1. ALWAYS 三丁目の夕日‘64
《ネタバレ》 脚本的には前2作で綺麗にやり切っているので、本作は最初っからかなり遊び要素が多い展開になっています。しかしノスタルジー前提の本シリーズにおいてはそれが無駄な演出にはなっておらず、成長した子供たちがエレキに熱中したり、東京オリンピックネタやカラーTVネタも面白く仕上がっています。またなによりもお年頃になった六ちゃんの恋愛ネタも目が離せません。普通三作目にもなるとダレるものですが、本作においては面白さをきちんとキープ出来ています。この点は脚本および製作陣は本当に良い仕事をしたと思います。後述しますが茶川(吉岡)が淳之介に打つ小芝居はちょっと違和感がありましたが、それ以外は概ね良くできていたと思います。 邦画の悪い所でもありますが、茶川が実家に帰って部屋にある雑誌を見て悟るシーンですが、これがちょっとベタ過ぎて過剰演出だったと感じました。この感覚がラストの淳之介への下手な小芝居にもつながっている訳ですが、これに関してはさすがにもう少し何とかならなかったか?と感じてしまいました。もう少し茶川の心情に寄り添って静かで深い演出&脚本でもあれば、、もっと重厚な雰囲気に持っていくこともできたと思いますし、三部作のラストを締めくくるには相応しいものだったようにも感じます。正直、本作の演出では少々軽すぎて茶番になってしまっていますし、そもそも論、淳之介は天才肌なのでかりそめの両親の心情は痛いほど理解していたハズで、こんな茶番に逃げる必要などなかったと思われます。結局、、今回も淳之介に気を使わせてしまっただけのような気がします。 厳しめに書きましたが概ねよく出来た作品で、本シリーズは三作品でワンセットでライブラリしても良いレベルの作品だと思います。 [地上波(邦画)] 7点(2025-06-29 15:00:56)《新規》 |
2. ALWAYS 続・三丁目の夕日
《ネタバレ》 前作の成功からか、本作では序盤から余裕のある描写が目立ちます。まあ、物語の構成的には一作目で大体のことが収束していますので、本作ではいかにして一作目の世界観と余韻を壊さずに話の続きを見せるかってことに注力されています。実際本作ではそれが上手くできていて、茶川(吉岡)の悲願、ヒロミ(小雪)の秘めた想い、淳之介(須賀健太)の希望がバランスよく融合したラストは確実に泣かせる脚本に仕上がっています。皆が幸せになって本当に良かったと思える展開は心底素敵でした。途中詐欺などの妙な一件もはさまりますが、実際問題、高度成長期後半の当時には余裕が出来てきた日本総中流家庭の人達をターゲットにした新手の詐欺が広まりつつあった時代です。 個人的には鈴木家にやってきた親戚の女の子の一件に関しては、色鉛筆よりもう少し踏み込んだ展開が見たかったところです。あと、六ちゃん(堀北真希)が映画館で嵐を呼ぶ男でハッスルしてるところは素敵でしたし、本作ではついに東京タワーにも登ります。余談ですが茶川の小説は正直大したことないと思いましたが、小雪が列車の中で読んじゃうと・・ やっぱり泣けるんですよねえww 正直、個人的には一作目より本作の方が好きでした。本作は一作目よりよく出来ていたと感じました。ネタのちりばめ方もバランスが良く、ラストの泣かせまでのまとめ方が上手くてほとんど文句のつけるところが無かったような気がします。しいていえば、前作同様、本作も編集を上手くやってもう少し短くしていただきたかったでしょうか。 [地上波(邦画)] 7点(2025-06-29 14:53:49)《新規》 |
3. ALWAYS 三丁目の夕日
