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1.  わが青春のアルカディア 《ネタバレ》 
 松本零士の「ハーロック」はいろいろな作品で使われている。手塚治虫のいわゆる「スターシステム」と違うのは、松本零士の頭の中では(全てとは言わないが)それらが時を超えて繋がった物語だということだ。というわけで彼の代表作の一つ『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』と戦場まんがシリーズ『スタンレーの魔女』と『わが青春のアルカディア』を融合した作品。  だが、単独作品時代からのファンは、それが後付であることに気付いていて知らん顔をしている。スター・ウォーズが「当初から」9部作だと言っていたのと同じように。  本作を見る松本ファンとしては、スターウォーズファンがそれを受け入れているの「心優しさしいなぁ」と思うのだ。   『スタンレーの魔女』の部分はハーロック一世の物語をそのままに、超えられない山を超える役を、宇宙を行くキャプテンハーロックとトチローに置き換えている。だが、複葉機や片肺の軍用機と違って、星を滅ぼすほどの宇宙戦艦で炎の川を渡ったって、なにか感動が薄い。トカーガのゾル(今作では人間態だ)が、船から飛び降りるのも無理矢理感。   この映画の中で一番感心したのは「俺達は負けたが滅びたわけじゃないからな」というセリフ。   映像的には、これの前の作品であった「さよなら銀河鉄道999」のハーロックが一番かっこよかった。一緒に見に行った友人の評価も低かったのだが、何だかんだ言っても、かつての松本零士ファンとしては、6点つけちゃうのである。
[DVD(邦画)] 6点(2020-08-12 20:27:08)
2.  若おかみは小学生! 《ネタバレ》 
 何だか評判良いみたいで、”全国的に品薄な”パンフレットも買えなかった。だが私的には、確かに感動的な物語だが、「悪くないね」程度だった。   以前、小学生が一人で食べ物屋をやって生活するマンガを読んだことがあって、その連想からこの娘も天涯孤独になったのかと思ったら、おばあちゃんがちゃんと居るんじゃないか。マンガらしく幽霊の効果で「若女将」修業を始めることになる展開は面白かったが、無理して将来の進路を決めてしまわなくても良かったんじゃないの?  とは言いながら、小学生の成長と若女将としての成長がリンクしているのは、大道だが良い感じだ。   自分の考えやら嗜好によって、他者を理解・受け入れられない部分ってまあ誰にでもあるが、、おもてなし修行の中でそういう事を受け入れられるようになる物語がは良いと思う。それを表すのに、事故を起こした家族を使うのはどうかね?自分だったらとてもそんな気にはなれないと思うのだが、小学生の女の子にそこまでさせちゃうのは酷だなあ。まあ、それを乗り越える娘の物語だからいいのだろうけどね。   ところで三人の幽霊や、ピンふりさんなど、面白そうな登場人物がたくさんいて、連続TVアニメにしたら楽しそうな気がする。と思ったら、もうあるのね。それ。
[映画館(邦画)] 7点(2018-11-01 18:52:11)(良:1票)
3.  藁の楯 《ネタバレ》 
 現実の凶悪犯罪事件(特に幼少児に対する犯罪)には、自分とは直接関係がなくとも、激しい憎悪の気持ちがわく。ネットの掲示板などでも、凶悪犯(特に幼少児に対するそれ)には、過激な刑罰を求める書き込みが目立つ。  一方、人には公正な裁判を受ける権利がある。それによらなければ、いかなる罰をも受けないというのが、法治国家の国民の人権である。当然、それまでの身の安全を確保しなければならない。  それらが激しく衝突するとどうなるか?という物語。まぁ言ってしまえば、西部劇の昔から連綿と続くテーマ。今回は、その憎しみが一旦お金に変換されて、さらに大勢の人が被疑者を追い詰める。誰も信用出来ない、絶体絶命のサスペンスである。   見ている者としては、これは犯人を守る仕事ではなくて、日本の法治システムを守る仕事なのだと判ってはいるが、だんだんとこの犯人に憎しみを抱いている自分を発見して、戸惑う。それほど犯人のクズっぷりが見事な演技だったといえるが、それこそが制作側の思う壺という、手強い仕組みになっている。   最後に刑事が憎しみの主に諭す言葉が、ありきたりで内容的にも納得できず、ガッカリ感が拭えない。というより、それも計算で、後の判決後の犯人の一言で、更に観るものの憎しみを増すように出来ている。  最後まで消えないこの憎しみの力を前に、立ちはだかるのは「藁の楯」だ。多分、蟷螂の斧と同じような意味の「守る版」だと思うが、非力で虚しい楯である。もちろん守っているのは、我々を守るはずの法治システムでそこを突く憎しみの元も我々であるから、実に矛と盾の話になってくる。  実に悩ましい話である。
