2. 悲情城市
映画史に叩きつけたとんでもない傑作。と同時に、侯孝賢の作品の中では特異なほど密度の濃い映画でもある。彼の他の作品に比べて、ここには画面の外側に広がりを感じさせるような余裕がないし、時間の流れの中にも、ゆったりとしたものを与える余裕はない。それどころか、逆にこの映画の画面と時間の枠の中には、実際に描かれるエピソードをはるかに超えた大きな歴史の背景や出来事、あるいは壮絶な人間の関係や感情が、すべてギッシリと詰まっていて、映画の重圧感が物凄いです。まさに「歴史」というものの映画的表現があるとすればこれだと思わせるような力技。個人的には『童年往事』のようなゆったりとした作品のファンだったけど、さすがにこれは、好みの問題がどうあれ傑作だと考える以外にありませんでした。呆然とさせられるくらいに映画が凄かっただけ、エンディングがS.E.N.S.の音楽だったのは安易な感じがしたけれど。 [映画館(字幕)] 10点(2007-09-07 03:38:47) |