1. パラサイト 半地下の家族
まさに歴史を変えた一作として永遠に語り継がれるだろう作品。アカデミー作品賞受賞後の日本の報道を見ていて思ったのだが、ちょっと余りにもあっさりし過ぎではないだろうか。確かに松たか子氏の日本人としてのアカデミー初歌唱も素晴らしい事だと思うが、どう考えても本作のアジア映画初作品賞受賞の方がよっぽど重大な事件だ。しかし、その事はほんのちょっとしか報道されない。もし日本映画が取ってたら絶対に今の100倍は報道されているはずである。「我が国の名誉ではないし、お隣韓国の名誉になる事柄だから、余り大々的に報道する事はやめておこう」なんて報道規制されてたりして。だとしたら相当ヤバイしダサい事である。私は常々、映画の力はその国の力、つまり映画=国力だと思っているのだが、まさに今の韓国の底力を見せつけるような面白おかしい作品。とにかくチョヨジョンの美しさだけでも見る価値がある。 [映画館(字幕)] 8点(2020-02-16 18:58:16) |
2. 灰とダイヤモンド
《ネタバレ》 午前10時の映画祭を利用し劇場で鑑賞。勿論、歴史や政治背景抜きで語れない映画だということが前提となるのだろうが、この映画が名画とされているのは、そもそも「娯楽映画」としてきちんと面白いからだろう。マチェクのニヒルなかっこよさ、そして自身のアイデンティティを巡る葛藤は青春映画としても見れるし、シュチューカ暗殺に関するシークエンスはサスペンスフルでアクションもかっこよい。時代や政治背景を良く熟知した上で見ることでさらに理解が深まることは、確かにあるだろうが、仮に何も知らず表面的に観たとしても娯楽映画として充分面白く作られている。途中宴会のシーンで少し退屈に感じるシーンがあることもあるが、かといって不要なシーンかというとそういうこともない。ホテルの電話ボックスから電話するシーンや花束を持った子供が出てくるオープニングの銃撃シーンなど、作画としては「市民ケーン」や黒澤明の「野良犬」からの影響を確かに感じられた。もう60年以上も前の作品なのだが、何も古臭さを感じさせず、今でもスタイリッシュで普遍的な魅力に溢れている作品だと思う。恐らくその時その時の「若者」が見て、強く影響を受けるべき映画なのだろう。シュチューカを抱きかかえながら背後から花火が上がるシーンの美しさというか儚さ、こういう映画的に優れた、かっこよい演出が多いのも本作のポイントだろう。 [映画館(字幕)] 8点(2018-10-18 23:03:00) |
3. ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
《ネタバレ》 これは、少し期待外れであった。スターウォーズものとしてどうと言う前に、1つの冒険活劇(死語?)として面白くなかった。何故だろうか?良く分からないのだが、恐らく脚本が面白くないのだろう。何というか、画面からほとんど緊張感というものが伝わってこなかった。かつて黒澤明の映画に憧れ、「俺もああいう映画を作りたいんだ!」という個人的かつ本物の欲求からこの世界を1から作り上げたジョージルーカスの脚本と、様々なマーケティングや柵に縛られながら書かれたと思われる本作の脚本の差が、露骨に出てしまっている気がする。つまりは作り手のリアリティの差であろう。主人公のルックスに関しては、当然別人なのだから、あまり顔に関しては似てても似てなくても良いと思うのだが(実際、本作の主人公はハリソンフォードというよりもレオナルドディカプリオとブラッドピットを足して2で割ったような顔をしている)、身長に関してはもう少し高い人の方が良かった気がする。ハンソロの年齢が全く不明なので分からないのだが、まさか本作とエピソードⅣの間にハンソロの身長が10センチほど伸びた(つまり本作のハンソロは成長期の真っ只中)という設定なのだろうか。。?最後に一点、本作はローグワンと違い割とコミカルで軽い演出がされているが、ギャグがことごとく滑っていた!(><)これが実は個人的に一番辛かった。唯一面白かったのは空港で帝国軍が新規隊員を募集しているCMの中で例の帝国軍のマーチがCMのBGMとして流れていたところで、あの曲はこの世界の中でも実在してたんかい!と思わず笑ってしまった。 [映画館(字幕)] 4点(2018-07-12 16:38:28)(良:1票) |
