1. 嘆きのテレーズ
《ネタバレ》 作り手はじっくりと説得的に描き込む、それを受け手もじっくり堪能する、というフランス映画だ。ハリウッド調とは異なった、バッド・エンドのアイロニーなんかもいい。 [ビデオ(字幕)] 8点(2025-06-11 10:56:00)★《新規》★ |
2. 埋れた青春
《ネタバレ》 究極のバッド・エンド。映画館へ行って、この不条理なエンディングを観たいか、である。落ち込んでいるときに観たら帰路の電車がシンパイかも(笑)。しかし、映画観客が、「現在」の持続たる映像を乗り越えてゆく欲望に憑かれた存在ならば、バッドエンドもまた、地道に説得的に語られる「現在」の苦悩をついに「過去」へと送り込むのであるから、それは観客の「欲望」に合致するのである・・・なんていう、すごく平凡なことを確認したくなる映画。 [DVD(字幕)] 8点(2025-06-11 10:23:24)★《更新》★ |
3. 素晴らしきかな、人生(2016)
作品を制作する上での脚本の手直しやらの情景が浮かんでくるような映画ではないか。ハリウッドらしい「無い設定、無い話」をどう入れるかの。この「無い話」はやはり「無い」ので、拍子抜け。見慣れた有名俳優たちの抑えめの演技だけをそれなりに愉しんで見ている感じ。 [DVD(字幕)] 5点(2025-06-10 23:18:33)★《更新》★ |
4. ぼんち
宮川一夫のキャメラが炸裂する、実に凝り倒した素晴らしい画面だ。精神的内容は決して高尚でもなんでもない、が、映画の場合、形式そのものが「内容」なのである。この意味での「内容」をひたすら愉しむことができた。ほんの一例として、このシネマスコープの横広画面に仕掛けられた横の運動を、愉しむこと。 [DVD(邦画)] 9点(2025-06-07 22:03:39)《更新》 |
5. 赤線地帯
《ネタバレ》 溝口の中でもこれはあんまり好きではない。流麗な動きのはずの宮川一夫キャメラも、この陋屋に閉じ込められている感じ。若尾文子と京マチ子がそれぞれ活発な役柄で浮いているのは、それで構わないのだが、やはり嘘っぽさが残る。 [DVD(字幕)] 7点(2025-06-06 21:08:00)《更新》 |
6. 我が至上の愛 ~アストレとセラドン~
《ネタバレ》 何かに到達するとは厳密な否定を経て、それを乗り越えてこそであるということなのだ、ロメール映画において。その厳密な否定に、パラドックスやアイロニーなどの通常のロメール味が付随する、ということが今わかる。あの、ピリピリ神経質になっている二人に最後に訪れる、彼女の口から「命令」としての愛の言葉が「自発的に」湧き出ずるのも、パラドックス。 [DVD(字幕)] 7点(2025-06-05 21:44:58)《更新》 |
7. 瞳の奥の秘密
《ネタバレ》 これはミステリーとしてはメリハリに欠けるし、人間ドラマとしてもとくべつ同一化できるようなものではなかった。ただあのちょっと倍賞美津子似の知的な上司は魅力的な役柄ではある。 [DVD(字幕)] 5点(2025-06-04 22:30:09) |
8. 暗い日曜日
《ネタバレ》 途中まではルビッチ『生活の設計』のオドロキの肯定的な成り行きを彷彿とさせるような三角関係映画だが、ナチの話題となったところで『シンドラーのリスト』をネガティブに捉え直したものでもあるという気になった。収容所行きの見殺しシーンの理由が説明されないのをなんとなくナチの気まぐれな残酷さということで了解してしまいそうだが、あれは嫉妬なのである。憧れの女性の愛を受け取れている果報者に対する、愛されざる者(卑劣にも交換条件で同衾を手に入れるだけの)の嫉妬。この嫉妬という理解の点でもナチという「巨悪」の「凡庸さ」が説明されうる(ハンナ・アーレントふうに)、つまりナチだけのことではなく、誰のものでもある普遍的な問題であるというように。そんな嫉妬を生むくらいの魅力である、エリカ・マロジャーンというこの女優さん。たくさんの名画に出ていそうだが検索した範囲では意外にそうではないようだ。 [DVD(字幕)] 8点(2025-06-03 21:42:05)《更新》 |
9. きっと、うまくいく
《ネタバレ》 かつてブームの時に観た多くのインド映画を彷彿とさせるのはもちろんだ(ダンスシーンは本当にすごい)が、ウェス・アンダーソン的なものも感じた、表面性のカメラワークと肯定感に。とにかく、これでもかと作り込んでいる、きっとうまくいくオプティミズムで。 [DVD(字幕)] 8点(2025-06-03 14:40:12) |
10. 極楽特急
