1. ミラクル・ニール!
《ネタバレ》 全編にわたって平和な空気が流れています。まあどう転んでも笑って済ませておしまいという感じ。それはそれで楽しめました。 面白かったのは終盤のワンシーン。急に世界平和に目覚め、格差解消、地球温暖化阻止、戦争撲滅に向けて「神の手」を使います。これで世の中が平和になったかといえば、まったく逆。「神の手」をすり抜けるようにかえって問題が噴出し、事態はより悪化するわけです。社会の諸問題は一筋縄で解決できるほど単純ではないよと。たしかにそのとおりなのでしょう。このシーンだけ、少し空気がピリッとしていた気がします。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-03-14 23:40:30) |
2. 宮澤賢治 -その愛-
《ネタバレ》 断片をツギハギするだけで、どうして面白い映画になると思ったんだろう? 学校で暴れ、鉱石に興味を持ち、宗教にハマり、最愛の妹が死に、小説を書き、芝居に目覚め、チェロを覚え、なぜか寄ってくる美女を遠ざけ、唐突に伊豆を往来し、いつの間にか肥料の会社の経営に責任を持ち、そして若くして結核で死ぬ。これ全部断片でしか描かれないので、「結局こいつは何者?」「田舎のボンボンが役立たずのまま死にました」という印象しか残らない。仲代達矢とか、八千草薫とか、ものすごくもったいない感じ。それに前田吟とは何だったのか。 おそらく生涯の出来事を丁寧に追っているのでしょうが、もう少し抑揚とか、伏線とか、見る側の興味をつないでほしかった。単に宮沢賢治について知りたいなら、wikiを読んだほうがよっぽど手っ取り早い。あるいは短編の1つでも読んだほうが、よほど人となりがわかります。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2023-10-05 23:36:27) |
3. MINAMATA ミナマタ
いろいろ脚色や誇張もあるでしょうが、けっこう真摯に作られていたように思います。いつもの超人ではない凡人のジョニー・デップが魅力的。またいつもの剣の達人ではなく、流暢な熊本弁を話す地元民としての真田広之も貫禄があります。 ただちょっと気になるのは、今さらこの事件を取り上げようと思った制作意図です。ラストのタイトルバックなんかを見ると「現代への警鐘」みたいなメッセージを込めたかったようですが、それは違うんじゃないかと。少なくとも先進国において、大企業が環境を無視して利益を追求することはあり得ない。仮に悪徳な経営者が現れたとしても、株主や消費者や法律がそれを許さないでしょう。実際、今日の日本で、大きな公害問題は起きていません。また先進各国を中心とした環境意識の高まりは周知のとおり。むしろ行き過ぎなほどです。 そのきっかけの1つになったのが、この事件だったんじゃないかなと。なんでもかんでも批判するのではなく、人類は当時の反省を踏まえてとりあえず進歩したと肯定的に捉えたほうが、将来に向けて建設的かなと。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-09-10 00:15:53) |
4. ミステリー・トレイン
特に何が起きるというわけではないけれど、ついつい最後まで見続けてしまいます。で、特にストーリーとして印象に残っているわけではないけれど、断片的に反芻してみたくなります。結局、もっとも思い出すのは受付の2人だったり、ボロボロの部屋だったり。この感覚、要するに旅行から帰ってきたときに近い気がします。少し時代を遡って、メンフィスの安ホテルで一泊してきたような感じ。その意味でお得感があります。 スティーブ・ブシェミが若いです。昨今の妖気は、まだ抑え気味のようで。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-04-27 23:38:57) |
5. MIFUNE:THE LAST SAMURAI
あのスピルバーグやスコセッシが日本の一役者について語るなんて、おそらく三船敏郎以外では考えられません。たしかに、画面に登場するだけで空気がピンと張り詰めるというか、重みが増すというか。やっぱり不世出の役者だったんだなと再確認できます。 ただ大真面目なドキュメンタリーで、特に目新しい情報もなし。NHKとかがふつうに作りそうな内容でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-12-04 01:41:17) |
6. ミッドナイト・ラン
