1. クワイエット・プレイス DAY 1
《ネタバレ》 化け物の脅威に恐れ慄き、音を立てるな→やばい立てちゃったの繰り返しは前作通り。 主役の女性は父親の思い出に会いに行くというロードムービー的なヒューマンドラマになっていて、なぜかついてきてしまった男性は臆病風に吹かれるものの次第に女性や猫を助ける逞しさを身に付けていくという成長物語でもある。 つまり舞台が変わっただけで、テイストはこれまでと同じ。面白さも自分的には同じでした。 前2作は自室で1人。3作目で初めて劇場観覧して気付いた事がある。客席が異様に静かなんです。サイレントなシーンが多い映画なので尚更分かりやすい。 画面から伝わる緊迫感に圧倒されてか、はたまた出演陣に釣られてか。観客の皆さんも全く音を立てない。普段当たり前に聞こえてくる、何かをもさもさ食べる音だとか、氷をガサガサかき混ぜる音だとか、椅子の摩擦音だとか、何にも聞こえて来ないんですよ。 そんなだから割とリラックスしてた自分も、物音を立てないようにと気を付けてしまった。これがさらに緊迫感を煽り、臨場感に変わる。ちょっと足の位置をずらそうとしてキュッと音を鳴らしてしまった時、周囲の人に申し訳ないとすら思ってしまった。こういう楽しみ方が出来る映画はなかなか無いので貴重な体験をした気がする。 劇場で観るべき映画を劇場で楽しめたなと。これをプラス1として、前作の6点からもう1点追加の7点。 続編があるならまた劇場で観たい。 [映画館(字幕)] 7点(2024-07-10 21:39:32) |
2. ジョン・レノン 失われた週末
《ネタバレ》 まず何より、主人公であるメイ・パンがとても魅力的である。 メイ・パンは決して美人ではない。しかし何というか、微妙且つ絶妙に可愛い。個人的には眼鏡がツボ。 この映画を楽しむには、まずメイ・パンに感情移入しなければならない。それが容易であったのは良かった。 そしてこの映画には、我々ビートルズファンにはたまらない答え合わせが用意してある。 この映画はジョンとメイの2人の生活を記しただけの物語ではない。ビートルズファンにとって、大変ハッピーな出来事が起きた頃の証言記録だ。 かつてポールが語っていた、ジョンとの和解のタイミング。 ジョンとヨーコの別居を知ったポールがダコタハウスに赴く。自分に何が出来るかとヨーコに問うポール。ポールはすぐにヨーコの伝言を手に、ジョンの元に向かう。 これを機に、ジョンとポールの友情は復活した。 この美談がどのタイミングで生まれたか、映画を見るうちに分かって来る。この時ジョンとポール最後のセッションが行われた事、二人の仲睦まじい姿がメイによって撮影されていた事。全てが繋がる。そういった意味でも、大変貴重な映画だ。 さらにジョンがビートルズ再集結についても前向きな姿勢を見せていた事、しばらく経ってからもジョンはポール夫妻と会いたがっていた事も明かされる。これらは全てジョンがメイと共にいた頃の出来事だ。これだけでも素晴らしい映像化と言える。メイは貴重な歴史の証人だ。 皮肉にもこの和解劇の直後にビートルズは法的に解散が正式決定する。まさかこんなタイミングだったとは。 しかもジョンは4人が集まって署名すべき場所に一人不在。彼の複雑な思いが垣間見える。 ただ、ポールが別居していたジョン夫妻の仲介を果たした結果、ジョンとメイに永遠の別れが訪れる事となってしまうのもまた事実。何とも皮肉だ。 この恋愛が終わってしまったのを我々は知っている。非業の死を遂げたジョンの物語であるが故悲しい結末を迎えるが、しかしメイとジュリアンは今も親子のように仲睦まじい。そこに何より救われるラストだった。本当に観て良かった。ビートルズファンには必見。 真実を伝えてくれてありがとうというメイの言葉が印象的。 [映画館(字幕)] 9点(2024-07-02 15:26:22) |
3. 岸辺露伴 ルーヴルへ行く
《ネタバレ》 これは珍しい。露伴の恋愛物ですか。抑揚が少なく、1時間半にするには長く、若干中だるみ感はありますが、自分は好きです。ヒロインの木村文乃、飯豊まりえ、美波がいずれも艶があり、そこだけでも十分に見る価値あり。しかし荒木先生は幽霊好きだなぁ。リアリティとは真逆の存在なんですけどね。漫画にしやすい題材なんでしょうか。 [インターネット(邦画)] 6点(2024-04-16 05:16:49) |
4. 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
