1. フォレスト・ガンプ/一期一会
この映画が公開された当初、本が出版されて「ガンピズム」なる言葉が流行ったことがある。それがどういう意味だったかは知らないけれど、私にとっての「ガンピズム」、フォレスト・ガンプ主義の意味とは、ひとつのテーマしか考えられない。奇しくもこれと同じ時期に公開され、この映画の影に隠れてアカデミー受賞を逃した映画「ショーシャンクの空に」とこの「フォレスト・ガンプ」。この二つの映画に同じ強烈なテーマを強く通じるものを感じるのは私だけだろうか。……そのテーマとは「人間の本当の強さ」である。私にとっての「ガンピズム」とは、「強さ」の理想的なあり方に他ならないのだ。……人生に背を向けず、全てを受け入れて宿命に愚痴をこぼさずヒステリックに嘆くこともなく、自分の信念に忠実に強い意志を持続し、出会う人々から目の前の困難まで、全ての人生の出来事を「一期一会」として熱意を持って淡々と行動を重ね、ひとつ、またひとつ、人生を歩んで行く。なすがままに、あるがままに、ビートルズの「Let it be」という歌の歌詞も、このふたつの映画に描かれている「人間の本当の強さ」というものを表現しているように思えてならない。……何回観てもジェイミーだけは単に身勝手な女としか思えないのだけれど、それすらも一途に受け入れて人生を歩むガンプ。彼にとっては、幸福も不幸も、出会いも別れも、楽も苦難も、人生に起こるあらゆる物事が、大切に向かい合うべき「一期一会=人生で一度限りの大切な出会い」であり、それ以上でもそれ以下でもない。全ての人生を終える時、彼は胸を張って言えることだろう、「僕の人生は幸せだった」と。……ショーシャンク刑務所にブチ込まれ不幸の中を歩むアンディ、全ての人に愛され幸せの中を歩むガンプ。自分もこんなに強く生きることができたらいいのに!、この映画を観たり語ったりする時、いつもそう思わずには居られないのだ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2008-01-06 03:41:42)(良:2票) |
2. ブラッド・ダイヤモンド
《ネタバレ》 物語の終盤、ショーウィンドウに飾られたダイヤモンドのネックレスの輝きが血に染まって見える。「白人がダイヤを欲しがるのは分かる。しかし、なぜ、アフリカ人同士が争わなければならないのだ?」たき火を見つめるソロモンが呟いた言葉が胸を突いた。‥‥‥ダイヤしかり、石油しかり、象牙しかり。先進国の都合によって、ただ愛する家族と穏やかに生きていくことだけを願っていた人々が引裂かれ、殺されていく。ラストの壇上に向かうソロモンを拍手で見ている人々や、それをエンターテインメントとして鑑賞している私は、そんなアフリカの悲惨な現実を受け止める資格があるだろうか。‥‥‥今までも数々のドキュメンタリーや映画で思い知らされてきたことだけど、所詮海の向こうの他人事と目を背けてしまう自分が嫌になる。そんな自分達に気付いても、何をしてやれる?その無力さに、ただただ虚しい気持ちになるだけだ。需要と人間の欲望ある限り、こんな悲惨は決して消えることはない、その厳しい現実。それでも、どんなキレイごとよりも、まずは行動。たとえ偽善でもイイから、まずは行動。できるだけのことは、やっていくしかないではないか。‥‥‥のっけから始まる血生臭い襲撃シーン、グイグイと画面に惹き付けられてしまい、テンポよく進む物語は2時間半の長丁場ながら観ている側を飽きさせない。この映画に至って、ようやくディカプリオは「タイタニック」の亡霊から脱する事ができたように思う。役柄が良かったのは勿論だが、無精髭を生やしたワイルドな演技はイイ味を出していた。 [映画館(字幕)] 8点(2007-04-15 23:09:46)(良:1票) |
3. 武士の一分
