1. 裏窓(1954)
深読みしすぎたせいか、意外に普通のオチだったので却ってビックリしました。 最初はジェフリーの言うことなど気にしてなかったリサやステラが、ふと気がつくとジェフリー以上にのめり込んでいく辺りの流れは巧みですね。 看護婦のステラの毒舌がユーモア感を添え、サスペンスというよりヒューマンドラマ風になったと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2008-12-03 16:47:49) |
2. 最高の人生の見つけ方(2007)
お金持ちの友人を持ったからこそできた壮大な旅行。 相手が貧乏人だったらどうなったんでしょうか? 棺桶リストに書いたことを金にモノを言わせて実行していくシーンは、かなり臭みを感じます。 エドワードを単なる金持ちじゃなく、人間味のある人物として描くことでその臭みを消そうとしているようですが成功してるとは言えないと思います。 金持ちでも何でもない普通の人が地道に夢を実現しようと努力する姿ではダメだったんでしょうか? あまりに浮世離れしてて共感できませんでした。 モーガン・フリーマンの笑う姿って久々に見たような気がしますね。 陰気くさい役柄が多かったので。 その笑い顔に6点!! [DVD(字幕)] 6点(2008-12-02 13:42:38)(良:1票) |
3. レ・ミゼラブル(1998)
ロベール・オッセン監督版(1982)を見てからの鑑賞です。 オッセン版で不足と判断されたシーンを強化したという印象が強かったですね。 オッセン監督の方はジャン・バルジャンを終始中心に据えてるのに対し、この映画ではコゼットやマリウスの個性が正面に出てきています。それは悪いことではないのですが、その分ジャン・バルジャンの描写が薄まった感がありました。 これは個人の好みだと思いますが・・・。 オッセン版の淡々として多くを語らない映像の方が想像力をかき立ててくれるような気がします。 ジャヴェール警視が自ら死を選ぶシーンは難しいですね。 オッセン版ではあっさりでしたが、この映画ではその経緯を丁寧に描こうとしていますが、成功してるとは思えません。 根本的に不可解だからなのでしょう。 でもそれにチャレンジしたという点は評価していいと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2008-11-30 18:57:46) |
4. ユナイテッド93
全編を貫くストーリーが希薄で、部分を繋ぎ合わせただけのシロモノ。 9.11という事の重大さが既に『ストーリー』であるとはいえ、映画にする以上は誰か一人(複数でもいいですが)の視点から見て再構成したほうが見やすいし感情移入できますが、ただ時系列にバラバラのシーンが延々と続き、何が言いたいのかひたすら困惑しました。 映画とは確固とした立脚点があり、その立脚点から解釈したメッセージを構成することが映画の生命線のはず。 この”映画”は立脚点や解釈を確立することを最初から放棄しているために、”事実らしきシーン”を切った貼ったして時間を稼いだだけの思考停止動画になってしまいました。 その思考停止ぶりが見ものといえば見ものでした。 [DVD(字幕)] 3点(2008-11-28 17:54:14) |
5. 犯人に告ぐ
主要人物がTVに出演して犯人を煽り、犯人が追いつめられていくというメインのストーリーは『身代金(1996年/メル・ギブソン主演)』に酷似しています。 っていうかほとんど着想のほとんどはそこから出てると言っても良いほどだと思います。 サイドストーリーはともかくメインの部分でそういうパクリはまずいでしょう。 これで大きく減点。 サイドストーリーも近年の捜査もので良くあるシーンを繋げただけでお粗末。 ただし、テンポは悪くなく、すんなり見ることはできるのと、豊川悦司の存在感は評価できます。 [地上波(邦画)] 4点(2008-11-16 23:57:47) |
6. 遥かなる山の呼び声
高倉健といえば『北海道』・『後ろ暗い男』というイメージですが、この映画でもそのまんまでした。 山田洋次流の別の高倉健を見せて欲しかったです。 ラストで民子が田島に渡したハンカチが黄色かったのは、やはりアレなんでしょうか (笑) [DVD(邦画)] 6点(2008-11-11 15:43:44) |
