1. ルックバック
《ネタバレ》 私は絵を描いている。 プロでもないし、ただの趣味。 それもオリジナルはほとんど描かず、好きな二次創作をpixivにアップしたり、時々コミケに本を出したり。 とは言え結果は散々で、時折ブクマ100超えれば良い方(稀に4桁ゲットもあったが)。 そういう自慢を聞きたくないのは分かるし、自分が筆を追っても困らないくらい凄い絵描きが大勢いる。 かつて鼻っ柱をへし折られた藤野も同じ心境だっただろう。 絵を描くことは楽しいことばかりではない。 地味で辛いことを続けていく面倒臭さ、上手く描けない苦しさ、 世に出しても報われない悔しさや周囲から置いて行かれていく惨めさ、嫉妬しどう足掻いても埋められない差… それでも敵視していた京本が憧れで自分の背中を追い続けていたこそ、お互いに頑張れて辿り着いた境地があった。 ライバルに褒められた雨の中の嬉しいステップ、共作の漫画が入選し二人一緒に街に出掛けたこと、 感情のこみ上げる表現がラフに近い描き方によりクリアになる。 そのかけがえのない日々が一転、理不尽な暴力によって輝かしい未来を奪われる。 主人公が藤野と京本であることが分かるように、原作者の藤本タツキの実体験が微小ながら多分に投影されており、 あの事件に対する一つのアンサーだろう。 誰もが鳥山明や尾田栄一郎や藤本タツキみたいにキラキラ輝けるとは限らない。 ましてやプロの漫画家やイラストレーターになれる人などほんの一握りの狭き門で、 心が折れて涙を呑んで消えていった無名の人たちは星の数ほどいるだろう。 ただ、自分の可能性と表現したいものを信じて多くの時間を費やし、"フィクション"にひたむきに向き合ったことは、 決して無駄ではないというつもりは毛頭ないが、自分自身しか知らない苦闘は本人が否定しても事実として残る。 成功失敗問わずそれでも描き続ける人、いろんな事情で筆を折った人、再び描き始めて挑もうとする人。 かつての苦しさや辛さや悔しさを振り返り、苦虫を噛み潰しながら、これからの人生を紡いでいく決意。 フィクションで救われた人たちがいたように、それを受容して初めて"大人"になっていくことだと思う。 今やAI生成イラストの登場により、本作みたいな産みの苦しみや面倒臭さや挫折感を味わうことなく、 描けない人ですら一瞬で傑作を生み出し、簡単にバズれるようになり、大量生産が可能になった。 それを駆使する人たちが主流になったとき、 二人が描いた景色に"簡単に"辿り着いたその人たちにはどう見えるのだろうか。 [映画館(邦画)] 9点(2024-07-05 23:41:14)(良:1票) |
2. るろうに剣心 最終章 The Beginning
《ネタバレ》 最後まで雑に終わったThe Finalと比べると、別の映画みたいにテイストが真逆でしっとりとした印象を受ける。 殺人マシーンだった剣心と仇を愛してしまった巴が人間性を取り戻す過程は良いものの、 無駄な台詞が多い、勿体ぶった描き方で2時間強は長すぎた。 最後まで回想(倒幕まで)に絞った構成、巴役は好演だっただけに、 シリーズ全体に言えることだが、なぜ無駄な贅肉をつけすぎてしまうのか。 改めて一作目は不満はあれど、それなりにブレークスルーしてたんだな。 [地上波(邦画)] 5点(2022-10-22 10:58:47) |
3. るろうに剣心 最終章 The Final
《ネタバレ》 一本調子だった伝説の最期編と比べればアクションは頑張っていると思うが、 相変わらずストーリーとキャラの描き方が雑すぎる、そして「もっと削れたよね?」と展開引き延ばしすぎ。 原作でも突っ込まれていた薫のフェイク死体のくだりは要らないし、 原作の人誅編には登場しなかった宗次郎が唐突にサービス出演(その過程を描くべきでは)、 下敷きになってそのまま退場した蒼紫をはじめ、レギュラー陣のエンディングはほぼ触れられず。 最後まで消化不良のまま終わってしまった。 [インターネット(邦画)] 4点(2022-10-22 10:39:37) |
4. ルナシー
ヤン・シュヴァンクマイエル特有のアニメーションは章に挟む程度で控え目。 正気と狂気の境目を行き来する主人公が体制に翻弄されていく。 自由を掲げる左側も、管理を掲げる右側も極端すぎて、 いや、その両方を含有する狂った世界に自分は生かされている現実を突きつけられる。 人によっては「それで?」で終わってしまう作品かも。 主人公同様、どうすることもできないから。 [DVD(字幕)] 6点(2022-06-28 22:04:02) |
5. ルクス・エテルナ 永遠の光
《ネタバレ》 サンローランのアートプロジェクトによるコラボ。ギャスパー・ノエ×シャルロット・ゲンズブール×ベアトリス・ダルという時点で普通の映画になるわけがない。基本分割画面による同時進行と、ピカチュウもビックリな点滅が10分間続く。身勝手な部外者と制作スタッフの謀略により、融通の利かない苛立ちが爆発する撮影現場のカオスさが一周回ってブラックコメディみがある。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-01-31 23:40:33) |
