1. 6才のボクが、大人になるまで。
《ネタバレ》 12年同じ俳優を使い撮影する。この手法がやはり特別に取り沙汰される本作。この手法がどういう効果をもたらすのか気にしながら観ているつもりだったが、いつの間にかこの世界に惹きこまれていた。 描かれるのはある少年の12年間だが基本的にはアメリカの家族のよくある風景を切り取っているのだろう。もちろん母の離婚など家族や少年にとってショックなシーンはあるがそれもじっくり描くことはせずあくまでひとつのシーンとして流される。そう。この映画ではなにげない、そしてさりげないシーンが流れていくように描かれる。断片と言ってもいい。それが素晴らしい。家族の誰かが泣いたり笑ったりする姿に反応している自分に気づく。それはこの家族のそばにいて自分も体験しているのに近いというのは大袈裟かもしれないが、そう感じるくらい感情移入できていたのだとしたら上記の手法の効果は絶大だ。 母が息子を大学に送り出す日、彼女は嘆く。「こんなにあっけないとは思いもしなかった」と。時間のあまりの早さを嘆くものだが、それは積み上げたものがあるからだろう。積み上げたのはこの映画に描かれた瞬間。いろんなものを積み上げて育ててきた息子は巣立っていき家に残されるのは自分だけ。積み上げた時間が長い人ほどこのシーンに共感するのではないだろうか。特に母親は。 「瞬間とは今」とはラストの会話。なにげない今だがくだらないものではない。それは私たちにおいてもそうだと語りかけているようだ。 [映画館(字幕)] 9点(2015-04-06 03:30:07)(良:2票) |