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1.  フィクサー(2007) 《ネタバレ》 
ストーリーのブツ切りに不親切な演出。またもやソダーバーグ一派か。ぼおっと見ていたせいか、馬のエピソードは、パンフを読むまで気づかなかった。フィクサーというのは、悪徳弁護士の意味もあるらしいが、普通の日本語の感覚からすると違和感がある。かといって原題だといまいちだし、最近こんなのばかりだ。本作で凄いのはやっぱりティルダ・スウィントンだろう。「フツー」のキャリア・ウーマンが殺人にまで手を出してしまうというのも恐ろしいが、それ以上に脇の下に汗じわーっとか、腹の肉ぶよっとか、もう正視に耐えない衝撃映像の数々には戦慄を覚える。何百億ドルもの訴訟を一人で仕切るなど、人間の限界を超えているというものだ。リーマンの鬱病なんてレベルじゃない。さすがアメリカ。殺人シーンも妙に機械的で怖いし、誰もが何気なく極限状態に陥っている様に、観ているこちらの神経までギリギリと締め付けられるようだ。正義を貫き勝利を手にしても、ハッピーエンドにならないのがいい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:59:21)
2.  ブラッド・ダイヤモンド 《ネタバレ》 
最後は少々できすぎという気もするし、結局「キンバリー・プロセス」の宣伝をしているわけであるが、この辺の大人の事情は察してあげましょう。レオ様のカッコよさには、女性ならずともメロメロになるに違いない。「俺を捕まえた振りをしろ」、パンパン。最高である(おいおい)。ジェニファーとフンスーもいいです。M4、ハインドヘリ、元32大隊の傭兵部隊、リアリズム系の派手な戦闘シーンには、戦争映画ファンもきっと満足するに違いない。三菱パジェロ、ふそうバスなど日本車の大活躍も印象深い。確認できなかったが、ピックアックトラックの中には、恐らくトヨタもあったに違いない。ゲリラにとっても、下手な武器よりよほど役に立ってたりしてね。そう考えるとデ・ビアズのみならず、日本企業にとっても案外他人事ではないのかもしれない。まあ自動車は武器やダイヤモンドとは違うのだが。そう言えばトヨタが南アに自動車を売って非難を浴びていた時代もありました。息詰まるストーリー展開、大迫力の戦闘シーン、感動の家族愛、カッコいいレオ様と、娯楽作としてハイレベルであると同時に、紛争ダイヤモンドと少年兵の実態、混乱するアフリカの現実を巧みに取り入れて、真摯なメッセージ性を両立させた脚本と監督の手腕は、お見事である。とは言え、鑑賞後の印象は良くも悪くも意外と軽い。これも監督のセンスなのか。ともかくエキサイティングで泣ける良質の社会派娯楽作であることは間違いない。男性の皆さんはぜひとも彼女と観に行きましょう。レオ様はカッコいいし、切ないロマンスもある。最高のデートムービーである。もちろん本当の目的は別のところにあります。TIA!
[映画館(字幕)] 9点(2007-05-07 12:02:06)(良:2票)
3.  プラダを着た悪魔 《ネタバレ》 
原作のオチがいまいちなところは、社内の人事抗争を絡めて上手くカバーしていた。ミランダの悪魔っぷりが、より鮮明に表現されていたと思う。ニューヨークやパリの美しい風景と華やかな業界の雰囲気に、ゴージャスなファッションが洪水のようになだれ込み、ややベタなBGMでテンポアップすれば、それだけで腹八分目くらいにはなる。一番の見所はメリルのすっぴん顔か。常識や善悪を超越したミランダの「悪魔」ぶりは最高にいかしている。ミランダは実はいい人なのか。いやいや、あれは本当に本能のままに振舞っているだけで、部下を鍛えようとか、そういう好意的な意図は皆無と思いたい。その方が断然面白いからね。最後の紹介状も、彼女としてはただ単に、思っていることを書いただけであろう。そして「あなたと私は似ている」からこそ、お互いに認め合いつつ、違う道を歩む。実に爽快なラストであった。よく考えると「ウォール街」の女性版ですな。仕事にファッションと、いかにも大人の女性向けのようではあるが、男子学生やニート君たちにもお薦めかもしれない。やはり人間いろいろとやってみないと、本当の自分というのはわからないのではないか、と本作を観て思う。しかし劇場に男一人で来ているのは私一人であった。そりゃそうか。アンのセリフにも登場したが、イケメンライターのモデルはジェイ・マキナニーっぽい。本作の成功に比べると、「再会の街」は悲惨なデキであった。彼は今何をやっているのだろうか。本作は華やかで爽快で、ストーリー、演出ともに優れた心温まる快作である。しかしもう少しエグいところがあっても良かったかな。That’s all!
