1. フェイク
《ネタバレ》 マフィアものながらアル・パチーノは末端の兵隊役、ジョニー・デップは変人ではない囮捜査官役。裏社会への潜入が功を奏せば奏すほど見守る家族にしわ寄せがゆき懊悩する悲しきサラリーマンのデップが前に出ていて、おとり捜査の緊張感は希薄でした。観て損はありませんが、饒舌なパチーノははまり役とは言えません。 [DVD(字幕)] 5点(2011-12-18 13:16:59) |
2. PLANET OF THE APES/猿の惑星
最近公開された『創世記』が高評価なので出張先のホテルで鑑賞。ティム・バートン作品ということで期待しましたが、彼の過去の作品にあるようなヘンテコな要素がなく、猿文明というヘンテコ設定に完全に食われてしまっているようです。小学生の頃以来オリジナル版は観ていませんが、猿文明に対する驚きがメインのはずが反応は随分とあっさりとしています。地上波放送だったおかげでチャールトン・ヘストンの出演に気付けました。オリジナルに軍配。 [地上波(吹替)] 3点(2011-11-19 15:37:23) |
3. ブレードランナー/ファイナル・カット
目を見張るべきは映像の美しさでしょう。30年近く前の作品に対してポストプロダクションでこれだけのクオリティに仕上げられるというのは驚嘆のほかありません。退廃的で雑多な世界観を映像だけで表現しているところに製作陣の尋常ではない意気込みが伝わってきます。ストーリーを追う楽しみというよりこの世界観を堪能しました。ただストーリーはあまりピンときませんでした。私のなかで「レプリカント」という存在がうまく消化できなかったからだと思います。表皮は有機体の皮膚で覆われているものの電気仕掛けで感情の芽生えることのないロボットやアンドロイドではなく、かといって細胞培養によって造りだされ少なくとも命あるものとされるクローンでもない「限りなく人間に近い人造人間」という設定を理解できたのはあれこれネットで調べてからでした。レプリカントが殺される(破壊される)際に流れるのは赤い血であり、金属の骨格は見えず内臓さえ備わっているようにも見えるのはその意図からだったのでしょう。命あるものにすべて終わりが訪れるという台詞も限りなく人間に近い人造人間から、生身の人間に対して放たれた言葉であることを考えると感慨深いものがあります。これらは鑑賞後のリサーチで明らかになったことであり、初見で本作の奥行きに気づけなかったのは私の不徳と致すところです。良く言えば観客の想像力に拠り様々な解釈が可能な奥行きのある作品ということもできますし、悪く言えば製作側の意志不統一により矛盾や難解な部分が生じ、解説を必要とする作品となるような気がします。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2011-01-08 12:06:53) |
4. ブラック・レイン
大阪・心斎橋の引っ掛け橋、十三の風俗街、阪急百貨店前の天井の高い通路(建替えでもう見られなくなった・・・残念)など、大阪が舞台のポリスアクションです。私、大阪出身でして、大抵のシーンがどこで撮られているかがわかります(ちなみに松田優作の女のいるバーが入っているビルはハリボテです。あんなものは心斎橋にありません)。リドリー・スコット以下、マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシアらが見知った場所を走り回っていたことを思うと無性に嬉しくなってしまいますね。ハリウッドのポリスアクションに欠かせないエンタテイメント要素である車・銃・女の三大要素が日本を舞台として選択されたことにより見事に排除されて、オートバイ・ヤクザそして大阪弁に代替されています。日本という舞台設定は『キル・ビル』のようにタランティーノの趣味の延長ではなく、そんなアホなというシーンはあるものの、作品のテンションを持続させるため大真面目に演出のネタとして生かされています。例えばデコトラ。主要人物が乗っているわけでもなく、大阪だからといってそこらへんを走っているわけでありませんが、日本という得体の知れない土地を表現するため目にとまったのでしょう。そして松田優作。ジャパニーズ・ヤクザとして胸を張れるのは本作における彼の演技以外知りません。ヤクザ連中のドスの効いた大阪弁も素晴らしく、島木譲二が本物のヤクザ役を張っていたり、十三のネオン街や卸売り場の屋台など、異国情緒を演出すべく大阪文化総出で挑んだ傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2010-12-26 23:06:41) |
5. フォーリング・ダウン
