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1.  宮本から君へ 《ネタバレ》 
 原作をリアルタイムで読んでました。   個人的に、自分の読んだ漫画の中の最高傑作のひとつと思ってたので、生半可な役者の生半可な演出ではというてい納得できないだろうと、ファンとして、とりあえずなんか映画化されたので記念で観ておこうというくらい(あきらめ)の心持ちで視聴した感じでした。   池松壮亮演じる宮本は、バカで明るいだけが取り柄の陽キャなので、池松壮亮氏のしょぼくれた外見でいや全然キャラ違うし、まあ最近人気の役者さんを起用しただけでまあ実写化されるとイメージ違う役者になっちゃってキャラが違うなんてよくあるので、まあしょうがないかなあと思ってました。  靖子さんなんて、当時の女傑なので、一瞬たりとも一言たりとも女々しい言葉とか振る舞いを見せたら、ああもうこれは原作の靖子さんじゃない。だいたいヒロインらしい女性ばかり演じてきた蒼井優氏がまともに靖子さんを演じられるのだろうか、全く期待できんなあ、と思いながら視聴しました。   観ました。   宮本は確かに宮本だった。  靖子さんは確かに靖子さんだった。   原作は1990年~1994年に講談社『モーニング』誌で連載された作品です。男女雇用機会均等法が改正され、採用・昇進・教育訓練等での差別が禁止規定になったのが、ようやく1997年。まだ当時の仕事現場では女性差別されるのはごく当たり前の状況で、まだまだ女性が家庭にいるのが普通と思われており、物語の世界の中でさえ、女性がひどい目にあわされ、それを守って救う男性像は素晴らしいヒロイックな男性像だ、と思われてた頃です。   そんなさなかに、女性を助ける男性が素晴らしいとかいう世界などクソくらえだ、勝手に助けた気になっていい気になってる男はしね、と、当時の価値観にNOを叩きつけたのが、靖子さんというキャラクターで、蒼井優氏が女性らしい女性なんてものを演じたら、まったく許せんだろうと思ってたのですが、そうではなかった。ちゃんと靖子さんは靖子さんだった。   宮本も、宮本というのはどこまでもバカで、バカ過ぎて必死過ぎるからこそ、この悲惨な物語が、ギャグとして昇華される。池松壮亮演じる宮本のバカさ加減に、私は観てて爆笑してしまったのですが、こんな話がギャグに見えるのは、当時のあの主要キャラから見ると地獄のように見える、あの絶望的な世界の中にありながら、それでもすべてのしがらみを吹き飛ばし、何とかうまく生き抜いてやっていけるだろうと、キャラクター達を信じられて最後はハッピーエンドになるだろうと信じられるから、ギャグとして笑えるというか、とにかく最高に笑わせてもらえて、とてもよかったです。   で、とにかく主演二人の演技がすさまじくて、当年の日本アカデミーにぜひ推されるべき作品と思ってたのですが、ピエール瀧氏の不祥事で公開自粛されたのと、某アカデミーで、選考作は1日2回以上上映されないと候補作として選出すらされないとかいう謎ルールのせいで、まったく選ばれることはなかったという不遇の作品ですが、原作が好きだった人には、たしかにこの映画は、あの原作の作品と自信持って言える作品だ、と、自信を持って言える映画と思います。   そんなところです。   あと、エンディング曲も超絶暑苦しくて、まさに作品世界を体現した名曲なので、エンディング曲までしっかり聴いていただけると幸いです。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 10点(2021-06-11 00:16:02)
2.  ミッドナイトスワン 《ネタバレ》 
ちょっと自分には合いませんでした。   他の人たちは、割とリアル寄りの自然な演技で静かにいい感じの雰囲気を醸し出してるのに対して、草彅剛の演技&セリフがコテコテ過ぎて、現実世界の真っただ中に半沢直樹が突如降臨して倍返しだ! とか土下座しろ! とか言い出すみたいな、リアリティのレベルが全然合ってない感じ。   セリフもくどくて、そこまでの表情や動きで十分感情は描けてるのに、わざわざくどく説明台詞を入れて要らない解説をするとか、それだけならいいんですけど、言ってる内容が話の流れからすると微妙にずれてて、いやそこまで言っちゃうとなんか話として変わっちゃうだろうみたいな、草彅剛は、私の感じたのでは、セリフを言わない時がいちばん良くて、あの哀愁ただよう美しくも闇を秘めたたたずまいをただ撮り続けてくれてる瞬間の方が良かったです。   