《ネタバレ》 超久しぶりに再見。その昔見たときはちょうど「アンタッチャブル」の直後で、あの暗黒街のドンと本作の小市民的な役どころのギャップに心底驚いたものです。 で、本作はとにかく全編にわたって爽やか。なぜなら、主役はあくまでもカネだから。登場人物の多くは、ひとえにカネ儲けのためだけに命懸けで追いかけっこや騙し合いを繰り広げているわけで、そこには恨みとか嫉妬とか、あるいは愛情とか友情とか面倒くさいものはほぼ存在しません。その割り切り方が心地よさの源泉ではないかと。 極めつけはラストの「1000ドル札」。苦労の末に念願の〝大金〟を得たわけですが、タクシーどころか、おそらくどこでも使えないでしょう。寂寥感のあるいいシーンでしたが、なんとも皮肉が効いています。やはり最後に存在感を示したのは主役でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-11-22 02:58:52) |
7. 密偵
《ネタバレ》 舞台設定上、日本が悪者に描かれるのは仕方のないところ。ただしそのへんは案外薄味で、基本的には朝鮮人どうしの追いかけっこと騙し合いの様相。特に列車内のシーンなど、けっこうハラハラドキドキを楽しめます。 しかし結局、主人公たちがやったことは爆弾テロに過ぎません。何の罪もない人を含めて大量の日本人が犠牲になっただけ。昨今のIS等によるテロと同様、社会に恐怖を与えることはできたとしても、それによって体制は1ミリも変わりません。むしろ変わったとしたら世も末です。義烈団の面々をやたら悲劇のヒーロー・ヒロインのように描いていましたが、その姿を見てかの国の人たちが溜飲を下げるとしたら、それはそれで恐ろしいかなと。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-10-20 01:25:35) |
8. ミケランジェロの暗号
《ネタバレ》 中盤以降はそれなりによくできたサスペンスだと思います。しかし序盤、どうにも腑に落ちないのが心変わりの経緯。小さいころから兄弟のように育てられ、一緒に留置場に入るほど親密だったのに、なぜ突然その無二の友人をナチスに売ろうと考えるようになったのか。ヒトラーの思想に心酔したとか、軍服がカッコ良かったとか、もともとコンプレックスを抱いていたとか、薄く理由は述べられていた気がしますが、薄すぎませんかね。ここが最後まで尾を引くキモだと思うのですが。 私はてっきり、何らかの意図があってSSに入ったのかと思っていました。例えばSSの情報を入手して友人とその家族を逃がすためとか。そうでなければ序盤の親密なシーンと辻褄が合わないんじゃないかと。どこかでネタバラシが始まるだろうと。しかしそれは完全な勘違いだったようで。「戦争が友情を引き裂いた」といえばそれなりの体裁は整いますが、おかげで最後のシーンまでモヤモヤが残ったままでした。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-08-29 23:05:57) |
9. 見知らぬ乗客
《ネタバレ》 サイコパス氏の不気味な活躍ぶりで、最後まで堪能させてもらいました。 しかしシナリオ的にかなり無理があるような…。結局、サイコパス氏は何がしたかったんでしょうか。少なくとも交換殺人ではなさそう。背景的に嫉妬とか怨恨とか政治がらみとかもなさそう。だとすれば単に主人公への嫌がらせ? 暇つぶし? その意味不明なあたりが、サイコパス氏のサイコパスたるゆえんかもしれませんが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-24 01:47:01) |
10. 三島由紀夫VS東大全共闘 50年の真実
ガチンコ勝負を期待して企画されたイベントが、さして盛り上がることなく終わりましたという、ただそれだけの話。討論の中身に、まったく価値はありません。意気がった学生が空虚な観念論を振りかざし、三島に適当にあしらわれるだけです。だいたい親から仕送りをもらい、国立大学なら国税によって支援されている学生に「革命」だの「闘争」だのと息巻かれても、「まあがんばってね」としか言えないでしょう。 ただし、現代の識者へのインタビューはいずれも含蓄がありました。人選が良かったのか、聞き方が良かったのか、不毛な討論を埋め合わせるかのように、絶妙に挿入されていたように思います。「真実」というほど大げさなものではありませんでしたが。 70年前後の学生運動というのは、要するに若いエネルギーを発散させるための「お祭り」だったのかなと。バブル全盛期の若者が「ジュリアナだ」「マハラジャだ」と大騒ぎしていたのと同じ感覚で、「国会議事堂だ」「安田講堂だ」と大騒ぎしていただけでしょう。〝敗北〟の後、多くは何事もなかったかのようにご立派な「企業戦士」もしくは「国家公務員」に転身されたことが何よりの証拠です。そして今では、負担額をはるかに上回る年金を受給して悠々自適の生活を送っているわけで。「革命」に失敗して本当に良かったね! [インターネット(邦画)] 6点(2021-06-15 01:48:33) |
