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1.  マイレージ、マイライフ 《ネタバレ》 
オープニングの空のワイプ映像、パッキングの模様やスーツケースを短いカット割りで繋いで行く映像効果に余り魅力を感じられず、同様に魅力の乏しい登場人物が織り成す話にも入り込め切れなかった印象の作品でした。 大学で心理学を専攻し首席で卒業したというナタリーも彼女の会話からそれを感じさせてくれるようなものはないですし、主役のビンガムも独身を謳歌しているやり手のビジネスマンで交渉相手の幸福度と彼への評価の高さが反比例する仕事の内容などで観客の感傷を誘う方法など少し前時代的な古さとありがちとも言える人物設定となっていたと思います。  一般的には副産物でしか無いマイレージをステータスと考え、超一般的とも言える家族や結婚というものを否定的に捉えているビンガムの生き方は価値観は人それぞれなので全然否定はしません。 近親者の結婚やアレックスとの関係の顛末など彼にしてみれば小さなイベントの1つや2つではないかと考えてしまいますし、そうでなければそれ迄培ってきた自由を愛し感情を極力排除してきた彼の生き方という設定に疑問が生じてしまいます。 逆にそれらの事柄が彼のストイックとも言える生き方を変える程の描かれ方をしていたようにも感じられませんでした。 彼の感情や考え方の変化の見せ方や動機付けが弱かったように思います。  仕事と家族の絆との葛藤といったようなハリウッド的なテーマやそれなりの域を出ない映像表現、結末を描かない脚本等、まさにありがちな作品という印象でした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-10-14 21:22:49)
2.  待ち伏せ 《ネタバレ》 
立ち込める霧の為に鈍い黄緑色になった暗い山道を、黒く潰れたシルエットの浪人がこちらに向かって歩いてくるオープニングカットはかなり良い感じですし、タイトルが出るまでの鎬刀三郎と頭巾を被った「からす」との密談は、これから2時間余は飽きさせないであろうと予感させてくれます。  脚本も説明不足の為に見ている側が想像しなければならない箇所も有りますが総じて良く出来ています。 そして何と言っても4大スター共演というのが本作最大の売りだと思いますが、同時に最悪の結果を齎しています。 主人公の鎬は勿論ですが玄哲は鎬の好敵手?(微妙な関係です)としてそれなりに描かれているのは良いと思いますが、伊吹と弥太郎の配役に主役級の2人を当てた事で物語の余計な比重が2人にいってしまい話全体が散漫なものになってしまっています。 本来脇役であるこの2人が中途半端に目立っている為に彼等自身が活かし切れていないのは勿論、鎬の印象も薄くなってしまっています。 その好敵手である玄哲も言わずもがなです。  本来ならば鎬に軸足をどっしりと置いて話を展開させていけば、かなり面白い作品になったと思います。 その場合は本作以上に三十郎シリーズの亜流と言われる事にはなりますが…。 作中の三船さんの戦っている相手は目の前の敵ではなく、過去の三十郎での自分の演技であるように見えてしまい、決して演技の幅が広いとは言えない彼を見ていると気の毒にも映ってしまいます。  4大スター共演という要素を本作の必須条項と考えると、この話にした事でもはや成功は無かったのではないでしょうか。 また演技の面では上手いと言える役者さんは一人も居らずメインの4人のうち唯一、勝さんが存在感を出していましたが自分一人の中で完結してしまっている印象の演技でしたし、伊太八を演じた土屋さんに関しては残念の一言です。  そして冒頭の一部のシーンを除くと演出が作品全体を通して酷い事になっていたと思います。 メインの舞台をみの屋という狭い空間にして登場人物の出入りと時間軸に幅を持たせた脚本にしているのですから、話の繋ぎ方や細かい場面の見せ方等に工夫を持たせてテンポ良く見せて貰いたかったです。 殺陣のシーンでも何故此処で歌舞伎の舞台を意識した様な演出にしたのかという誇張されたものになっていますし、それとは趣きを変えたラストのからす一味との殺陣も取ってつけた様で三船敏郎特典殺陣シーンみたいになってしまっている印象です。  こういう脚本を掘り起こして中堅の役者さんを沢山使って、大胆に脚色してでも良いですから今の時代に丁寧にリメイクして欲しいと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2015-06-24 20:43:05)
3.  マイ・バック・ページ 《ネタバレ》 
話自体はまあまあ面白いのですが、作品の核となるテーマが掴みづらいので長尺で抑揚の余り無い本作は、話が展開していっても客観的にしか見られないので少々ダレ気味になってしまう箇所も有ります。  作品を俯瞰的に見ている観客には梅山も前園も『本物』でない事は簡単に看破できます。 目的は自己顕示で、思想は空っぽで、行動はノリです。 過激な思想家というより打算的な夢想家という感じに描かれています。 その時代を代表する様な連合赤軍の実録本等を読み彼等の内情を理解すると、革マル派等とうそぶいていた左翼を平均化した人間が、梅山という中身の無い無駄に言論武装したキャラクターの様に感じます。 東都出版の先輩記者達が梅山を『偽物』と見抜くのに対して、CCRの曲を一緒に歌う事で共通のアイデンティティを見出し、その程度で沢田が梅山にシンパシーを感じてしまう表現等は大人と子供の間にある壁や、沢田の幼さを上手く描いていると思います。 しかし、沢田も徐々に梅山の人間性に疑問を抱く様になり「君は誰なんだ」と問い詰めます。 結局、梅山にとって沢田は都合の良い道具でしか無く、騙され、利用され、裏切られ、それが原因で沢田の青春の1ページであったマスコミでの仕事も辞める羽目になれば、沢田の悔しさは計り知れないものだったと思います。  月日が流れて沢田は居酒屋のカウンターを挟んで偶然タモツと再開し、彼と過ごした日々を思い出しながら語り合い、そして気付いたのではないでしょうか。 潜入取材という利己的な目的で自分の素性を偽りタモツに近づき彼を利用して、罪悪感を感じつつも記事を書いた事を。 ウサギを真剣に売っているタモツの横で彼のしている事とその状況を笑いながら傍観していた事や、ウサギを死なせてしまった事をお金で解決しようとした事を。 結果こそ違うが自分がタモツに対してとっていた行動は、マスコミという世界と真剣に向き合っていた青春の1ページの中で、梅山という身勝手な人間が青臭い自分に対してとった侮辱にも値する行動と同じだったのではないか、という事を。 そして今までその事に気付かなかった自分の浅はかさを。 勿論そんな事を当時も今も知らないタモツが、キリストにあげたスーツを本当は沢田にあげようと思っていたと言われれば彼が泣いてしまうのは当然だと思います。 大人の男が泣く事の伏線をもう少しぼかして気付くか気付かないか、このシーンを見て思い出す程度に上手く張って貰えれば私も一緒に泣く事が出来たであろうし、泣きたかったので残念です。 重要なシーンへの伏線を明確にさせ過ぎると逆に冷めてしまいます。  私自身も今まで気付かぬままに、『青春』や『若さ』という未熟な思い込みの特権で、『我武者羅だったから』とか『周りが見えていなかったから』等の言い訳にもならない様な理由で、他人の世界を踏み荒らしたり、その人自身を傷つけたりして来たのではないかと、鋭く問い質される様なラストのシークエンスは泣き崩れる主人公に自分を重ねずにはいられませんでしたし、作品的にも瞬間的に引き締まったものにして切ない余韻を残しつつ上手に纏め上げられていると思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-06-12 19:06:38)
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