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1.  引っ越し大名! 《ネタバレ》 
中盤までつまらないギャグセンスに辟易。だが、話の大筋は面白い。リストラのシーンは、藩側の都合良すぎる主張に、怒りがこみ上げてくるが、最後の最後にそれが収められて溜飲が下がる、というより感動的ですらある。藩に戻るよりも田畑を選ぶものの展開もよろし。  及川藩主も最初は碌でもない若藩主と見えたが、最終的には立派な藩主になったようだ。全体的に「終わりよければ全てよし」な感じ。
[DVD(邦画)] 5点(2020-05-05 17:54:38)(良:1票)
2.  ビブリア古書堂の事件手帖 《ネタバレ》 
今は本が読めない体だが、かつては日常の謎系ミステリというのが好きだった。北村薫全盛の頃。どうやらこの話はそういったモノらしい。序盤に青年が持ち込んだ本に秘められた謎を示すところなどは、(ホームズの来客への推理のように)多少強引ではあるが、美少女店主の才能を充分に見せていて見事。映画は過去のおばあさんと小説家志望の若者の話を現代と交互に見せて、視聴者には良く分かる仕掛けになっているが、登場人物たちが何によってどこまでその辺の事情が判明しているのか、良く分かりにくい。青年は自分のおじいさんの正体を『切通坂』で知ったのだろうが、あくまで小説だよ、それ。いや、待てよ、小説家青年は彼女が身ごもったことを知っていたのだろうか?そんな描写は無かった気がするが。 さて、ミステリの醍醐味は謎が提示されて探偵役がそれを解明する見事さにあると思っている。その点本作は「これだ!」という解明が無くダラダラと成り行きで話が進み犯人が強硬手段に出る。 あのタイミングで青年が襲われた時点で、それを持っていると「知っている」あの男が犯人だと指摘する描写が必要だろう。栞嬢ほどの人なら当然分かっていたはずだが、まんまと油断して追い詰められてしまう。仕込みの犯人に導くために、伝票の書き方や本の「焼け」を再現する男が、最後に随分と稚拙でちょっと繋がらない。また、最後の闘い時に本を投げ捨てちゃうのは探偵側の敗北のように感じてしまうのは、「本よりも大切なものがある」という部分の説得力が映画的・物語的に表現できていないのではないかとも思う。 まあ、色々と不満点もあるが、キャラクタ的に好感度高いし、楔の伏線は見事だったと思う。そして何より大人になった夏帆ちゃんの演技に心動かされてしまいましたよ。だから点数高め。 最後に栞さん、余計なお世話ですが、たかだか鍵を出すだけで男の目の前であんなに胸元を開けちゃいけませんよ。
[DVD(邦画)] 7点(2019-05-01 19:57:49)(笑:1票)
3.  否定と肯定 《ネタバレ》 
 ホロコースト否定論と聞いて、昔々のマルコポーロ事件を思い出した。マルコポーロのあの記事は大して予備知識の無かった私には結構面白かったし、雑誌自体も好きだったので事の結果には残念な思いだった。  一方、いま日本では、虐殺ではないが慰安婦問題などが隣の国から糾弾されていて、強制性が有るの無いのと悩ましい事態になっている。記事を書いた人間は現地取材などしていない唯のウソ記事にもかかわらず、相手側からは体験談などが語られている。そういった感情で事実を押し切るような事が有ってはいけないよなあ、と思ってみていたら、本作の弁護方針では被害者を出廷させない方針だという。  証拠と論理だけでホロコーストの証明をするのだと思っていたら、それもちょっと違っていて、いわゆる被告人の悪性格の立証など、それはどうよ?と思う部分もあり、意外。そもそもコレ、名誉棄損裁判なんだから、問題の焦点はホロコーストの事実性ではない気もするのだが。   法廷モノなどで期待されるのは、終始旗色の悪い裁判における「最後の大逆転」という感じだが、本作は基本的には実話ベースらしく、そういう大逆転劇は難しかったのかもしれない。一応裁判終盤で、裁判長(?)が「ヤツは本気で信じているのではないのか?」という揺さぶりがあるけど、それまでの裁判の展開を見ていて、もう勝利を確信してしまっているので、その辺のカタルシスは弱い。   ところでこの物語で一番驚くのは、訴えられた側に事実の立証責任があるというイギリスの制度だ。英国で訴えられたら、とんだ災難と言うしかない。