7. ミリオンダラー・ベイビー
評価が難しい作品。 尊厳死についての各自の考え方によって評価は分かれるかもしれません。この作品でも答えを出していません。 結果的に尊厳死を選択したわけですが、そこに至るまでの苦悩、処置を施してからの描き方、いずれも明確な何かを指しているわけではありません。 ”明確な答えが出せない”というのが答えなのでしょう。 尊厳死に対する考え方がいまだ社会的に明確になっていない以上は現時点ではこうするしか無かったと思いますが、尊厳死は古くからある問題であり、現時点で映画にする以上はもう少し踏み込んだ解釈が欲しかったと思います。 前半のサクセススト-リーは後半へ繋ぐための重要な要素ですが、この映画の要点は『尊厳死』にあると思うので、もう少し後半に時間を割いても良かったかもしれません。 マギーに処置を施す直前のシーンですが、娘から突き返された手紙に凝然と立ちつくすダン、そして処置の前に”モ・クシュラ”の意味を伝えるまでのシークエンスは、抑え気味の演出が却って情感に溢れており上手いと思うんですが、ちょっと直行すぎた感はあります。 もう一つ捻りというか悩む姿を入れても良かったような気がしますが、くどすぎると判断されたのかもしれません。 全体として重くやるせないイメージはあります。 尊厳死に関しては”そうするしか仕方なかった”という『意味づけ』が非常に重要であり繊細な問題点ですが、その意味づけを描く過程がやや強引な印象があります。 重要であるがために『意味づけ』に気を取られすぎたのでしょう。 女子ボクシングという分野を選んだ点が一つ。あちらでは一般的なのでしょうか? 馴染みのない日本ではその奇異さに目を取られて感情移入しにくい面があります。 もう一つはマギーの家族の醜悪さ。もちろん意味づけの大事な要素なのでああいう描き方は外せなかったんでしょうが、少々極端すぎるきらいがあります。 その設定への奇異感・嫌悪感が映画全体の評価に影響する面があるのは痛し痒しといったところでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2008-10-31 17:57:29) |
8. アラビアのロレンス 完全版
アラブ人になりきれず、英国軍人にも戻れなかった一人の男の悲哀。その悲喜こもごもを丁寧に描いていると思いました。 ロレンスに限らず人物の描き方が総じて丁寧ですね。 特にファイサル王子の英国軍に力を借りなければならないが侵略はされたくないという警戒感と、その英国軍人でありながらアラブ人に限りなく近づいたロレンスへの感情の複雑さの描写と演技は巧みです。 英国も老獪ですが、結局は帝国主義的侵略が許されなくなりつつある世界の趨勢を読んで立ち回ったファイサル王子が一枚上手だったように感じました。その間で弄ばれたのがロレンス。 比較的パンの少ないカメラワークながら、絵画的ともいえる緻密な構図で動感を表している点は見事です。ワイド、ロング共に映像美をたっぷり味わえました。 現代の忙しくシーンの切り替わるカメラワークに慣れた目には却って新鮮に映りましたね。 ピーター・オトゥール(ロレンス)の演技にはややぎこちなさを感じますが、この映画の場合は却ってそれが効果的だったかもしれません。 アリ役のオマー・シャリフはエジプト出身だけあって風景に馴染んでいるし、アンソニー・クインは中東とはまったく縁の無い出身ながらその無骨さと荒々しさは現地人並に見えました。名優ですね。 [DVD(字幕)] 8点(2008-10-26 23:12:40)(良:2票) |
9. 十二人の怒れる男(1957)
名画としてその名は知ってましたが見るのは初めてでした。 タイトルからイメージして12人が一致団結して何かに抗議する映画かと思ったら大違いで、12人が怒り狂いながら討議する映画だったので、最初はビックリというか自分の勘違いに笑ってしまいました。 90分を感じさせない密度の濃さに感動すら覚えました。 カメラワークと心理描写の連携も秀逸。 台詞にムダがほとんど無いですね。一見雑談に見える台詞も各人の個性や背景を描き、それが心理の揺れ動きを理解する助けになっています。 最後まで有罪を主張した三番陪審員がラストで折れるシーン。前半に何気なく見せた息子の写真がラストで重要な小道具になっており、秀逸な伏線だったと感じました。 最後のあっさり目の終わらせ方も良いと思いました。あそこで妙なシーンを挟んだらあの密度感は一気に崩壊したでしょう。 この密室で出された”推定無罪”の結論をひっくり返す解釈も無きにしにあらずでが、それでもこの映画の価値をおとしめるものではありません。 明晰な一人の男をきっかけとして法廷でも明らかにならなかった事実が次々と明らかになっていく爽快感がこの映画の持ち味だと思うからです。 隅々まで入念に気を配って作られた見応えのある名作だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2008-10-24 19:05:25) |