[DVD(邦画)] 7点(2013-09-24 18:12:43)
4.  わさお 《ネタバレ》 
 自分にもネコの家族がいる身なれば、こういう動物と心通わす物語は大好きである。古くは、マリリンに逢いたいや、ハチ公物語、最近ではきな子なんて犬映画があった。どれも実在の犬の実話ベース。皆それぞれ見たくなるよなドラマがあった。  しかし、このわさお君はこれといったドラマの無いタダの人気者なので、感動ドラマを作って本人が演じたという。  その物語というのが、どうにも…。   少年の母親が大事故に合うシーン。古典的なボールの落とし方から、レースコース上でまさかの自動車事故など、色々言いたいことはあるが、もう敢えて全てに目をつぶろう。  それでも受け入れられないのは、東京から少年に会いに帰ってきた犬が、直前で彼を見守るっているだけって所だ。訳あって離れている息子を陰から見守る親、なんてのを思い浮かべる。しかし、彼は犬である。  コレと、薬師丸の飼っている犬達が、同じ生き物だと納得するのは難しい。もちろん、訓練もしていない、マタギ犬でもないわさおが、クマと戦って相手を殺すなどという話にも。  主人公わさおに関する話が、説得力皆無というのは、致命的だ。   語るドラマも無い本人と、本当のドラマを演じる別人。多くの観客は、本人よりも劇映画を見に来ているはずである。わさお君が見たい人は会いに行くべきだ。映画を見たい人は、コレではない何かを見るべきだ。
[DVD(邦画)] 3点(2013-07-15 11:38:44)
5.  若草物語(1964) 《ネタバレ》 
 頭のクレジット表記で、「長女、次女、三女、四女」となっていたので、「名前なしで物語が進むのか、おもしれーな」と思ったら、そんな事はなく、ちゃんと名前があった。  それにしても、24歳の浅丘ルリ子と、19歳の吉永小百合だなんて、もう何と言ったらいいか分からない「お宝感」だ。   で、物語はとても普通の、女の子の恋愛話。この四姉妹のスタンスが、時代を古い順に表しているようで、興味深い。  長女は、お見合いで結婚相手を決めた、古い女性観。  次女は、自分の意志だけど、結局金持ちを選ぶ女。  三女は、自分の思い優先で、相手を追いかけてゆく、行動的な女。  四女は、恋も大事だけど、都会で生きていくのを優先にした、ちょっとドライな現代っ娘。   それぞれ自分の幸せを追い求めるのに一生懸命なのだろうが、女の子ってのは、何より恋愛の事が一番の関心事なのかなあ、とこれを見て思う。本家のリトルウィミンたちは、もうちょっと人間の幸せや将来の希望について、広い間口を持っていたように思うのだが。
[ビデオ(邦画)] 5点(2012-11-17 01:22:41)(良:1票)
6.  惑星大戦争 《ネタバレ》 
 大まかに言うと、地球を侵略しようとしている宇宙人に対して、近場にあるその基地を見つけ、攻撃して勝つ、という話。最後の本土決戦がないだけで、基本的には「宇宙大戦争」とおんなじセンス。  そして、今回の目玉は、かなり宇宙戦艦ヤマトに影響を受けてはいるが、昔からの東宝の夢「轟天号」。これとガレー船をモチーフにした敵戦艦の戦いらしい。でも、轟天は古臭い東宝特撮の世界観で、未だにエンジン噴射に煙が出る始末。敵戦艦との一騎打ち戦も、細かい描写がいい加減で、艦の位置関係と、砲塔・砲撃の向きが、メチャクチャで、かなり萎える。たぶん相当の工夫の結果なんだろうが、あの「リボルバー」も、もっと細かい所詰めなくては、戦闘機が装填された後、回転によって斜めになっちゃってるし、発射時には完全に逆さになるぞ、アレ。しかも最後のリボルバービームってどうなってんのか?という疑問がわく。そもそもあれの利点がわからない。あそこに色んな武器を入れて、臨機応変に使う位の工夫を見せろ。  んー、期待したんだがなあ。基本点5点。約20年も前の映画から、進歩していない基本姿勢に-4点。浅野ゆう子のかわいらしさに3点。轟天への固執と描写のダメさに、に-2点。で、総合で2点。 
