1. 私の中のもうひとりの私
地味に良い。いや地味だからこそ良い。とりわけ主人公と同年代の人には心に光が、それも一本のローソクがやんわりと灯るような感慨にふけることができるのではないか。否定から始まった人生に悔いを覚え、動揺さえするのだが、だからといって極端な自己肯定に走ってやり直しを試みるわけでもない。あくまでも穏やかに、たおやかにセカンドライフを見つめ直そうとする姿勢に、年輪の重み、人間としての「成熟」をうまく映し出している。また、ジーナローランズをキャスティングしたセンスも光る。女性には相当苦労したであろうウディ・アレンだが、浮世の苦労もムダではなかった。「イイ女優」を見抜く目は確かなようだ。心地良い静穏がハートを満たす作品である。 7点(2004-02-21 22:40:02) |