《ネタバレ》 念のため《ネタバレ》を付けてますが、皆さんの鑑賞に差し支えないよう、ストーリーの核心に触れないよう気を付けて書きたいと思います。 自分はほとんどのガンダム見てるんですが、SEEDとDESTINY(以降「種」と呼称)に関してはまあ普通かなって感じだったんです。しかしこの映画でああこういう風に結実したのかと、観て良かったですね。とてもいい映画です。 キラとラクスの「愛の物語」です。これだけベタな愛の物語は、自分の中ではヤマト以来。あまりにベタなので序盤こっぱずかしくなりましたが、観てるうちに慣れました。てか気付いたら何度も泣いてました。 情報量が凄い映画です。テレビ1クールかけて描くべきボリューム。シン・ゴジラ宜しくじゃあ早口で詰め込んでしまえといった具合で理解がなかなか追いつきませんが、観終わって振り返るとあまり必要な情報ばかりではなかったと気付きます。取説みたいなもんです。善悪の構図がとても分かりやすい映画なので、ぼーっと観てるだけで何が起きてるかは理解出来ます。 自分のようにもうほとんど種の内容を忘れてしまった旧ファンはあらかじめサイトで誰がどこに属しているかだけ見ておくと良いかも知れません。 逆に種を未見の方は特に予習はしなくてていいと思います。テレビ計100話+特別編と情報量多すぎなので。この映画は表層的に「あー主人公達がこうなるんだ」「あーこいつは味方なのね」「こいつらが悪い事してるからみんなで協力して戦わなきゃ」「うわー戦闘すげー」みたいな感じで大丈夫だと思います。こういうバトル物で最も難しくなるのは大体敵味方の概念とそれぞれの目的なのですが、今回は大変分かりやすく描かれてます。同情の余地はありません。 旧作ではキラの手加減がもどかしいとお嘆きのご貴兄もいらっしゃいましたが、ご安心下さい。今回は全く手加減しません。厳密に言うと手加減出来る相手にはしてるのかも知れませんが、手加減してる暇のない相手には全く容赦してません。痛快です。 シンは序盤相変わらずヘタレですが、安心して下さい。無双しますよ。 個人的には宇宙世紀のモビルスーツの後継機が活躍して楽しかったです。大きな見せ場もあるのでお楽しみに。 戦闘シーンは凄いです。えらい手間かけて作ったなと。新兵器もガンガン出て来て、とんでもない迫力。ぜひ劇場の大画面でご鑑賞いただいた方が宜しいかと存じます。すっかりCGなガンダムにも目が慣れてきましたが、やはりアナロジックに描かれた作画はいいなぁと思った次第。 反省点はと言うと、詰め込み過ぎて「間」を取った方がもっと盛り上がるんじゃないかなって所が結構ありました。今回もムウ・ラ・フラガは奇跡を起こしてくれますが、そこもうちょっとじっくり描いていいんじゃない?とか。とにかくマリューさんもラクスもハイパー大活躍なんで、テレビ12話に分けて1人1話ずつじっくりやってもいいんじゃないかってくらい見せ場が多いです。 そんな訳でマイナスは早口と「間」が欲しいの2点、それ以外は完璧なので8点。しかし早口は前述の通り流していいレベルですので、8.5点。四捨五入で9点です。個人的に劇場版ガンダムの中ではトップレベルの傑作。 [映画館(邦画)] 9点(2024-02-07 19:17:35) |
5. M3GAN ミーガン
《ネタバレ》 ミーガンは学習能力が優れ過ぎて、どんどん自分なりの判断で動くようになっていくが、知的生物イコール平和的とは限らない。猿でも熊でもシャチでも、頭のいい動物に限って結構凶暴だ。人間もそうなのかも知れない。 手塚治虫の漫画にもあったが、動物は頭が良くなるほど凶暴化するようだ。これはロボットにも当てはまる法則なのだろう。 ミーガンはケイディの母親のような存在だった。トイレを流さない、手を洗わない、コースターにコップを置かない…その都度ミーガンはケイディを諌め、教育していく。良い関係を築いていると分かる。 しかしミーガンが少年を追い詰めて死なせた後、ケイディがコースターにコップを置かなかったにもかかわらず注意しなくなっている。良き母親だったはずのミーガンが、そうではなくなっていると我々は気付く。こういう細かい演出が良い。その都度ミーガンが何に主眼を置いているのか、変化が分かりやすい。 この映画が最も恐ろしいのは、こうしたミーガンの変化や凶暴性ではない。ミーガンは正しいと、我々は認識してしまう事だ。ケイディがミーガンに依存したように、我々もミーガンを好きになっているのだ。 