1. ハンター(2011)
《ネタバレ》 2011年公開のオーストラリア映画。謎の組織から依頼を受けた一匹狼のハンターが絶滅した幻の種・タスマニアンタイガーを追い求めるというストーリー。若干地味な題材ではあるが私的には主演のウィレム・デフォーの存在感が面白すぎて全く別の方向性で楽しめる作品だった。タスマニアの美しい大自然と戯れるデフォー。小動物の内臓を掻き出して採取するデフォー。流麗な所作でトラバサミを仕掛けまくるデフォー。憔悴した人妻を甲斐甲斐しく介抱するデフォー。車のフロントガラスに糞を塗られて憤るデフォー。前方不注意で崖から洞窟へ転げ落ちるデフォー。やっと仕留めた獲物を前にして咽び泣くデフォー。これはもはや劇映画というよりもウィレム・デフォーのイメージビデオだと思って割り切って観た方が楽しめると思う。私のように彼をアイドル視している同志には是非観て貰いたい一本。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-09-07 17:47:12) |
2. バベットの晩餐会
《ネタバレ》 敬虔なクリスチャンである老姉妹と亡命してきて家政婦となった未亡人バベットの交流を描いたデンマーク映画。これはすごい掘り出しものの隠れた名作に出会ってしまった気がする。自分でもなぜなのか分からないけれど終盤のあたりから涙がこみ上げてきて堪えるのが大変だった。小汚いジジィとババァが飯食ってるだけのシーンなのにどうしてこんなに感情を揺さぶられるんだろう。小気味よい手際のバベットの“もてなし”が猜疑心や虚無感に満ちた人々の意識を鮮やかに塗り替えていく。この上ないほど地味で素朴だけどとても強くて奥深いメッセージを持つ作品だと思った。「貧しい芸術家はいません」、迷いなくそう言い切ってしまえる情熱とプライド。これは料理人に限らずすべての作り手に通底する普遍的なテーマなんじゃないかな。いやー傑作です。良いもん観せてもらいました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-06 00:16:33)(笑:1票) |
3. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 前々から観たかった一本だが今回念願叶ってようやく観賞。ノベルゲーム『STEINS;GATE』の元ネタとして有名な作品だけどシナリオや舞台設定に関してはこの映画の方がずっとシンプルにまとまっとるね。あと、主要登場人物に美男美女がほぼ皆無であるという点も妙に生々しいリアリティと媚びない姿勢みたいなものが感じられて好印象。中身は『BTTF』シリーズみたいな過去改変型SFのよくある類型なんだが本作では実際にタイムスリップする訳ではなく、主人公が持つ「過去の行動を再選択する能力」を発動する事で「現在に別のパラレルワールドが再構築される」という仕様。ルートの分岐点で選択肢を選ぶ(フラグを立てる)事でその後のストーリー展開やキャラクターの運命が変移していくという点では、もともとこの作品のプロットそのものがサウンドノベルのような「ゲームブック的構造」を意識した作りになっていて、その「周回プレイ感」をひとつの表現として映画の中に持ち込んでいる部分が新鮮と言えば新鮮。主人公はゲームのプレイヤーさながらに数多のバッドエンドを体験しながら真のエンディングを目指し、最終的には誰も不幸にならない究極の選択肢(『かまいたちの夜』で言うなら「大阪就職エンド」)を敢えて選ぶ。そして、シュタゲでもパクられて…いやオマージュを捧げられていたラストシーンはやはり秀逸。いやー分かっててもこれは切ないねぇ…。でも切ないけど…なんかイイ。俺はおまいさんの選択を断固支持するぜ! [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-04 18:40:34) |
4. ハード・ターゲット
またヴァン・ダム主演のB級アクションかよ!…と思ったら監督がジョン・ウー先生だったので正座して観賞。B級映画には違いないが先生印の作品だというなら話は別である。内容は賞金を賭けて人間狩りを楽しんでいた悪党共が逆にヴァン・ダムに狩られまくるというだけのお話。実にシンプル、だがそれがいい。“鳩”と“二丁拳銃”というお約束も律儀に飛び出して、香港ノワールと脳筋アクションの奇跡の融合、「脳筋ノワール」の世界をたっぷり堪能させてもらいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-12-03 16:18:30) |
5. ハート・ロッカー
イラク戦争に従事する米軍の爆弾処理班の姿を描いた映画。『ディア・ハンター』のイラク戦争版といった趣の作品。この映画に関する議論はほぼ出尽くしていると思うので私ごときが言える事は少ないが、個人的にはヒステリックに反戦だとか責務だとかいう以前に、「こんな目に遭っても結局アメリカってまた戦争しに行っちゃうんだよね」的な諦観を強く感じた。そこには戦争を忌諱しつつも軍産複合体によって経済を維持している国家に生きる者としての葛藤も少なからず反映されている様に思える。表向き反戦映画を作っている様なエンターテイメント業界のカネだって裏では軍需産業に流れている可能性もある訳で、そういった意味ではこのどっちつかずなスタンスというのはアメリカ国民のリアルな感情を真摯に代弁していると言えるのかもしれない。中盤のスナイプ合戦はなかなか見応えがありました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-05-01 18:56:58) |
6. 母なる証明
知的障害を持つ息子の殺人の容疑を晴らす為に奔走する母親の姿を描いたサスペンス映画。こうしてあらすじだけ書くとなにやらハートウォーミングな雰囲気だが、その実体は近親相姦ギリギリの母子関係を延々と見せられるという嫌がらせの様な変態映画である。なんで映画を観るのにこんないたたまれない理不尽な思いをしながら観なきゃいかんのか、と被害者意識に苛まれながらも最後まで観賞。これを純粋にエンターテイメントとして楽しめる人って相当に歪んだ性向の持ち主だと思うのだが、そう考えるとここでの異様な高評価っぷりは薄気味が悪いとしか言い様がない。「母の愛は海より深し」とはよく言うが、海より深い愛というのはもはや狂気と紙一重という事なのか。ラストの“ええじゃないか・エンディング”には驚愕。こんなんアリかよ。傑作であるかどうかはともかくとして、少なくとも日本のメジャー資本では絶対に作れない映画である事は間違いない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-03-06 20:41:10) |