1. ザ・コンテンダー
《ネタバレ》 陰謀ありスキャンダルありのポリティカルドラマ。伏線の張り方とか終盤にヒールをやっつける展開とか、よくできた娯楽作ではあるけど。でもちょっとあちこちすとん、と落ちなくて楽しめなかった。 第一にあんな「ポルノな映像」(出演者の弁)が出たら、それも自身が無関係ならまず否定するべきでは?「男だったら在学中に何人もの女と寝ても問題にならない」から、女である自分もあえて問題化しないという姿勢でしたが。いやあれが男だとしても有権者は嫌悪感を抱くと思うけど? それに冒頭からこの副大統領候補議員のひと、職場のデスクで夫と行為に及んでるんだけど。(夫が)尻出した格好で電話取ってる画ヅラにもうドン引きしました。アメリカってこうなんですか。ブリッジスの大統領役も品が無くてなんだかなと思ったけど、現実にはトランプが再選してるんだなこれが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-02-13 23:26:40)《新規》 |
2. ヒトラーのための虐殺会議〈TVM〉
《ネタバレ》 説明なしに物語は始まる。 湖畔の瀟洒な屋敷に顔を揃える高官ら。議長のもと会議は進行する。各担当部署の代表らが集まったらしく、縄張り争いがあったり好かない奴への小さい嫌がらせがあったり、とサラリーマンのそれと何ら変わらない。 対象物のあまりの多さに輸送方法でまず一山あり。だがそこは有能な執行武官が良案を出してなんとかパス。 留め置く場所をめぐって「ウチばかり負担が多くないか」と公平分担を主張して引き下がらない管轄部署がいれば現行法の遵守を強く訴える役人もいる。 任務遂行に当たるドイツ軍人のメンタルに配慮する役人もいて、一見福利にも目配りができている。 場が紛糾すれば一旦ブレイクを取り、その間はあちこちの固まりにて行われる根回し。 ちょっとの意見の相違があっても全員がミッションの完遂に向けて意志は一つにまとまっているのだった。有意義な会議である。一見。 が、しかし。有能で効率的ゆえに観ているこちらは震えが止まらない。イヤイヤイヤ、なんでそんなに冷静かつ明瞭に論旨を述べるの。 誰も突っ込まないんだ。この場にいるんだから当然だけど。 こんなんなってしまうんだろうか。戦時なら。任務なら。怖すぎる。人間が。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-02-12 23:46:56)《新規》 |
3. RRR
《ネタバレ》 濃い、くどい、過剰。インド映画の特質を際限まで盛り込んだ3時間。人の心の機微というものを、例えば小津映画やミニシアター系作品が何層にもなって構成されていると描き出したのに対し、本インド映画の人物らは三種類(怒り・喜び・悲しみ)ほどしか感情を発露しないのですね。単純明快、これこそインド映画の不文律。 加えて何事も大きく描くのでアクションシーンは人体としてあり得ないほど跳躍するうえ、スタミナは続くしイギリス人統治者らの極悪非道ぶりは悪鬼のごとし。 勧善懲悪を柱に友情や民族独立の大義までぶっ込んで実ににぎにぎしい。ご都合主義という言葉がかすむほど圧倒的な「我らの英雄が勝てば万事オッケー」な映画です。 これだけのボリューム。3時間の長尺をもってしても飽きさせない猛烈な展開に、制作陣の強靭な体力を感じました。私は終盤へとへとでしたが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-02-08 10:29:37) |
4. ロイ・ビーン
《ネタバレ》 豪快で自由。西部開拓時代の生き残りロイ・ビーン判事。大いに盛ってほぼほぼフィクションになっちゃってるけど、いちおう実在の人なんですね。 消えゆく西部の残像をしみじみと描いたペキンパーの「ケーブル・ホーグのバラード」をイメージしてしまったのが間違いでした。こま切れのエピソードごとの展開はまるでマンガ。「トムとジェリー」でも観る心持ちでいるべきでした。命が安いし熊のペットぶりはもはやファンタジー。まじめに伝記と向き合う気持ちではついていけません。 ちょっとノリが合わなかったです。わたしの責任ですが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-01-31 17:07:55) |
5. RAW~少女のめざめ~
