1. フェラーリ
《ネタバレ》 思っていたのとだいぶ違う内容でした。 スピードとレースに憑りつかれたカリスマが、世界最高のスポーツカーメーカーを作り上げるまでの知られざる熱き奮戦記、というようなものを期待していたのですがさにあらず、結婚生活が破綻したにもかかわらず人生をリセットできない優柔不断かつわがままなオジサンのグダグダな二重生活が話の中心で、レースは添え物。 話の中で最もカッコよかったのが、ラスト近くの、破綻しそうなエンツォに現金を渡して救う、劇中ではずっと悪役然として描かれていた妻ラウラだったというのではちょっとね。 劇中で2名のドライバーが亡くなるのですが、観客はこれらの死に全く感情を揺さぶられない作りになっています。特に終盤に大事故を起こすデ・ポルターゴなどは、劇中出ずっぱりの重要人物なのに、彼が亡くなるシーンも、映像はそれなりに派手ですが、彼が死んでしまって悲しいといった感情は残念ながらわいてきませんでした。この重大な事故については、他にも犠牲となった子供の家族の事故直前の描写が唐突に挟まれたりするのですが、かといって、その後それに寄り添うようなシーンや、遺族に迫られて苦悩するエンツォのシーンなどが一切なく、だからとってつけた感が強いです。人物を描いた映画なのに「過失がなかった」で終わって良いような出来事じゃないでしょう。 ドライバーたちだけに限らず、この映画のラウラを除く脇役たちの描写はペラッペラで、誰にも感情移入できません。本作の目的が、神格化されたエンツォの真の姿を暴くことだったとしても、物足りなさは否めません。もしそうなら企画自体がダメダメで、どう見ても映画としては失敗作だと思います。 アダム・ドライバーの演じる主人公のヘタレっぷりにどうも既視感があったのですが、しばらくして思い出しました。最後の決闘裁判でのヘタレ騎士やマウリツィオ・グッチとおんなじです。カイロ・レンも同じと言えば同じか。彼は、もうちょっとまともな役が与えられれば、スーパースターになりうる存在だと思うんですけどねえ。仕事選べばよいのに。でも「65」なんかに出ているようじゃ自業自得か・・・ [映画館(字幕)] 4点(2024-07-20 00:20:31) |
2. ブレット・トレイン
《ネタバレ》 アクション・コメディの大快(怪)作。 舞台は日本だけど、リアルさはかけらもなく、外人から見たCool Japanのイメージを使っているだけ。あとは任侠と。 到底つじつまが合っているとは言えないストーリーだが、そんなものは、観客の予想を超えるトンデモな展開の×2、×3の怒涛の攻撃で有無を言わさず押し流していく。まさに弾丸。 ブラピをはじめとする役者たちのハイテンション演技に大いに笑わせてもらい、そして、驚くべきことにいくつか非常にエモーショナルなシーンがあり、ちょっとジーンと来たりする。 グロい人体破壊描写が多いので、そこには批判が来るだろうけれど、でも、この映画、まったくすごいとしか言いようがない。 これと、トップガンマーヴェリックが同じ点かよ・・・我ながら、マジか、とは思う。 [映画館(字幕)] 9点(2022-09-03 00:38:03) |
3. ブラック・ウィドウ(2020)
《ネタバレ》 大して期待せずに見たんですが、うん、これはかなり面白いですよ。 ファミリードラマのシーンは、展開が甘すぎだ、とか、Mr.インクレディブルのパクリが多すぎだ、とかの批判はあるかもしれませんが、年頃の娘を持つ父の身として、予告編では最も魅力に乏しく見えたレッド・ガーディアンに、なんともろに感情移入できてしまいまして、非常に微笑ましく好ましいものでした。 アクションシーンは、アベンジャーズものらしく、ちょっとありえないようなシチュエーションが満載で、それこそGCを山のように使っているんでしょうが、でもこういうのこそ正しいCGの使い方だと思います。大生物が都会で大暴れするよりもよっぽど迫力があり、ハラハラさせてくれました。 昨今、ハリウッド女優の賞味期間がずいぶん短くなっていると思う(一時期売れっ子でも、歳を取ると途端に主演作が減る)のですが、スカーレットヨハンソンは、まだまだとてもきれいで、素敵なお姉さんのキャラクターを維持してました。もうアラフォーなのにすごいことです。・・・もしかすると、彼女のアップのシーンで一番CG使ってたりして。 [映画館(吹替)] 7点(2021-07-17 00:31:55) |
4. フォードvsフェラーリ