《ネタバレ》 例えるなら激しく音漏れしている人のヘッドホンを引っこ抜き耳元で「やかましい!」と叫ぶ、携帯電話での情報交換に余念のない人に「車内での通話はご遠慮下さい」と睨みつける、日々感じるストレスに正面から立ち向かい自力(脅し含む)でストレスを解消するイカレクレマーの映画です。電話のための両替を拒む店主にキれ、マクドのモーニングセットを食べるために銃を持ち出し、自分が正当なクレームをつけていることを強調して暴れまわりこちらも応援目線で観てしまいますが、興味深いのが彼もまたキれる他人に出くわすところ。視点を変えれば彼は権利を主張する他人から迷惑を受ける可能性のある一人であり、少し他人よりもクレームの声が高いだけでしていることは同じなのです。皆が感じる些細なストレスがこの映画に充満していて、その熱量がハンパありません。ロバート・デュバルでさえ鬱憤を爆発させるその一人になっています。ただ難点は、衝動的な殺人を犯し一線を踏み越えてしまった際、その背景がうかがえ知れる心理的な描写がなかったところです。この描きこみが明確であれば『タクシードライバー』クラスの映画になりえたかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2010-12-26 00:12:20)(良:2票) |
6. ふるさと
《ネタバレ》 思い出深い作品です。徳山ダム建設により、ダム湖に沈む定めとなった村落に住む老人と少年の物語です。ダム工事で生計を立てる息子夫婦と家に置き去りにされた老人。岐阜の工場で仕事をしていた頃、岐阜市柳ケ瀬の映画館で鑑賞しました。観客は30人ほどだったでしょうか。映されるのはダムの底に沈んだ街であり、もうこの世には存在しない土地。二度とふるさとを見ることはできず、訪れることすらできないというリアリティが胸に迫り、生まれ育った土地を離れようとしない老人の気持ちが実に痛ましいほどに伝わってきます。鑑賞後、金華山という岐阜県・愛知県を一望できる山に登り、街の灯りを眺めながら、この街が深い谷に沈むとしたらどうだろうかと想像しました。人々は何を思い、どこへ行くのだろうかと。それでも人々は生活を続け、生きられる限り生きるのに違いありません。それは一体何なのか? 何がそうさせるのか? 知りたくてその週末に完成した徳山ダムを訪れました。一見、山道を行く際に通り過ぎる何の変哲もないダムであり、人里離れた山奥には不釣合いな高規格の道路が整備されていました。教えられなければ底に街が沈んでいることはわからないでしょう。ただ、水面に向かって伸びてゆく急勾配の道と、錆びた速度標識が生活の名残をとどめていました。ふるさとを失っても人々は生き、今日もどこかで生活を続けている。ただそれだけであるということ。人間の業ともいうべきなにかに触れた気がして自分が生きていることに対する感謝の念が湧き立ったことをよく覚えています。映画によって現実の行動を喚起されたのはこれが初めてだったかもしれません。満点です。 [DVD(字幕)] 10点(2010-12-22 23:06:19) |
7. ブラインドネス
《ネタバレ》 原作既読です。人類ほぼすべてが失明するという状況を文字で巧みに表現した優れた原作をいかに映像で語るのかを期待しましたが、ちょこっと画面が白む程度。冒頭、一番初めに失明する日本人の演技からして目も当てられず、フェルナンド・メイレス監督が目隠しして撮った映画としか思えません。物語の筋書きを知っているものとしては、観るべきものはありませんでした。 [DVD(字幕)] 2点(2010-12-11 13:12:05) |
8. プレデターズ(2010)
《ネタバレ》 この作品を観る方というのはおそらく、というか間違いなく本家を鑑賞され、シュワちゃんの人類最強ぶりとプレ様のご尊顔に感銘を受け、『2』で妊婦に手心を加えられるプレ様に親近感を覚え、『AVP』で有志以前は神とあがめられたプレ様に更なる関心を覚えつつも人間(含む製作側)のお粗末さに落胆し、『AVP2』では落胆を通り越しもう続編は見まいと決意しつつ劇場を後にした方々でしょう。本作を観られる際は、本家に敵うものではなく設定を楽しむ作品であることに留意しつつも、製作・ロバート・ロドリゲスという言葉に一抹の希望を抱えながら劇場に足を運ばれたことと思います。私の場合、その希望は一瞬で潰えました。なぜか戦場のピアニストが地球代表の殺し屋で、裸足のヤクザとプレ様がチャンバラ合戦。そして異様に肥えて臭そうなモーフィアス・・・。ジャングルの地形を生かした罠や泥パック、見えない敵への一斉掃射など本家へのオマージュがところかしこにちりばめられており、間違い探しのように見つけて楽しむことはできるといえばできるのですが、新たな発見もなく(あ、ありました。プレ様は犬を飼っています)、驚くべきアクションもありません。更に驚嘆したのが、映画冒頭では館内に7人ほどの観客がいたのですが、エンドロールが始まる頃には私1人でした。これぞプレデター(ズにあらず)! [映画館(字幕)] 4点(2010-11-22 00:21:53)(笑:4票) |