《ネタバレ》 ちょっと苦手なテイスト。少女が自我を確立して大人へと移行する時期を描いた成長譚とも取れるけど、カニバリズムていうのが猛烈に極端だなあ。ホラーなんだからそれで良いのよと言われればそうだけど。 なんだか描写の何もかもが過剰に感じる。大学生にもなって新入生イジメとか幼稚に過ぎませんか。廊下を上級生とすれ違う時は顔を下げろだなんて宝塚かい。教授も信じられないくらいに意地悪。 ヒロインのアレルギー反応でできた湿疹も観客の恐怖心を煽るためだけにグロテスクに作ってるでしょ。 学校の寮なのにゲイだからって男子と女子を同室にするなんて理解が追いつかないし、そういや冒頭からして母親が助手席のダッシュボードに足を上げているのにも引いた。行儀悪すぎん?フランスってこれが普通なんですか。 チーズは好きだけどブルーチーズは無理なんだよなあ。極端なものが得意でないことをつくづく感じつつ、ついでにそんなことを思い出しながらの鑑賞でした。5点で勘弁してください。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-01-28 22:45:42) |
6. レッド・ドラゴン(2002)
《ネタバレ》 やっぱり思い出してしまいますよね 比べてしまいますよね「羊たちの沈黙」と。 賢いけれど未熟な新米FBI捜査官クラリスと老獪なサイコパス・レクター博士とのつかず離れずの絶妙な距離感。全編しっとりと湿度高めの映像美。予期せぬ展開とJ・フォスター、A・ホプキンス両氏の名演技。 愛してやまないこれらの要素は「ハンニバル」も本作も残念ながら半減しており、続編のハードルの高さをつくづく思います。 豪華絢爛なスター俳優をずらりと並べて、その良くない副作用が出てますね。本作の主人公て誰になるんでしょうか。 レクター博士は何もしてくれないし、個人的にはファインズよりハーヴェイ・カイテルの方を長く観ていたかったし、安定の演技を見せてくれてたP・S・ホフマンはあんな使われ方で早めに焼死してしまうし。 一家惨殺事件をちゃんとメインに据える描き方をしてないせいか「この事件どうなるんだろう?」という興味が続かないんですよね。話題があっちこっちに飛ぶので。 お話自体は悪くはないと思う。羊の前日譚としては。でも満足にはちょっと遠い出来。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-01-26 13:06:17) |
7. ようこそ映画音響の世界へ
《ネタバレ》 小学生の感想文みたいだけど、映画の音作りにこんなにたくさんの努力が払われているとは知らなかったです。普段、何気なく耳を素通りしていた映画作品の音。 そうだよね屋外での撮影は余計な音も入ってくるだろうし、雪山を歩く時の雪を踏みしめる音はハッキリとマイクでは拾えないよねえ。 作ったり足したり除いたり。スタッフらの努力とセンスによって作品は彩られているのだとよく伝わりました。 そうそう、スター・ウォーズは音もカッコ良かったのだ。そうだよ何故言われるまで気づかなかったんだろう。ワープ音も宇宙船のごごご、という移動音(?)も誰も聞いたことが無い架空の音なのにすんなりと受け入れて心地よく聞いていた。音職人の仕事の凄いとこはまさにそこ。 映画を観る解像度がちょっと上がりました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-19 23:06:17)(良:1票) |
8. MEMORY メモリー
《ネタバレ》 お話は凡庸で今さら、という内容。展開は浅いしまあこうなるだろうなと思ったとおりの落ち。ニーソンの認知症という設定もさほど活きてないし、ターゲットを同じくする元殺し屋とFBIの邂逅という本来ならヒリつく場面もあんまり盛り上がらない。 各キャラがありがち過ぎ。ニーソンはいつものニーソンだしピアースの「保身的な組織に反発して干される正義感強めの人物」キャラはこれまで何十人見てきたかしら。モニカの巨悪感も限りなく薄い。 大仰にメキシコだテキサスだと地名を表示するけど、そこを押さえておく必要も特に無い。平坦に話が進む。しばらくしたら間違いなく内容を忘れるであろうと思われる。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2025-01-17 23:14:18) |
9. トゥモロー・ウォー