[映画館(字幕)] 9点(2006-12-20 13:33:45)(良:1票)
4.  プレッジ
クライマックスで、主人公が恋人に対して何も言えなかったことが、彼の行動の動機を証明している。多少の葛藤すらなく、愛情より犯人逮捕の執念の方が完全に勝っていたということであろう。責められて一言の弁解もなく、うろたえることすらしないのが恐ろしい。普通のミステリーの体裁を取っておきながら、最後の最後で完全にひっくり返すやり方は、見事というべきか、あざといというべきか。しかしこれではあまりに後味が悪い。個人的にはハリウッド的ハッピーエンドの方が好みだが、原作があるのでは仕方がない。その存在について直接は知らないが、「殺人百科」という文字通り古今東西の殺人事件を集めた本の中で、著者の一人であるコリン・ウィルソンがその原作のことを賞賛している。間接的ではあるにせよ、「ハリウッドお得意の映画のプロットの一つ」を否定してみせた原作の意図は、そのまま監督の意図でもあったのだろう。犯人が運命の裁きを受けたのがせめてもの救いか。しかし恐らく運命というべきではないのだろう。原作はこれよりさらに陰気な結末らしい。  
[地上波(字幕)] 7点(2005-03-31 01:34:56)
5.  プレタポルテ
全編爆笑の連続であった。しかし公開当時からの不評は現在でも相変わらずのようだ。確かにストーリーはあってないようなものでよくわからない。豪華俳優陣も演技というよりキャメオ気取りでふざけているようにしか見えない。しかしパリコレを舞台にレポーター、カメラマン、デザイナー、その他もろもろもろもろもろもろの関係者が入り乱れて殺人事件まで絡んだ、アルトマンお得意の群像劇である。ストーリーよりも小ネタ、演技よりもセレブ観賞である。そもそもファッション業界はストーリーの舞台背景ではなくあくまで主役であり、その点で最も重要なのは気分と雰囲気である。監督のシニカルな視線とユーモアのセンスは最高に冴えている。新旧セレブ総動員で魅せる、目くるめく華やかなショーとそれ以上に熱い舞台裏は、臨場感たっぷりで超ハイテンション。まるでシャンパンの洪水を一気に飲み干すかのごとく、ゴージャスで愉快な気分に浸れることは間違いない。最優秀演技賞はやはり「キティ・ポター」ベイシンガーや、最近滅多に見られない楽しそうな笑顔を見せてくれるジュリア・ロバーツを押さえて、ところかまわず糞しまくるプードルちゃんに決定。
10点(2005-02-18 22:48:06)
6.  ファイブ・イージー・ピーセス
アメリカン・ニューシネマの一作。確かに主要なテーマは「明日に向かって撃て」や「俺たちに明日はない」にも共通する。しかし違いもある。主人公は美しく散っていくこともなければ、「イージー・ライダー」(恥ずかしながら未見)の2人のように無残に死んでいくこともない。主人公は油田で働く労働者。ガールフンレンドはシンガー志望のウェイトレス。音楽一家の育ちらしいことが示唆されるが、彼女のかけるポップソングのレコードに嫌悪感を隠さない。