3. 老人Z
バブル期の香りが作品全体から漂う。扇を振ってる女が出てるわけでもないし、バブルに便乗した金まみれ男が出てるわけでもない。なんか知らないがとにかくそう感じる。独り暮らしをする寝たきり老人の家で、アンナミラーズの制服を着た女の子が洗濯物を干すシーンに代表される無節操なサービス精神に、あるいはそのことが含まれているかもしれない。そんな時代を謳歌する江口寿史のキャラクターがどことなく哀しく映る。とかいいつつ、はっきり言ってバカバカしい映画だ。楽しけりゃいいじゃん、な終末的なノリが凄くいい。そして大友克洋にかかれば、老人だって「ネオ」にしてしまうということがよくわかる映画でもあった。工場のおびただしいパイプやコンクリート、大友の作品ではこういう無機質のものが主役になる。「あのね、未来ってみんなツルツルに書くでしょ。ぼくはああいうのは嫌いなんです。もっとザラついて錆びていて、油もギトギトしている。だから世界はそこにしかないというか、どこにもないっていうか」。「AKIRA」の背景はこの言葉が全てを物語っている。そして「老人Z」はマンガ「童夢」のチョーさんの皺から始まっている(笑)老人とメカ。プリンに醤油をかけたらウニの味がするようなもんだ。もう、この映画はメカデザインを担当して介護用ベッドにブラックジョークを詰め込みまくった大友の道楽に違いない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-04-29 11:02:00) |