1. ミラーズ・クロッシング
《ネタバレ》 カフカの『城』を彷彿させる作品は多い。『ミラーズクロッシング』もそれで、見るからにカフカ似の主役が、何やら懸命なのだがほんとうに何をしたいのかほんとうは何を求めているのかは不明で、価値が相対化し尽くされている。「相対化」のなかでのあがきなのだコーエン兄弟のブラックな魅力は。 [ビデオ(字幕)] 8点(2015-03-29 17:54:58) |
2. ミザリー
《ネタバレ》 グリフィス風のクロスカッティングによる救出はハリウッドでもすでに徹底的に古臭く(外部による都合の良い救出は無効)、この映画でも内部からの体を張った自力脱出のみである。するとどうしようもなく血みどろになるので、むしろヘイズコード(暴力表現への制限)が懐かしい。 [DVD(字幕)] 4点(2014-02-24 18:18:43) |
3. 未来世紀ブラジル
《ネタバレ》 「出世を望まない若者たちが増えている」という。『未来世紀ブラジル』は、主人公が出世を願うかどうかが分岐点になっていて、出世コースに足を踏み入れるや冷たい競争関係など圧倒的に物象化された世界で迷子状態となる。諧謔のセンスが不条理の深刻さに厚みをもたらすのも、カフカ的なテイストだ。 [映画館(字幕)] 9点(2013-04-28 06:34:44) |
4. 水の中のつぼみ
《ネタバレ》 シンプルな設定で、それなりに見せてしまう。それだけだが、この長回しの「それだけ」がなかなかなものなのである。 いろいろケバケバしいものを見せる用意が無ければ(10億円使った爆破シーンとか、そんなものが映画というわけではないのだし)長回しに限る。 [DVD(字幕)] 5点(2012-08-16 13:08:16) |
5. ミラーズ(2008)
《ネタバレ》 鏡ものサイコホラーなのだが、鏡から何か恐ろしいもの(beyond reality)が出るという発想は、お化け屋敷的に怖いことは怖いが、本質的な怖さではない。鏡のほんらいの怖さは、お互いを映し合う相対性の泥沼たる鏡面、鏡の外には出られないことにある。だから例えば『上海から来た女』(ウェルズ)は、凄い。 [DVD(字幕)] 4点(2012-06-18 15:13:14) |
6. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 映画館から出てきた観客が、後味悪い映画だと吐き捨てていた。強者の犯罪がおとがめなしである「ハッピーエンド」は、アメリカ支配の隠喩かとも思わせる。ならばこれがアカデミー賞を取ったのは、ほんらいすごいことではないだろうか。 [映画館(字幕)] 5点(2011-03-25 15:46:35) |
7. みゆき
《ネタバレ》 予想はしたがそれにしてものこの欄の低評価には驚く。私の、『メイン・テーマ』評に共通するのだが、80年代の「戯れ」表現は故意に平面的にされた明るさの裏に或る貴重な哀しみを抱え込んでいる。この作品では例えば運動場のシーン(囲い込まれた自由)が重要だ。そこに現れる「第三の女性」石原真理子のシーンなども大切なのだが、井筒和幸自身が自分の映画の良さをどうもわかっていないような気がする。私は映画館で観た後ビデオでも繰り返し見た。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-19 13:28:00) |