《ネタバレ》 ある日未来から援軍要請が来る。子孫のために戦地に赴く現世の老若男女。コンセプトは斬新だし、「まだ起こってない危機に対して命を差し出す」ことへの“not my war"デモが発生したり、自己矛盾が生じるのを防ぐために派兵される年齢を中年以降に設定していたりと、なかなか細部まで目配りのきいた脚本だなと感心しました中盤までは。 未来と現世を行き来するタイムワープSFの世界観を深掘りしてくれたら傑作になったかもですが、中盤以降は良くある怪物退治モノになって失速した感があります。 家族間のドラマも横糸に織り込もうと頑張りましたがあまり成功してない。父と娘まではともかくJ.k.シモンズの役どころは不要に感じます。 とはいえ映像は気合と資金が大量に投入されていて大画面でこそ映える大作です。コロナ禍で上映叶わず配信へ下ろさなければならなかったとは、制作陣の無念は察するに余りありますねえ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-01-14 22:59:21) |
10. ラヴィ・ド・ボエーム
《ネタバレ》 まったくもってお金がないんですよねカウリスマキの登場人物らは。もういつでも。 中年男が揃いもそろって赤貧洗うが如し。なのに悲壮感が今ひとつないの。まず売れないだろう小説や曲や絵を創ってその日を生きて。でもどういうわけかパトロン(カモ)が現れたりしてしのげちゃう、このゆるさ。 ラストまでこのユルさが続くのかなと思ったけどそうではなかったです。人生は切ない。切ないなりに希望を持たせることも多いカウリスマキだけど本作はビターな方に舵を切っておりますね。 それにしても優しい三人の男たち。自分も持たざる者なのに他者に分け与えることができる人たち。稼げなくて勤労意欲も少なめでしょーもないんだけど、彼らの優しさや友情力はちょっと圧倒的でした。金はなくとも愛はある。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-12 23:35:53) |
11. 童年往事/時の流れ
《ネタバレ》 ごく普通の一家の、どこにでもある日々を140分間見せ切る映像の力。50年代の台湾は家屋や舗装されてない道路や木の電信柱など、一昔前の日本を見ているようで懐かしさで胸がいっぱい。シャツと短パンで駆ける男の子(というかガキ笑)の生命力のまぶしさ。 時代的に政治が激動している最中だから、大人たちは穏やかではなかったでしょう。でも少年アハの目に映る日々は少年期から思春期にかけての、自身の生活圏のあれやこれや。教師に反抗したり恋心を抱いたり、小さいグループ間のけんかといった普遍的な青春なのでした。 父と母を順に亡くしてしまう悲劇も感情過多にならない描写で淡々としています。十代のアハには推し量ることが難しかったのであろう長女の胸の内も、どうにかして映画の中にもっと落とし込めていればお話に深みを持たせられたのでは。 お祖母ちゃんの存在が良いですよね。孫を可愛がり、大陸に帰りたがっていたお祖母ちゃん。道に迷ったら近所の人が送り届けてくれるあたり、当時の人付き合いの距離感の近さを感じます。 寝てんのか死んじゃってんのかわかんないって、まるでコントのようだけどいやあ昔ってこういうことあったんですよ。 お祖母ちゃん、せっせと作っていた神銭向こうに行って使ったかな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-07 23:04:09) |
12. スティルウォーター
《ネタバレ》 タイトルから内容が皆目見当がつかない類の映画。なので全くの丸腰での鑑賞となりました。なんだスティルウォーターって地名かあ、と序盤で分かるのですが、その単語が話のなかで大きな仕掛けとなっていたとは。気づいた終盤には唸ってしまった。 ちょっと長めの尺を使って人間関係を丁寧に描いてます。なんせ主演はM・デイモンですし他の役者も上手いのでダレずに観られました。マットと女の子のやり取りがとても良かった。べたべたし過ぎない距離感。気の合う二人が単語をレクチャーし合いながら一緒に作業する様子が微笑ましい。 サッカースタジアムでのシーンや警察がアパルトマンに踏み込むシーンは半端なくどきどきしました。物語の緩急のつけ方が実に上手い。 事件そのものを我々は父親の目線で追ってきたけれど、明らかになる事実は彼が信じていたものとだいぶ違っていたし、フランス人母娘との絆もまた思い描いていた方向とは違う形で着地してしまった。 娘は冤罪が晴れて帰ってきたのだからハッピーエンドには違いないけれど、こうも苦い味が残るとは。人生てこんなものだよなあ。「思ってたんと違う」これに尽きるよなあ。ねえビル。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-05 12:34:21) |
13. バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー
《ネタバレ》 己を笑うフランス人の諧謔理解度の深いこと。自国の大統領から大ヒット感動映画作品からあげく修復の済んだ至宝ノートルダム大聖堂までバカな小ネタにしてしまうシマツ。 こりゃオリンピックの開会式に首を抱えたマリー・アントワネットだって登場もしますわな。 しょーもない下ネタもぼちぼちあるけど、バカのセンスすら洗練されている(?)感じがあって、バカだけど下品を逃れている。ふふっ、と笑える連続で楽しかったです。でもトム・クルーズには一応謝っといたら? [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-23 00:21:52) |
14. ウィッチ
《ネタバレ》 人の心ほど怖いものはない。洗練されたホラーに感じました。17世紀の非科学的な考え方から、極端な信仰心から、鬱蒼とした森と曇天の空模様といった舞台装置に至るまで全部恐い。 信仰心ってなんだろ。そもそも心の安らぎを求めての神様なはずなのに、信仰優先で家族がつらい目にあっては本末転倒もいいとこ。こんなこと言っちゃ怒られるかもだけど、信仰てのはほどほどにテキトーなのが良いんじゃないですかね。 この家族、笑顔もほぼ無いもんね。いかにも厳格なピューリタンといった感じで。厳しい生活のなかにあっては最低限のユーモアが絶対に必要だと思うんだけど。 この映画、上手いなと思うのは妄想か現実か、いかようにも取れる描き方をしているところ。おそらく17世紀の人たちがリアルに経験した、感じたままが映像として展開している。実態はおそらく神隠しにあった赤子は大型の動物に捕らわれたのだろうし、(長女の証言を鵜呑みにはできない)弟は森で毒物に接触してしまったのだろうし、そう思い込んでいるから黒ヤギもしゃべるのだろう。 科学のインフラが無い時代は現代よりずっと夜が暗い。「何か」が魔女の集会に見えても仕方ない。 でも何より怖いのは悪魔だの魔女だの「そう思い込んで」自滅してしまう人間の心そのもの。神にすがるだけの父親、ミソジニー気味の母親、意地の悪い双子、全部がやっかいで手に負えない。 当時の証言や日記からインスパイアされた本作はアメリカ版遠野物語。「神」の位置づけが我が国と違うのが興味深かった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-20 22:50:51) |
15. サン・スーシの女
《ネタバレ》 突然の大使射殺事件から紐解かれてゆく男の過去。導入部こそわくわくしましたが、お話はわりとよく聞くナチス絡みの復讐譚でした。平凡と言ってもいいくらい。 義母への思慕が今ひとつ伝わってこない。成長してのち義母そっくりの嫁をもらうほどの思い入れがあったようにはあまり見えない。少年の心に深く残るトラウマ級の事件だったはずですよねエルザの殺害は。マックスの目から見る世界に触れなさすぎに感じる。 一方、エルザの夫への思いは綿々と描きつけるのですよね。いや、主役はロミー・シュナイダーなんだからそうなるよと言われればそれまでだけど。 大女優の遺作という色が付いてしまったため、ロミーの私生活と合わせて鑑賞されてしまう運命となった作品です。ロミー本人のコンディションも良くなかったのでは。わたしには三人もの男が夢中になるほどの魅力をエルザには感じなかった。ロミー・シュナイダーの代表作は少なくとも本作ではないはず。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-12-14 11:49:51) |
16. X エックス(2022)
《ネタバレ》 「パール」を観てからこちらに来ました。パールのその後の人生がどうなったのかな、と。 本作で見る彼女の人生の終末はやっぱり満たされてなくて、しかも色ボケまで発症していては救いのない感じ。でも、夫が復員後の例の惨状を目にしてもパールと暮らし続けてたことが驚異。パールにとって、そこ人生で一番のラッキーだったのではないかな。 ホラー作品としては70'sへのオマージュと謳っている通り、馬鹿な若者らの殺されっぷりが定番のスプラッターでした。それよりも監督はむしろ老人の肉体の衰えとか枯れること無き性欲の醜悪さを描くことで嫌悪感を掻き立てる方に熱心なようで。老夫婦の行為なんて目を背けたくなるよね普通。 パールの老いさらばえ方も悪意を感じるほど。あんな全身にシミが出るもんかな。 こちらを先に観ていたら次作のPearlは観なかったかも。三作目は後日譚とのこと、マキシーンのその後はちょっと楽しみです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-12-08 23:19:07) |