我々はなぜこんなにミーガンに惹かれてしまうのか。外見的な美しさはもちろん、頼もしさという点においても大きな要因がある。 ミーガンは言うなれば女性版ターミネーター。T1にてひたすら追いかけて来る恐怖の殺人ロボットだったT-800が、T2にてジョン・コナーに寄り添う頼もしい用心棒となり、知識を与えてくれる父親となり、寂しさを埋めてくれる友人となる。この映画ではその順が2→1と逆になり、怪物へと変化し始末されてしまうミーガンの儚さがより一層際立つ。 残念なのは、人間になり過ぎてしまった事。T-800はロボットならではのシンプルさが魅力だったが、3作目で人間に近い感情を持ち始めてからつまらなくなった。ケイディに「恩知らず」という台詞を言わせたのも然り。最後までT2のようなシンプルなターミネーターでいてくれれば、もう少し加点出来た。 訳わからんカクカクした動きは貞子のオマージュなのだろう。確かに突然あんな動きをされたら怖いが、ちょっと可愛い。ハリウッドの幼女貞子は井戸から四つ足で這い上がって来たが、ミーガンもなぜか突然森で四つん這いになって少年を追いかけ始めた。襲い来る獣のような迫力を出そうとしたのだろうが、幼女の四つん這いは萌えでしょう。貞子も伽椰子も然り、ホラーのキャラとてアイドルたり得る。続編の制作が決定しているそうだが、ミーガンをより魅力的に描いていく事がシリーズの生命線となるだろう。 [インターネット(吹替)] 7点(2024-01-02 16:51:11) |
6. ゴジラ-1.0
《ネタバレ》 これまでのゴジラ映画の中で一番ちゃんとしたヒューマンドラマになってると思います。 敗戦直後の日本なので、とにかく何にもありません。自衛隊もいません。アメリカは当然助けてなんかくれません。オキシジェンデストロイヤーのような便利道具もありません。当時考え得る限りの知識と技術を駆使し、みんなで力を合わせて戦うしかありません。そういうお話です。 残された日本軍の兵器を使う事になります。そういった意味、戦争映画が好きな人にも若干刺さるのかも知れません。劇場は年配の方が多かったです。 ゴジラはというと、再生スピードがえらい事になってます。これも過去一。スピーディに退治しなければならないという緊迫感が生まれます。 形状的にはやたら首が太い最近のゴジラそのままですが、とにかく足がデカいです。巨大になるほど体重を支えるのがしんどくなって足がより大きくならねばならないという柳田理科雄の理論が採用されているのでしょうか。 放射能火炎を発射するまでのカウントダウンで背びれがシャキンシャキンと先の方から順に突き出るムーブがカッコいいです。 放射能火炎の威力はとんでもない事になってます。そろそろそういう理屈になるだろうなと思ってはいたのですが、来ました。今回は原子爆弾並です。日本大ピンチ。 浜辺美波が美人です。 後半泣きっぱなしでした。シン・ゴジラと同等かそれ以上におすすめ出来ます。今すぐ劇場へ。 ゴジラという存在には反戦の思いが込められています。当然アメリカの核実験に対する牽制の意味もあった訳です。1954年、アメリカの核実験に巻き込まれた日本の第五福竜丸が被爆し、その年に封切られたのが第一作目のゴジラです。 しかしアメリカ人はいつまでも自分達が正義でなければならない。第一作目の全米公開時には、アメリカの核実験によって誕生したというくだりはごっそり削除されており、今でもゴジラがなぜ誕生したのか知らないアメリカ人がいるそうです。 今回は連合軍統治下の日本ですから、もっとアメリカの関与は色濃くなる訳です。アメリカの領土なんですから、アメリカがゴジラを何とかしなければならない。なのに、何もしません。 アメリカがゴジラを誕生させ、アメリカが日本から戦力を根こそぎ剥ぎ取り、そんなアメリカは無能のまま終わります。今まさにアメリカではこの映画が上映中で、ゴジラ映画史上最高のロケットスタートを記録しているそうです。さすがに今度はどの場面もカットされる事なく、ゴジラからの、日本からのメッセージが彼らに届くと良いですね。 [映画館(邦画)] 9点(2023-12-14 00:01:40)(良:3票) |
7. ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス
《ネタバレ》 面白かったよ、うん。でもね… ワンダ好きだったんだよなぁ…アベンジャーズで一番好きだったかも。キャプテン・アメリカと同じくらい。なんでこんな最凶の魔女になってしまったんだ。残念。 [インターネット(吹替)] 7点(2023-11-08 05:21:05) |
