1. LUCY ルーシー
《ネタバレ》 安っぽいB級SFやインチキ通販でお馴染みの「人間の脳を100%活用したら」というおバカなコンセプトを大真面目に映像化するところは、さすがリュック・ベッソンです。使われていない脳のシナプスが大量にあるのは当たり前のことで、現状の機能を発揮するためにはそれだけバック・アップが必要なんです。パソコンのメモリー残量がゼロに近づいたらどうなるかを思い浮かべれば良いだけです。 この映画はとにかくあのコリアン・マフィアのボスのキャラが立ち過ぎで、すっかりスカヨハは喰われてしまいましたね。ルーシーがどんどん超能力者に進化(?)してゆくのに比例するかの様にボスの暴れっぷりもエスカレートするのが愉しいです。最後に警察が待ち構える大学構内にまで突っ込んでいくところまで来ると、もう損得関係なしで何がしたいのか判らない状態でしたね。このボスのキャラはもっと背景などを掘りこんでいたらこの映画はもっと面白くなったかも。 まあはっきり言ってラストに繋がる展開はベッソンの限界を見せられた気がしました。ルーシー繋がりで人類の始祖である類人猿ルーシーにまでタイムワープしてまさかのE.T.ごっことは、さすがベッソン、フリーダムというかまさに発想が中学生です。この人、もうSF撮るのは止めた方が賢明だと思います、アクション撮らせたら上手いんですがね。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-12-29 20:06:29) |
2. LOOPER/ルーパー
《ネタバレ》 タイムトラベルものとなると異様に燃えちゃう自分ですが、この映画は実はタイムトラベル自体には大した意味を持たせていないと思います。もうどなたかが書かれていますけど、殺害ターゲットを過去に送るというのは意味がないですよね、死体だけ送れば済むことじゃないですか。好意的に解釈すると、その未来社会では国家権力が何らかの手段で人の生死を完全に把握する社会なのかもしれませんが、この映画では未来社会の描写がほとんどないのでそこまで肩を持つこともないですね。 未来から送られてくるのがブルース・ウィリスという時点で、もうこれは『12モンキーズ』だよねということはバレバレだし、そこに『ターミネーター』みたいな人探しをさせるとなると、なんかどこを観ても昔の映画のデジャヴ感がハンパなかったです。あのサトウキビ畑ですら『フィールド・オブ・ドリームス』やってると感じちゃうぐらいですから困ったものです。そしてそこにサイキック・チャイルドが出てくるとなると、これはブライアン・デ・パルマの…、もうキリがないので止めときます(笑)。 ラストのオチだけは、シンプルでしたが意外と観られないパターンでもあるので評価したいと思います。あと、あの子役の演技はけっこう怖かったですよね、この子これから大物になる予感がします。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-07-27 18:34:55) |
3. ルル・オン・ザ・ブリッジ
《ネタバレ》 『スモーク』で有名なポール・オースターなのでハート・ウォーミングな作品かと思って観たら、胡蝶の夢をモチーフにした切ないファンタジーでした。 冒頭のトイレの壁に貼ってある写真を見ればオチはだいたい見当がつきます。不思議な石をもらってからミラ・ソルヴィーノの運命が激変するのですが、その石のおかげでウィレム・デファーの一味が登場し訳が判らない展開になるのです。このデファーの存在はどうもオースターの小説NY三部作から引っ張ってきた感じがしますが、ハーヴェイ・カイテルの人生を全てを知っているところなんかからしてカイテルのダーク・ハーフの様な存在なんでしょう。 でもあのラストは切なかったですよね。ミラが知らないところでチャンスが消えていったのだけど、カイテルはまさに「君のために僕は死んだ」わけですから。私ももし途中でサイレンを止めた救急車に出会ったら、立ち止まって十字を切ることにします。 それにしてもこの映画のミラ・ソルヴィーノは魅力的でした。彼女がハーバード卒の才媛で北京語がペラペラ、おまけにあのポール・ソルヴィノの娘とはとても信じられませんね(笑)。 [ビデオ(字幕)] 7点(2014-05-11 01:00:07) |
