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1.  ヒトラーの贋札
ユダヤ人収容所で贋札作りの強制労働が行われる様子を描いたテンポのよい佳作です。生き長らえることと、自己犠牲を伴う正義を貫くこと。前者は生きとし生けるものの根源的な欲求であり、後者は死後も続くこの世界を思う人間的な感情で、優劣をつけられないものです。明日も生きているかわからない日々の中では生きのびることが最大の目的になるのは自然でありながらも、正義を貫く者の姿も併置することで均衡を保ち、なかなかの作品に仕上がっています。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2011-04-17 21:29:08)
2.  瞳の奥の秘密
久しぶりに「いい映画を観たなぁ」という余韻を味わいながら劇場を後にすることができた良作です。未解決事件の謎解きというサスペンス形式をとりながら自ら封印してしまった淡くも激烈な想いを解きほぐしてゆく話です。さして興味が湧きそうなストーリーでもなく、アルゼンチンという自然豊かな国柄を感じさせるような景色は皆無で、9割方屋内でのロケですが、本作を稀な作品にしているのは演技とカメラワークです。25年前と現在を演じわけ、かつ両方の場面でそれぞれに魅力的なヒロインと主人公。顔のクロースアップが多用され、言葉では埋められない表情の奥にあるものを読み取ろうと観る側も目を皿にして画面を追いかけることになりますが、熟達した演技でその視線に応えてくれます。タイプライター、写真立てといった小物が表情を的確に補足する役割を果たしていて、映画的演出とご都合主義的演出のはざまでギリギリの均衡を保っています。空撮からスタジアムに降りてゆくシーンや尋問シーンでの長回しも緊張感があり、パブロというおとぼけキャラの存在もあいまって、エンタテイメントとしても上質な出来栄えといえるのではないでしょうか。ただ致命的な難点があります。終盤、妻を失った男が主人公に「もう忘れることだ」と諭す場面です。原語「Nao pensa mais」に対する字幕がそうなっていますが、英語でいうと「Do not think anymore」という意味であり、日本語では「もう考えるな」と訳すべきではないでしょうか。「忘れる」という言葉には「自分にとって痛みを伴う出来事=忘れたいという思いを起こさせる事象」という主観的な判断が加えられているのに対し、「考える」という言葉には、その考えられるべき事象がどのようなものであるか、主観的な判断が加えられる以前の状態を指す言葉といえると思います。本作の核が「考えるつもりはなくても考えてしまう」「なにもしないでおこうと思っていてもしてしまう」ことに突き動かされる者たちの物語であり、忘却がテーマではないはずです。この点について-1で8点献上いたします。
[映画館(字幕)] 8点(2011-04-09 01:10:46)(良:2票)
3.  ビッグ 《ネタバレ》 
以前観たときは非常に楽しめたのですが、今回観直して見てさほど惹きつけられませんでした。トム・ハンクスの演技が炸裂していて安心して観られる作品であることには違いないのですが、いまいちヒロインの魅力がパッとせずのめりこめませんでした。でもおもちゃ屋でのピアノシーンはいいですね。
[DVD(字幕)] 5点(2010-12-26 00:18:36)
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