[DVD(字幕)] 6点(2018-07-25 22:24:48)
4.  美女と野獣(2017) 《ネタバレ》 
 どうも野獣の野獣感が薄い気がする。もっとケモノケモノしている想像をし、期待もしていたのだが……。  それと、ガストンの最後はもっと明確に「罰として」やっつけられて欲しかった。こういう物語では特に「悪いやつは罰を受ける」という事を期待してしまう。  それ以外では、映像も主人公も美しいし、燭台や時計らの楽しいシーンも良い。音楽も素晴らしいのだが。  ただなあ、「美は内面に宿る」と言いながら、結局は人間に戻った王子が超イケメンなのはどうなのかなあ。まあ、普通に考えれば「内面の美」の外的な表現なのだ、という事なんだろうけど、王子が例えばホンコンさんみたいでもベルさん愛してくれますかね?エマ・ワトソンが美しいなんて、ウットリしている自分が言うのも何だけど。   ……やっぱり自分はこの作品の主題を本当には受け入れていないようだな。  でも、作品としては見事で9点。
[DVD(字幕)] 9点(2017-10-16 11:27:22)
5.  美女と野獣(1946) 《ネタバレ》 
 ベルの周りの人間がビックリするほどクズで引く。シンデレラに出てきそうな意地悪な姉たちや、親の財産を借金のかたにする兄。野獣を殺してしまおうと発案する求婚者(これは仕方ないかもしれないが)。まあ、それはいいとして。   壁から出た手が燭台を持っていて人が歩くにつれそれが動くとか(しかもアレ、燭台を渡してくれたり出来るんですね!)、動き回る人を目で追う胸像とか、まるで舞台作品でお目にかかるような魔法の演出のイマジネーションが凄い。一方、兄の友人が野獣に変わる所や野獣が王子に変わるところ、ベルが瞬間移動するところなど映画ならではな表現もある。   物語的には、ベルが野獣に心惹かれるようになる経緯がちょっと納得しずらい。そこのところの感情移入が薄いので、野獣が王子に戻った後のベルの態度が「どこの馬の骨とも知れぬ王子」にただそれと判ってなびいているだけ風に映る。よく考えると、これはかなり大きな弱点かもしれない。   だけど魔法が溶けた王子が空を飛ぶのは変だよなあ。
[DVD(字幕)] 6点(2017-08-21 18:29:22)
6.  秘密 THE TOP SECRET 《ネタバレ》 
第九室長の人は何やらものすごく深刻ぶってるけど、結局親友の脳を覗いて描かれた事は、主人公や恋人の知っていたことと然程変わらず、なんであんなにダメージを負っているのかわからない。  警察関係者なら犯罪者に逆恨みされる事なんて、(物語の中で)よくあることだろうし、異常性格者なら当て付けのようにして自殺されることもあるだろう。そんなこと秘密にしておくなよというようなことで深刻ぶりすぎだ。しかも自分の命を犠牲にしてまでそれを守ろうとした松坂桃李くんは、つまりこの犯罪者の一連の行為が友人の責任だと思っていたという事で、もう全然ダメ。  そんな事よりも、究極のプライバシーであるはずの、他人の記憶を読み取ることが出来るというテクノロジーに対して、当然巻き起こるはず数々の懸念や問題について物語が語らず、便利な道具として使用されるだけで本筋はサイコパスの捜査である。それならそれで、そっち側の深淵な闇を解き明かしてくれるのかと思ったら、そっちは意味もわからず「サイコパスだから」という事でどんどん事象だけ進む。犯人の幼なじみは何故殺されたのかサッパリわからないのだが、サイコパスってそういうものだとこの物語の登場人物は納得しているのだろうか。  先の異常犯罪者と女の犯人が、同一の記憶に存在しているというだけで「繋がった!」と喜んじゃう単純な犯罪捜査者には、心を解き明かす可能性のある記憶のテクノロジーはもったいなさ過ぎである。
[映画館(邦画)] 3点(2016-10-09 06:34:30)
7.  HINOKIO ヒノキオ 《ネタバレ》 