17. FALL/フォール
《ネタバレ》 映像技術の凄みを身体で感じる一本。肝っ玉が縮み上がりっぱなしの画が続き、高所恐怖症の人はラストまで腰を落ち着けて観ていられるのかどうか。 舞台が600m超えの高所かつ二人分が座れる広さしかないので、物語をどう広げるのかなと期待しました。 衝撃の暴露話は定番として、SOSの発信の試みが何度も失敗したり野鳥の攻撃があったり、頼みのスマホの充電にトライしたりと難易度高めのイベントが次々起こります。なかなか上出来の脚本と思います。なかでも友人が実は・・だったというヒネリ技には上手いこと仕掛けられました。おお、と思った。なんでケガをした方がてっぺんまでよじ登るのかしらと思ったんだ・・そういうことかあ。 ところでちょっと本筋から逸れるのだけど、ヒロインの亡くなった夫ね。彼女冒頭から悲嘆に暮れていたじゃないですか。でも実は嫁の親友に手を出すけっこうなカス野郎だった、ということが分かり悲しみを克服するっていうプロットがなんというか大陸的でドライだなあと苦笑いな気持ちになったんですが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-12-07 23:29:06) |
18. アタック・オブ・ザ・キラートマト
《ネタバレ》 いやーつまんない。高名な本作の鑑賞機会を得るのに時間がかかったから、色々想像してハードルを上げ(下げ?)すぎちゃった。 「トマトが人を襲う」とだけの情報から想像したシュール味が全く無いのにはたまげた。ハリボテトマトが転がってきて人が逃げる画ばっかり。 塩梅の良い不条理さがあれば可愛気も発生するけど、これでは製作上のただの怠慢。物語作品を作る上での重大な手抜きだし誠実さも感じられない。 めったにつけない0点を献上するにあたってマイリストを見たら「プラン9 フロムアウタースペース」に0点をつけてた。愛すべきエド・ウッド作品とこんな本作を同列に置くことになるなんて。つくづく腹立たしい。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2024-12-05 23:40:42) |
19. ラストナイト・イン・ソーホー
《ネタバレ》 夢が叶わないことは悲しい。特に60年代を生きたサンディは残酷に夢を踏みにじられ、暴力と搾取の犠牲者。 女子同士の痛みを60年の時を超えてもひしひしと感じ取るエリーを演じるトーマシン・マッケンジーがハマり役。サンディを気遣い、暴力に対して怒りをあらわにするエリーは優しい。対をなすサンディは売れっ子アニャ・テイラー・ジョイ。目力の強い勝気な彼女は夢を叶えたいその一心でエリーとシンクロしたのかも。 アニャ、素敵でした。トップを盛った60年代のヘアスタイルが良く似合って、身体の動きも優美。主演女優二人の存在感と、血の色すら艶めかしく撮り上げた色彩の強さでこの作品は脚本の諸々の粗(殺人犯と思い込むミスリードがやや雑なことやエリーの母親の存在意義が思いのほか薄いことなど)を凌駕しました。 暴力と亡霊とでグロテスク味の強い本作だけども、エリーの彼氏のジョンが献身的な優しさを見せていて息抜きができます。エリーの不安定なメンタルパニックにけっこうな回数巻き込まれているけど彼女を見捨てないでくれている。ジョン優しいな。世の男子はこうであってほしい。「僕のおばさんもそっち系の人なんだ」がたとえ嘘でもかまわないのです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-11-23 17:31:01) |
20. キャノンフィルムズ爆走風雲録
《ネタバレ》 映画馬鹿すぎて、その人生が映画になっちゃう・・って“DUNE”のホドロフスキー氏とか伝説のエド・ウッド氏は存じ上げてましたがイスラエル発の豪快型B級映画監督のことは初めて知りましたよ。ほんとその振り切れ具合が作り物より面白い。 (困った)情熱監督の共通点が分かりやすいです。まずもってお金でトラブる。予算があるとないとに関わらず作品に関して「金に糸目をつけない」。ギャラの額を、経理担当をすっ飛ばして勝手に口約束したりね。その点オタクのタランティーノは低予算映画でデビューを飾って偉かった。 自分の芸術沼にハマったホドロフスキーも、映画センスが欠乏しつつも自作をこよなく愛したエド・ウッドも、次々とB級作品を量産したメナハムも、なんというか人類極端史の最前線にいる人たちでつくづく尊いなあと思うのでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-11-22 23:18:54) |