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1.  プリズナーズ 《ネタバレ》 
本作のラストシーンは余韻と言い、鮮やかさと言い、鳥肌ものである。わずか2時間30分という時間の映画で、これだけ感情を揺さぶり、鑑賞後にあれこれと考えさせる脚本と監督の手腕の良さには恐れ入るばかり。ヒュー・ジャックマン演じる我が子をさらわれた父親の本作における行動心理は果たして観る者に如何なる感情を与えるだろう?怪しい青年アレックスを自ら監禁、拷問。彼の殴られ、腫れ上がったその顔が画面に映し出された瞬間、正直胸が痛んだ。彼の発した「助けて…。」は、その時はまだ分からなくても本音だった。同じく我が子をさらわれた友人であるフランクリンは拷問に対して「もし犯人じゃなかったら?」と。その妻は情報は欲しいがケラーのする事には関わらない、と言う。3者の感情、苦悩に思考すらままならない。ケラーは事あるごとに神に祈りを捧げている。オープニングの狩猟も生きる糧のため。そして暴力による拷問も我が子を見つけ出すため。信仰心(信念)は己の行いに対する正当化の理由の様に感じてしまう部分も、犯人の思考(信念)とリンクして恐ろしい事だと思う。決定的な違いは神を信じずに戦いを挑んだ犯人と、神に祈りを捧げ続けたケラー。それがラストシーンに繋がると思えるのは信仰者だけだろうか?一方で当事者でないが故、理性で動ける刑事のロキ。捜査=仕事なのでケラーとはまた違った視点の物語がある。しかし刑事である前に1人の人間として感情を抑えられずに致命的なミスも犯してしまう。誰一人として完璧に描かれず、人間の弱さと苦悩を浮き彫りにする。寒々しい田舎町の風景、打ち付ける雨、憂うつな筈なのに、後味の悪さはさほど感じない。それは2人の幼い命が救われたからだろうか?ただ、本当に何の罪も無かったアレックスに対する仕打ちを振り返ると、本当に気が滅入る。『罪を憎んで人を憎まず』なんて言葉があるが、僕には答えは出せそうにありません。
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2014-10-14 13:25:23)
2.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 
オープニングから酒を煽る主人公。フォーカスの定まらない彼の視点も、実は虚実だというオチの為の伏線ではないのか?とハナっから疑ってしまう演出。空港でNY市警のライリーがアラブ系医師の方を見ていたカットとか、探せば気付いたであろう何気無いけど怪しいシーンがとにかく観客を惑わせ、余計な考えを生ませる。配役的に怪しいキャストやその立場、上空の飛行機内という完璧な密室設定、一昔前では無かったであろう、無言のメールでの脅迫者とのやり取りとそのメール文字の画面演出が主人公、リーアム・ニーソンの表情演技と相まって非常に良い緊迫感を生む。正直、犯人が分かってからの展開やその動機なんかより、それまでの機内での疑心暗鬼ミステリーに、自分も乗客の1人として参加しているかの様な錯覚に陥れる前・中盤が最高に良く出来てます。同僚の航空保安官は多分、運び屋程度でそんなに悪い人ではなかった筈なのに、全くの無駄死にであまりにも哀れで仕方がありませんでしたが、後半は彼の事なんてこれっぽっちも覚えてない位の怒涛の展開運びの手腕は流石です。ジョディの『フライトプラン』同様、薄暗い密室機内のシーンが続く映画は、映画館内の暗さと同化して雰囲気は最高にマッチして良いですね。これは2度目の鑑賞がまた楽しみな作品です。
[映画館(字幕)] 8点(2014-09-30 16:32:28)
3.  ブレア・ウィッチ・プロジェクト 《ネタバレ》 