 ピノキオは人間になりたいと思っていたが、このヒノキオは人間の姿で出て来るのを拒否している。ちょっとひねった面白い設定。  不登校対策で、超科学の遠隔操作ロボットが、生徒のインターフェイスとして学校に通う、という設定が実にユニークで面白い。と思っていたら、Wikipediaによると、実際にロボットで登校している人が外国にはいるというから、世の科学技術というのは知らぬ間に進むものだ。   子供の友情が、引きこもり少年の心を開く物語、と思っていた。基本、間違っていないと思うのだが、ゲームの世界と現実の世界の関連が、イマイチちゃんと機能していない。もちろん、リコーダーを風の笛として吹いて、それがサトルを死の淵から連れてくる話にしちゃうと、それはそれで私には受け入れられないオカルトになっちゃうが。だからといってあれだけ無関係なのもどうか。やはりあのエピソードはNGだろう。  もうちょっと現実的な方法(少なくとも映画で示されたテクノロジー)で、サトルをこちら側へ呼び戻す物語を考えて欲しかった。私的には父親に撫でて貰った感覚や、友達たちとの触れ合いの感覚あたりをテコに、少年の心を開くセンで行った方が良かったと思う。   不満点もあるが、現代日本の科学的ピノキオ物語として、そこそこ面白かったと思う。ジュンの女の子設定は要るのかどうか微妙な気はしたが、彼女が取り戻した「女の子」はきっとジミニーのもらった勲章だったのだろう。
[DVD(邦画)] 6点(2013-05-06 15:52:42)
8.  ひとりぼっちの二人だが 《ネタバレ》 
 このタイトルが実にいいと前から思っていた。ひとりぼっちが二人いたら、もうひとりぼっちじゃないんだという、実にあたりまえだけど、嬉しくなってくるようなタイトル。それに続く「だが」のもたらす希望。『明日に向かって撃て』級の良いタイトルだと思う。   ’62年といえば、終戦後17年。戦災孤児と言うのが、そこそこ一人前の年齢になった頃か。こういう意味のひとりぼっちの人が、町にはたくさんいたんだろうか。いたんだろうな。  そういった境遇の者が、苦しい社会を生きていくうちに昔の仲間と再会し、助け合い信じ合って生きてゆくようになる青春物語。   身を売らされそうになる芸妓やら、戦災孤児やらが登場するが、決して暗くならずに見られるのは、坂本九のキャラクタのお蔭だろう。役柄と言うより「坂本九」というキャラクタにそのまま乗っかった感じである。彼の独り舞台シーンは、まあ今実際に笑いはしないが、当時は面白いシーンだったんだろうと思わせる。  そして、まるで『ウエストサイドストーリー』の最後のシーンのように、若者たちが罪を悔いて共に歌い歩き出すシーンは、作り事めいてはいるがそれ故か、若者の歩く先の明るさを思わせる良いシーンだ。
[DVD(邦画)] 8点(2013-04-16 18:16:51)
9.  ひとごろし 《ネタバレ》 
 昨年鑑賞した『びっくり武士道』の真面目版。といったら、かの作に失礼だが。あ、シリアス版と言えば良いか。   原作を読んでいないので言い辛いが、そもそも「ひとごろし!」と叫んで周りの人間が逃げる、という大元の部分が非常に漫画的というか非現実的なので、シリアスにすると余計にその部分が引っ掛かる。  しかも昴軒さん、ちっとも悪くない。闇討ちしたのは相手側だし、誹謗による周りの人たちの行動が気持ち的に受け入れられないのと相まって、この人に同情の念さえ抱いてしまう。   それと、昴軒が追いつめられているという感じが薄い。腹を切ってしまおうとするほどの困り様には見えないし、それほどの剣豪で「武士」を強調する人が、(髷とは違うらしいが)髻を取られる事に、恥を感じないというのも、ちょっとチグハグな感じがする。まあ、これは時代劇でしか、それを知らない自分が言うのもなんだが。    つまり全体的に言うと、物語の説得力ゼロなのだ。残念ながら、これに関しては、喜劇の世界観でそこんところ上手く丸め込んだ『びっくり武士道』に軍配を上げざるを得ない。
[DVD(邦画)] 4点(2013-03-03 05:47:53)
10.  昼下りの情事 《ネタバレ》 
 若い奥さんの昔の男の話は、目一杯の背伸びが付かせたウソかあ。……まてよ、それって、父親の証言だものなあ。あれ?なんか、心配になってきたぞ…。   という続きの展開の妄想が、頭からはなれない。   大丈夫なのか?フラナガンさん。
[DVD(字幕)] 4点(2012-11-05 01:39:54)