《ネタバレ》 十分面白い映画なんだけど、タイトルには偽りありかなあ。 無敵のフェラーリに対し、果敢に戦いを挑むフォードのレーシングチームの熱い物語!ってのを期待していたんですが、とにかくフォーカスはひたすらケン・マイルズ(と家族)にあたっており、映画冒頭で主役然として出てきたシェルビーの描写すら、中盤以降は足りないのでないかと感じるくらい。 いわんや、なかなか貫禄あって良さげだったフォード2世やエンツォの両社長の出番においておや。 チームのメカニックの人々や、ライバルレーサーの描写などももう少し織り込めればもっと面白くなったような気がします。 [映画館(字幕)] 6点(2020-01-13 17:20:57) |
5. ブラック・クランズマン
《ネタバレ》 なかなかスリリングなクライムサスペンスもので、結構楽しめました。 でも、見ている間中、次の2点がずっと気にかかってました。 1・これだけ人間のダークサイドを強調する内容の映画が、よくもまあレーティングがGであったもんだ。確かに暴力的なシーンや性的なシーンはないけれども、正直中学生以下の子供には勧められないな。 2・なんでまたこんな古い60ないし70年代を背景とした物語を今頃映画化したのか? 後者については、ラストの実際の映像と逆さの星条旗を見たところで納得はできましたが。というか、映画全体が、あのラストシーンにつなげるための長ーい前振りということね。 それにしても、やはりアダム・ドライバーはなかなか良い俳優ですね。カイロ・レン役がどうしてあんなに魅力がないのかが不思議なくらいです。 [映画館(字幕)] 6点(2019-03-28 23:48:20) |
6. ファースト・マン
《ネタバレ》 アポロ計画という宇宙開発史の真打の映画化ということで、期待を膨らませて初日に駆けつけてしまいましたが、これがびっくりするくらい退屈で、高揚感にかける映画でした。 やたらと人物のアップを多用し、ブレまくるカメラワークも、当方には苦痛でした。 人命がかかっているにもかかわらず、ただの早いもの勝ちの意地の張り合いになっていた米ソの宇宙開発競争の是非なんてテーマはとっくに「ライト・スタッフ」で描かれていて、そこでは最終的に宇宙飛行士たちの行動原理が、男の夢とロマンとプライドに昇華されます。(したがって、奥様方は添え物のような扱い。「ライト・スタッフ」はたぶん女性には受けが悪いと思う)一方、本作では、多くの犠牲を払ったがゆえに単に引くに引けなくなっただけで、しかも娘を失っている主人公は既に生への執着をなくしていたがために、どんな危険な任務でも遂行できた、みたいな描写になってます。 帰還してから、世論が一転して偉業をたたえ、月面着陸が人類史に及ぼす影響など考えだすのと逆に、ニール本人はひたすら個人的なことにしか関心が向かず、ようやく娘の件から立ち直りはしたようではあるが、自分の達成したことの意義を全く認識していないようでした。(じゃあ、最初のジェミニ計画の面接での偉そうなセリフはなんだったの?) ニール・アームストロングって、ほんとにこんな人だったのでしょうか?もしそうなら幻滅だし、そうでないなら名誉棄損レベルと思う。いずれにせよ、映画にするような題材ではないな。 [映画館(字幕)] 2点(2019-02-09 00:48:32) |
7. ブレードランナー 2049
《ネタバレ》 まあ、前作だって美術とか雰囲気が評価されてカルトムービーにこそなってはいるが、全体的には見せ場の少ないモサッとした作品でした。今作もそのあたりは見事に同じ雰囲気にしてますので、やっぱりモサッとした映画になってます。 レプリカントと人間(当方は、断固としてデッカードは人間であると主張します)の子供が生まれているってのは、設定としてはやりすぎと思いました。ストーリーにも無理があったと思います。デッカードの娘の記憶を移植したレプリカントKが、たまたまそれに関する捜査を担当するってのは不自然だし、レプリカントを繁殖させたいというのが悪役側の行動原理であれば、その具体的方法論は異なるであろうけども、大局的にみればレプリカントレジスタンスの人たちの目的と合致しているとしか思えないし。つまり、娘の存在を隠し通さなければならない理由を持っているのはデッカードだけのはず。当方、何か勘違いしてますか? 原作ファンとしては、デッカードが飼っていた犬は、電気犬であってほしかったし、それを示すようなシーンがほしかった。途中で出てくるのがミツバチでなく、電気ヒキガエルであればなお良かったのですが。 力の入った作品であるのはよーくわかるのですが、これではヒットが難しいのも納得。 [映画館(字幕)] 5点(2017-10-28 19:31:41)(良:1票) |