これは「こういう作品」として観れば完成度は高い。「発見されたビデオテープの映像」という触れ込みなのだから、これを『映画』として観るのは少々無理があるし、ケチを付けるのも筋違いな感じはする。だからはなから「こういう作品」として観れない人には面白味なんてこれっぽっちも無いと思う。但し、怖がりな人、超常現象番組なんかが好き、という人には理解してもらえそうだし、そうじゃないにしても、この内容は普通に観ても不気味であると感じると思う。まず、タイトルロールに続いて表示される字幕。森に出かけた3人の学生が行方不明になり、その1年後にこのビデオテープだけが発見された、という字幕。つまり、これから観る映像の3人は、未だに行方が知れていない、もしくは死んでいる、という事実を事前に踏まえている事で、もしかしたらビデオテープの内容で、または最後にはその理由が分かるんじゃないのか?という想像させる『煽り』を非常に上手く効かせている。そして、全編手持ち16mmで映っているリアルな森そのものが不気味。テントの外で聞こえる声、かけられた粘液、置かれた物体なども、この森に他の『何か』がいる、という事を観客に常に想像させ続ける。手法や演出としては王道かつ在り来たりでも、これほど単純で効果があるやり方は他にない。ラストシーンの解釈は色々あるかもしれないが、これは前半のシーン、町の人々のインタビューの中にある証言に類似するものがある。森に住むパーの家での事件。「見られたくないから、後ろを向かせて立たせた。」ラストの廃屋の地下で、壁を向いて立っていたマイク。殴られ(?)倒れたと思っていたが。これは証言にあった様に、ジョシュの次は…、を暗示していたのではないか?『映画』としてもちゃんと伏線が張られていて、「その先を想像させる余地」(これが真の怖さ)をとことん追求した、先駆的作品としてとても良く出来ていると思います。
[DVD(字幕)] 8点(2014-08-22 20:17:52)(良:3票)
4.  武器人間 《ネタバレ》 
邦題『武器人間』。多分先に公開されていた『ムカデ人間』から拝借したものと思われるが、これはこれであながち外れてはいない。また、このタイトルから少し連想された、若干チャラけた内容なのかとも思いましたが、作品は至って真面目で堅実な(役者さんの演技や撮影、構成、編集など、映画としての完成度という意味。グロ・ホラーなので、内容は全然真面目ではありません、あしからず)作りでした。味方を救う為に敵地の屋敷、地下に潜入していくシーンでは、その地下通路の暗さと閉鎖感が恐怖を煽り、ここで案内役のドイツ側の人間がさっ、と姿を消すんですね。完全に孤立、迷ってしまう。そしてついに現れる、異形の者たち…。この狭い通路で怯えて逃げ惑うソ連兵の後方に異形の怪物の姿を画面に同時に映し込む事で迫り来る恐怖を煽る演出は中々怖くて上手い。正に元祖バイオハザードのあの恐怖感にそっくりだ。ただ、その武器人間自身による殺戮シーンがほぼ無いのがチョット残念。後半では登場した博士の人体実験が中心になりますが、『あの』シーンは『ハンニバル』以来、初めて目にしたんではないか?ただ、人体実験前に期待させといて肝心なシーンでカメラがパンしちゃって、「えー、そこ映さないのー!?」と少しガッカリするとこもあったり、これがレーティング15の限界だったのかな?博士役のカレル・ローデンは『ボーン・スプレマシー』なんかではシリアス演技(って程でもないか?)も披露する巧い役者さんだと思うのですが、テンションは高いが意外と普通。総じて退屈はしませんでしたが、もう一歩踏み込んで突き抜けて欲しかった、と個人的には思いました。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2014-07-11 19:35:01)(良:2票)
5.  フッテージ 《ネタバレ》 
