長回し手法の一環であって、見た目(主観ショットのモンタージュ)をできるだけ使わない結果である。長回しが、見た目ショットを切り詰めるのは、眼の話にしたくない、というか、身体や情況で映画が動いているのだよ、ということだ。とにかく、ホ・ジノ大好き。
[DVD(字幕)] 8点(2012-07-02 14:03:25)
14.  花とアリス〈劇場版〉 《ネタバレ》 
真ん中の木立が画面を二つに分けている。センパイを引き連れているアリスが、木立につかまって、左のフレームに体を乗り出して、花に電話をする。この人どうするの?センパイは右のフレームにおとなしく収まって料理されるのを待っている。花が答えて曰く、「記憶喪失」のセンパイはアリスの元カレっていう設定なのよ。アリス目を点にして「うっそぉ、はやく言えよ」。このなんとも可笑しいシーンだけでも、ほんとうによくできた瑞々しい「映画の映画」だ。映画の筋の展開を、登場人物がフレーム内フレーム(木立)につかまって相談するという「映画の映画」。
[DVD(邦画)] 10点(2011-08-19 13:14:38)(良:1票)
15.  パルプ・フィクション 《ネタバレ》 
死んだはずのトラヴォルタがドアを通り抜けて出て行くというエンディングがいい。「オラは生き返っただー」はいい。だから、時間編集に別の「良さ」が付け加わるのが素晴らしいのである。ちなみに同系の『運命じゃない人』もずいぶん頑張っているし、何度も見返してしまうような「良さ」にあふれている。
[映画館(字幕)] 7点(2011-03-21 22:08:36)
16.  晩春 《ネタバレ》 
揺れる立木のショットが意味ありげに入っている。ゆったりとした、自然と人生という感じが溢れている。描き込みの多い『麦秋』に比べて簡素な構成により、小津の最高の作品となっている。
[映画館(邦画)] 9点(2011-03-21 10:50:28)
17.  バック・トゥ・ザ・フューチャー 《ネタバレ》 
べつに期待もせず、空席の目立つ京都の大きな映画館(京都スカラ座、後にあの『タイタニック』もここで観たが、その時は超満員だった)で観た。「未来に帰れ」という台詞に出会った瞬間のウレシサ、これにつきる。ところでこの大きな映画館の方は今はもはや無い。ならばこの映画館の「未来」はたいして無かったのだ、悲しいことだ。
[映画館(字幕)] 7点(2011-03-13 21:02:47)
18.  8 1/2 《ネタバレ》 
映画館で数回観た。なんという美しい黒白映画。なんという豊饒さ。映画監督役マストロヤンニにもはや映画は作れないとなり、セットが壊され始めて地面に落ちる鉄パイプの無粋な音、それさえも映画の夢の側に加担する。風が強いなか、マストロヤンニが記者会見の席でテーブルの下に逃げるのがなぜか無性にいい。そして「人生は祭りだ」は万感胸に迫る。この映画は「映画の映画」の社会学的なスタイルをとっておりその分だけフェリーニ・ワールド噴出に程よく歯止めが掛かっていて、最高の味となっている。
[映画館(字幕)] 10点(2011-03-10 19:01:26)(良:1票)
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