4. ルシアンの青春
《ネタバレ》 この作品、ルシアンを肯定的に描いたということでフランスでは反感を示す批評があったとのことですが、このルシアン・ラコンムの空虚な青春のどこが肯定されているというのでしょうか? その空っぽで愚かな17歳の青春が痛いほど観る者に伝わってくるので、本作は切ない傑作となったのではないかな。 連合軍がノルマンディーに上陸する様な時期にゲシュタポの手先になるなんて、いくら17歳だったとはいえあまりに愚かすぎます。でも始めはレジスタンスに参加しようとして拒否されているのだから、運命というものはあまりに残酷なものです。ルシアン役のピエール・ブレーズはルイ・マルに発見されるまでは本当に木こりをやってた素人なのですが、無表情の内側にルシアンの無教養と無邪気さそして心の闇が見事に表現出来ていて、マルのたぐいまれなる演出力にはため息が出てしまいます。ブレーズは本作出演2年後には自動車事故で亡くなってしまうので、オーロール・クレマンと山奥で戯れる静かなラスト10分がとても悲しくなってしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-06-15 22:47:28) |
5. ルトガー・ハウアー/危険な愛
《ネタバレ》 ヴァーホーヴェンとルトガー・ハウアーが初めてコンビを組んだ作品ですが、ハウアーがひょっとして出演シーンの半分は全裸か半裸じゃないかと思えるほどの熱演(?)です。ヒッピーのような若い彫刻家ハウアーと良家の娘が出逢い、結婚し、別れ、そして再会して悲しい結末を迎えるある意味純粋なラブストーリーなんですが、そりゃ若いころとはいえヴァーホーヴェンですからエロ・グロ・ヴァイオレンス(+スカトロ)はちょっと文字にするのは憚る様な凄まじさです。ですけど、はっきり言ってわたくしこの映画好きです。ヴァーホーヴェンという人は本作では「性」の陰にいつも「死」をイメージさせることに拘っていますが、下品な表現のオンパレードの中にも普遍的な「青春のやるせなさ」として感じ取ることが出来ました。本作はヴァーホーヴェン作品の中で技術部門以外で唯一オスカーにノミネート(外国語映画賞)された映画です。もちろん受賞してはいませんが、こんなすさまじい作品をノミネートするとは、アカデミー協会も大したものです。 [ビデオ(字幕)] 8点(2011-05-11 21:56:45) |
6. ルートヴィヒ(1972)
《ネタバレ》 “巨匠”と呼ばれる様になってからのヴィスコンティ映画はあまり自分は好きじゃない。彼の晩年の作品は大芝居を工夫のないカメラワークで延々と見せられるというイメージが強いし、民主党の大嫌いな某大物政治家が最近どういうわけか『山猫』を演説で引用していることを知ったことも一因かな。でもほとんど遺作と言っても良い本作にはさすがにヴィスコンティの執念が伝わってきます。ヘルムート・バーガーの演技はルードヴィヒの霊がとり付いたかの様な迫力で必見です(そういや最近お姿をスクリーンで見かけませんが、どうしてるんでしょうか)。全篇にヴィスコンティの貴族趣味に満ち溢れていて、民衆や大衆が歴史もののくせに全く画面に登場しないという徹底ぶり(バジェットの関係かな)。そしてロミー・シュナイダーの“シシー”にはただうっとりさせられるばかりで、さすが“シシー”は10代からの彼女の当たり役だけのことはあります。“赤い貴族”と呼ばれたヴィスコンティですが、マルクス主義者のくせに頽廃の甘美な魅力をこよなく愛しており、そこが頽廃を誰よりも鮮やかに映像化するくせに本当は頽廃を嫌悪していたフェリーニとの大きな違いでしょう。 まあお暇なときにはこの4時間の頽廃の極北を味わってみるのも良いんじゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-01-24 23:56:50) |