1. ブレードランナー 2049
後半だるい。特に車が海に沈みそうなあたり。 Kと聞くと、夏目漱石のこころとか、カフカの城とかを思い出す。イニシャルという記号には中身が感じられない。イッコッコウみたいな存在。その中身の空洞に満たされていたのは、実はジョイちゃんなのかもしれない。 [映画館(字幕)] 7点(2017-12-29 22:59:27) |
2. FAKE
《ネタバレ》 あの日佐村河内をケラケラと笑ったすべての日本人が観るべき映画。ドキュメンタリーとしてもよく撮られていて見応えがあるのでオススメ。 ただし、出来事の概略を字幕で説明するのはズルいなと思った。字幕使わずに被写体とのやり取りのみで全部説明できたら渋いのに。 あと、映画ラスト、美しくも切ない感動的な余韻のひとときで、森達也のコメントがめちゃくちゃ蛇足。「いいシーンが撮れました。それは、かおりさんがここにいてくれたから」みたいな。あれは言っちゃおしまいだ。おしまいなんだけど、おっしゃる通りで、とてもいいシーンだった。それは、オシャレな小さいランプひとつが灯るだけの黒いカーテンで薄暗い部屋、スピーカーから聞こえてくる壮大で哀しみに満ちた音楽、ちょっと顔をそむけて音楽を聴いてるんだか聴いてないんだか、じっと座る奥さんのほぼ暗闇の手元に、光る指輪の白い輝きを撮れていたからだ。 あのランプの明かりの具合がとても良すぎるので、森があらかじめ用意して仕込んだものなのかもしれない。森は床に座ってカメラを仰角に構えて、計算しまくったに違いないと勘繰らずにはいられないくらい美しいシーン。ほんとたまたまああいうふうに撮れたっていうんなら、ある意味天才的。たまたまでなく作為があったというなら、これこそFAKE。 何が真実で、どこからがフェイクなのか、映画からは結局さっぱりわからないし、分かろうとも思わない。だけどもそんな半信半疑の暗闇の中で、あの指輪の金属光沢だけは、本物だ。 [映画館(邦画)] 8点(2016-12-30 23:56:18) |
3. ファインディング・ドリー
《ネタバレ》 「たかがディズニー映画なんだし、ドリーは両親に逢えるんだろ」などとぐれて観ないのはもったいない。そりゃもちろん、ドリーは両親に逢える。そんなことは分かっていて映画を観るということは、どんな過酷でスリリングな運命がこの魚たちに襲い掛かってそれをどのように乗り越えて両親に逢うのかを知りたいということだ。僕はこの邂逅で、号泣とまではいかなかったが、ドリーの孤独や哀しみに胸が締め付けられた。 たとえば花火大会の大混雑で、子供とはぐれて行方不明になって、いつまでたっても見つからない。なんてことがもしあったら、はたして僕はまともに生きていくことが出来るだろうか。まだ1歳だから僕の顔を覚えていないかもしれないし、誘拐した奴に懐いてしまうのも赦せないし、かといってどっかの農村に農奴として売られて家畜同然に扱われているのも赦せない。 ドリーの両親の心配と、自分を責める気持ちを想像すると、深海の水圧に押しつぶされるような息苦しさを覚える。小学生のちびっこたちが午前中暑いなか夏休みで観に来ていたが(今日の東京37.7℃)、この映画を観て、ちびっこたちは親にちょっと優しくなれたらいい。 実は重いお話だけど、さすがピクサー、されどディズニー、カーチェイスとかオットセイとか鳥とかでバカバカしく楽しませてくれる。今回はあのタコがいてくれたおかげで映画は勝利を収めた。タコがあんなことできるわけねーだろ! [映画館(吹替)] 8点(2016-09-19 21:27:03)(良:1票) |
4. 不安の種