10. ミスト
《ネタバレ》 クリーチャー物なのかパニック物なのかどっちつかず。 ”何かが霧の中に潜んでる”ってのを描くにはその”何か”は最後まで見せないほうが良いし、出すなら出すで徹底的に気味悪く描くべき。 この作品はそのどちらにも失敗しています。 巨大イナゴが出てきたシーンには思わず爆笑。 薬局シーンの「エイリアン」完全パクリぶりに失笑。 全く怖くもなく、終末思想を説く女がウザいだけです。 最後のオチはブラックジョーク? ガソリン無くなったら他のクルマから抜けばイイだけだし、自殺する前にできることは幾らでもあったでしょうに。 やるべきことを放棄して自滅した愚かな人間を描きたかったわけ? ”なんで○○しないんだよ!!”的描き方はホラー映画の常道といえば常道ですが、この21世紀に今さらなんでこんな映画を作ったのか、まさに『五里霧中』。 ダラボン監督はもうそろそろ廃業した方が良いのでは? [DVD(字幕)] 1点(2008-10-22 19:57:12)(良:5票) |
11. アマデウス ディレクターズカット
モーツァルトに思い入れのある方には面白い作品でしょうが、さほどでもない人にはそれほどでもないかと思います。 物語の中核をなすのがサリエリのモーツァルトに対する妬みと羨望が入り交じった感情表現ですが、これは良く描かれていました。 特に皇帝の目の前でモーツァルトの評価に言及する時の複雑な表情、また最後のモーツァルトの死の直前にレクイエムの作曲を手伝うシーンでモーツァルトから「あなたは良い人だ。今まで嫌われてると思っていた。」と赦しを請われるシーンでのサリエリの何とも言えない表情は絶品だったと思います。 モーツァルトを演じたトム・ハルス自身がピアノの名手だそうで、劇中の演奏シーンは自身の演奏によるものだそうですね。 トム・ハルスも下品で節操のない小男を見苦しいまでに快演っていうか怪演してて好感が持てました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-10-22 10:43:14) |
12. 13デイズ
緊迫感があり、それが途中で途切れないところが良かった。 息抜きシーンらしきものが無く、あらゆるシーンや会話が一つの方向に向かっているのを感じさせます。 実際のところ、キューバ危機なんて大国のエゴとエゴのぶつかり合いでしかなかったわけですが、『大国』ならではの事情もあるんでしょう。 日本人にはちょっとその感覚が本質的に分からない分、逆に緊張感を味わえたと思います。 キャスティングも実在の人物に比較的良く似た配役で、努力の跡が見えます。 ケネディ大統領は似てるというには少々苦しいですが、まあ雰囲気的には似てたかなと。 ロバート・ケネディはかなり良い線行ってたと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2008-10-12 21:08:14) |
13. ボーン・アルティメイタム
2作目は酷かったので、3作目は期待してませんでしたが、なかなか良くできてると思いました。 この作品全編通して、『リアリティ』を追究している点が見る者を引きつけるのでしょう。 ヒロイン役に変に美人を持ってこない辺りにそれを感じます。 アクションシーンそのものは編集でかなり誤魔化してるようなフシもありますが、それよりもボーンの持つ知能・判断力を視覚化し、アクションにまで高めている点が評価できます。 [DVD(字幕)] 8点(2008-10-06 00:11:09) |
14. レインメーカー