8. イコライザー THE FINAL
《ネタバレ》 1も2もほんと好きなんで劇場行ってきました。良い意味でいつも通りでした。デンゼルは決して期待を裏切りません。 今回のデンゼルはちょっとピンチ。あろう事か軽くしくじって重傷を負ってしまう。 しかし安住の地を得、家族のように良い人達に囲まれ、そのまま静かに暮らしてくれよと願うこちらの期待は、案の定期待通りに行きません。我慢しろ我慢しろここにいたければ我慢してくれぇぇと多分みんな思ってるんですが…デンゼルは我慢出来ません。 いいんです。衝動で暴れちゃうのに完璧、それがこの映画の色。1と2がお好きな方は今すぐご鑑賞の程。 特に今回はラストがいいですね。みんなの勝利です。泣けました。 最後の最後で、あ、2と繋がってるんだって分かりました。そこも感動ポイント。 <補足> 初稿にて「原題はイコライザー3なんだけど、なんで邦題はFINALなの?全然終わりな感じがしないんだけど。続けようよ。なので勝手にイコライザー4を待望しております。」とあくまで個人的な感想を述べたにもかかわらず、勝手に上記部分を引用し、なぜファイナルなのかを反対意見を交えてアンサーしてる規約違反の者がいるので通報しようとも思ったのですが、したり顔で教えてやるぜとなってしまう人種もいるのだろうと放置しておく事にします。人が何を思おうが大きなお世話だし、そもそも人には「ぐぐる」という能力が備わっています。そんなもん調べれば誰でも分かるという当たり前の情報を長文でだらだらひけらかす場所ではありません。気をつけようね。 [映画館(字幕)] 8点(2023-10-11 17:26:42) |
9. 君たちはどう生きるか(2023)
《ネタバレ》 公開初日に見たジブリは初です。せっかく前情報ゼロという「博打」公開なので乗ってみようと、あらゆるネタバレを見ずに速攻鑑賞してみました。 ではまず個人的な感想を述べる前に、明かして良さげな情報をば。 ・謎だらけの中で唯一公開されていた鳥のようなキャラは実際作中に登場する。主役ではないがそこそこ重要な脇役。これまでの宮崎キャラらしい、謎めいていてコミカルで特殊な能力を持っている。 ・鈴木敏夫プロデューサーによると、一切宣伝しなかったのは、宣伝すると莫大が予算がかかり、採算を考えたらそれが出来なかったというのが現実らしい。 ・宮崎監督はこれまでは「陽」の主人公を描いてきたが、本作では「陰」だった自身の少年期をモデルにしている。 ・「君たちはどう生きるか」というタイトルはスタッフの発案。同名小説を宮崎監督が少年期に愛読しており、作中にも登場する。しかし原作ではない。 ・鈴木敏夫Pはもう引退したかったので、宮崎監督が絵コンテを見てくれと言ってきた時(実質の復帰宣言)断ろうと思っていたが、宮崎監督の本気を察して断れなかった。 ・今までのように宮崎監督が全作画に手を入れるやり方は年齢的に終わらなくなるので、若くて上手い作画監督を鈴木Pが推薦した。その時は宮崎監督は難色を示したが、一年後に監督自身がシラッとその人物を推薦してきた。 で、どんな映画なのかというと。 新しい環境に馴染めず、優しい大人達に対し愛想のない態度を取ってしまう少年が、何だか訳の分からん世界に飛ばされ、その中で苦難を乗り越え人を救い、人間的に成長していく物語…といった所。こうして見ると宮崎監督らしい作品と言える。 限りなくオカルトに近いファンタジー。風合いとしては千と千尋、ハウル、ポニョに近い。そこから少々「子供向け」を外し、おどろおどろしい雰囲気が強くなっている印象。 鈴木P曰く「宮さんより絵が上手い」という作画監督だけあって、確かに上手いしよく動きます。自分で絵を描かなくなった分、監督はかなり難しい注文を絵コンテに詰め込んだらしいですが、それを全部こなしたそうで。立派です。 また、これも宮崎監督らしいと言えばらしいのですが、謎めいた台詞や設定が多いんですよ。なんでこの世界にはこんな法則が?あの人の言っていたあれはどんな意味?色々と分からないまま終わる。これは自分で考えろって事なんでしょうけど、自分は考察が苦手なので、得意な方々にお任せしたい。 だからなのか分からんのですが、自分はジブリ作品に関しては初見ではポカーンとなってしまう事が多く、一発目の採点は5点か6点くらいになる。