4. パッセンジャー(2016)
《ネタバレ》 予定より、ただ1人90年ほど早く起こされてしまうというアイデアが面白い。結局主人公は1年以上悩んだ末に決断をするわけだが、自分ならどうするだろうと色々と考えさせるような内容となっている。特にSNSなどの浸透によって人との繋がりがどんどんと身近(?)になっている現代人には、この孤独との折り合いというテーマは大変興味深い内容なのではないか。美術的には割とキューブリックからの影響が素直に出ていると感じた。宇宙船の内部は2001に近いものを感じたし、突如現れるバーとバーテンダーのアーサーは、シャイニングに於けるロイドへのオマージュか。エンドロールでアンディ ガルシアの文字を見て驚き、巻き戻して見てみたが確かに船長役で最後の最後に5秒ほど出ていた。パート2でもできない限り、全く彼である必要が無いような役ではあるが、一体アンディガルシアのこの映画のギャラはいくらくらいなのだろう、と妙なことが気になった。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2018-06-26 08:20:22) |
5. バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
《ネタバレ》 こんなに面白かったっけ、というのが久々に観直した感想。初見は公開時に劇場でだったが、その時は子供だったからしょうがないとして、その後も何度か観直してきたはずのに、どうやら自分はこのパート2をよく理解できていなかったらしい(笑)。製作陣も認めている通り、2はトリロジーの中で話が最も複雑だ。まず未来に行き、事件を解決して現代に戻ると、その現代は何故か恐ろしい世界に様変わりしていた。元の世界に戻すには、パラレルワールドに分岐したポイントである過去に戻ってそれを防がなくてはならない。複雑であるがとてもよくできていて、故に何回でも観れる奥深さがある。前半で手に入れたホバーボードがちゃんとクライマックスで活きてきたり、ビフがデロリアンを盗んで未来に行く時にゴミ箱にぶつかる等フラフラ運転したり・・(初めて運転するのにスムーズだったらおかしい)本当に脚本の細かい所がよくできていると関心。 個人的には本作の立役者はトーマスFウィルソンだと思う、コミカルな演技からシリアスな所まで、本当にビフ、そしてグリフになりきっていて素晴らしい。このトーマス意外にも、マイケルやクリストファーロイド、そしてリートンプソンと皆さんとにかくコミカルな演技が素晴らしい。これはロバートゼメキスの演出が素晴らしいのだろうけど、個々の役者さんたちのポテンシャルも元々高いのだろう。 オリジナルの世界を別の視点で描くという素晴らしい着想も最高だ。 オリジナルありき、そして3への橋渡し的な映画ではあるが、単体品としても十分面白い作品だと思う。しかしやはりオリジナルを見てないと本作を完全には味わいきれないというのが、なんとなくこの2の宿命めいた所で素敵だ。 [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 9点(2017-11-19 09:50:28) |
6. ハクソー・リッジ
《ネタバレ》 周りがどれだけ過酷な状況であったとしても、個人の経験はあくまで自分自身が選ぶのだ、そして自分が望むように生きるには、強い信念が必要だ。という、まさに宗教めいたメッセージが込められていたように思うし、そのメッセージは根底で「暴力脱獄(Cool Hand Luke)」に通じるものがあると思った。衛生兵として武器も持たずにひたすらに傷ついた兵士(敵、味方関係なく)を助ける姿はとても尊いものに見えた。それにしてもハクソー・リッジを登った後に始まる戦闘の凄まじさは特筆に値する。オスカー受賞も納得の音響がとにかく物凄く、迫力ある映像と相まって、迫力がありすぎて劇中涙が出てしまった。(そこに至るまでの演出が割と抑えられているので、ギャップがすごい。)迫力がありすぎて涙が出るというのは個人的に初めての経験であった。