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1.  用心棒 《ネタバレ》 
登場人物のキャラクターや話の設定はかなり自由ですし、脚本もギャンブル的な展開の所も有りますが良く出来ていると思います。 総じて面白くてカッコ良い娯楽映画に仕上がっています。  ハーフのチンピラ浪人が居たり、木槌を持った大男が居たり、マフラーを巻いてリボルバー拳銃を持ったヤクザが出てきたり、芸妓がみんな醜女で座敷に上がった彼女達がノリノリのラテンビートを奏でたり、話の舞台は周りから隔離された無法地帯のカオス的なシャッター通りと化した宿場町だったりと、問題だらけのチャンバラテーマパークのようです。 そんな所に行く先も名前も適当で、滅法強くて、お節介で、照れ屋で、天邪鬼で、情に厚くて、頭が切れて、物事に拘らなくて、ぶっきら棒で、掴み所のない浪人が来て、テーマパークのメインキャラクターになってしまいます。 この浪人を中心に、街は回り始めます。 正直この映画、この人で成り立っています。この人と言っても黒澤明の作った桑畑三十郎なのか、三船敏郎という人間なのかと聞かれると困ってしまいます。 本作で黒澤監督の描いたヒーロー像は他に例がない位にカッコ良くて魅力的です。 そんなキャラクターを、熨斗をつけて具現化出来るのは三船さん以外に思いつきません。 このコンビには毎回痺れます。 水を貰ったおじさんに嫌味を言われると困った顔をしたり、下衆な八州廻りを見て爺さんと笑い合ったり、女房を取られた悲観的な男を見て怒鳴ったり、でも結局助けてお金まで上げちゃったり、爺さんが捕まったと聞くと後先考えずに助けに行こうとしたりと、中二病を患っている様なハードボイルド映画の完全無欠の主人公ではなく、人間味に溢れている所に物凄く惹かれます。   また、ほぼ全編で効果的に使われているガチャガチャした音楽が世界観を重たすぎるものにせずに、調度良いテンポをつけ軽妙な作品にしています。  大満足の作品でしたが、ラストシーンの三十郎の後ろ姿も「金は全部やっちゃったし、途中で死ぬくらいボコボコにされたけど、タダ飯は食えたし、悪い奴は沢山切れたし、味方をしてくれた爺さんも救えて結構楽しかったなぁ。」と、私と同じくらい満足しているように見えました。
[DVD(邦画)] 10点(2015-04-25 18:18:14)
2.  横道世之介 《ネタバレ》 
鑑賞後、レビューを書く前にここの評価を見て自分のそれとかなり差があるので驚きました。 自信が無くなりもう1度見ました。 気負わず見られたという事も有りましたが、評価は上方修正されました。 日和った形になりましたが、2度見た事は結果的には良かったです。 話の展開や構成は俊逸でしたし、登場人物が皆、役者さんの演技を含めて魅力的でした。 高良さんと吉高さんは単体でも良かったですが、彼等2人の関係性は見ていてとても心地良かったです。 空気を読めない世之介と彼に輪をかけてマイペースな祥子は、ボケ役の芸人の前にもっと強烈なボケ芸人が現れ、最初の芸人が突っ込まざるを得なくなっているようで面白かったです。 登場人物の台詞や所作の間(ま)や、演出は独特の雰囲気で非常に好感が持てました。   一方でノスタルジーという要素に少し頼りすぎている感じがしました。 現在のシーンではそれぞれの登場人物が世之介に対するノスタルジーを、過去のシーンでは観客に向けてのそれを表していましたが、前者はストーリー上の事ですし悪くもないと思いましたが、後者のそれはあざとく映りました。 ステレオタイプに80年代を表現した映像は、それらの要素を詰め込みすぎて説明的になり過ぎていましたし、広い画で記号的に配置された演技の出来ないアルバイトであろうエキストラがそれらに絡むと、作品からの集中力を欠いてしまう程でした。 製作者側のこだわりだとは思いますが、本来、話の背景でしかない筈のそれらに焦点を当てすぎると、見ている側は映画ではなく単なる製作者の自己主張を見せられている様で一気にしらけてしまいます。 そんなシーンが複数あったのは残念でしたし、それが1度目に見た時の評価が低くなった要因です。 ある程度年齢を重ねた人に対しては、ノスタルジーは感傷的にさせる道具としては極めて有効だと思いますが、安直に使いすぎると逆効果だと思います。 話が良いだけに勿体無く感じました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-20 17:32:22)(良:1票)
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