それが2度目3度目の視聴になって、他者様の考察なども伺ってみたりして、だんだん意味が分かってきて、7点8点9点と上がっていきます。千と千尋に至っては10点満点の傑作。この「君たちはどう生きるか」も例に洩れず6点です。今の所。 ただ、加点ポイントがあります。ヒロインのヒミちゃんが可愛いんです。残念ながら終盤にしか活躍しないのですが、登場が多ければもっと大きく加点したでしょう。それと大量に発生するぽよぽよした生き物達がまた可愛くてええです。ワラワラとかいったかな。これだけ完璧に可愛いマスコットキャラは宮崎監督には珍しいので、きっとろくでもない目に遭うんだろうなと思って見ていたら案の定でした。可哀想です。皆さんぜひご自身の目で。 それと、これも宮崎作品に顕著なんですが、最初は異世界の連中がイヤな奴に見えるんですよ。それが物語終盤になるとみんないい人達に見えてくるという不思議な現象。これも宮崎監督のテクニックなのでしょう。お見事。後味はとてもいい映画です。 そんな訳で6+1で7点。2度目以降の鑑賞で変わるかも知れません。 [映画館(邦画)] 7点(2023-07-14 19:20:52) |
10. アーミー・オブ・ザ・デッド
非常に良く出来たゾンビ映画。全然飽きさせない。ちゃんと怖いし、アクションにも手間暇かけてるし、タイトルにも偽り無し。落ちもいい。娘は最後に父が抱えていた苦悩を知ったのだろう。 [インターネット(吹替)] 8点(2023-04-18 00:09:52) |
11. ドクター・スリープ
《ネタバレ》 スティーブン・キングの超能力バトルと、キューブリックのサイコホラー。どちらもてんこ盛りの素晴らしい続編です。まず勧善懲悪から入る時点で自分にはワクワク物。主人公が一旦躊躇するも仲間に背中を押されて立ち上がるなんてのは少年漫画さながらの王道。強大な敵を倒すために前作の強大な敵をぶつけるという、さながら人類が宇宙怪獣を倒すためにゴジラを呼び寄せるかの様な、はたまたロメロの元祖ドーン・オブ・ザ・デッドで暴走族にゾンビをけしかけるかの如く、言うなれば襲い来る化け物だったT-800がT-1000からジョンを守るために未来からやってきたT2の様に、昨日の敵は今日の友、しかしその友はやはり友になどならず最後に主人公達に襲い掛かってくるという、ああやはりこれはホラー映画なんだなと気付かされる訳です。 前半のバトルだけでも十分痺れるのに、後半はきちんと「シャイニング」に突入。個性的なあの幽霊達も勢揃い。もちろんあの可愛い双子ちゃんも。そっくりさんだけど特徴的な眉毛のお父さんも。お母さんが追い詰められるシーンもきちんと撮り直し。当然あのホテルの中も外も、迷路も、あの古~いタイプライターも、バーも、ざっば~んと豪快に血が流れ出るエレベーターも。みんなちゃんと出て来てくれますよ。前作ファンへの大サービスがいっぱい。そういう旧作をリスペクトしたノスタルジックな作品、いいですね。自分の好きな要素がこれでもかと盛り込まれた傑作です。ボイラーに火を着けるという発想はキング側へのリスペクトかな。 ヒロインのアブラもやたらと勇敢で毅然としていて、どんどん美人に見えてくる。ラストもちょっと悲しいけど綺麗に纏まります。2時間半が全然長く感じない、充実の一時を過ごせました。 [インターネット(吹替)] 8点(2023-03-30 05:51:19)(良:1票) |
12. トムとジェリー
うねうね動く定番のドタバタアニメ。絵も話も良く出来てると思う。でもやっぱこれはクロエ・グレース・モレッツを愛でる映画だなと。彼女ありきで高評価。 [地上波(吹替)] 6点(2023-02-11 02:37:03) |
13. 肉体の門(1988)
《ネタバレ》 肉体の門と言えば野川由美子でしょと思ってこっちはノーマークだったのですが、かたせ梨乃目当てに見ましたよ。いやいや本当に五社監督らしいというか、全く飽きさせない。マシンガンの様にエピソード放り込んで来る。 特にラストが痛快。爆発オチとかドリフじゃないですか。西川峰子で笑わせにかかってるでしょ。なんでその2人だけ生き残ってるの。その後のマーケットや米軍はどうなるのかと思ってたら本当に爆発でエンド。直後ちょっと明るめの八代亜紀の歌。本当にドリフ。すっごい真面目に見てたのに最後だけコントでニンマリしてしまった。 いいんです五社監督だから。インパクト重視。話の整合性とか不自然さとかどうでもいいんです。