1. レディ・プレイヤー1
《ネタバレ》 いつものように、冴えないユダヤ人青年みたいな主人公が、女の子や仲間たちと一緒に冒険をする物語。そういう意味では、いかにもスピルバーグな映画だけど、外見がアバターになってる分だけだいぶ新鮮に見えるし、表現の自由度も増している気がします。アバターというのは、自分の本性を偽る部分もある反面、かえって本性が露わになる部分もあるのだなと感じました。「パルジファル」というワーグナーの主人公の名前を使ってるのも、スピルバーグ自身がユダヤ人という現実から自由になったせいでしょうか? 臆面もなくサタデーナイトフィーバーやキューブリックのパロディをやってるのも楽しいし、キングコングやメカゴジラの造形もリアルでカッコよかったです(モンスターバースのキングコングよりずっと出来がいい)。 ただ、残念なのは、前半のヴァーチャルパートが面白かったのに対して、後半のリアルパートが旧態依然としてつまらなかったこと。「現実世界だけが本当のリアルなんだ」ってのが物語の結論みたいだけど、この映画を見るかぎり、むしろヴァーチャルパートのほうにリアリティがあって、リアルパートのほうにはまったくリアリティがないのです。仮想世界では気のいいだけの大男だったエイチが、現実世界で出会ってみたら妙な事情通だったりするのも不可解だし、そもそも世界中から参加しているはずのゲーム・プレーヤーたちが、みんな同じ町内に住んでるのも不自然きわまりない。そういうところが、ヴァーチャル以上に嘘っぽいのです。どうせ舞台が2045年なら、自動車で白昼の町内をカーチェイスするんじゃなく、地球の周りを大型ドローンで飛び回ってもいいはずなのに。 わたしが思うに、実際の未来というのは、リアルな世界よりもヴァーチャルな世界のほうが現実性を増していくはずじゃないですか? かりに企業が個人を支配するとしても、それはリアルに拳銃をもって追い回したり、社員を出社させて酷使するのではなく、やはりヴァーチャルな手法を取るのだろうし。 映像の表現は先進的だったけど、物語のコンセプトがだいぶ保守的だと感じました。映像は8点。物語は5点。 [地上波(吹替)] 7点(2020-07-04 19:20:58)(良:1票) |
2. レ・ミゼラブル(2012)
アップの映像が多すぎます。歌っている時はほとんどアップで撮らえていました。しかし、いい表情を見せていたのはファンテーヌ役のアンハサウェイと、マリウス役のエディレッドメインくらいかなぁ。ほかの役者にかんしては、表情をアップでとらえる必然性をほとんど感じませんでした。もともとミュージカルというのは、役者のエネルギーが歌唱のほうへもっていかれてしまうため、表情や演技が、概して淡白もしくは大味になりがちなのだと思います。アップの映像に説得力が出てこないのは、そう考えれば当然です。チラシによると、本作では歌のリアリティを重視する演出手法をとったとのことですが、ならばなおさら、カメラを寄せて表情ばかり撮るのではなく、歌手たちの声の「響き」を彼らの肢体やその空間とともに大きく映像化すべきだったと思います。とくにエポニーヌの歌う「On My Own」は、実際の舞台で観る時のように、大胆なロングで撮ってほしかった! そのほうが、彼女の孤独感と、歌の力強さとを、より壮大なスケールで見せることができたはずです。何もかもをベタなアップの映像で繋いでしまったために、金太郎飴みたいに一本調子で、小説のあらすじを大雑把に映像化したような大味な映画になってしまった感じ。まあ、泣くことは泣きましたけどね、ああいう内容ですから。でも、映画そのものが興行成績を塗り替えるほどの傑作なのかというと、そうは思えませんでした。7点でもいいんだけど、辛めの6点。 [映画館(字幕)] 6点(2013-02-07 16:31:07)(良:1票) |
3. 檸檬のころ
たとえ退屈で地味な田舎の風景であっても、それを濃密な情感によって表現できてこそ映画の力だと思う。けれど、この作品では、退屈なものを本当に退屈なまま表現してしまってる。多用される沈黙には意味らしきものを感じない。「ただ淡々と描く」と言えばもっともらしいけれど、そうした手法だけに依存しても、それによって表現すべき必然性が伴っていなければ意味が無い。たしかに映像はそれらしく撮ってあるけれど、外見だけ映画らしく繕ってしまったような悪い例。 [DVD(邦画)] 5点(2008-10-26 14:49:55) |
4. レベッカ(1940)
《ネタバレ》 ヒッチコックらしい悪ふざけやユーモア、あるいはスリルにサスペンスといった要素は少ないけれど、何といっても「美しさ」がこの作品の最大の魅力。しかもすごく耽美的です。この作品の美しさの核をなしているのは、他ならぬ「レベッカ」という一人の女性の美しさなのだけれど、その姿は決してカメラには映し出されない。それは、ダンバース夫人という侍女の心の中にしか存在しない。つまり、不可視性こそが、この作品の美をかぎりなく耽美的なものにしています。見えてしまう美ではなく、見えない美ほど限り無いものはない。同時にヒッチコックは、美しさというものが恐怖や怨念の感情ときわめて親和性の強いものであることを雄弁に物語っています。大きくゆらめくカーテンの映像は、まさにレベッカの美しさを象徴するものであり、ダンバース夫人が愛しつづけた彼女の美しさの幻想であるように見える。その異常な「美」への執着にウットリとしてしまいます。 [映画館(字幕)] 9点(2004-03-27 17:34:00) |
5. レインボウ
ドラマがどうこうと言うより、この舞台や画面の雰囲気が好き。イギリスの自然観みたいなのを感じる。エルトンジョンの歌みたい。イギリス人にとっての芸術の源泉というか・・、のびのびとした自由な自然の景色がいいです。物語はいかにもケンちゃん風な支離滅裂でいってます。 [映画館(字幕)] 7点(2004-03-18 09:49:59) |