8. ファインディング・ドリー
《ネタバレ》 楽しい楽しい映画でした。名脇役ハンクの登場のおかげで、今作では魚たちが水中だけでなく、なんと人間の世界でも大暴れ!What a wonderful worldやUnforgettableの選曲のセンスにも大笑い。もちろんほろりとする場面もしっかりあります。 近所では吹き替えしか上映してないので、それで鑑賞しましたが、突然の八代亜紀の登場には「???」でしたが、なるほど原語ではシガーニー・ウィーバーですか。日本人でこれにあたる人って、なかなかいないですわな。 しかし公開からまだ間もない今、なんといってもここで言っておきたいのは、絶対にエンドロールの終わりまで席を立たないこと!です。このシーンでプラス1点。 [映画館(吹替)] 8点(2016-07-21 00:46:53) |
9. ブリッジ・オブ・スパイ
《ネタバレ》 序盤は法廷もののような雰囲気で比較的わかりやすいのですが、スパイ交換のあたりから、登場人物がひたすら相手の腹の探り合いをするセリフの応酬を始めるので、字幕鑑賞では正直、物語を正確に追えたのかどうかも怪しいくらいでした。このあたりは、やっぱりコーエンの脚本の面白さというところなんでしょうかね。英語がもっと堪能なら、この映画ももっと楽しめそうです。それでも、Would it help?(でしたっけ?)は良かったな。 それにしても、東西冷戦もだいぶ昔のことになって記憶が薄れがちですが、この映画が描く頃の東ドイツって、あんなに怖い国だったんでしょうかね?既に40台の当方がそう思うのだから、この映画の対象年齢ってかなり高くないですか? [映画館(字幕)] 7点(2016-02-02 23:09:15) |
10. フューリー(2014)
《ネタバレ》 既にプライベート・ライアン、バンド・オブ・ブラザーズを知っている観客としては、わざわざこの映画を作った意味がわかりませんでした。この映画は、その2作の部分集合でしかありません。主人公の性格も、戦争犯罪そのものの殺人を新兵に強要するかと思いきや、一転してヒューマニズムを見せるなど、ぶれている気がします。ドイツ人女性2人が出てくるシーンが長すぎてだれるのも良くなく、しかもクルーの仲があまりよくないような描写で終わっているのは失敗でしょう。ひたすらアメリカ人からの視点のみなのも気になります。しかも神に関する言葉をやたらと持ち出して行為を正当化しようとするのは、やっぱり彼らがWW2を正義の戦争と考えているからなんですかね?戦車同士の戦闘など、臨場感はありました。あと、シャイア・ラブーフはもしかするとこれ以降名脇役の地位を確立するかも、と感じます。 [映画館(字幕)] 5点(2014-11-30 21:46:35) |
11. 47RONIN
《ネタバレ》 あっと驚く日本風のファンタジー。このチャレンジングな企画を立ち上げ、実際に映画を作ってしまったということに最大限の評価をしたいと思います。まあ、ロードオブザリングに代表される正統派ファンタジーも、ベースの雰囲気は中世ヨーロッパで、それにエルフだの魔法使いを登場させているだけだろうし、それを中世日本に翻訳するのもアリだろう、と製作の誰かが考えたのもわからないわけではないですが、しかしこの映画、日本人以外に誰が見るって言うんだろう・・・ [映画館(字幕)] 5点(2013-12-08 09:52:26) |
12. プライベート・ライアン
初めて観たときは、一人の二等兵を大勢で救出するというストーリーに無理あるいは偽善に近いものを感じて、あまり好きになれませんでした。ところが、のちに繰り返し何度か見ているうちに、ライアンは要するに戦争で生き残ったすべての無名兵士の象徴であって、冒頭とラストで出てくるライアンの子どもら家族は、いわば映画を観ている我々そのものだと感じるようになりました。(製作者がそう意図したかどうかは定かではないですが)どこの国の軍隊でも居たであろう、ミラー中尉のような人物のおかげで、現在の我々が生きていることができるのだと。 そう考えるに至って、私の中でのこの映画の評価は一変し満点になりました。途中、ミラーが部下の死に責任を感じて、思わず泣いてしまうシーンは、大好きなシーンの一つになりました。 [映画館(字幕)] 10点(2012-06-12 06:27:30) |