邦画は好きではありませんが三部作まとめて録画されていたので見てみました。これが意外にもなかなか面白くて思わぬ拾い物でした。昨今過剰な演出が目立つコンピューターグラフィックスですが、、本作ではまさに適正と思われる使われ方になっていて、なかなか味わい深い昭和の雰囲気を描き出すことにも成功しています。 特筆すべきは全てのキャラクターがきちんと作りこまれていて、高度成長期の昭和にきちんと溶け込んでいた点です。特に六ちゃんこと堀北真希は心底可愛いかったし、本作の裏主人公である小学生たちの面々も、同年代である私の両親も「当時が懐かしい」という感想を漏らすほどです。見た目的には完全に「青春デンデケデケデケ」を超える理想的な昭和作品を演出することに成功しています。 ただ、宣伝要素が強かった東京タワー建設は完全にただの背景と化しており、できれば東京タワーが徐々に高くなっていく過程と共に、高度成長期の戸惑いを含む当時の大人たちの心情まで上手くシンクロさせていただきたかったところですが、何となくギャグに逃げる流れが目立つ脚本に収束しています。 中盤以降、本作の核となる泣かせる脚本はベタですが割とよく出来ています。若干薄っぺらなところもありますが、邦画でこれ以上の心情表現は望めませんでしょうから、まあ及第点といったところでしょうか。ガチ映画通には辛い作品かもしれませんがまあ総合的には十分よく出来た作品だったと思います。間延びしてテンポが悪い箇所が散見されましたので、できれば30分くらい短く編集すべきでした。 [地上波(邦画)] 7点(2025-06-29 14:48:16)《新規》 |
4. 必死剣 鳥刺し
《ネタバレ》 退屈せずに見られましたが、、やはり最序盤に連子(関めぐみ)を刺す兼見(豊川悦司)の心情や、またこれをミステリとして見せようとしている回想部分はいまいち機能していませんでした。またそれと同様に里尾(池脇千鶴)がやたらとフューチャーされている点も違和感が強かったです。時代背景を考えると故人である愛する嫁(睦江=戸田菜穂)の姪に手を出してしまうのはあまりにも軽率すぎます。(2025年の現代でもキツイ) しかし本作の池脇千鶴はやたらと可愛いから困っちゃう。本作において里尾と兼見の情事は完全なる蛇足でしたが、制作サイドはこの濡れ場が重要だったようでエロシーンが予想外に長くて見ていられません。ラストの子供を抱いた里尾もあまりにもあざとすぎてシラケるレベルでした。映画としては「睦江さんの味付けによく似てきたわね~」というワンシーンだけで十分伝わる心情ですし、秘めた想いに徹するべきでした。 御別家こと帯屋(吉川晃司)との対決は素晴らしいものの、事前に兼見と帯屋の事情が交錯していないがため、、「お互い同じ側の人間であるハズなのに斬りあわねばならない」という切ない感じは出ていません。しかし本作に置いての最大の問題点はその後です。”必死剣鳥刺し”を見せなければいけないのは理解しますが、、やはり普通ならふすまの後ろ側から刺された辺りで終了すべきでした。”鳥刺し”がさく裂する部分も色々と無理があって失笑モンでしたし、個人的には同じ不意打ち作戦的には”隠し剣鬼の爪”のほうが必殺技としてはカッコ良かったです。よって悲壮感が漂う映画であるハズの本作ですが、映画を見た後の余韻はイマイチと言わざるを得ません。 藤沢周平は好きですが本作原作は未見です。しかしどう考えても映画的には「たそがれ清兵衛」が良すぎて後発映画作品でアレを超えるものはないですね。てか、、”たそがれ”は世界に通用するレベルなので比較するのが酷というものでしょうか。一流役者陣に免じて少々甘めの点数です。 [地上波(邦画)] 6点(2025-06-26 14:08:37)《新規》 |
5. トカレフ(2014)
《ネタバレ》 致命的な脚本と演出ミスが目立つ惜しい作品。本作が言わんとしていることは結構まともだし奥深いものなので、脚本と演出が適正に行われていたら名作になったかもしれません。本作が伝えたかったことはラストカットの奥さんの表情が全てでしょう。 おそらく、ラストの収束のさせ方に最も注力してしまったがため、物語の道筋に少々無理がいってしまったものと思われます。ある意味本作で最も重要な主張がダニー・グローバー扮するセント・ジョン刑事が発する「誰の身にも起こり得た不運な事故だった。これを理解するためには一歩引いて冷静に考えることが必要なのだ。お前もそう考えろ」という主張だと思います。このセリフが本作全体の流れを端的に表していますが、劇中での本セリフが語られるタイミングが悪すぎて、主人公ポール(ニコラス・ケイジ)が最も頭に血が上っている&事件の真相がよくわからない嫌なタイミングであり、「でも、お前の息子は生きてるだろ」と切り捨てられるだけのただの無駄シーンと化してしまっています。