1. 野獣死すべし(1980/日本)
いわゆる原作モノを映画として傑作にするためには、原作を凌辱することも必要なはずであるが、それにしても本作の破天荒な凌辱っぷりはただ事ではない。松田優作・丸山昇一コンビによる一大共犯。その歪なホン、原作愛はない(と思う)し娯楽性こそ犠牲にしているものの、本作前年の「蘇える金狼」を別のアプローチから超えようとする高い志に溢れている。で、当時ハードボイルド系人気俳優の印象濃かった優作から、アクションと肉体性をバッサリと奪い去った結果どうなったか?ナルシシズムすれすれとも思える狂気表現が残った。それが「伊達邦彦」でありこの映画。ほとんどただそれだけ。それだけだが、だからこそ「何かスゲーもん観たな」と思わせてしまう優作の幽鬼が如き奇演怪演、その凄まじさに終始圧倒される。ただし、鹿賀・室田の鬼気迫る熱演と、クラシック音楽を軸にした演出、それに調和した小林麻美の澄んだ美しさあってこそ、だ。ツボな人にはとことんツボだろう。合わない人にはただただ不快で退屈な作品かもしれない。熱狂的な原作ファンと原作者・大藪春彦が、完成品を観て大激怒したという話も頷ける。自身も原作既読組ではあるが、青春の愛おしき傷痕として本作の記憶は深く焼き付いた。学生当時、全科白を暗記してしまうくらいモノマネを繰り返したほどに(苦笑) ■お気に入り度:【9/10点】 [DVD(邦画)] 7点(2012-12-22 07:24:29)(良:1票) |