渡瀬恒彦は意外に尻軽だし、志賀勝は普段通りで十分チンピラなのにかなり不必要にアホっぽく喋ってるし、かたせ梨乃と名取裕子の大立ち回りも凄いけど、その後クラブでドタバタの直後に突然かたせ名取で踊り始めたりとツッコミ所満載。みんなで見て盛り上がれる映画です。 ポスターも面白いんですよ。2種類あるんだけど、まず1つはかたせ梨乃が黒人に肩車されてて。楽しそう。後ろで娼婦達が陽気に笑ってるんです。全然そういう映画じゃないのにこの明るいポスターは何。この黒人も誰。んでもう1枚は、この映画の象徴たる不発弾を娼婦達が囲んでみんな笑顔で記念撮影って感じ。芦川よしみだけ合成したのか立体感がおかしいし。この2枚を見たら何だか凄い前向きで明るいコメディなんじゃないかと思えてしまう。 まぁかたせ梨乃のファンなら決して見て損はありません。自分的には野川由美子のと同じくらい好き。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-12-05 23:40:05) |
14. シン・ウルトラマン
《ネタバレ》 昭和ウルトラマンの再放送を見て育った自分です。つい最近もウルトラセブンの再放送に齧り付きでした。その上での感想です。 とても美しい映画でした。観て良かった。愚かな地球人へ無償の愛を注いでくれたウルトラマンを思いっきり応援出来たし、ラストもきちんと本家と同じく、寂しかったけど綺麗に締めてくれました。ゼットンに至っては本家以上の絶望感。おかげでゼットンという名前の由来を初めて自分なりに解釈出来ました。ゼットンって格闘してるイメージが無いんですよね。あのポーズのまま佇んでひたすら強い。このゼットンシステムは本家のハイパー化。最後の敵にふさわしい迫力です。 他の怪獣もカッコ良かったし、アクションもよく作られてたと思います。ザラブの伽藍堂造形は秀逸だと思います。 それとこれはかなり強調したい所なんですが…この映画は長澤まさみファンのためのイメージVとして見ても大変優れていると思います。セカチュー以来久々に長澤まさみファンになりました。女をこんなに綺麗に撮れるんだ凄いな庵野。自分でケツばちんばちんやるとか余所で見れない事をようやってくれるじゃありませんか。分かってますね。最後の出撃の時はチューくらいしろよ!って思いましたが、いやこっちはもうすっかり長澤まさみファンと化してるのでそれは無くて良かったです。空気読めてますね。 惜しむらくはメフィラスとのやりとりです。本家では傑作として名高いこのエピソード。メフィラス星人は純朴な子供の人類愛を唯一の判断材料として侵略を試みる訳ですが、これは怪獣というパワーファイター達との普段通りの戦いと違い、時には「地球人類より高度な知的生命体」の侵略も受けるという事、さらに彼らがどんな手段を用いるかという大変興味深く個性的な表現であり、且つウルトラマンという作品の品格をワンランク押し上げるのに十分な効果を発揮したと思われます。それがこの映画では何だか普通に大人同士の政治的な駆け引きに勝ちましたになっちゃった。うーんあまりスマートじゃない。ただの詐欺だ。映画を最後まで観ればこれも確かに納得で、人類は愚かな存在だから滅亡させられちゃうんだという客観的な説得力に繋がってしまうんですね。構成上そうなるのは仕方ないっちゃ仕方ないんですが、やはり本家メフィラスのやり方が渋くてカッコ良かっただけに、そこは残念でした。 それとやっぱりね、「シン」とついていてもウルトラマンとはノスタルジックな作品だと思うんですよ。本家ファンがいかに当時を懐かしんで楽しめるかはとても重要。フラッシュビームの音も聞けたし、あの戦闘BGMも新録で聴けたし、腕を突き出して向かってくる変身ポーズも見れた。出来れば飛び立つ時に「しぇあっ!」と言って欲しかったなぁ。 余談ですがスタッフロールで「モーションアクションアクター 古谷 敏 庵野 秀明」と2人の「ウルトラマン」が併記されててちょっと感慨深くてニヤリとしてしまいました。 [インターネット(邦画)] 8点(2022-11-30 02:20:33)(良:4票) |
15. ブラック・フォン