物語の序盤にオコネル(ピーター・ストーメア)も似たような助言をしますが、こちらも変な匂わせ演出のせいで観客にはミスリード程度にしか伝わっていません。(結局物語上オコネルも無駄死にしますし) また、全体を貫くポリシーも(若気の至り)だったり(自己責任)だったり(後悔)など、意外とシッカリした土台があるにも関わらず、脚本の仕上がりが極めて雑なため、大切な部分がイマイチよく理解できない作品になってしまっています。むしろ反対に主人公たちに後悔や若気の至りみたいな深い感情はほとんどなく、いい年した大人になっても17才から何も変わっていないという反面教師的な演出が大半です。派手なドンパチが見せたいのか崇高な理念を見せたいのかよく理解できず、この作品の根本的な問題点を露呈してしまっています。(これに関しては映画のタイトルも悪く、娘の復讐+トカレフでは、観客は”96時間”の路線しか想像できない) 警察も警察で、主人公たちを監視している割にはやりたい放題やらせているし、真犯人のガキがパニくって自作自演した事の真相すら暴くことができない無能っぷりを呈しているだけの烏合の衆として描かれています。本当にもう何から何まで雑すぎる映画でした。ニコラス・ケイジに作品を選ぶセンスがないのか、はたまた彼が関わるから駄作になってしまうのか・・ プロット自体は非常に面白いものでしたのが、料理の仕方が絶望的にダメなのはもういかんともしがたいといった残念な作品でした。 [地上波(字幕)] 5点(2025-06-17 15:32:08) |
6. 華岡青洲の妻
録画されていたので何の気も無しに鑑賞しましたが、、非常に良かった。まず200年も前に全身麻酔という概念があったこと自体に驚きます。この事実に華岡青洲(市川雷蔵)を取り巻く女たちの壮絶な人生が絡む訳ですから面白くないはずがありません。 妻・加恵(若尾文子)の心境は一般的に想像した通りなのですが、面白いのは母・於継(高峰秀子)の立ち位置。昔はみんなこうだったのかもしれませんが、嫁いできた他人様の家で男児の母となり、そしてその家中で最も力がある者に成った母親という人物を高峰秀子が非常に上手く演じています。表向きの和やかな風情と内面とのギャップが素晴らしいですが、これが息子が帰ってきた途端にあからさまになります。しかし終盤にはただの意地悪ばあさんではないことも判ってきてなかなか奥深いです。やはり題名の通り、全体的に女の戦いややり取りが非常に面白いです。 青洲のほうも「医者として何もできず妹を見殺しにするのは私の技能が足らないせいだ」ときっぱり言いきる性根の良さも見せるものの、母と妻が実験台に名乗りを上げると「そうか、やってくれるか!」とアッサリ甘んじる精神的な弱さ(幼さか?)もあって、、こちらもなかなか面白い人物に仕上がっています。 とにかく原作小説がよく出来ているおかげか脚本も全体的に無駄がなく面白い映画に仕上がっています。これは原作小説も読むべきかもしれませんね、いや必読かもしれません。 [地上波(邦画)] 8点(2025-05-25 12:58:57) |
7. レジェンド・オブ・エジプト
非常に良かった。これほどの大作をたったの140分程度で過不足なく綺麗に終わらせたのは本当に素晴らしいです。先日見た同シリーズ「モンキー・キング」とは雲泥の差でした。 本作「レジェンド・オブ・エジプト」は原題では「Cleopatra」となっており、確かにクレオパトラ=エジプトの伝説で間違いではないのですが、やはり鑑賞した印象ではクレオパトラの物語でしたので原題のほうがシックリきそうです。特に本作で素晴らしいのが新人レオノア・ヴァレラ=クレオパトラです。メイクが上手いというのもありますが、目つきが一般的にイメージされるクレオパトラ像そのものでした。もちろん脇を固める男性陣も名優ぞろいでシーザーにティモシー・ダルトン、アントニウスにビリー・ゼーンがメインを固め、その他もかなり落ち着いた演技ができる性格俳優が起用されていて抜け目がありません。おまけにこの女優さんは後にビリー・ゼーンと結婚しています。 クレオパトラに関しては娼婦みたいだという辛辣なご意見も見られますが、本能的に若くて美しいというだけでそれは立派な武器になりうる訳ですので、ある程度は仕方がないかなと思います。