11.  昼下りの決斗 《ネタバレ》 
 正義の保安官に性根を直された昔のヤンチャ者が、今、年老いてからヤンチャな青年と仕事を共にして、青年の生き方を変えて死んでゆく、という実にカッコイイ西部男の話。    最後の「決斗」場面は、"早撃ちガンマン"的でない、リアルな世界観で良いのだが、自らの死の受け入れ様が、冷静というか達観というか、アメリカ人的な感じがしない。生死の狭間で生きている、辺境の西武人ならではの、生死感なのだろうか。
[地上波(吹替)] 6点(2012-10-15 18:26:40)
12.  美女と液体人間 《ネタバレ》 
 東宝は、放射能で生物を巨大化したと思ったら、今度は液状化までさせてしまっている。現在だったら、被爆者への偏見に繋がりかねないとして、許されなかったかも知れない表現だ。  ま、そこは目を瞑ろう。気持ち的に核兵器(実は危険なのは兵器だけじゃなかったわけだが)の、恐ろしさと批判が根底にあるだろうことは、容易にわかる。  だが、この物語はその部分を強調すること無く、超科学を信じずに右往左往振り回される、捜査陣を執拗に描写している。だから、普通の刑事ドラマのように見えるのだが、それにしてはドラマが薄い。観客が(少なくとも私の)見たいのは、事件記録ではなく、事件にまつわる人間のドラマである。  学者と女のラブストーリ-をもっと丁寧に描くとか、「精神活動を持った」という部分をもっと膨らまして、あえて女を襲わない部分を描くとかしてみれば、それなりに面白くなったのでは。 
[DVD(邦画)] 4点(2012-10-09 01:29:13)
13.  ピカドン 《ネタバレ》 
 最初に観た時には、固まった。これは、商業映画でなかったために、わりと作られてから早いうちに、朝の情報番組で放送したのだ。  一度それを書いてから消した(!)という、トレス線の無い、絵本のようなやさしい絵柄の子どもや人々が、一転、ドロドロ溶けてゆく描写は、非常に恐ろしいものだった。  子供のあこがれや、おもちゃも、実はその延長(或いはその根が)に、恐ろしいものになりうるとでも言うようもに、子供の作った紙飛行機が、やがて黒い飛行機となって、現在の町の上を飛ぶというシーンも、示唆的で怖い。   LDの時代までは、販売されていたのだが、今は手に入れることが困難な映画であるが、公共図書館くらいには置いておいても良いのでは…と思ったら、大手動画サイトで見れるのか。うーむ。
[地上波(邦画)] 8点(2012-08-29 02:56:33)(良:1票)
14.  びっくり武士道 《ネタバレ》 
 見るまでコント55号の喜劇だとは気が付かなかった。あの頃、55号にはホントに腹を抱えて笑った記憶があるのだが、この映画は殆ど笑うところがない。あの時代に見ていれば、可笑しかったのだろうか。でもまあ、自分的には、岡崎友紀ちゃんを拝めればOK!だったので特に不満はないし、物語は意外と、と言うと原作者に失礼だが、期待以上に面白かった。  そう、物語自体はなかなか考えさせられるストーリーだ。臆病で非暴力主義な侍は、世間の力を以って上意討ちを果たそうとする。行く先々で、「この男は人殺しだ」と吹聴することによって、世間が彼を疎外するという技だ。公開当時の世間の平和観にピッタリだ。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」いるのかもしれない。関わり合いになりたくないために、宿屋は扉を閉ざし、茶屋はお茶も出せない。彼は次第に追い詰められてゆく。  人は大勢のつながりでこのを世生きているのか、とか、人の噂だけで人を追い詰めちゃうのはどうなのか?とか、色々な考え方が心に浮かぶ。そんな複雑な気持ちで最後の決着を迎えると、さすが非暴力の人、そう決着するかあ、という感じ。   ところで、このタイトルだが、「初笑い」の部分は、キャッチコピーじゃないのかな?本編のタイトルには、『びっくり武士道』としか出てこないよ。 
[DVD(邦画)] 6点(2012-08-09 08:20:33)
15.  127時間 《ネタバレ》 