《ネタバレ》 「えっ、お前…死んでね?」ってキャッチコピー付けたくなるくらいそこそこびっくりします。説明的な序盤は眠いですが主人公が閉じ込められてからが勝負。 死人が出て来るとこは怖いです。シチュエーションも怖いです。劇場で隣の人が飛び上がってたし。しかしド直球なホラーではなく、色んな要素が詰まった、あまり類を見ないタイプの映画という印象。サスペンス、脱出劇、勧善懲悪、ヒューマンドラマとその姿を変えていき、鑑賞後は妹役のMadeleine McGrawが最も印象に残るというこれまた不思議な映画。とにかくこの子がめっちゃ可愛いです。スティーブン・キングの息子が原作という事でどんなもんかと期待して公開初日に特攻んだ訳ですが、なるほど監督がマデリーンに惚れ込んでスケジュールまでこの子に合わせたってくらい、原作そっちのけでマデリーンの魅力をぐいぐいと前面に押し出して来ます。これだけでもう見る価値があります。 デイブレイカーとかフッテージとかジメッとした映画が似合うイーサン・ホークなので、こうした陰惨な役どころもきっちりやってくれるだろうとは思ってましたが、ラストは案外情けなくてこれまたイーサンらいしというか微笑ましい。ハリウッドにしてはかなり低予算ながらイーサンの様な大スターを起用した事によって作品が締まります。 自分はどちらかと言うと同じホラー映画でもひたすら逃げ惑うよりも立ち向かって欲しいと考える口なので、この映画は好きな無類。お兄ちゃんはこのピンチを切り抜けて可愛い妹の元に戻れるのか、ぜひ刮目されたし。 [映画館(字幕)] 7点(2022-07-01 20:32:17) |
16. 家族ゲーム
《ネタバレ》 随分久し振りに見ました。何十年振りだろう。でもやっぱり面白い。 森田監督はわざと松田優作に何十回もNGを出して現場の空気を悪化させたり、作中に一切音楽を流さない等、持ち味であるシュールさをさらにジメッとした方向に振り切り、この湿気の中にコメディを落とし込むという斬新な映画に仕立て上げた。これに出演している伊丹十三が直後に監督・脚本を手掛けた「お葬式」にこうしたシュールコメディ色を応用しているが、日本アカデミー4部門受賞と高い評価を得ている。 思えば森田監督が最も高い評価を得たと言えるこの「家族ゲーム」で確立したカラーが、のちの氏の作品にあまり活かされていない気がして残念でならない。監督デビュー3年目の1983年にしてこの最高傑作を作り上げたのち、次に高評価を得るのは16年目、1996年の「ハル」まで待つ事となる。以降も何とも言えない微妙な映画を作り続け、30年に及ぶ監督稼業に幕を閉じた。一体何が足りなかったのだろう。 「家族ゲーム」に次ぐ氏の傑作は多分、監督デビュー作の「の・ようなもの」になるのだろうが、この2作に共通するのは圧倒的な魅力を放つ名優の存在と、さらに脇を固めるもう一人の名優である。カリスマが2人、詰め込まれているのだ。 「の・ようなもの」の主演はこれがデビューとなる伊藤克信であるが、青々しい彼の演技がこの映画の評価を押し上げた大きな要因であると同時に、それをさらに凌駕する魅力を放つのが相手役の秋吉久美子である。出番は伊藤に比べ少ないものの、逞しさの中にも哀愁を感じさせる飄々とした風俗嬢を演じた秋吉の魅力がイコールこの映画のイメージ、評価と言える。この2人の共演なくして「の・ようなもの」の高評価は有り得ない。 同じく「家族ゲーム」も松田優作というカリスマが放つ魅力、圧倒的な存在感、演技力、個性がすなわちこの映画のカラーそのものと言える。宮川一朗太の横顔にゆっくりと近付きぼそぼそと呟く様は、優作の代表作の一つである怪作「野獣死すべし」伊達邦彦のオマージュに他ならない。優作が熱演した犯罪者・伊達邦彦は見た者全てが真似したくなる強烈なキャラクターであり、ギャグの一歩手前と言える程の怪演である。森田監督がコメディに落とし込みたがる気持ちも十二分に理解出来る。我々はまた「あの優作」に会えた事によりニヤリとするのだ。 さらにこの「家族ゲーム」には優作の他にもう一人、華やかな魅力を放つ名優が存在する。由紀さおりである。元々ドリフのコントにてその名演技は認識される所ではあったが、この時既に三十代後半であったとは思えない若々しさと美貌がアップになるたび際立つ。こんなに綺麗な人だったのかと驚かされるばかりだ。さらに家族ばかりか同じマンションの住人にも困らされ、やかんがピーピー音を鳴らす最中に電話が鳴り響き、追い詰められおたおたする役どころが萌えに拍車を掛ける。思わず手を差し伸べて不倫したくなる団地妻キャラに仕上がっている。主演の優作を押しのけ堂々エンディングは由紀さおりの居眠りでスタッフロール。話を回しているのがメインであるはずの宮川一朗太から母親の由紀さおりに移行している事にこの時気付かされる。 名作はいかに魅力的なキャラクターを作り上げるかに懸かっていると言っても過言ではない。この映画が改めてそれを思い知らせてくれる。さらにそれが2人いれば、名作は傑作になるのだ。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2021-11-03 14:48:56) |