《ネタバレ》 現代版のクールな若者を演じることの多いキムタクのこと、時代劇の配役がどうなのか不安だったが、予想以上にハマり役で彼の確かな演技力が証明された気がした。「目が見えないと思って侮るな」と使いに追加の伝言を託すときの表情は、鬼気迫る凄みがあって素晴らしかったと思う。彼の自然な演じ方を、庄内弁の軽口に活かすあたりが大変上手い。剣道の経験があるから殺陣も変に美しくなく、実践的でサマになっている。現代風の役者を時代劇に起用するときに有りがちな、不自然な雰囲気がほとんど感じられなかったのが見事だった。……食い扶持を絶たれて飢えてしまうことになるかもしれないけれど、お咎めでお手打ちになるかもしれないけれど、目が見えないから果し合いしても勝てるとは思えないけれど、それでも譲れない、見得やプライドよりももっと深く、生命のやりとりに及ぶまで絶対に譲れない一線、それが「一分」。言うにはカッコイイけど、自分にあるかと言われれば、やっぱり、無いな。……倒れた病に伏した新之丞を見舞う、桃井かおり演じる以寧が家に上がりこむ時、その足袋の裏が生活に汚れている。そんな山田洋次監督独特のリアルな生活模様の演出に加え、奥方の壇れいや、徳平演じた笹野高史の演技も、キムタクに負けずに素晴らしいと思う。脇を固めた俳優陣と、主演のキムタクの息が噛み合った良い邦画だった。 [映画館(邦画)] 8点(2007-01-03 00:26:28) |
4. ブラック・ダリア
《ネタバレ》 同じくデ・パルマ監督の「ファム・ファタール」と同じような、雅なエロスと裏切りを期待していたが、ちょっと字幕だけではストーリーが分りづらい。ラストシーンの死体のフラッシュバックは、夢に出てきそうに気味悪かった。最後の屋敷での種明かしも細かな台詞のやりとりについていけず、いまいち「あっ」と言わせてもらえた感が少ない。英語が完璧に分かれば、ちょっとは奥深く見える映画なのかな。 [映画館(字幕)] 4点(2007-01-01 01:32:24) |
5. ブラザーズ・グリム
《ネタバレ》 「リーグ・オブ・レジェンド」や「シュレック2」みたいに、童話の登場人物がシュールに一堂に会して、という欲張りすぎなB級っぽさを楽しみにしていったが、正直ちょっとガッカリだ。グリム兄弟が実はインチキ詐欺師だったという設定は面白いが、第一女王様のお城がショボイし、物語のクライマックスもイマイチ盛り上がりに欠ける。敵役の女王様もアッと言う間にやられちゃったし、可も無く不可も無く、中途半端な危なげないストーリー。お城は眠りの森の美女みたく難攻不落の牙城にするとか、敵役に悪い魔法使いが出てくるとか、グリム兄弟の馬車が機関銃付きのハイテクカボチャの馬車とか、もっとミーハーな演出が欲しかった。モニカ・ベルッチは相変わらずキレイだったけど。 [映画館(字幕)] 5点(2005-11-10 00:01:36) |
6. ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]
アメコミ映画の常道で、底は限りなく浅いのだが、邦題からして予測できた安直な筋書きも笑って許せる娯楽作品。ただ、2作目が出ても多分観ようとは思わないな。目立ちたがり屋のライター男がユーモラスで好き。 [映画館(字幕)] 4点(2005-09-24 12:14:31) |
7. ブレイド3
《ネタバレ》 1作目は東洋的なブレイドのアクションがカッコよく、吸血鬼戦争というストーリーもなかなかに面白く、並のアクション映画以上の展開性があって個人的には好きだった‥‥。2ではトーンダウンし、3で一気に巻き返しを期待したが、正直期待外れもいいところだった。敵である吸血鬼の最後の砦たるボスも弱すぎてインパクトに欠け、ストーリーに至ってはブツ切れ単刀直入すぎて展開の面白さも無し。ラストの戦いもあっさり成功し過ぎてイマイチ危機感というか盛り上がりに欠け、クライマックスの緊張感も無し。やっぱり1で終わっておくべき映画だったのかも知れない。人間相手の戦いでは、吸血鬼なら、殴る蹴るより先に、なぜ噛みつくことを考えないのか?特筆すべきはハンニバルの戦い、大男の吸血鬼相手に何で柔術技?ノゲイラばりに見事な腕ひしぎ逆十字からオモプラッタへの連続技には拍手。 [映画館(字幕)] 1点(2005-05-08 03:13:34) |
8. プライベート・ライアン