11. ミネソタ大強盗団
牧歌的でありながら殺伐とした雰囲気もあって、うまく調和しているというより殺し合っている感じ。だいたいジェシー・ジェームズとかコール・ヤンガーとかの予備知識がないので、今ひとつ面白みがわかりません。どのあたりが「義賊」なのかとか、なぜ住民から称賛されているのかとか。ましてナントカという追手に関しては、優秀なのか無能なのかの判別もつきません。結果、ものすごく時間を損した気分になります。ロバート・デュバルも「ライトスタッフ」も大好きなんですけどね。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2020-07-31 23:09:35) |
12. ミッドナイト・イン・パリ
大人の童話という感じ。別に大人が鬼退治に行ったり、お姫様に会ったりしたらダメという法はないので、これはこれで面白いかなと。 しかし個人的には、リアルパートの知識をひけらかす米国人教授がツボ。私の周囲にヘミングウェイやダリやピカソはいませんが、こういう輩はけっこういます。しかし浅学ゆえに反論できず、悔しい思いをすることも多々。はなから次元の違う人々が集う童話の世界に浸りたくなる気持ちもわかります。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-05-07 01:42:32) |
13. ミッション:インポッシブル/フォールアウト
安定のトム・クルーズ品質。最初のうちだけTV版を彷彿とさせていましたが、やっぱり本作も追いかけたり逃げたり、時間に追われてハラハラしたりの繰り返し。要するに脳筋映画でしかありません。同シリーズは過去に何本か見てきましたが、どれも同じ印象で区別がつかないのは、そのためでしょう。 個人的には、けっして派手に走ったりビルの間を飛んだりせず、知恵と演技力と変装力と妙な技術力で勝負していたTV版のほうが、ずっと印象に残っています。 [インターネット(字幕)] 5点(2020-01-07 23:54:28) |
14. ミッドナイト・ガイズ
ジュリアナ・マルグリースは、やはり弁護士役等より看護士役がよく似合います。かつて「ER」の迫真の演技で、何度泣かされたり圧倒されたりしたことか。 それはともかく、21世紀のアル・パチーノはひたすらB級映画に出まくっている印象があります。本作もその1つでしょう。本人が「大御所」呼ばわりされることを嫌い、もしくは後進の育成のために、あえてB級の広告塔を買って出ている感じすらします。 とはいえ、しがない映画のうらぶれたチンピラ役でも、アル・パチーノが演じればピタリとハマるところがすごい。かの国には、高齢になってなお主役を張れる役者がゴロゴロいます。しかし仮に、本作の主役をイードトウッドが演じたら「どうせ最後は最大の勝利者になるんだろう」という気がするし、スタローンが演じたら「いつの間にか仲間が結集していそう」と予想が立ちます。あるいはレッドフォードなら「年寄りの冷や水」「無理するなよ」感が止まらないでしょう。孤高のチンピラを違和感なく演じられるアル・パチーノは、やはり稀代の大俳優だと思います。 では作品として面白かというと、ちょっと微妙ですが。 [インターネット(字幕)] 6点(2019-12-30 01:52:48) |
15. ミッドウェイ(1976)
評価の低い本作ですが、前半はいい感じでした。日本人が当たり前のように英語を話していることから明らかなように、ひたすらアメリカ市場向けの作品で、日本人が見ることなどカケラも考えていないようです。だとすれば、日本人の描き方など「バットマン」におけるジョーカーとか、「エクスペンダブルズ」における邪悪な敵方のような感じかと予想していたのですが、さにあらず。意外に公平だし、山本五十六のセリフなどもけっこう時代考証に則っていたように思います。日系アメリカ人に対する差別や隔離政策の問題なども盛り込んでいて、これは後半に興味が持てるぞと。 ところが後半、いざ戦闘が始まると、何がなんだかわからなくなります。実際の映像を挿入したというより、実際の映像から逆算してエピソードを作ったという感じ。当然、散漫で安っぽくなります。で結局、しばしばテロップで思わせぶりに登場した「battleship YAMATO」は、何をしていたんでしょうか。残念ながら低評価も納得です。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2019-08-26 01:32:05) |
16. ミケランジェロ・プロジェクト