怖い、恐い。怖がりな自分にはトラウマ級に怖かった。兎に角真似っこのモキュメンタリー全盛で、ホラー飽和状態のこの時代にまだこれだけ演出出来る事を示し、記憶に残る1本となる事間違いなしの恐い怖い傑作ホラー。ただ、ザラついた8mmのアナログフィルムの映像質感は不気味な不協和音と共に見せられちゃそりゃ怖いわ!と反則に近いですけど、ドラマ部分の演出もかなり秀逸。基本に帰った様に、兎に角最小限の光源に絞り、何時何が起こるのか?という不安を煽り続ける暗ーいシーンが非常に堪える。そして暗い書斎で一人殺人フィルムを鑑賞するイーサン。そのアナログの質感と暗さがボディブローの様に後半へ響いてくる。そしてここ、暫くフィルム映像が出てこず、忘れかけてた頃に間を開けてあの『芝刈り』のフィルムが登場する。家族の団欒を家の外から撮影、そして…。これは完璧に計算されてた編集の賜物ではないでしょうか?この予測出来なかった唐突さが強烈で、正直トラウマ級で、ちょっともう一回見る勇気が…。イーサン・ホークの過剰一歩手前の演技も良く非常に映画に入り込めました。これから鑑賞する方々へ。必ず部屋を暗くして見て下さい。可能ならホームシアター、サラウンド環境が整っていれば直良です。僕は恥ずかしながら、ラストまで暗いままで見てられなかったです。(笑)
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2013-10-04 19:39:14)
6.  フライト 《ネタバレ》 
最後の公聴会の場面、亡くなった機長の恋人の笑顔の写真が大きなスクリーンに映し出された瞬間、これは罠なのでは?と感じました。彼女もアルコール依存だったという情報は委員会の報告だから事実でしょう。機長にとっては酒を飲んだという事実を彼女のせいに出来る、またとない筋書きを描けるチャンスでした。でも彼はそうしなかった。「酒を飲んだのは自分だ。」と…。安全委員会のスゴ腕の調査員が、機長のアルコール依存(元妻や父を嫌っている息子に尋ねればすぐに分かる)やカテリーナとの関係など、少なからず突き止められないはずがない。調査員エレン・ブロックは機長の良心に揺さぶりをかけたのだと思います。それは彼女の表情から感じ取れる。この事故が機体の故障である事は明らか。誰も成し得ない操縦技術で、乗客のほとんどを救った判断と功績。その事実を踏まえた上で誰かが酒を飲んでいた事実を突き止めなければならない、調査員としての仕事。その葛藤がメリッサ・レオ扮するエレンの表情から滲み出ていました。彼女の演技こそ助演に相応しいと感じました。機長の人柄はOPからご丁寧に分かり易く伝えられています。そして公聴会当日に晒した醜態。彼はとても弱い人間です。「おれは酒を選んだ。」と自分でも認めている。でも、人として『大事』でありながら『基本』でもある「何か」、人を想う気持ちは失ってはいなかった。いや、「あった」と言う方が適切です。それは愛した女性だからだ、とは決して言えないと思う。彼女のした事、乗客を救う事を怠らなかった勇気と行動を知っていたら、そうは言えないはずです。病気やガンを神の行い、運命だと受け入れる事は開き直りか、その方が楽だからだとは思います。でもそれは「逃げ」でしかない。神にすがる人間も弱い。機長は逃げなかった。現実を受け入れた。刑務所で面会に訪れた息子と笑顔で抱き合う彼の姿を見て思いました。人は弱い生き物です。だからある人には普通に生きる事の難しさを、またある人には普通に生きる事の素晴らしさを教えてくれる映画であると。
[映画館(字幕)] 7点(2013-03-07 16:41:45)(良:2票)
7.  フェノミナ 《ネタバレ》 
一匹のハエを従えて、殺人鬼を探す美少女。『ESP』。虫と意思疎通が出来、操るとまではいかないが、その設定が素晴らしい。ハエが道案内する様に先を飛び、OPの空き家を見つけ、ジェニファーの元へ戻ってくるこのシーンが大好き。兎に角ジェニファーが演じる『ジェニファー』に尽きる映画だ。当時14歳という、あどけない美しさが画面から溢れんばかりの魅力。一目見て現在のジェニファーの面影を残していて、大女優の片鱗を感じさせる大人びた雰囲気。前半の夢遊病による演出により、やはりどこか一味違う独特の世界観なのかとも思ったが、中盤からにかけての誰が殺人鬼なのか?というサスペンスフルな展開は目が離せずに見事な演出。OPの空き家でジェニファーが丸めた紙を見つけて見上げる構図とアングルはお見事で、カプコンの『バイオハザード』での印象的な数々のアングルの先駆け的であり、まさにお手本にしたと思えるシーンだ。