《ネタバレ》 確かに脚本はよく工夫されている。それがかえってあだとなったと感じる。原作の漫画のことはよく知らない(おちょなんさんは少し知ってた)が、原作が面白いのだろうから、多少強引にでも、繋がりを気にせずに各エピソードをちりばめてしまってよかった。つなげることで精いっぱいになってしまい、本来のホラー感のほうがおまけになってしまった。 『放送禁止』シリーズで背筋が凍る瞬間は、画面の奥のほうでじっとこちらを「監視」している人々の見切れである。これを撮れるのが長江監督くらいのもんだから、僕はこの映画を見ている最中ずっと画面の隅々にまで目を凝らした。しかし背筋が凍ることはなかった。もっと意図的に、奥でこちらを監視する何者かが沢山いてよかった。 CGや特殊メイクがおざなりであるという感想を見受ける。長江監督は、作品中にあえてわざとらしさを残す作風の人だ。だからこの程度のCGや特殊メイクも、監督の意図するところだ。しかしこの映画は、やっぱり作り物の世界であるから、長江監督の信条に沿わないかもれないが、もうちょっと嘘っぽさをなくすべきだった。鑑賞者の想像力を信頼し、もっと隠す勇気があればよかった。 雲の形とか、這う目玉とか、きもいわらべ歌とか、内装の木目とか、アンニュイな空の色とか、「嫌な予感」は上手に作られていた。だけどもっと嫌な予感だらけにできたはず。 [DVD(邦画)] 6点(2014-01-22 21:27:42) |
5. ブラック・スワン
《ネタバレ》 この映画のポイントは「鏡」だ。稽古場にはもちろん、トイレの鏡、自宅の玄関、お風呂、病室の窓ガラス、そして劇場の楽屋、要所要所に鏡が置かれている。そしてナタリーが写る。正面から鏡を撮影すれば、物理的に当然撮影しているカメラも鏡に映り込むはずだが、それはうまいこと修正されている。CGが似合わない渋い映画なのだが、臆することなく鏡を正面から撮る。 そんな鏡が、ラスト、凶器に変わる。ナタリーの陰の部分を映し出す。そして陰ナタリーを超越した瞬間、あの楽屋、白いファンデーションを塗りたくる顔、鏡越しに見覚えのあるナタリーポートマンの顔がよみがえる。 演出家の男、あいつがナタリーを揺さぶっていくが、あの演出家なかなか下衆なやつだろう。ただのエロおやじ。そもそもバレエを仕事に選んだのも、きれいなお姉さんと合法的にふれあえそうだからという邪な動機だったに違いない。映画としては最後死ぬべきキャラだ。でもそうさせない、それがダーレンアロノフスキー監督。しかし最後きちんと「我が姫君!」って言わせるところが評価できる。 さらにメンヘラな母。ゆがんだ愛情っぷりが泣けるし恐ろしい。『キャリー』のあのキチガイ母をほうふつとさせる。しかしダーレンアロノフスキー監督はこの母を死なせない。観客席の真ん中で、ナタリーのバレエを観させている!なんという人間愛に満ちたラストシーンだろうか。 演出家の男が死んでくれさえいれば、DVD購入コースだった。 [DVD(字幕)] 8点(2013-08-27 01:36:19) |
6. ファイナル・ジャッジメント
《ネタバレ》 アニメのほうがぶっ飛んだことができるのに。死んだ父が半透明で微笑んでるのが唯一笑えた。下らねえ映画つくってんじゃねー。 [映画館(邦画)] 1点(2012-11-11 19:12:50) |
7. FLOWERS フラワーズ
《ネタバレ》 蒼井優の物語は、灯台もと暗しと言えるくらいベッタベタの昭和初期のオンナの物語であって、いまさらこんな物語を見させられたところで何とも思わない。これを始めどれもこれも聞いたことある物語ばかり。それはきっと、こだわりが「脚本」ではなくて「映像」のほうだったからではないか。 映像にこだわっておられるのなら、音声も同様にこだわってほしい。たとえば蒼井優のモノクロの時はノイズ混じりのごわごわした、『七人の侍』くらいの感じで。 [DVD(邦画)] 6点(2011-05-25 22:25:12) |