特にシーザーとの顛末はそういった側面があったかもしれませんが、シェイクスピアではアントニウスとクレオパトラは真実の愛を貫いた物語になっています。そういった意味ではシーザー編をもう少し短くしてアントニウス編に時間を割いても良かったかもしれません。 やはり本作最大の問題点かつ泣き所が、”あまりにも有名な物語であるが故に結末が判っている”ということです。演技・構成・演出・美術・セットに至るまでほぼ全ての部分が完璧な作品でしたが、いかんせん観客のほとんどの人が結末を知っています。「タイタニック号の悲劇」「ロミオとジュリエット」と同じくらい有名な話なので、史実に近い状態でエンディングを迎えてしまったことが最大の泣き所でした。そういった意味ではキャメロン版のタイタニックは心底上手かったといわざるを得ません。 そうはいっても劇場公開されないTV映画でこの完成度は素晴らしすぎます。少々辛口でしたが、まあ文句なしの作品だと思います! [DVD(吹替)] 8点(2025-05-14 20:07:50) |
8. モンキー・キング 西遊記<TVM>
《ネタバレ》 1999年頃、アメリカの制作会社が作ったTVドラマ映画がNHKでまとめて放送されたことがあります。本作「モンキーキング」はそのシリーズの中の一つだったと思います。日本では日活が代理店としてDVDで広く展開されていて、レンタルビデオ店などで見かけた方も多いでしょうか。このシリーズは確か10作品ほどあったと思いますが、特に出色の出来映えだった「アラビアンナイト」や「ビーンストーク」と比較すると、本作「モンキーキング」はかなり稚拙で退屈であったといわざるを得ません。 第一にストーリーが面白くない。定番の西遊記ですのでもうちょっとウマいやり方もあったと思いますが、話があまりにも取っ散らかっていてロードムービーの体を成していません。あと、菩薩様(バイ・リン)がヒューチャーされ過ぎていて、西遊記の面々がほとんど彼女の恋愛物語の背景になってしまっているように感じました。脱線しますが、光の教授こと(トーマス・ギブソン)がダーマ&グレッグのグレッグにしか見えない、またかなりの大根役者であったことも大きなマイナス要素でした。。そもそも論、最新のSFXを強調しまくっている作品ですが、SFX部分がかなりショボいのが痛すぎます。 しかしチョイチョイ素晴らしいセリフもあって、主人公が修練中に自分に打ち勝つよう「己自身の師匠となれ」だとか「世の中で書物が最も強大な力がある」だとか・・ あちこちに中国っぽい素敵な言葉も沢山ありました。ラストがキレイな終わり方だったのだけが救いでしょうか。まあ可もなく不可もなくといった凡唐な作品ですが、、それでも見て損したというほど悪くはなかったような気はします。愛嬌があった猪八戒に免じて少し甘めの点数です。(本当ならせいぜい4点がいいところ) [DVD(吹替)] 5点(2025-05-12 17:13:13) |
9. ジャッカル
《ネタバレ》 元ネタ「ジャッカルの日」の原作本とも1973年の映画版とも異なる本作、暗殺者がジャッカルという名前と、試し撃ちをする以外には特に類似点は無いような気すらします。作品の出来映えは1973年版と比較するとあまりにもご都合主義が多くて散漫な仕上がりだったように思います。ダメな点をいちいち箇条書きにすることはしませんが、とにかく脚本自体がダメだったような気がします。 しかしジャッカル(ブルース・ウィリス)を筆頭に出演陣は結構頑張っていて、決してつまらない作品とは言い切れません。ロマンス要素、謎解き要素、宿敵同士の対決など見どころは多く、特にブルース・ウィリスの七変化はかなりの見ものでした。出来映えの悪さは決して出演陣のせいではなく、むしろ演者は豪華すぎるくらいだしかなり頑張っていたと思います。 余談ですが、、オリジナル「ジャッカルの日」はよく出来た作品でしたが、しかし古い作品&地味&ドキュメンタリー風でちょっと退屈してしまうような作品でもありました(個人の感想)。エンタメとして考えた場合、むしろ本作のほうがより観客を楽しませようという気概すら感じられて非常に好感が持てます。