2. 地下鉄(メトロ)に乗って
《ネタバレ》 これほど手間がかかった映画もなかった。まずテレビ放映のカット版で見て腑に落ちず、図書館で原作を借りてきて読んでも一向に解決せず、最後に今日レンタルで借りてきて完全版を見たわけだが。 結局理解できたのは、映画が駄目だったのはすべて原作のせい、原作の意味不明、理不尽さがそのまま映画に残ってしまっただけの話。結局最後に残った最大の謎は、なぜこんな小説が映画化されるほどヒットしたかということにつきる。 主人公と父親の話は、とりわけ感動するほどでもないが、貶すほどでもない。一方的に嫌っていた父親と過去に出会うことによって父親の人間性や子供に対する思いに触れる。まあ新味には乏しいけどある種の感慨はあるでしょう。(ただ、他人の子供を妊娠した女性と結婚し、生まれた子供を愛情を持って育てるなんて、手垢が付きまくった流れで読者の感動をよべると考えるならば、浅田さんもそんな程度の小説家だったと、かなり落胆を感じる。それから人物設定、他にどんな美点があるにせよ、やたら女、子供に暴力をふるう人間に魅力を感じろと言われても。不倫することに全く後ろめたさを感じてないなんて点でそっくりな親子も嫌だな。) しかし、なんと言っても納得できないのが、他の多くの皆さんと同様ヒロインの行動と、ここまで書いて突然気がついてしまった。要は、近親相姦の恋愛に苦しむこと、あるいは近親相姦してしまった苦しみから主人公を完全に救うために、自分の存在を最初から完全に消すことを選んだのか。だから罪と罰ね。ただ、なんか生臭い話だし、自分の存在が引き起こす苦しみから救えばそれで幸せっていうのもちょっと。何よりも、ヒロインが自分の存在を根本から消し、ヒロインの母親が子供を産み育てる幸せを完全に奪われたわりには、結局ヒロインの記憶を徐々に無くしていった主人公は、実質的には何も失わない。なにかぼんやりした温かみを持ちながら平凡な人生を営むだけ。ほんと、どなたかが書かれたように、男性に都合のいい話ですね。 本当にたった今、この映画を理解できたわけだけれど、それで嬉しいとも全然思わない。二、三度映画を見直した時間。原作を読んだ時間。本当に無駄な時間を費やしてしまった。 [DVD(邦画)] 2点(2013-02-14 00:09:45)(良:1票) |