ゴブリンによる音楽は正直、独特過ぎで各シーンにおいて「寿司にカラシ」といったアンバランス感はあるものの、これも良くも悪くも「唯一無二」のアルジェントだと思えば流石かも?照明を浴びた姿、無数に集まったハエの大群に「愛してるわ、みんな。」と微笑む表情、真っ暗な湖面から顔だけ出したシーンに、炎をバックに湖から上がるその姿を収めた構図はまるで絵画の様に美しく神秘的で、ジェニファーは神々しい。ご主人に刃物は危険だと注意されたチンパンジーが、刃物でご主人の仇をとるラストシーンは皮肉でもあるが、伏線の見本の様にお見事である。このチンパンジー君(ちゃん)にはぜひ主"猿"賞を差し上げたい。ぼくのDVDボックス殿堂入り。 
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-22 21:58:48)
8.  プロメテウス 《ネタバレ》 
『創造』と『破壊』。リドリー・スコットが我々人類に『エイリアン』を通して伝えたかったもの。人類の祖先がなぜ、デビッドが語りかけた時に反応し、彼を『破壊』したのか?それは人類が自分たちと同じ過ちに気付かず、創造を繰り返していたからではないか?そして人類最大の過ちである『エイリアン』の創造。人類の起源を探り、『エイリアン』を図らずも創造してしまうという結果を生む本作のラストは衝撃極まるラストシーンである。そして人類のDNAを分けた生物だと知らずに命を賭して戦うリプリーを筆頭に、人類の生死をかけた壮絶な戦いに発展していく続編を考えると、この『プロメテウス』はまさに戦慄すべき、人類の「創造と破壊」のプレリュードなのである。
[ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-08-05 21:41:27)(良:1票)
9.  プレステージ(2006) 《ネタバレ》 
100%トリックのある純粋なマジック(ボーデン)と、トリックもなくマジックでもない100%科学の神秘(アンジャー)。ライバルだった2人、いつしか「あいつだけには負けたくない。」という気持ちがアンジャーを突き動かし、手段も選ばなくなる。ファロンを生き埋めにして得たボーデンの「秘密」を手にした時は、アンジャーはボーデンにほぼ負けていた。そして神をも恐れぬ「魔法の箱」でトリックもマジックも超越してしまったアンジャー。これには流石のボーデンも降参したのだが、アンジャー殺しで刑務所にいるボーデンにコールドロウ卿として会いにきたアンジャーはこの時、ボーデンに完璧に負けたのだ。ボーデンの「プレステージ」を見もしないで破り捨て立ち去ったアンジャーは既にマジシャンではなかったからだ。妻を死に追いやったかもしれない疑惑、トリックで敵わなかったライバルが今、目の前で死を待っている。アンジャーは「勝った」と悟っただろう。ボーデンの唯一の誤算はマジシャンとしてアンジャーの瞬間移動のトリックを諦め切れずに舞台下に降りた事。しかしその誤算でさえトリックにしてしまった。死の直前、魔法の呪文を唱え、己の死すら「プレステージ」に変えてしまったボーデンは、最期の瞬間まで正真正銘のマジシャンだった。アンジャーがした事と言えばせいぜい大金をはたいて「箱」を作らせただけ。それに対しボーデンは人生も、愛する人さえも犠牲にし、「秘密」を貫き通したのだ。そんな彼にアンジャーが勝てる筈がないのだ。ボーデンが得たかったもの。富?名声?観客の喝采?マジックの真髄?彼が犠牲にしてきたものを考えれば答えは自ずと見えてきそうである。2度3度と観て相槌を打つ緻密に作り上げられた構成と演出。アカデミー賞ノミネートも納得の 細部まで洗練された美術と映像美により、派手な演出に頼る事のない知的で繊細な作品に仕上がっています。これもまた、自分の中の完璧な作品の一つです。
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2012-06-23 17:25:10)
10.  ファニーゲーム U.S.A.