そういうのが積み重なって、話の最後の辺は、映像的にきれいなのに、もはやホラーにしか見えなくて、ちょっとギャグかと、内心爆笑してしまって、なんか済まない感じになってしまいました。   とはいえ、割と踏み込んだエグイ場面を体当たりで熱演されたのは、すごいなと。  ただ、表現的に、ネガティブな印象/偏見を視聴者に付けてしまいそうなところがあって、そこはどうだろう、と思いましたが。   新人の、服部樹咲と水川あさみは、演技が自然で素晴らしく(二人の交流のふれあいと過去絵の掛け合いとかすごくいい)、バレエも見事で、特に服部樹咲は話が進むにつれて、どんどん輝くような美しいカリスマを発揮して、将来がとても楽しみだ、と感じました。   あと話の展開が、白鳥の湖をなぞる感じにされたのでしょうか、あの辺の話って、愛のためにとりあえずしねばそれこそが至上の愛と短絡するパターンだったりするのをそのままこの映画では踏襲してるので、それはちょっと今の死生観では納得しづらいかなあと、いや、さっさと医者に連れてくか、携帯あるんだし119で呼べばいいのに、とずーっと思ってしまった感じでした。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 4点(2020-09-30 21:42:04)(良:1票)
3.  ミッドサマー 《ネタバレ》 
 まず、音楽と、映像演出がとてつもなく素晴らしかったです。   ホラー映画、スリラー映画は、前衛的な20世紀音楽(主にクラシック系)の宝庫で、曲聴いてるととても斬新で面白いのですが、恐怖の演出のためのおどろおどろしいものという偏見を植え付ける問題があって、1年くらい前? にヨーロッパで抗議のデモがあったりなんかして残念だったりすることも多いのですが、その辺の音楽で個人的に重要と思うのは、神経を逆なでする恐怖的表現以外に、「熱狂」「官能」「途方もなく深い感情表現」等を表す新たな表現手法を確立したことだと思ってて、昨年上映された「ビューティフル・デイ」の曲なんかは、美しく、かつ途方もなくイカれてて素晴らしかった。   それがまあ、本作では、全編にわたって、狂的に美しくもおぞましい、映像と音楽と出来事とに埋め尽くされるという、映像体験としてすさまじく、終始シビれっぱなしでした。個人的には、前衛的音楽映像表現の、現在の極致と言って過言でない、かと。   次に、ストーリーの内容ですが、アメリカ人視点では確かに恐怖の対象で、感情移入して観ると怖くも見えるのですが(主人公側の人間は、かなりベタなアクションをしてて、あらゆる場面がよくよく見るとどこもかしこもベタなのですが)、前世紀の未開の地を冒険する物語だと、よくある展開そのままですじゃん! って割と普通に観てしまいました。   話のエンドについては、話の当初の主人公の動機付け(喪失からの回復)を、やってくれた方が良かったかなあと、そうすれば感動するいい話になったのに、というのがちょっと惜しかった感じです。   個人的に、感動して泣ける話と、ホラーって、感情を揺さぶる点で本質的に非常に近しいと思ってて、この映画は非常にいい線行ってて、とても気に入った感じです。   現場からは以上です。
[映画館(字幕)] 9点(2020-02-27 22:49:48)
4.  皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ 《ネタバレ》 
主人公があまりに孤独すぎて、目が死んでて、それが正義に目覚める瞬間に魂が震えました。 悪役が、とにかくチャラくて、メチャクチャで、しぶとくて、とことんゲスなのが良い。 ヒロインのアレッシアはそんなに奇麗というほどでもないんですけど、観てるうちにどんどん美しく見えてきます。 アクションは、低予算ながらきっちりポイントは押さえててがんばってる感じですが、「スーパー・パワー対スーパー・パワーは、単純に素手で殴り合ってるのと変わらない」というのが、目から鱗で面白かったです。 あと、観覧車は何度観ても泣けてしまいます。
[DVD(字幕)] 8点(2018-07-19 00:55:16)
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