1. ヒア アフター
泣きに泣いた。イーストウッドはますます透明になっていく。 [映画館(字幕)] 10点(2011-02-23 06:22:48) |
2. ヒストリー・オブ・バイオレンス
《ネタバレ》 映画は常に現実社会や人生やらとの距離を計測し続けてきた。現実をいかにもっともらしく映画の中に表現し、現実との折り合いをつけていくか。現実では解決できない問題も、2時間足らずの中で解決したり、曖昧に濁してみたりせねばならない。ところが、こうも現実が複雑になる、「そんなの今どきあり得ないじゃん」などという観客ばかりになってくると、映画の中のお約束や紋切り型な表現はもはや許されなくなる。ジョン・ウェインは家族のために敵に立ち向かい、敵を殲滅し、白いエプロンの翻る我が家へと帰ってくる。しかし現代のジョン・ウェインは「人殺し」とののしられるばかりだ。■クローネンバーグがやろうとしたのは、このような「紋切り型」をあえて行うことなのではないか。映画史が紡ぎ出した現実との折り合い方に、今、パロディではなく、真剣に、気合いと根性と己の演出技術のすべてを賭けて取り組むこと。例えば「クラッシュ」のような良心的なハリウッド映画がひた隠しながらもつい求めてしまう、安易な叙情や「曖昧」という名の決着を排すること。例えばリンチやコーエン兄弟のように、スタイリッシュな映像や「変態」的な「感性」で「紋切り型」を糊塗するような姑息なことはすまい、という意志。■さりげなく、なんということもない、ただ撮っているかのような一見凡庸なカットの連なり、しかしそれらは物語が持つ力によって、やがて力の漲ったものとなる。オープニングの緊張感、階段でのセックスシーンの素晴らしさ、保安官に詰問される夫と妻の2ショットの力、あっけなくまるで信じられないアクションシーン。■そしてラスト、暴力の限りを尽くした父を許すかのように、娘が食卓へと父を招く。感動的な、しかし安易な結末、でもなく、問題の曖昧な、だからこそ現代的だと言いたげな結末でもない、これは現在の映画が抱く「紋切り型」だ。その大いなる力に私は泣いた。ラストカットが素晴らしい。 [映画館(字幕)] 10点(2006-03-29 00:25:46)(良:1票) |
3. 非情都市
他社に先んじて情報を得ようと、知り合いの刑事をトイレで待ち受ける新聞記者、三橋達也。手洗いの蛇口をいち早くひねり、ハンカチをすっと刑事に差し出す。■ドキュメンタリータッチという訳でも、リアルに描きました、というのでもない、なんつうか実に丁寧な描写が積み重なる奇をてらわないクールな演出。でも、やっぱここぞってのに欠けるんだよなぁ。いや実にいいんだけど。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-11-07 10:19:41) |
4. 羊たちの沈黙
公開当時は原作を先に読んでいたせいか、今ひとつピンとこなかったんだけど、久々に見返してちょっとこれは凄いかなと、思った。■テーマを掘り下げるとか、構図やカッティングにこだわる、といった作家性を誇示するからではなく、演出にまつわる諸々が、物語をもっともらしく見せる、という一点に絞られている、そのジョナサン・デミの真っ当な職人ぶりに感服したのだ。■しかし、それは公開当時に感じた物足りなさでもあり、デミによるおどろおどろしい演出は逆にその力量に疑念を感じさせもした。例えば、マイケル・マンはレクター博士を極めて普通にしか描いていないが故にデミ版レクターよりも恐ろしく、かつ、その演出ぶりは秀でていたように思えたものだ。■でも、このような、どどどーんとレクター博士登場や、逆光の中にどひゃっっぁと死体ぶら下がりそんな時間あったんかい、といったシーン、というか「絵」はやはり必要だったのだな、と今でこそ思う。■この映画が90年代以降のサイコ・サスペンスものの原点として君臨し、マンの「The Manhunter」がマニアの珍品に止まるのは、このようなわかりやすい「絵」、スペクタクルによるものであることは間違いないと思う。■さて、あなたはマイケル・マンとジョナサン・デミのどちらを良しとしますか?■公開以来約15年経過し、ただのおっさん化した私にはその回答に応える力無し。 10点(2005-01-29 18:59:46) |
