1. ワルキューレ
《ネタバレ》 この題材を英語劇でやってしまったこと、サスペンスなのにオチが周知の事実であることは、本作の着想段階からすでに問題だったとは思いますが、そんな欠点を物ともせずに撥ね除けてしまっているのが大スター、トム・クルーズの凄いところです。隻眼になっても、いや隻眼だからこそなのか、いつにもまして眼光するどく圧倒的なオーラを放ち、成功するはずのない作戦の成功を祈らざるをえない状況へと観客を誘導し、物語に説得力を持たせてしまうのは、ひとえにトムのスター性によるものです。不自由な手だからこそ行われる机の端で拳銃の弾を装填する仕草など何気ないシーンがかっこいい。それともう一人、僅かな登場ながら毒薬を口に仕込むゲッペルスの鬼気迫った感じが異彩を放っていて印象的です。…それから映画にはいまいち活きていませんが皆が精神安定剤のようにスパスパ吸うタバコがうまそうです。・・・と、もう一つ、トムの奥さん役がなんとあの「ブラックブック」のカリス・ファン・ハウテンだったなんて!…気付きませんでした。 [映画館(字幕)] 8点(2009-03-30 18:12:31) |
2. ワイルドバンチ
主人公たちは暴力的で破滅型の無頼漢どもだが、彼らとジョークを飛ばしながらボトルを回し飲みし、「 Let’s go 」の呼びかけに「 Why not? 」と答えてみたくなってしまう。そんな本作は官能的な女が出てくるわけではないのに、マタグラの辺りを意識せずにはいられなくなる〝漢〟の映画だ。 [ビデオ(字幕)] 10点(2008-04-02 18:09:52) |
3. わんぱく旋風
《ネタバレ》 「わんぱく戦争」と同じ子役で〝わんぱく〟という邦題なので続編かと思いきやそうではないんですね。子ども世界を描いていた前作とは異なり、子どもに振り回される大人を皮肉った作品となっています。前作のような鮮やかな子ども世界を見たかったという意味では裏切られた感じですが、これはこれでまた良いんですよ。夜道を二つのライトが走ってくる。車だ、ぶつかるっ!…と思ったらすり抜ける、並行して走るバイクだったという光のマジック。坊やのためにメロディ口ずさみながらメリーゴーランドを回してあげるシーンも傍目から見たらヤバイおっさんにしか見えない可笑しさ、散々欲しがった花火と爆発注意の貨物が再登場する見事なフィナーレ等々、良いシーンや思わず笑ってしまうシーンがけっこうあります。それに加えてべべール坊やの憎らしい可愛らしさ!彼の台詞や夢想世界は本当に大人が考えているのか疑わしくなるほどユニークです。大人の持ち得ないあの感性の素晴らしさ。大人には子どもの絵が描けないと言いますが、きっと常識に縛られ物事を額面通りに受け取るようになり想像力をどんどん失ってしまっているのでしょう。…と、「わんぱく戦争」に引き続きまたまたノスタルジーに浸りつつ寂しくなったのでした。もちろん映画は元気と楽しさいっぱい!〝口でウンチ?〟は紛れも無い名言だ!(食事中の方ごめんなさい) [DVD(字幕)] 9点(2008-01-07 18:15:45) |
4. わんぱく戦争
《ネタバレ》 本作は大人世界を皮肉っているところもあるのですが、政治も戦争も子どもがすれば何と清々しいのでしょう。このパワー、この瑞々しさ、この純粋さ!子どもが驚くほど生き生き描かれていて素晴らしいんですね。お涙頂戴で使われる子ども映画は嫌いですが、このように無邪気な子ども世界を捕えた作品にはいつの間にかすっかり弱くなってしまい、ついつい顔がほころんじゃいます。生徒用トイレで戦争告知を見つけ微笑む素敵な先生の気分です。元気いっぱいのやんちゃな戦争シーンの楽しさ、トラクターで秘密基地が壊されてしまうシーンなどは本当に悲しくなっちゃいますし、可笑しな名言も目白押し! いったい子どもの頃の純粋さやユーモアの切れは何時、何処に置いてきてしまったのだろう。童心に帰りノスタルジーに浸り、そして一抹の寂しさを覚えるのです。 [DVD(字幕)] 9点(2007-12-27 18:26:22)(良:1票) |
5. 私のように美しい娘
モラルや理性や知性なんてこの女を前にしたらあえなく崩れ去ってしまう。欲望や本能に従うしかなくなってしまう。そんな彼女はまさに魔性の女。男たちだけでなく彼女も欲望に忠実に生きているだけなのに計算ができるのとできないのとではエライ違いです。やはり女の方が怖いですね~。こんな女にハマってしまった男は周囲の男のネクタイの色の変化に細心の注意を払うしかないですねぇ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-11-06 18:11:03) |
6. 罠(1949)
《ネタバレ》 現在となってはストーリーは単純そのもので展開も読めてしまいますが〝見せ方〟が秀逸です。ストーカーの体を心配するジュリーが試合を見る事が出来ず、かといってじっと待ってもいられなくて上の空で街を徘徊し、二人分の夕飯を買って帰るシーンは彼女の心情を痛いほど表しています。ボクシングシーンも喧嘩のようながら観衆たちの興奮する様子で迫力満点に仕上がっています。ついつい応援したくなってしまう二人に一筋の光がさすラストも清々しいです。控え室を出入りする様々なボクサーたちの光と影が交錯する人生模様も見応え十分。実時間と作中の時間を連動させ緊張感を保ち、それを気付かせる柱時計も嫌味なく品が良いです。単調にしないように緊迫感を損なわないように実に工夫された作品です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-09-21 18:19:20)(良:1票) |
7. わが谷は緑なりき
《ネタバレ》 子供のヒューの視点から一家を通してウェールズのある時代を描いた物語。炭坑夫が失業し、学校に通うようになった大きな時代の移り変わりを見せれば、拳闘家がいつしか視力を失っていたりと何気なく身近な時の流れも感じさせる。そして古き時代を思わせる封建的ながら力強く一家を支える父親と、算数の問題ですら「穴のあいたフロなんて」と根っから現実的で大きな母親夫婦のキャラクターが味わい深い。人一倍苦労し学校を首席で卒業したにもかかわらず時代に逆行し炭坑夫になりたいと言うヒューの台詞は、その父親を尊敬し背中を見て育ってきた証であり根本的な親子像を端的に示唆している。父や兄弟の死や失業、心を支えてくれた神父さんと姉の悲恋、辛い出来事の連続でもたくましく生きる姿に人間の活力を感じ力づけられる。そして初老となったヒューの心にも未だ強い生命力を思わせる緑の良き思い出として生き続けていることに感動する。人間の物語なのに決して感傷的に描いていないところが好感を持てますね。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-27 17:36:16)(良:1票) |