ヴァレンティーナ・コスロヴァ(ダイアン・ヴェノーラ)もかなり贅沢な使われ方をしていて素晴らしい最期を見せてくれますし、映画自体のラスト、電話一本で唐突に駆け付けるイザベラ(マチルダ・メイ)も全然悪くありません。いや映画としてはコレが正しい演出なのです。 そもそも論、題材が素晴らしいだけに、原作の呪縛から離れてもう少し脚本を煮詰めたほうが良さそうな作品なのかもしれません。そういった意味では本作の路線のほうが正解なのかもしれません。。演者に免じて少し甘めの点数です。 [インターネット(吹替)] 7点(2025-05-12 17:07:29) |
10. アパートの鍵貸します
《ネタバレ》 1989年の「晩秋」を見てジャック・レモンのファンになりましたが、若い時の彼はまた違う良さがあってイイですね。個人的には「お熱いのがお好き」の彼の人の好さが魅力的でしたが、本作の彼はもう少し生々しくリアルな男性像みたいなものが上手く表現されていたと感じます。 「アパートの鍵貸します」というタイトルからは少々エロい雰囲気が漂っています。実際、アパートの部屋やその部屋の鍵はエロい用途でしか使われていない訳ですが、内容からはエロ要素はあまり感じ取れません。そういった意味では上品な仕上がりになっていて、この時代の知性を感じます。しかしエロを包み隠して爽やか&良さげな映画に仕上げてあっても、その実中身はかなりのエロ&駆け引きがメインのダークな作品だったりもします。 上司たちの裏の面倒を見ることで恩を売りたい主人公バクスター(ジャック・レモン)が、無知なお坊ちゃん風な外見の割にかなりしたたかだなといった印象。またヒロインのフラン(シャーリー・マクレーン)も同様、清楚な雰囲気を醸し出している割にやっていることはドロドロしていて、まあ、しっかりヤッてる訳です(笑)いっちゃえばまあ「大人の映画」ですが、その大人の事情を上手く包み隠してあって、この辺は本当にウマい脚本&演出だなあと感じ入りました。不覚にもフランを守って義兄に殴られるシーンでこみ上げてしまいましたよw ラスト、フランの心変わりも・・ やっぱり明らかに男女のドロドロや駆け引きを知っている女の振る舞いで、なんだかんだいっても制作サイドも確信犯的に大人の事情を組み込んであるんだよなあ、といったダークな作品とみることもできます。そういった意味でもかなり深い仕上がりです。とても面白い映画でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-05-12 17:00:00) |
11. バービー(2023)
話題作ということで今更ながら鑑賞しました。正直どこが面白いのか、どこに感動すべきなのかほとんど理解できませんでした。まあもちろん随所にちりばめられているパロディネタや面白セリフ、演者の仕草(や、衣装など)にはクスっとさせられますが、オープニングの2001年宇宙のネタが面白いだとか、ケンが天下を取った時のシーンが面白いだとか、まあその程度の面白さでした。ラスト、遊んでくれた家族の元で娘に転生するシーンもちょっと綺麗にまとまり過ぎていて微妙すぎます。 個人的にはバービーのMy Dream House!に対してケンの Mojo Dojo Casa House!(魔術の道場カーサ・ハウス)はかなりウケますが、吹替版(ムンムンのムキムキハウス)は全く面白くなっていませんでした。モージョー・ドウジョウで韻を踏んでいますしエロ魔術も掛けているようです。またカーサ(家)・ハウス(家)も同意語だったりして、なかなかに結構よく考えられています。対する日本語吹き替え版の”むんむんムキムキ・・”はちょっとレベルが数段低い感じで雑です。 余談ですが、確かにマーゴット・ロビーのバービー&ライアン・ゴズリングのケンはとてもよくマッチしていましたが、しかしちょっと年齢が行き過ぎているように感じたのは私だけでしょうか?もう少し吟味して何とかあと10歳くらい若いキャストを探すことはできなかったのでしょうか、、どうしても年齢問題がちょっと気になっちゃっていまいち集中力が削がれました。あとグロリア役のアメリカ・フェレーラはアグリーベティーの時の方が10倍素敵でした。お歳を召してイマイチ魅力が無くなってしまったような感じでちょっと残念でした。色々酷評している割になぜかちょっと甘めの採点になっていますが、個人の感想ということでお許しください。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2025-05-02 18:14:49)(良:1票) |
