1. ベイビー・ブローカー(2022)
全部見ているわけでありませんが、是枝監督というのは本当に疑似家族的な世界を手を変え品を変え描くのが好きなんですね。人は赤の他人に対し、どこまで思いやりや愛情を持てるか、親身になれるかというあたりが永遠のテーマなんでしょうか。 この作品もそこそこ堪能させてもらいました。が、ある意味で誘拐と人身売買というかなりダークサイドなお話でありながら、ソン・ガンホが主役である以上、けっして悪人であるはずがないという先入観が大きくて、良く言えば安心して見ていられたし、悪く言えばサスペンス的な興味は削がれたという感じ。 多少暴力的な要素も含まれていたので、そのあたりは韓国映画へのオマージュというか、韓国市場に合わせたのかな。それにしても、けっこう話題になった作品でありながら、ここでのレビューの少なさが意外。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-12-07 23:37:26) |
2. ベルファスト
《ネタバレ》 なかなか思い入れたっぷりな感じでいいのですが、どうも舞台となる地域の空気感が掴みにくいというか。 それまで平和だった住宅地で冒頭のように激しい暴動があれば、まして宗教対立のような面倒くさい問題であれば、地域は一瞬にして緊張感に包まれるはず。たしかにバリケードを築いたり、銃を構えたりするシーンもありました。しかし別のシーンでは、何事もなかったように平和に暮らし、学校に通い、父親の帰りを待っている。同じ地域の話とは思えないのですが…。 まして最終盤になって、憧れの子がカソリックだったと明かされます。どうして今まで無事だった? なぜ本人は怖がる素振りもなかった? 「隠れカソリック」だったのか? なんだかキツネにつままれたような、妙な違和感が残りました。 ただし、ジュデイ・デンチの存在感はさすが。結局、この方の印象が一番強かったような。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-08-25 02:42:29) |
3. ベティ・サイズモア
シナリオがけっこう練られている感じ。シンデレラストーリーにもほどがあるお話ですが、いろいろ絡み合っていて楽しめました。個人的な見どころは中盤以降、ヒロインとテレビ役者のズレているが妙に噛み合う会話あたり。いかにもコメディな感じです。 それにしても、こういう紙一重的な役をごく自然に演じられるのはレネー・ゼルウィガーぐらいでしょう。一方、コワモテな殺し屋役のモーガン・フリーマンというのは、いささか無理があるような。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-08-23 01:58:39) |
4. ペリカン文書
国家の中枢が絡む陰謀を一学生が暴いてしまうという、まずその設定がものすごく不自然。ハッキングでもして最新の機密情報を盗み出したならまだしも、図書館で過去の文献漁りの結果ですからねぇ。しかもその学生を大統領補佐官だのFBIだのが大挙して抹殺にかかるというのが、なんとも安っぽい。真偽はともかく、この手の「怪文書」は政敵やアカデミズムやジャーナリズムやマニアによって日々大量生産されているわけで、いちいち取り合うほど政権も暇ではなかろうと。 それに、前半の暗殺劇はいずれも鮮やかだったのに、後半に主人公を追い出してからは急にドタバタ。こんなことを言い出したらキリがありませんが、ずいぶんご都合主義なお安い作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-05-10 02:08:07) |
5. ベイビー・ドライバー
《ネタバレ》 脇役はみんな魅力的。ストーリーも単純でそこそこ緊張感があって面白い。ところが主人公だけまるで魅力なし。ジトッと暗くて辛気臭くて華がない。辛い過去を負っているという設定はわかるが、見ているこちらまで暗くなってきます。最初のうちは音楽と映像がシンクロしていて軽いタッチだったのに、実はその音楽を聞き続けることにも暗い意味があって「お、おう」という感じ。 それにジェイミー・フォックスは案外早くあっさり退場するし、ケビン・スベイシーは最後の最後にいい人になっちゃうし。文科省推薦映画のような終わり方もあまり好きではない。よかれ悪しかれ予想外の作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-01-27 02:54:49)(良:2票) |
6. 弁護人(2013)
《ネタバレ》 さすが、人情の機微を心得た浪花節なストーリー展開。前半の緩い雰囲気からだんだん緊張感を高め、終盤に恐怖→高揚→絶望→希望とジェットコースターにようにたたみ掛けるあたり、もう見事としか言いようがありません。ここでのレビューの少なさが意外なほど。 ただし、「史実に基づいた話」とのこと。それにしても全斗煥政権の描き方がひどすぎませんかね。やたら暴力的で理不尽で卑劣で、軍も警察も司法もすべてグルだったとすれば、何一ついいところはありません。本当にこうだったと言われれば、何も知らない私は「ああそうですか」としか言えませんが、もしかすると主人公を極端に輝かせるために、当時の政権を史実以上にデフォルメしたり捏造したりして悪く描いているんじゃないかなと。 もちろんエンタメなのでそういう部分はあって当然ですが、かの国の場合は歴史認識においてもそういう傾向があるので、一抹の恐ろしさのようなものを感じます。レビューが少ない(≒見た人が少ない?)のも、それを薄々感じ取ったからかなと。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-09-02 02:27:57)(良:1票) |
7. ヘイル、シーザー!