「不快極まる映画」そりゃそうでしょう。それが狙いなんでしょうから。「暴力をもって暴力を非難する」救われないこの家族に同情しろと?何を今更。他の類似作やホラー、サスペンス映画で今までどれだけの罪の無い人間が映画の中で殺されてきたか?麻薬、セックスに明け暮れるティーンが殺人鬼に殺されるシーンを見て同情するか?この映画の家族とどう違うのか?犯人である若者2人は他の映画の快楽殺人者と何が違うのか?何も違わないと思う。見ている我々を如何に不快にさせるか、その演出だけだろう。その点がこの映画は非常に優れている。それだけ。僕も含めて他の観客もきっと映画の中で人が余りにも残虐に殺されるのを安易に見過ぎて、見慣れていると思う。命の重さを気にしていないと思う。いや、イイんですよ、映画なんだから。映画だから楽しめばイイじゃないか。僕はそれで良いと思います。それが現実と虚構。虚構なんだからトコトン!不快に不愉快に。現実への警鐘よりも、この虚構はそのコンセプトを100%満たしている。「不快極まる映画」そう思われて100点満点でしょう、この映画は。なのでその道である「不快道」を極めているこの映画には10点以外付けようがないでしょう。「見て後悔した。」なんて言うのは人それぞれの感想ですからね。注・ナオミファンの方々は覚悟の上でご鑑賞下さいね。天国?or地獄?どっちだろうな?僕は五分五分でした。(笑) 
[DVD(字幕)] 10点(2012-06-03 18:58:42)(良:1票)
11.  フェイス/オフ 《ネタバレ》 
パッケージの2人の顔、そして2人のネームバリューは互角と言えるでしょう。しかし演技による存在感は圧倒的にニコラス・ケイジに軍配が上がると思いました。サングラスをかけ、ロングコートを風になびかせて登場したあの格好良さ!そして金メッキされた二丁の銃を背中のホルダーにしまうあのカット。くうぅ・・、たまらんです。固定キャラの好きな僕にはどっパマりでした。冒頭ものの数十分で「キャスター」というアクがぎゅうぅ、っと滲み出る様をあっという間に表現してみせた。テンション高めに歌いながら女の子のお尻を鷲掴みにして見せたあの天にも昇る表情といい 、女性捜査官を撃つ前の仕草から撃った後に見せたあのいやらしいにやけ面、トラボルタに後ろから羽交い締めにされ堰を切った様に笑い出した姿に、あぁ、この人ホントに演技上手いなぁ、としみじみ感じました。トラボルタも良いんですが、ニコケイのハイテンション振りには到底及ばないなぁ、という印象を受けました。どうにもキャスターの癖を強調し過ぎている感(不自然)が否めなかった。反面アーチャーを演じたニコケイは少し弱々し過ぎるかなぁとは思いましたが、説得力は抜群でグイグイ引き込まれた。特にドア越しに奥さんにデートの時の話をし、夫に化けたキャスターと夫婦として寝た事を聞かされた時のあのニコラス・ケイジの歯を食いしばるが、我慢出来ずに涙を流してしまったあの表情に、僕は心を打たれた。最高のパフォーマンスだったと思います。この監督さんは象徴的なカットを撮るのが上手くて中々印象には残りますが、反面くせが強くて受け入れられるか否か、分かれそうです。僕的にはニコケイが演じたキャスターを最後まで見たかったなぁという思いと、ラスト元に戻ったトラボルタのアーチャー振りの方がイイじゃないかという印象が強く残りました。
[DVD(字幕)] 6点(2012-05-25 17:34:35)(良:1票)
12.  フライトプラン 《ネタバレ》 
アラブ人に対する謝罪が無い事への批判が多くあるみたいですが、僕はそうは見えませんでした。ジョディ・フォスター扮するカイルは母としていなくなった娘ジュリアを必死に探す訳ですが、その際他の乗客に対する配慮は一切ありません。暴走と言って間違いの無い程の「母の愛」なんです。一方そのせいで多大な迷惑を被る他の乗客(他人)は娘がいなくなった母の気持ちなど知った事ではない、という態度。セラピストとの会話の途中で娘が描いたハートマークに気付き、現実に引き戻されたカイル(映画的にもこれで妄想では無く、娘が機内にいる事を示している)はこの後手錠をかけられ乗客からとても冷たく嫌らしい拍手で迎えられます。その時のカイルの何とも冷めた表情。そう、どうでもいいのだ。娘は間違い無くいるのだから。そして見つかった後、乗客からは自分達が信じなかった、非を認める様な台詞やシーンは一切ありません。これでいいと思いました。お互いに他人はどうでもいいのだ、という描き方をしているんだから。監督はそんな幼稚なシーンは意図して演出しなかったんでしょう。そんな中、唯一代表として謝罪したのが機長である。客は個人個人感情があるだろうけど、機長は全乗客の生命の安全を守る義務から、信じなかった事を謝罪したのは妥当だと思いました。そしてあのアラブ人。誰も信じなかった、冷たい仕打ちを受けたカイルが見せたあの微笑みとほんとに微かな会釈は、カイルにとっては最大限の反応であり、互いに理解しあえた、謝罪以上の「和解」だったと感じました。不穏な雰囲気を孕んだ暗く冷たい地下鉄のOPから母娘揃って光の中へ向かって行くラストシーンとの対比が素晴らしかったです。
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-23 20:59:48)(良:4票)
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