1. 4ヶ月、3週と2日
《ネタバレ》 予備知識ゼロで見ました。1987年、チャウシェスク政権下という設定。学生寮らしきところに住む20代前半?の女子学生二人(ルームメイト同士)が、なにやら泊まりがけで出掛ける支度をしているところから始まります。部屋の中は、ぬいぐるみやらのkawaii系グッズなどは皆無で、無機質で男前です。さて、泊まり先としてホテルを予約していたのですが、実際に行ってみると、予約係のミスで予約が入っておらず、フロントには冷たくあしらわれます。逆に、前日に予約確認をしていなかったことを責められる始末。計画経済における供給者側の傲慢さに加えて、利権すら見え隠れします。余分に請求されたお金はフロントの懐に入ってしまうのでしょう。そして、映画が始まり30分ほどしたところで、ようやく、闇医者に闇中絶をしてもらうために、ホテルを予約したことがわかってきます。そう言えばネットか何かでみた作品概要に、妊娠中絶の話って書いてあったなと思い出しました。勘の悪い私は、ここでようやく、タイトルと内容を結びつけることができました。さて、ルーマニアでは、妊娠中絶は違法行為なので、闇市場化しています。健全な市場であっても医者と患者が対等な関係となるのは難しいと思いますが、いわんや闇市場をや、です。ホテル代を支払ってからの価格交渉では、後に引くにもコストがかかり、供給者側の圧倒的有利な立場により、言い値が通ってしまいました。仮に金を多く持っていたとしても、やられていたことでしょう。人間のエゴをコントロールして、推進力として活用しようとする市場経済システム。人間にエゴはないものとし、資源は計画的、効率的に配分されるものとする計画経済システム。コントロールされないエゴの醜悪さを、まざまざと見せつけられた気がします。妊娠をするに至った経緯や相手の男について一切触れないことにより、想像の余地が非常に大きくなっています。見た人によって感じ方が著しく異なるであろうところが面白いですね。他の人の感想を知りたくなる作品です。私の感想は、社会システムが悪いのは、重々承知の上で、まあ自業自得かなと。主人公は、巻き込まれた被害者でもあり、気の毒ではありますが、妊娠した本人は、胎児を殺すわ、親友を巻き込むわ、まったく自覚がないので、腹が空いたら飯を喰らうが如く繰り返しそうです。胎児の父親については、特定できない可能性もあり何とも言えませんね。仮に特定できるとすれば当然男も悪いですが、この妊娠女に至っては、100人に1人の悪い男を100発100中で選ぶような勢いすら感じられ、同情の余地がありません。憎めない感じではありますが。ドジっ娘属性ありますが。結構好きですがなにか。P.S.映画中で説明はないのですが、ネットなどで調べるに、当時、チャウシェスク大統領夫人の考案で、労働人口を増やすために、避妊と堕胎を禁じる政策を布いていました。うん、わかりやすいよ、うん。結果として、ストリートチルドレンがあふれました。 [DVD(字幕)] 7点(2024-10-10 18:05:16) |
2. 四畳半襖の裏張り
《ネタバレ》 海外では「The World of Geisha」のタイトルでそれなりに有名なようです。(本作の日本語版wikipediaはありませんが、英語版wikipediaはあります。)「初会の客に気をやるな」という掟があるにもかかわらず、客にイカされてしまう芸者が、あな恥ずかしとよがるシーンを中心に、熟年の芸者、まだ若く客を取る前で鍛錬中の芸者、恋人が兵役でなかなか逢えずに肉感的な芸者 などなどが織りなす情景を描いていきます。全体的に、そこそこリアルな感じなので、芸者の世界というのはこういうものなのかと興味はそそられますが、琴線に触れるもの、心踊るものがありませんでした。主役の宮下順子は可憐なものの、寝床のシーンが一本調子なので、もういいよと思ってしまいます。そこを他の芸者のエピソードで上手く補っているというか、何とか持たせてるというか。持たせ切れていないというか。相手の男にこれと言った魅力が見いだせないのも何だかなという感じで、逆にそれだけすごいテクなのかと勘ぐれなくもないわけですが何だかな。 [DVD(字幕)] 4点(2023-05-19 18:03:24) |
3. 夜と霧
《ネタバレ》 アウシュビッツ強制収容所の当時のモノクロ映像と、10年後、緑に覆われ廃墟となった強制収容所のカラー映像を交互に切り替え、静かな導入から始まり、徐々に惨劇が詳らかになる構成です。新緑に覆われた強制収容所跡地は、空が抜けるように青い。鉄条網がややぶっきらぼうであることを除けば、至ってのどかで静かな雰囲気が漂い、この10年前に惨劇が起きたとは想像ができません。国破れて山河在り 城春にして草木深し 廃墟と緑はノスタルジーさえ感じさせます。なぜ人の尊厳がここまで蹂躙されたのか?映像は、理由を語らず、その事実を突きつけるのみです。大量の裸の死体をブルドーザーで捏ね集めるシーン。人の形をしたものが、絡み合い、物理演算モデルCGと見紛う粘土のような挙動を示す映像が衝撃的です。 [DVD(字幕)] 7点(2023-03-06 19:13:42) |
4. 40歳の童貞男
《ネタバレ》 家電店に勤める男が主人公。仕事の後に同僚の男同士の飲み会につきあってみると、案の定、下ネタ、セックス経験の話になってしまいます。童貞であることがバレでもしようものなら、これまでの人としての行いは一切関係なくバカにされるというは、どこの国でも同じのようです。自分が体験した最もホットなセックスというお題になり、主人公は乳房を砂袋のような感触だったと表現したことで、ホントか~?となって、童貞がばれてしまいます。主人公の童貞がばれるやいなや、その噂は会社中に広まってしまいます。どこの国も、人をバカにしたくて仕方ない人が大勢を占めているようですね(笑)ま、それでも同僚達は、主人公が童貞喪失できるように、彼らなりに気を利かせて、ナンパができる場所に連れて行ったり、いろいろ指南したりして、それほど悪い奴ではないようで、楽しく見られました。この手のコメディは、役者の演じ方次第で、相当イタイ作品になる可能性があるのですが、みな演技が上手くて、イヤミな感じがありませんでした。特に、女上司役がスゴいと思いました。結構な美人であの貫禄を出せるのが凄いなと。あと、連れ子が色っぽくて好き。 [DVD(字幕)] 6点(2023-03-05 15:40:57) |
5. 容疑者Xの献身
《ネタバレ》 多くの人が指摘しているように原作の石神に比べて、堤真一は二枚目過ぎてミスキャストじゃないかと思いましたが、なかなかどうして、風采の上がらない数学教師役をよく演じていて、最後の慟哭は心に響きました。福山の役は少し軽薄すぎる感もあるのだけれども、堤真一との対比という面では、いい味になってたと思うし。お話、ロケーションともに、かなり原作を忠実に再現していて、それだけでも好印象。万が一にも起こらないような、悪魔的な条件の符合によって、狂気が発動してしまうような作品が大好物です(本作では、隣の親子が事故で人を殺してしまったところに、たまたま、壁越しに、不器用な天才数学者が居合わせてしまう)。一度しかない人生の数奇な命運を感じて、心が揺り動かされるのですよね。石神による被害者があまりにワンノブモブキャラであるがために、1モブキャラだから殺していいのかという道義的な側面で問題がある点も、複雑な余韻を残すという面で面白く、斬新だとさえ思えてしまうのですよね。 [インターネット(字幕)] 8点(2023-02-10 17:41:18) |