いろんな予備知識を求められる作品。すべて解釈できたわけではありませんが、全編に散りばめられた強烈な皮肉がいい感じ。 一般的に英雄視されがちな〝ハリウッド・テン〟を俗的に描いていたり、歴史上の大スターであるシーザーを大作映画の主役として演じるほどの大スターに知性のカケラもなかったり、牧師とラビがイエスの配役をめぐって言い争ったり、女優がやたら尻軽だったり、とにかく俗物だらけなところがミソ。しかしいずれも愛すべきキャラなのか面白い。ジョシュ・ブローリンの最後の決断も当然という気がします。 なお個人的にもっとも笑ったのは、「エンゲルス!」でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-06-27 01:36:53) |
8. ペイルライダー
全登場人物の中で自分だけがめっぽう強くて、自分だけがひたすらモテで、自分だけがやたらとカッコいい役を自分で監督するというのは、どういう心境なんでしょうか。少なくとも私には無理です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-12 02:07:30)(笑:1票) |
9. ベンジャミン・バトン/数奇な人生
荒唐無稽な設定が前提なので、及び腰で鑑賞。どこかで荒唐無稽さを忘れて感情移入できるような話になるかなと期待していたのですが、最後までなりませんでした。数奇どころか、前提がこうなら(あり得ないけど)結果はこうなるだろうなあという退屈で平々凡々な人生です。特に見どころはありませんが、強いて言えば主役2人の特殊メイクぐらいでしょうか。あるいは特殊メイクにカネをかけすぎて、脚本代をケチったのかもしれません。 [インターネット(字幕)] 3点(2020-02-13 01:15:46) |
10. ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
これは傑作。もし主役がトム・ハンクス1人なら、勧善懲悪風になってつまらなかったかもしれません。しかし、そこに上場を控えた頼りない経営者としてメリル・ストリープが加わったおかげで、グッと立体的で重厚になった気がします。けっしてハラハラドキドキの展開ではないし、陰謀ドロドロの世界を描いているわけでもありませんが、それぞれ職務を真摯に全うしようとする姿が実に爽やか。仕事とはかくあるべし、と教えられるようでした。 さて、かようなワシントン・ポスト紙もジェフ・ベゾス個人に買われましたが、日本の大手各紙も軒並み部数減に苦しんでいる様子。そういえば最近はスクープ記事というものを滅多に見ないし、それどころかフェイク・ニュースを垂れ流しながら反省も検証もしないケースもあるようで。部数減も、さもありなんという感じです。 [インターネット(字幕)] 9点(2019-01-25 02:09:53) |
11. ヘッドライト
《ネタバレ》 「重要ではない人」という身もフタもない原題の本作。たしかにスーパーマンは登場しないし、奇跡も起こりません。しかし、その当たり前な感じがいい。楽しかったのはほんの一瞬で、あとはずっと苦しいのみ。仕事は辛いし、貧しいし、天気は悪いし、画面は終始どんよりしています。苛烈をきわめる長距離トラックの運転手という設定がまた、非常に今日的でリアルです。 で、最悪の結末を迎えるわけですが、ジャン・ギャバンが元のサヤに収まってサバサバしているところが、救いでもあり、薄情な印象も残します。結局、彼にとってヒロインが夢うつつの中で思い出す程度の「no importance」な存在でしかなかったとしたら、それはそれで哀しいですね。 ちなみに本作を邦画にリメイクした「道」という作品を大昔に見ました。仲代達矢と藤谷美和子の主演だったのですが、本サイトにも載っていないくらいなので、大コケしたのでしょう。たしかに何も覚えていません。しかしテーマ音楽だけすごく印象に残っています。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-01-21 03:02:24) |
12. ペイチェック 消された記憶
ジョン・ウーが得意とする爆破シーン等でのスローモーションというのは、要するに演歌で言うところのサビ部分のコブシやタメみたいなものかなぁと、なんとなく思いました。それ以外の印象は、何もありません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-02-20 23:57:21) |
13. ペントハウス
良くも悪くも安定のコメディ映画という感じ。宙吊りのフェラーリは斬新。なんとなく「ミッション・インポッシブル」のトム・クルーズを思い出しました。 しかし他の方も指摘していますが、エディ・マーフィーの存在感のなさはすごい。箸休め的な出演だったんでしょうか。それとも役者人生の下降線を辿っているのか。別にファンというわけではありませんが、一抹の寂しさがあります。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-10-05 03:30:53) |
14. ペーパー・ムーン
概して子どもが活躍する映画というと、やたらと超人的だったり、マセガキだったり、そして最後は無理やり感動系に持ち込もうとするのがパターンです。しかし、さすがに〝老舗〟の本作は違いました。全編にわたって冷静で仏頂面、そしてカネにこだわっている(またはカネを言い訳にしている)のがリアルです。 それに何より、2人の危なっかしさがいい。特にラスト、どう考えても持続可能性が低く、さらに大きな落とし穴が待っていそうなのに、その道を選んでしまう2人の悲哀と滑稽さがたまりません。ハッピーエンドを装いながら、見る者に一抹の不安を与えて終わるという、なかなか奇特な作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-04-23 13:57:56) |
15. 變臉~この櫂に手をそえて~
これほどの傑作を、私は他に知りません。結末は最初から予想できたけど、どんどん引き込まれて、最後は涙でボロボロ。恥ずかしくてしばらく映画館を出ることができませんでした。NHKのBSでも何度か放送してたけど、そのたびに泣きました。 10点(2004-01-07 01:40:35) |