どんどんとやられる日本人兵を見るにつけ日本人である我々の気持ちは複雑になるだろうが、どちらもまさに必死で、やらなければやられる世界であるということがその血みどろの画面から伝わってくるし、徹底的にやりきった戦闘演出は逆に戦争を憎んで人を憎まずという姿勢を感じさせた。(視点を返せば、我々の祖先は日本を守るためにこんなに壮絶に戦ったのだと見ることもできる。)一方、最後の最後に1、2カット、明らかにCG(合成?)とみられるシーンがあり、そこで冷めてしまったのが残念だ。とはいえ、上映時間も全く気にならないほどの緊張感が貫かれた作品。とにかくその音響を体験するためにも劇場で見た方が良いと思う。 [映画館(字幕)] 8点(2017-07-04 22:34:56) |
7. バットマン(1989)
《ネタバレ》 この映画も公開時には相当話題になっていた記憶がある。しかし今観直して見ると、「あれ?こんな感じだったっけな」という印象。後から答え合わせしているようで何だが、やはりティム・バートン×アクション映画という組み合わせがどうにもはまっていない感じがする。アクション映画として、致命的と言っていいほどリズム感が悪いのだ。。ファンクとロックを絶妙にブレンドさせ、最早リズムの権化となっていたプリンスを絡ませたことで、逆にティム・バートンのリズム感の無さを露呈させるという、なんとも皮肉な結果となっている。やはりこの映画はプリンスのBatdance無しには語れないし、映画を見ていても曲でうまくサンプリングされていたジャック・ニコルソンの笑い声とキム・ベイシンガーの悲鳴だけにワクワクしてしまう。実際名曲Batdance(及び、我々日本人にとっては伝説の「農協牛乳〜!!という空耳」)を誕生させたことが、本作1の収穫だったのではないだろうか・・・。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2017-04-22 15:06:45) |
8. ハドソン川の奇跡
《ネタバレ》 これは素晴らしい。最近はアメリカ超近代史実の映画化が続いているイーストウッド監督だが、恐らく監督は今、フィクションよりもこういった実際に起こった事実の表裏をより観客に伝えたいという気概が強いのだろう。とかく上映時間が長くなりがちな昨今の映画に於いて、1時間40分程にまとめているのが凄いし、それほどこの映画は言いたい事がはっきりしている。人的要因を排除し、機長らを弾糾しようとするNTSBは丁度同時期(2007〜2008年)にリーマンショックを発生させた米金融界とダブるものがある。金融工学を駆使しサブプライムローンを売りまくった事が発端となったあの事件も、机上の計算だけが先走りした結果引き起こされたものだったと思うが、そういった「頭でっかち」になりがちなアメリカンエリート(頭が良すぎて、一番大切な何かを見落とす)の欠点もついているようだ。さて本作は機長らの仕事を全うしようとする姿も感動的だが、NY waterwayの人々や、普段メジャーリーグの話をしているようなレスキューのお兄さん達が、救助する時に一気にスイッチが入る瞬間など救助に関わった人々の姿も印象的に描かれる。見終わった後に心に優しい灯りがぽっとともるような本作、普段はエンドロールを最後まで観ずに退席される方も、これはエンドロールの最後まで観た方が良いだろう。(最後の最後で泣かされた。) [映画館(字幕)] 9点(2016-09-25 12:43:09)(良:2票) |
9. バック・トゥ・ザ・フューチャー
《ネタバレ》 「グーニーズ」とともに自分の中に「アメリカに対する夢」、「映画に対する夢」を植え付けた作品。「アメリカの高校生って本当にスケボーで人のトラックの後ろに掴まりながら通学するのかな?」子供の頃本気でそう思ったものだ。ギター、スケボー、ロックンロール、コンバース、雨にぬれたアスファルト、ショッピングモール...この映画の全てに憧れていた。夢しか無い。テンションしか上がらない。何度も観たはずなのに、今回映画館で観ると全てのシーンに新たな感動が付与された。基本的にコメディなのだが、ずっと涙腺が緩んでいる感じ。ダンスパーティーでパパとママがキスするシーンがあんなに泣けるなんて。自分の中では今でもこの評価以外ありえない。 [映画館(字幕)] 10点(2016-07-27 13:25:43) |