オープニングのシーンでは、映画館で初めてスクリーンから眼を背けた。延々と、これでもかと続く殺戮場面、吹き飛ぶ下半身、撃ち抜かれる頭、血煙、血煙、また血煙。数々の映画を観てきたが、ホラー映画でもここまで凄惨な画面は観たことがない。余りにリアルな描写に観ていて嫌になったが、きっと、実際のノルマンディもこんな光景が広がっていたことだろう。ストーリーの方にはアメリカ万歳の匂いはそれほど強くなかったが、観た後には何の感動も残らず、ただ凄惨な殺し合いを観た後の、嫌な後味が残っただけだった。しかし、その嫌な後味がキル・ビルの凄惨な映像を観た後のように空虚なものではなかったのは、戦争をひたすらリアルさに説得力があったのかも知れない。戦争描写のリアルさ加減では、間違いなく満点。それだけを目的に作られた映画のような気がした。 4点(2004-10-28 00:31:09) |
9. プリティ・ウーマン
道徳的な観点からこの二人に共感できない人が大勢いるのも理解できるが、そもそもリッチなビジネスマンと貧しい娼婦という物語の設定なのだから、ドレスを買い美味いものを食い、二人の関係がそれから始まり盛り上がって行くのも不自然ではない。この映画を観た時に、二人の道徳的な点を批評するようなナンセンス考えは微塵も浮かばず、ただただあまりにチャーミングなジュリアに思わず見とれてしまったものだ。二人がセレブ同士でも、あるいは男娼と娼婦同士でも、あのチャーミングはあり得ない。バリバリの現役ビジネスマンという視点があらばこそ、それと対照的なアウトロー(ジュリア)のキャラクターが活きてくる。いいではないか、こんなシンデレラストーリーがあったとしても。結果的に二人が一緒になったのは、金だけが理由ではなかったのだから。 5点(2004-10-18 23:50:39)(良:1票) |
10. 梟の城
なぜか、「日本オタクの外国人が喜びそうなニンジャ映画」と思ってしまうが、時代劇好きとしては嫌いではない。確かに映像の安っぽさがなど突っ込みどころはあるのかもしれない。しかし「忍者」の戦いや生き様がそれなりにリアルに描かれており、ダイナミックな映像がなくても、アクション時代劇として楽しめた。鶴田真由がとてもキレイだった。 6点(2004-05-03 01:57:51) |
11. ファインディング・ニモ
《ネタバレ》 洋画アニメはあまり観たことがなかったのだけれど、これは面白かった。もちろん映像も大変美しい!字幕版で観たが、物語の冒頭、襲ってきた猛魚にニモが奥さんに一言、「中に入れ・・」と避難を促すシーン。恐ろしさに一瞬硬直し、様々な思惑が頭を交錯する。「人間ではない」はずの登場人物たちのあまりに「人間らしい」豊かな表情には驚き。あとはエンドロールの最後。あれ、どこかで見たキャラだったな(笑) 7点(2003-12-10 01:41:22) |
12. ファム・ファタール(2002)
《ネタバレ》 レイトショーで観てたのはわずかに2人だけ。坂本龍一が音楽を担当しているという予備知識だけで何となく観たが、映像も美しく大変面白かった。夢オチの部分は「アレ?」と思ったが、思わずのめり込んでしまう大変凝ったサスペンス。エンディングの次第に引いて行く映像の見せ方は、同監督の「スネーク・アイズ」のエンドロールの映像になんとなくカブって見える。それにしてもあの女優さん(勉強不足で名前が分からない)、いやー、キレイだったな。 7点(2003-11-13 00:11:41) |
13. ファイト・クラブ
ハリウッドでこんな映画がつくられたこと自体が驚き。物欲主義への世の中への痛烈な批判、作品そのものはむしろブラックコメディーに近い。自分の病んだ心が病人達と泣くことで癒されるあたり、この作品は人の心の弱い部分の芯、本質を実によく取らえていると思う。舞台はアメリカなのにブラピ演じるタイラーの思想はどこか東洋的。まるで自分の弱い心を覗かれてるようでドキリとさせられた。ファイトクラブの連中がやっていることは無論メチャクチャだけれど、単なる世の中への甘えた反抗ではなく、なにか納得できるものがあるのは何故だろうと考えてしまう。 9点(2003-11-11 00:10:44)(良:1票) |