2. ボスニア
怪作(怪物のような作品の意)「アンダーグラウンド」のラストの字幕<この話には続きがある>という不穏なメッセージ。バトンを受け取ったボスニアの詩人でもある監督が描いたボスニアの内戦は、その不穏が筆舌に尽くしがたい程の絶望に変換されたものだった。いや、戦争の恐ろしさや狂気を描いた作品は今ではどこにでもある。そんなものまでも消費物としてポップコーンを飲み込むようにしてやがて排出される運命にある現状で、「ボスニアを東京まで拡大せよ」というメッセージを受け止める覚悟はなかった。「いつまでも平和ボケしていられると思ったら大間違いだ」と釘を刺されたような気分だった。反対に「ボスニア」を直接に体験する登場人物たちは確実に生きていてそして何かを勝ち取る為に死んでいく。生き長らえたとして残るものは・・・・全編通じて流れるジプシー音楽の調べは彼らの青春であり諦念でもあった。それらを包み込む「民族と友愛のトンネル」の暗闇と円環構造になっている物語がこれから続くであろう世界規模の内戦を予見している。アメリカ同時多発テロ後しばらくして見ただけに終了後はどうしようもない気分になった。とんでもないものを見てしまったという感情と、ユーゴ問題すら気がつけば忘却のかなたにあったということ。そして何よりも日本でこの映画を見たということにショックを受けた。にもかかわらず、この映画が自分にとって愛すべき映画になっている。それはこの映画にこもった魂があまりにも切実だったから。 [映画館(字幕)] 9点(2004-09-05 01:50:36) |