素晴らしいが、惜しむらくは機知のスピードと高度さについていくのがやっと。こころを使わない詐欺師が恋に落ちたところで作品に深みが生まれて(この深みが大切)三角関係だ。翌年の『生活の設計』こそ見事な三角関係映画となり、ミリアム・ホプキンスがまた大活躍なのである。 [DVD(字幕)] 7点(2025-06-01 22:29:24) |
11. 恐怖の岬
《ネタバレ》 通常は探偵役のミッチャムが犯人役で、敵にまわしたらまことに厄介な存在となるということか。攻撃してくるミッチャムの姿をもっと見せ隠しするとホラー的な怖さが増しただろうが、そういう狙いではなかったようだ、作り手は。むしろ二人の男の真っ向勝負といった方向に近い。 [DVD(字幕)] 6点(2025-05-31 22:50:55) |
12. エドワールとキャロリーヌ
《ネタバレ》 一度も戸外には出ないが、長回しで、よく動き回っている感じの名作。実際にダニエル・ジェランが弾くかの如くのピアノの音色が素晴らしい。盛り沢山の演奏会シーンも充実している(「妻思い」のエドワールを支えようとしてピエロを演じる羽目になってしまう貴婦人のエピソードなど)し、主役カップルの諍いのありようも典型的で納得できる。 [DVD(字幕)] 8点(2025-05-30 23:11:27) |
13. 友だちの恋人
《ネタバレ》 『緑の光線』同様、恋の相手選びにいろいろと迷う、当たり前だが。その厳密な高いハードルを超えたところにいちおう確実なものがありそうだ、それは映像で納得できる。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-28 22:51:41)《更新》 |
14. 木と市長と文化会館/または七つの偶然
《ネタバレ》 時事問題的な議論を細かく調査して、いかにも作り物の浅いレヴェルを脱して、実質的な充実感のあるものにこしらえあげている。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-26 22:08:09) |
15. モード家の一夜
《ネタバレ》 人と恋愛関係に入るには、情欲の宗教的・哲学的位置付けが必要であるかのように始まる。キリスト教やらパスカルやらの話題、さらに表面的には何も起こらないモードのところでの一夜なのだが、お互いの他者性の探り合いはスリリングである。後半のお目当ての女性との絡みに移って俄然面白くなる。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-25 23:07:10) |
16. パリのランデブー
《ネタバレ》 ロメールの人物は戸外を歩く(小津なんかと比べれば圧倒的に歩く)。で、特に第二話は、なんと戸外を歩くしかない設定。この話の終わり方、アナタはメインのカレの補完存在なのだからメインと切れればアナタの存在理由も自動消滅よ、とはなんとも面白い。こういうリクツやアイロニーやパラドックスが必ず仕込まれているのがロメール味。まさにそのために若者たちを使うのが主で、いつまでも若者たちの生態に興味があったとしてもそれは従だろう。 [DVD(字幕)] 8点(2025-05-25 05:18:13) |
17. セイフ ヘイヴン
《ネタバレ》 ストーカーから逃げる話。映画脚本の教科書のような構造、並行編集。逃げる間に新たな恋愛相手を巻き込む。映画である以上どのみち2時間以内に捕まる。このストーカーはホンモノの迫力。 [DVD(字幕)] 6点(2025-05-24 07:02:20) |
18. 穴(1960)
《ネタバレ》 あの、ただ一つのシーン、細長いヤスリの鏡効果で、捕縛に来ている一団(仲間の裏切りにより)が映し出される時。あれほどゾッとさせる一巻の終わりシーンも珍しい。 [ビデオ(字幕)] 8点(2025-05-23 17:58:45) |
19. ゴーストライター
《ネタバレ》 一番身近なところに敵が居る、というミステリーの基本はやはり欠かせない、効果的だ。ネット検索で重大な機密を知れるとは脚本甘目。とはいえ、味方がほぼ見つからない分厚い現実の壁というものを構築した佳品。CIAからの逃げ道(外部)というものはないのだ。国家が相手のたたかいはあのフィルム・ノワール『キッスで殺せ』のごとくゼッタイ無力。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-22 22:38:38) |
20. 恋の秋
《ネタバレ》 カップルを成立させるための仲介をする女性が、純粋に仲介役割にとどまらずに少々ちょっかいを出したりするので、ややこしくなる。ややこしくなっていいのである、生身の人間なのだから。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-21 23:08:57) |