トラックの荷台でピアノを弾きながらハイウェイの横道へ逸れて行くシーンは、その後のストーリーを暗示しているようで印象的だ。エコロジストのレズ、フェミニストなどが時代を感じさせるが、彼が彼らと相容れるはずもない。クラシック一家に戻ることもできない。行き場も無く心を通わせることのできる仲間もいない。しかし誰が悪いわけでも間違っているわけでもない。彼の行動は容認できないが、結局そういう生き方しかできないのが切なくもあり悲しくもある。全てのシーンが象徴的かつ美しく時代を鮮やかに切り取ってみせている。そして若者にとっては普遍的なテーマかもしれない。特に現代の日本では。名作。
9点(2005-01-02 00:54:44)
7.  ブレインデッド
ゾンビムービーの傑作。というかジャンルを超えた名作。友人と一緒に最初はいやいや観たのだが、あまりの壮絶さと面白さに驚愕した。その後ビデオで3回観た。ピーター・ジャクソンという名前どこかで聞いたことあるなと思っていたら、この作品の監督だったのか。本作はまだ、当時のゾンビムービーの例に漏れず低予算?で、CGもあまり使っていない。冒頭のラットモンキーはぎごちないし、ベイビーは「ポンキッキ」顔負けのもろ着ぐるみ。この後の「乙女の祈り」では発達したCG技術を縦横に駆使、少女たちの暴走する妄想をめくるめく映像美で再現。そして「ロード・オブ・ザ・リング」での成功へと続く。やっと映像の技術が、類まれな監督の想像力、そして構想力に追いついたというところだろうか。しかし、もし本作を「ロード・オブ・ザ・リング」ばりのCG使って撮ったとしたら、やはり魅力は半減するだろう。嵐のごとく降り注ぐ血糊の前には、生半可なCGなど単なる子供だましに過ぎない。タランティーノをも凌ぐクロスオーバー。ベイビーのシーンのはスピルバーグをも越えた。当時だからこそ撮れた、まさに奇跡のような名作。 
10点(2004-08-08 04:02:24)
8.  ブレイン・スナッチャー/恐怖の洗脳生物
開始10分にしていきなりぬるぬるの頴娃みたいなエイリアンが登場し大爆笑。主人公たちが調査のため訪れた街で、すでにエイリアンに寄生されている街中の人間に襲われ、しかも主人公までが寄生されて大暴れという怒涛の展開。にしては演出がぬるい。いろんな意味で一体どうなるんだ?と思いきや、意外というかやはりというか、その後は地味な展開。中途半端に父と子の確執を交えたり、イマイチな主演女優がラブシーンでも脱がなかったり、でも別に脱がなくてもいいか、という感じで話は進む。大統領まで登場して、エイリアンの侵略による人類の危機、という割りにはスケール感がなく、緊張感も薄い。アクションもつたない。誰が寄生されているかわからない恐怖という設定も生かされていない。寄生された人々がゾンビのごとく襲ってくるというお約束もあるんだかないんだかよくわからない程度の腰の引け方。もし子供たちが集団で襲ってきたら一体どうするか?今度はポール・バーホーベンあたりに監督してほしい。まあ主題自体がB級だから、どうあがいてもB級にしかならないですね。それにしてもドナルド・サザーランドはどうしてこういう映画が好きなのだろうか?
