1. ファイト・クラブ
《ネタバレ》 ■どうも気分が晴れないときに観てしまったので、益々落ち込んだ。が、これは傑作だ。■暴力描写や『エンゼル・ハート』オチ、文明批判などは、本作の本質ではない。間違いなく自己快復がテーマである。主人公の煩悶の質は決して分かりやすいものではないだけに却ってリアルで、それが快復へと向かうための壮絶なプロセス、生みの苦しみを、2時間以上延々と見せられるのだから、そりゃ気が滅入る。■『マルホランド・ドライブ』や『ブレードランナー』のように、解釈すべき表象に満ちている映画でもある。タイラーはもちろん、マーラですら主人公の精神の副産物かもしれない。いや、一応は実在的な存在と読めるのだけれど、主人公が自己を再構成するに当たって必然的な存在である点が、どうも怪しいという気もする。最後がサブリミナルで終わったり、ノートンとピットがカメラ目線であるようなメタ構造があったりするところも勘案すると、究極的には『エンゼル・ハート』オチではなく、夢オチなんじゃないか、とか。そんなことも含めて、解釈の可能性はいろいろとありそうだ。■そもそもその手の映画は成功させることは難しい。よっぽど監督に技量が無いと無理である。さもないと、仕様もない表象遊びが見え見えの厭味な作品にしかならないに決まってる。フィンチャー監督は、先に挙げた2作の、デヴィッド・リンチ、リドリー・スコットに比肩する仕事を成し遂げたといえよう。 [DVD(字幕)] 8点(2009-03-13 00:57:50)(良:1票) |