マット・デイモンのキャラクターの良さが全面に出ていて爽快感のある作品だと思います。 複数のストーリーを同時進行させながらルーディの人物描写をしつつ、物語に幅を持たせてる点は秀逸。 サイドストーリーの分量や配置も的確です。 ダニー・デヴィートやクレア・デインズの存在感も抜群でした。 かなり複雑な要素をぶれずに一本にまとめている辺りは、なかなかの秀作だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2008-10-05 23:58:33) |
15. ザ・ロック
総合的には良かったが、ハメル准将の役柄には幻滅。 単なるテロリストじゃない微妙な役のはずが、知性と統率力を欠いた単なるテロリストにしか見えない。 部下が反乱を起こして殺されるシーンもチープ。 ですが、テンポは良いし、描写も一部を除いては丁寧。 ショーン・コネリーの存在感はやはり抜群。 [DVD(字幕)] 8点(2008-10-05 23:42:08) |
16. レ・ミゼラブル(1982)
ジャン・バルジャン役のリノ・バンチュラは、原作を読んだときに思い描いた姿に良く似ており、その意味でかなり感情移入できました。 後半、マリウスが参加する革命運動の描写にかなり時間をとってますが、やや冗長すぎた感があります。 ここまではテンポ良く描けていました。 原作は大作ですから3時間ほどの時間に収めるのは大変だったと思いますが、大胆な省略法を使いつつも、雑な印象はなく、メリハリが効いています。 総じて丁寧に作られた良い映画だと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2008-10-05 22:57:50) |
17. AKIRA(1988)
この作品を映画と思ってはいけないと思います。 『ビジュアルアーツ』の世界でしょう。 ストーリーは重要ではなく、あるのは世界観と卓越した映像美。 それを楽しむための「映画」ですね。 [DVD(邦画)] 6点(2008-10-03 18:22:01) |
18. サクリファイス
《ネタバレ》 前半のオットーの趣味に関する長いセリフ、夫婦間・親子間が上手くいっていない様子、アレクサンデルが母の庭を手入れして却って美を壊してしまった話、オットーがアレクサンデルにマリアと「愛し合う」ことで”救われる”と告げるシーン・・・・それぞれの話に何の繋がりがあるのか今ひとつ読み取れなかった。 子供に名前が無いのは何故か? そもそも家に放火する意図は? 無理矢理解釈を試みると ◆家とギクシャクした家族関係 →破壊すべき、あるいは破壊せざるを得ない「今の世界」。 ◆名の無い”子供”→ 希望を託すべき「未来世界」の象徴。 でしょうか? アレクサンデルが自分の家に放火して、救急車で運ばれていくシーンには唖然。 犠牲になったのはアレクサンデルじゃなく、残された家族じゃ・・・・。 あまりに抽象的すぎて理解を超えてますが、映像美というのは確かにあったと思います。 ミルク瓶が床に落ちてパッと飛び散るシーンに、それを強く感じました。 [DVD(字幕)] 6点(2008-10-02 08:52:37) |
19. アイ・アム・レジェンド
途中でゾンビ映画だと気がついてズッコケました。 ラストのお粗末さにもズッコケました。 [DVD(字幕)] 3点(2008-09-23 22:44:16)(良:1票) |
20. ハウルの動く城
《ネタバレ》 『ラピュタ』と『千と千尋』を足して2で割ったような印象がぬぐえませんでした。 お城は動く必要があったんでしょうか? ソフィーはお婆さんになる必要があったんでしょうか? 宮崎アニメ全般に動くもの・飛ぶものへのフェティシズムを強く感じますが、この作品はそれだけが妙に誇張され、その分ストーリー性が希薄になっているように思えます。 カルシファーに水をぶっかけてお城が壊れるまでは、まあついて行けましたが、それ以降は難解というか混乱しています。 『愛のチカラでハウルが魔王になっていくのを食い止めた』・・・とうのがストーリーなのかな??と思いましたが、正直言ってよく分かりません。 まず、ソフィーがハウルに愛を感じるようになったキッカケが今ひとつ描き切れてないのがそもそもの混乱では? イケメンだから・・・の訳ないんでしょうが、それ以外に感情移入できるような様子が描かれていないために、物語に入っていけませんでした。 [DVD(字幕)] 5点(2008-09-23 22:37:44) |