[DVD(邦画)] 2点(2011-07-26 20:32:04)
7.  私は貝になりたい(1959) 《ネタバレ》 
 こういう映画って、どうしても「反戦」のメッセージを読み取らないといけないと言うような風潮の中で、学生時代を学んだ。当然、その時代に自主上映会で最初に観た時には、「この映画は、反戦を訴えているんだ」と考えながら観た。しかし、今から見るとまだまだ戦後を引きずっていた、あの時から時間が過ぎ、"洗脳"も溶けかかってきた今、これを見ると、この映画の主題は「絶望」ではないかと思えてくる。  激しい戦闘シーンで殺し殺される恐怖を描くのでもなく、戦闘による重症や被爆などによる悲しみを見せるでもないこの映画が、かくも絶望を思わせるのは、表題にもなったこの「今度生まれ変わるときには、誰にも邪魔されることもない、深い海の底の貝になりたい」という言葉に現れている。直前に妻や子供に対して、もう一度会いたいという思いを綴りながら、来世にはもう何ものとも関わりないことを望む。すべてを拒絶する絶望感。「戦争」というよりは、理不尽に対する怒り。いや、怒りという能動的な力もない悲しさ。  同じように戦闘のない戦争を描いた映画、「戦場のメリークリスマス」のハラ軍曹も、同じように死刑になる。彼もまた、自分の行動は、日本軍の軍人としては当たり前の行動だと理不尽を嘆く。それでも彼は「メリークリスマス」と祝いの言葉を他者に与えた。   豊松の絶望感、いかばかりであったか。 
[DVD(邦画)] 8点(2011-07-20 15:09:22)(良:1票)
8.  ワイアット・アープ(1994) 《ネタバレ》 
世間ではめっぽう評判が悪いこの映画を、私はとても好きだ。評判の悪い原因をよく聞いてみると、殆どの人が、痛快なドンパチの西部劇を期待している。アホか。日本でだって、一部でファンがいるものの、今時チャンバラは流行らない。人間の社会がある程度成熟してくると、単なる痛快なだけの暴力映画が、全体的には受け入れられないという事だと、私は思っている。その代わりに日本でも政治的要素のある時代劇、リアルな時代物が出てきたりしている。いや、昔にも多少はあったのだろうけど。そういう意味で、この『ワイアット・アープ』、アメリカの若かった時代の突出した人物の伝記映画として、面白い。今からたった百年ちょっと前の、一つの国の中でこれほど暴力的な社会があって、しかもそれが不思議なバランスというか調和を持って、次第に今に続いているというのは、実に面白いではないか。その中で暴力的な法執行官として名を馳せた人物が、実は実業家として成功したいと思っていた人間で、内縁の妻を蔑ろにして、愛人を結局は妻にする。その長い人生を映像化した本作のクライマックスはやはり、有名な『決闘』シーンだ。そこの部分は、いろいろな事情が絡んでいるが、その大きな一つとして、ジョシー・サラ・マーカスとの愛を失いたくないという部分。若い頃、それはそれは愛していた若妻を失った悲しみの彼の、半分娼婦だった内縁の妻・マティを乗り越えて(踏み台?)、やっと手にした生涯の愛。それまで、いつも人から誤解されていた自身の生き方を、彼女は受け入れてくれた訳だ。その愛と自分と家族の尊厳をかけた決闘のシーンは、今までのどの(アープ)映画よりも、地味だがリアル。ここを変に創作でカッコよくしちゃったら、この映画の意味が無くなるものね。直前の酒場の親父とのやりとりが、泣ける。流れの中で描写されるのに、いきなり最初にあえて出すほどの名シーンだ。その時のワイアットが、テーブルから引きずるように持ち上げる銃の「物量感」が重々しい。これで生きたい訳じゃ無いがコレが無いと生きられない。厄介な時代だったんだろう。そんな時代に色々誤解されながら、ジョシーと80まで生きた保安官、良かったな。 基本的に大好きな話だからというものあって、9点!
[映画館(字幕)] 9点(2011-04-30 03:47:39)(良:1票)
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