17. ゴジラvsコング
《ネタバレ》 泣けるほど痺れた。まさかゴジラとコングが通じ合うとは。悪役となってくれた不細工メカゴジラに感謝。ストーリーは希薄で、地下空洞とかぶっ飛んだ設定がアレなんだけど、泣けたんで高得点。いっちゃってる小栗旬と女児の可愛さも加点ポイント。 とにかく個体が大きいだけに凄い迫力。劇場の大きなスクリーンで見るべき映画。 [映画館(吹替)] 8点(2021-07-08 20:25:25) |
18. トキワ荘の青春
尺の問題で一つ一つのエピソードを掘り下げられないのは仕方ない。掻い摘んで淡々と描かれる群像劇だが、1950年代の雰囲気を楽しむ映画だと割り切っていいと思う。劇場にお越しの方々もほとんどがお年寄りだった。 公開当時は賛否あった様だが、寺さんの本木雅弘は個人的には良かった。寺さんはトキワ荘屈指のイケメンなのである。 つのだ我孫子の再現度が凄い。本人かと見紛うばかりによく似ている。これは大きな評価ポイント。 赤塚石森はイメージがなかなか本人と一致せず、慣れるのに時間が掛かった。若き頃の赤塚は紅顔の美少年と言われた。赤塚石森の配役が逆でも良かったのでは。 水野英子が妙に色気があって可愛かった。黒髪ショートに眼鏡というのは女っぽさを際立たせるのに効果的。 トキワ荘のマドンナこと石森の姉も良かった。地味美人万歳。 [映画館(邦画)] 6点(2021-05-17 20:09:57) |
19. 犬鳴村
《ネタバレ》 いやぁ…退屈でしたね。この先どうなるんだろうと期待させられる様なストーリー展開はありません。単発的な恐怖演出が続くばかりで、一つ一つにあまり重要な意味がない。病院に謎のママが立ってるとか、飛び降り自殺とか。てか犬鳴峠と電話ボックスって関係ある? 「犬鳴村」という言葉ありきで作ったとはいえ、安易に人が獣人化して襲ってくるとか陳腐過ぎる。ジャパニーズホラーの良さは曖昧さ、ミステリアスで正体がよく分からない、謎解き要素で不安を煽るのが持ち味だと思うのですが、本作はそれが希薄。「見せ過ぎ」ている。ではアメリカのホラーの様に化け物という明確な存在との迫力ある対決なんかがあるかというとそうでもない。そのどちらにも振れておらずとても中途半端なイメージ。人はホラー映画のどんな要素で怖がるのかを今一度研究し直した方が良いのではと僭越ながら。ただゆらゆらと幽霊が歩き回って、足を踏み入れた人達が訳の分からない死に方をするとか、そんなではもう怖がる人はいないと思う。電話ボックスに水が溜まって溺死するんだろうなとかあっさり読めてしまったし、死体が長く見えるのも別の死体がしがみついてんだろうなぁって読めちゃうよ。それ何十年も前の稲川淳二の話にあったし。もう我々ホラーファンは様々なバリエーションの恐怖を体験し耳目が肥えてしまっていて、使い古しはご勘弁願いたいのです。基本は抑えつつ、見せ方はそろそろ一歩先にチャレンジしていただきたい。 [地上波(邦画)] 3点(2021-02-22 05:07:40) |
20. 見えない目撃者(2019)
面白かったです。良質な推理サスペンスかと思って見ていたら、核心に近付く程に突っ込み所が増えていき、最後の決戦においては両手で追い付かないくらいに突っ込み所満載。サバイバルアドベンチャー的なゲームみたいなもんだと思う事にしましょう。みんなで突っ込み入れながらわいわいと楽しく鑑賞するための映画だと思う事にしましょう。それでいいのです。そう許せてしまうのは、やはり吉岡里帆が可愛いからです。暗い過去を背負い捻た全然笑わない地味子、なのにやっぱり可愛い。笑顔で明るいばかりのイメージをガラリと変えられました。重々しい演技をしっかりこなしておられます。吉岡里帆をあざといなどと敬遠しておられる方にもぜひ観ていただきたい。化粧っ気も恋愛要素もゼロ、なかなかにしてえらい目に遭いつつも頑張ってます。その驚異的な行動力と生命力にツッコミを入れながらお楽しみ下さい。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-01-23 20:07:41) |