 何十時間も挟まっていて、だんだん人生を反省したりし始めるけど、恐るべき脱出方法で、生還した後は、再びムチャなスポーツに勤しんでるあたり、アメリカ人って懲りない人たちだな。  あと、映画のポスターがイメージさせるような、「高いところで宙吊り」な予想をしていたが、そうでもなくて、結構地味。 
[DVD(字幕)] 5点(2012-06-14 01:12:04)
16.  病院坂の首縊りの家 《ネタバレ》 
 人物相関が異常にややこしくてわかりづらい。まあそういう原作だし、それでも簡略化されているんだけど。これだけややこしい人物関係の中で、「この人が実はこの人の子供だった!」と言われても、「うーむ…」って感じだ。はたして、劇場で見た人は、一度で理解したのかな?  金田一耕助最後の事件ということで、渡米の相談の件、原作にあるからといって、これだけややこしいこと描かねばならぬ映画で、そんな尺勿体無いでしょう。それに貴恵ちゃんに、「佐田です」と言わせるイヤラシさ。もっと物語本体に尺と力を入れるべき。
[DVD(邦画)] 6点(2012-04-23 18:02:23)
17.  火の鳥2772 愛のコスモゾーン 《ネタバレ》 
 30年ぶりです。昔、有楽座の大画面で見たときには、スペースシャークや他の止まってるはずの絵がブレブレだったのを、ガッカリして見た記憶が蘇りました。今回そんなに気にならなかったのは、NTSCのドットの荒さに吸収されたからか?あるいは修正したのかな?また、天才美少女、千住真理子とNHK交響楽団を迎え、音楽と動画の融合に力を入れていたはずだが、今見ると両者がイマイチ合っていない。タイミング的なことより、「ノリ」が違う。画が音ほどはずんでいない。  物語としては、若干ステレオタイプではあるが、高度な管理社会の中、コンピュータによって子供の適正が判断され、育成が管理されるさまを、セリフ無しのアニメーションだけで表現したのは見事だと思う。しかし、本質的には、「火の鳥」という話が持つ『命』というテーマと、高度な管理社会・差別的な特権社会というのが、有機的に意味付いているか、疑問が残る。ゴドーが、最後に至った心境や、火の鳥が欲したモノと、それらには大した関連がない。ストーリーの都合だけで描くには、ありきたりというか、公開当時としてさえ古い感じが否めない。火の鳥は(恐らく)宇宙創成の、星をも自在に出来るエネルギー、人間が神と呼ぶものであろうから、ゴドーの見せた「愛する心」程度で手出しできなかったりするのは、ちょっと甘い気がした。でもそれを欲しがったり、それを持った人間を独占しようとしたり、物語が進むにつれ、却ってギリシャ神話的に人間臭くなってきて、更に違和感。その手前の段階で、ゴドーの命と引き替えに、地球を再生するくらいの厳しい展開が丁度よい。
[DVD(邦画)] 5点(2011-08-07 06:39:59)
18.  火の鳥(1978) 《ネタバレ》 
市川崑監督自身、「どうしてこんなモノ撮ったのか」と言ったらしいですな。 まあ、判ります。アニメーションと実写部分が全く乖離しているから。 アニメーションは面白くなければいけない、とかいう固定観念にでも、取り憑かれていたかのようなふざけっぷりは、手塚か鈴木伸一かどっちのせいか知らないが、相手が市川崑であることを考えると、ある意味凄いです。しかし、実写部分もかなり長くて退屈。特にナギと猿田彦の情愛の部分は、小っ恥ずかしくて見てられません。 ジンギが最後に、火の鳥に「後世に我が名を伝えよ」と言い放つ部分で、ちょっと盛り上がっちゃたから、最後のタケルたちの話がとってつけたエピローグのように感じてしまいます。いろいろな人の命の欲望と業の歴史の果てに、生き残った新しい命が、火の鳥に祝福されて新しい世界を得る、この物語の最後の部分は、黎明編の特に私の大好きな部分だったので、非常に残念でした。  でもでも、このテーマ曲は素晴らしく美しく、劇中には出てこないけど、日本語歌詞をつけた、松崎しげる氏の歌も素晴らしいので、ちょっと甘めだけど、3点。 (「テレビ鑑賞」としてありますが、実際には、二十数年前のテレビ録画を観たものです。)
[地上波(邦画)] 3点(2011-06-22 18:30:50)(良:1票)
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