おそらく一級の素材だと思うのですが、ものすごく安っぽい。戦場に出ること自体が初めてのはずの老いた登場人物たちが、なぜか余裕をかまして小賢しいジョークを連発するばかり。そこに若干の悲劇をまぶして一丁上がり、という感じです。もっとハリウッドお得意の盛大な脚色をして、追いつ追われつ、取り戻せるか燃やされるかという緊張感のあるドラマを見たかった気がします。 それと、幸か不幸か軍隊が身近ではない日本人の感覚かもしれませんが、民間の学者や芸術家や評論家に過ぎない面々が、次の瞬間には当たり前のような顔をして軍服を着て登場するあたり、すごく違和感があります。そこに葛藤はなかったのかと。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2019-05-31 22:21:59) |
17. ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
「rogue nation」というのは、身から出たサビという意味で「IS」やアル・カイダを連想させます。あの手この手でアクションシーンを盛り込んで、飽きさせない気満々なのはいいですが、なんせトム・クルーズがあまりにも超人なので、「でも助かるんでしょう?」と通販番組の司会者のようなリアクションをしたくなります。 それはともかく、もっとも驚いたのは本編が始まる前、「アリババ」のロゴが表示された場面。どうやら同社が相当額を出資しているらしいのですが、よりによって米政府機関の活躍を描く映画に、米政府にとって目下のrogue nationである中国の資本が加わって儲けをかすめ取るという図式は、なんとも皮肉が効いています。 [インターネット(字幕)] 6点(2019-05-22 23:13:53) |
18. ミッション
野性味あふれるロバート・デ・ニーロはいい感じ。音楽もさすが。しかし全編を通じて、疑問や違和感を拭えませんでした。そもそもなぜ宣教師たちは、わざわざ遠い異国に来て、しかも断崖絶壁をよじ登ってまで先住民に布教しようとしたのか。キリスト教的善意なのか、組織の一員としての使命感なのか、異教との競争だったのか、そのモチベーションの源泉が理解不能です。 しかもその行為は、先住民にとってけっしてプラスばかりではないはずです。欧州の先端技術を伝えられることと引き換えに、自らの宗教・文化・伝統まで破壊されることになるので。当然、それを悲しんだり抵抗したりした先住民もいたはずです。ところが本作では、布教活動は全面的に善行であり、先住民の全員がすっかり洗脳されたかのような描き方でした。ちょっと気持ち悪いです。 キリスト教の被布教国の末裔の1人としてあらためて思うのは、やはり徳川家康は偉かったということです。キリスト教を全面的に禁止し、ついでにスペイン・ポルトガルとの関係も絶ち、布教活動をしないという条件付きでオランダとだけ細々とつき合う。おかげで科学技術は大幅に遅れましたが、260年にわたる天下泰平の世が実現したわけで、その先見の明はすばらしいの一語に尽きます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-09-18 01:39:52) |
19. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 ピンと張り詰めた緊張感がいい。理不尽なラストも、いかにもイーストウッド風です。しかしアラが目立つというか、フィクションとはいえあまりにも都合よく偶然が重なりすぎている気がします。たまたま娘の恋人が自分にとって因縁のある男の息子。この程度ならドラマでよくありますが、たまたま娘が殺されたのと同日・同時間帯に少年性愛オヤジ殺人事件が発生し、たまたま通り魔の襲った相手が兄貴の恋人で、しかもたまたま駆け落ち前夜(意図的なのかとも思いましたが、セリフを聞く限りそうではないみたいですね)。わざわざ通報電話をかける意図も、そこから真犯人にたどり着くプロセスもいささか強引でした。ディテールまで川に流してしまったということでしょうか。(できるだけネタバレにならないように気をつけましたが、一応ネタバレ有にしておきます。) [インターネット(字幕)] 6点(2017-11-25 10:45:27) |
20. ミッション・トゥ・マーズ
多くの方が指摘されているとおり、「ありきたり」の一語に尽きますね。デ・パルマ監督ならもっとグロく描くかと思いきや、これまでどこかで見たSF映画を寄せ集めて焼き直して一丁上がリ、という感じ。人類が初めて出会ったはずの火星人に、デジャヴを感じる哀しさよ。とはいえ、これはこれで「水戸黄門」的に面白かったけど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-09-11 22:19:59) |