5. ヒューマン・キャッチャー/JEEPERS CREEPERS 2
殺すか殺されるか、のみに絞ったシナリオがよい。一本の道路とバス、野原だけで勝負しようという志がよい。前作で弱点だった、モンスターがあんまり強くない、ってことを逆にネタとしているのがよい。フィックス主体の古典的な演出も悪くない。ラストもいい、こうでないとな、という気がする。■もちろん、今のアメリカ映画だから、このカットはもっとロングでないと位置関係わかんないじゃん、とか、そこは視点を固定しないと…、とか、不満はいろいろあるが、そんな不満もひっくるめて実に楽しい楽しい映画でした。頭の悪い「トレマーズ」といった感じだが、その頭の悪さも見事なバランス。ああ、ほんと命の洗濯をした。あんまり人が入ってなさそーなのと、点数が良くないんで、満点をつけちゃいます。 10点(2004-05-24 22:21:35)(良:1票) |
6. ビッグ・フィッシュ
「自分が死ぬ瞬間」を伏線に、様々なほら話(と現実)が見事に連携しクライマックスに進んでいく。うまいなぁ~、と思いながら泣きじゃくりはじめ…と、思いっきりこの映画を堪能しました。■しかし、野暮を承知で文句を言えば…。父と子の断絶、「傍役」でしかない奇形者たち、愛してもらうことを生涯待ち続けた女性、その決着を「ファンタジー」で終わらせていいのだろうか? 「主役の死」を「素晴らしい人生だったね」と手放しで悼むことが出来るのだろうか? ■恋人を奪われた元婚約者に対する悪意が、いかにもティム・バートンらしいが故にこそ、「ファンタジー」が現実となる葬式のシーンには違和感を覚える。ユアン・マクレガーの無邪気な「いい奴」ぶりを悪意で塗り固めること、それがバートンなのではないか? 「バットマン」の作家が、ほんとーに、これでいいわけ? ■(追記)と、書いていたのだけど、やはりどうも違和感がある。6点という中途半端な点は、ティム・バートンに対し不実だと思い直し、正々堂々と0点をつけることにしました。それは、やはりラストシーンの「主役」の「いい人生」ぶりが、あまりに嘘で、いい加減で、不誠実で、卑怯で、ハリウッド的に過ぎると感じるから。この映画に泣いちゃいかんよ→私。 0点(2004-05-23 19:35:53)(良:1票) |
7. 緋牡丹博徒 花札勝負
仁義を切る藤純子。カメラは家の外、暖簾越しに腰をかがめた姿が見える。ついで、カメラは逆に入りお勝手から、手前に湯気の立つ竈を配し、その向こうに藤純子。そしてアップ。切り返して、彼女の仁義を聞く面々。その中に山本麟一。これでもう充分。もう何もいらぬ。これが映画だ。 10点(2004-03-08 13:08:06) |
8. 非常線の女
奥行きのあるスタイリッシュな構図と、移動ショットを組み合わせたテンポのいいリズム、ルビッチ伝来の省略の妙、ミスキャストとしか思えない田中絹代の、しかし妙にエロティックなドレス姿。ハリウッドスタイルのギャング映画が人情劇に移行する、その自然、粋、もはや大家の風格だ。この時、小津30才。ハリウッドから学ぶものはすべて学んだ、そんな風情が実にいい大傑作。 10点(2003-12-14 23:25:36) |
9. HERO(2002)
「美しい映像」の中で、アクションの持つダイナミズムはどこかへ行き、残ったのは絵はがきです。また、同じようなお話の繰り返しにうんざりし、最終的にたどり着いた結論がこれ?って感じ。芸術畑の人がアクションを撮ると、アクションを馬鹿にしちゃうのだろうか。「グリーン・ディスティニー」再びを期待したのだが、どう考えても「クローサー」や「リベリオン」の方が「映画」だぜ。 1点(2003-12-07 21:14:04) |
10. ピーター・フォークの ビッグ・トラブル
役者たちがのりにのる、のりまくっている。物語という枠の中で演じているはずなのに、それを超えて楽しんでいる。演じるってのはかくも楽しいことなんだ、と思う。カサヴェテスはそれを的確に、実にかっちょよく画面に収め続ける。その結果がラストの楽しい楽しい楽しい野外パーティーにつながる。カサヴェテスの意に反した映画であろうとなかろうと、これは紛れもなくカサヴェテス映画だと思う。 10点(2003-12-04 02:31:24) |