6. ルーム
《ネタバレ》 カメラは"部屋"から出ることはない。"部屋"には常にママがいて、疲れた表情を見せながらも生きる術を教えている。ときどき男が配給しにやってくる。5歳になったジャックには"部屋"が世界の全て。この限定的なシチュエーションでほぼ二人芝居で息苦しくスリリングに見せる監督の演出力が光る。そこからどうやって脱出するか、そして脱出してからが本当の闘いだった・・・。中盤までと比べると物足りなさを感じるが、犯人との間に生まれた孫に対する祖父母の戸惑いと、自由になったはずなのに逆に追い詰められていく母親、全てが刺激的すぎて"部屋"に戻りたいジャックを丹念に見せてくれたおかげで、"世界"が残酷な現実をもたらす試練にもなりえることを実感させる。それでも母子は決して優しくないだろうその"世界"に挑み続け、正反対の感情で"部屋"に別れを告げるラスト、好き。母子の闘いはこれからも続く。 [地上波(字幕)] 7点(2019-05-31 23:17:10) |
7. るろうに剣心 伝説の最期編
《ネタバレ》 斉藤一が「茶番だ」と言い放つ場面があったが、まさにそれ。 前作で中途半端だった部分がここにきてツケが回ってきた。 原作にない新政府絡みの話で時間を費やし、わざわざ東京で決着を付ける展開が分からない。 これだけで大幅なタイムロスに繋がり、宗次郎を初めとする十本刀の扱いといい、 善と悪の境界線、贖罪といったテーマに消化不良感が残った。 最後の戦いもやはり一本調子で飽きる。 頑張ってはいるけどただただ空回り。 酷い実写化の前例と比べれば残念な出来ではないにしろ、 日本だけでマーケットが完結しているようでは世界と勝負する実感が湧かないから、 誰が撮っても結果は同じだっただろう。 [地上波(邦画)] 4点(2015-11-09 21:55:43)(良:1票) |
8. るろうに剣心 京都大火編
《ネタバレ》 上映時間等の制約がある以上、改変は仕方ない。 ただ、佐之助の"二重の極み"を会得する展開、青紫が剣心を狙う理由付けは変更・削除しないで欲しかった。 これによって、京都行きに重みもなく散歩がてらな印象を与える。 激しいアクションも途中から単調気味。 薫の誘拐イベントに必然性を感じず、端の折り方や原作の抽出方法を制作陣があまり理解していないように感じた。 [地上波(邦画)] 5点(2015-11-09 21:52:14)(良:1票) |
9. るろうに剣心
原作漫画既読。漫画の実写化はいつになく警戒するが、ハードルを下げたせいか許容範囲(フォローとして映画版を基にしたコミカライズあり)。意外にも佐藤建の剣心はハマり役で違和感はほとんどなく、激しいアクションは邦画としては見られるレベルになっていた。逆にそれ以外の役者陣は微妙かな。実写ものとしてはまずまず。 [ブルーレイ(邦画)] 6点(2015-11-05 18:45:44) |
10. ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE
テレビスペシャルで十分な内容。欲張っていろんなキャラを出し過ぎたために、どのエピソードもキャラの掘り下げも中途半端でしかも無駄にゴチャゴチャしすぎて非常に分かり辛いし、さらに一本の線に繋がらないのは致命的。前作の話も絡めてくるのだから尚更。それに夢の共演と言えども、初出のワクワク感がピークで、この組み合わせが当たり前になってしまえば有難みが薄れて飽きるものである。 [地上波(邦画)] 3点(2015-02-01 13:24:10) |
11. ルネッサンス
実写を白と黒の2色のみで表現したようなストイックな世界観に惹き付けられる。ただ、それは最初の10分までで、SFでは手垢の付きまくった設定を如何に見せるかが脚本家の仕事なのに、新しい発見がないまま、退屈で予想通りの展開に終始する。独特のビジュアルを活かした画作りも乏しいために、白黒画面が次第に単調に映えていき、映画全体の足を引っ張る皮肉な事態に。企画倒れとはまさにこのこと。奇をてらったビジュアルだけでは観客を惹き付けられない残念なお手本。 [DVD(字幕)] 3点(2015-01-31 01:43:15)(良:1票) |
12. ルパン三世 カリオストロの城
《ネタバレ》 過去に何度も見たけど、レビューのために見る。何度も見たことがあるのにも関わらず、記憶がおぼろげになっても見ている間は最後まで飽きなかった。難攻不落の城を型に囚われない伸縮自在のアクションと奇策で潜り抜ける知的好奇心と、助かるとは分かりつつも普通なら転落死するだろう高所での活劇はいつ見ても手に汗握る。ルパンが恋心を抱いたクラリスを抱き締めようにも躊躇う演出の絶妙さから銭形警部のあの名セリフまで結末に は文句も付けようがない。最後まで娯楽に徹し続けた意味では、初期の宮崎アニメの真骨頂と言えよう。思い出補正もあるかもしれませんが。 [地上波(邦画)] 8点(2015-01-17 11:00:39) |