4点(2003-11-10 03:32:47)
9.  プレシディオの男たち
脚本、アクション、主演のマーク・ハーモンと、どこを取ってもいまいち地味な印象の作品で、評価も知名度もやはり地味だが、これが隠れた名作である、といってしまおう。ストーリーは刑事アクションの体裁を採っているが、人間ドラマに主眼を置いた作品なので、地味なのも仕方がないか。とはいうものの、そのアクションシーンのタイトさがドラマを盛り上げているのも事実。サンフランシスコのプレシディオ米軍基地で発生した殺人事件をきっかけに、男女の出会い、父と娘の確執、ぶつかり合う男たち、そして友情と、様々な人間ドラマが交錯し、スタイリッシュで美しい映像と、味わい深いセリフが彩りを添える。M・ライアンの美しさに驚愕し、S・コネリーの渋さにグッとくる。そして彼らを引き立てる、控えめで好青年のM・ハーモン。キャスティングのバランスが絶妙。「デッドって一体なんだ?」頑固一徹の憲兵隊長役は、まさにS・コネリーのはまり役。数々の名画の舞台となったサンフランシスコ。邦題もかっこいい。大人のための一本。
8点(2003-10-24 20:32:08)
10.  ファイナル・デスティネーション
 何だか、M.パレかなんかが主演のB級アクションに、無理やり邦題を取って付けたようなタイトルだが、実は新感覚のホラームービーだったのだ。ゾンビや怪物、あるいは殺人鬼ではなく、定められた運命によってもたらされる死の恐怖、というのは今まであまりなかった、と思う。断言はできないが。名作「天国の階段」など、死ぬはずの人間が生き残ってしまって・・・というのは過去にもあるが、それをホラーに仕上げたアイデアは素晴らしい。別に、神や天使、あるいは悪魔が出てくるわけでもなく、予知だ死神だという割には、映像もストーリーもほぼ完全に素面。運命の定めであっても、あくまで現実に襲いかかる死の恐怖にどう立ち向かうのか、といった点のみが描かれていて、息もつかせぬハラハラドキドキの展開がとても楽しい。学園青春ホラーといった趣は、「13日の金曜日」というよりは、どちらかと言えば「スクリーム」の影響でしょうね、やっぱり。 殺し方が凝っていて感心する。特に先生は可哀想だった。あそこまでやると、恐怖を通り越して大爆笑だが、ホラーにユーモアはつきもの。その一方で、何の前触れもなく、女の子(名前は忘れた)がバスに吹っ飛ばされてしまったのには、ショックで開いた口が塞がらなかった。意外と飽きずに、最後まで一気に観れる。ホラー映画の由緒正しき伝統を受け継いだエンディングも笑える。あそこまで派手なのは珍しい。こうして書いていると、大爆笑だとか、笑えるだとか、何だかコメディのレヴューのようだが、あくまでこの作品はホラーです。あしからず。
8点(2002-12-15 03:01:51)(良:1票)
11.  ブラックホーク・ダウン
ドキュメンタリー風戦争映画としては、「史上最大の作戦」以来の傑作だと思います。飛び交う銃弾、立ち込める煙、押し寄せる群集、細部まで完璧に再現された、巨大なオープンセット、圧倒的なスケールと臨場感で、映画ではこれまで扱われることの少なかった、すさまじい市街戦を、文字通り「体感」できるというだけでも、一度は観る価値があるでしょう。まさに戦場叙事詩とでもいうべき映画だと思います。しかもあの「プライベート・ライアン」でさえ拭い切れなかった、対ナチス戦特有のオプティミズムやヒロイズムなど、当然この作品には微塵もなく、「プラトーン」のように、キャラクターに対する感情移入も難しい。だからこそ最後に残るのは「この戦闘は一体何だったのか?」という疑問だけ。そういう意味で監督の意図は完璧に達成されていると思います。 何も考えずにただその迫力ある映像を楽しむもよし。事件の背景や紛争、国際政治の舞台裏まで思いを馳せるもよし。どういう見方をするにせよ、この衝撃は他では味わえないものでしょう。 日本映画こそ、こういう手法を取り入れるべきではないかと思います。反戦や、政治的なメッセージなどは一切なし。ひたすら戦場をリアルに再現。硫黄島、沖縄、ガダルカナル島、あるいは中国などなど、ネタには困らないでしょう。やはり戦争を「表現した」のが「ガンダム」だけというのはどうも・・・。
10点(2002-10-21 21:26:53)(良:1票)
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