12. モービウス
マーベル作品が大嫌いな私ですが、うっかり間違って鑑賞してしまいました。やっぱり予想通り大して面白く無かったです。物語も理論も見栄えも全てが失笑もんでしたが、そもそも論、子供向けの作品を見る年齢じゃないのに見てしまった自分自身の責任ですよねやはり。 ジャレッド・レトは大好きな俳優ですので、もう少し大人向けのシックでクールな作品を選んでいただきたいです。あと、個人的にはマーベル作品はCGの使い方がいろいろ間違っているような気がします。これ以上自分勝手な御託を並べても仕方ないのでここらへんで止めておきます。「色々金かかってそうだな」という部分に5点全振りな映画でした。ファンの皆さん酷評してごめんなさい。私には合わない作品です。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2025-05-02 18:07:34) |
13. ソウX
《ネタバレ》 無難に仕上がっていますがちょっと都合良過ぎ感強め。そもそも論、これほど複雑かつ巧妙なカラクリ&殺人方法を生み出して、なおかつそれらを水面下で実行することが可能なほどの天才的頭脳の持ち主ジグソウ(ジョン・クレイマー=トビン・ベル)でしたら、この程度の低レベルな医療詐欺を見抜くくらい楽勝だったはず。まずそこからして矛盾してしまってイマイチ楽しめませんでした。 ネタバレになりますが、ラストの「ジグソウさんご一行が騙されたフリ作戦」と、それに続く毒ガス作戦はかなり失笑もんです。中盤でアマンダ(ショウニー・スミス)が気にしていた通り、予定通り上手く進む気が全くしません。。子供が時間通りサッカーを始めなかったり、、悪のカップルが予定通りジグソウお手製の罠を使ってくれるとは到底思えず、むしろ全くうまく進まないほうに全財産を懸けたくなるほど酷いプランでした。ぶっちゃけ、かなり無理があります。 あと、本作で特に気になったのが、いくら生死がかかってるとはいえ数秒の思考だけで自分の足を自分自身で切断したり、モニターを見ながら自分で頭蓋骨を切り開く決断ができるとは到底思えず、やはり3分で勝てるゲームではなく最初からゲームオーバーを狙ったカラクリはズルいと思いました。そういった意味ではガブリエラ(レナータ・バカ)のゲーム(手足の骨を自分で砕いて脱出)は明らかに楽勝すぎておかしいくらいでした。(一応、ストーリー内で彼女のバツが軽い理由は説明されていましたが) 酷評しましたが見て損したとは全く思わず、いつも通りの本シリーズの雰囲気はきちんと出ています。シリーズファンには安心してお勧めできる作品、素人さんはぜひパート1から見始めてください。(個人的には目玉が飛び出る装置は必見でした) 余談ですが、何気に驚くのがセシリア(シヌーヴ・マコディ・ルンド)が映画制作時に約48歳というのにこの若見え感。ガチ美魔女で驚きます。また、同じくらい驚いたのがアマンダとホフマンが「歳くったな~」ってところでしょうか。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2025-05-02 17:57:19) |
14. イコライザー THE FINAL
《ネタバレ》 結構良かったです。三作目もシリーズ原則に乗っ取って勧善懲悪に徹したシンプルなスタイルは花マルでした。映画は判り易いというのが一つの正しいスタイルでもありますし、シンプルな本作スタイルに主人公のインテリジェンスな雰囲気や世界一美しい風景もマッチしていて”見たら忘れる系”の他作品とは一線を画しています。 しかし丁寧に描かれている主人公側のドラマに対して悪人側のドラマはかなり浅く、全体的にお手軽感が強めに感じてしまったのは少々マイナスでした。シンプルといえば聞こえは良いのですが、オープニングのシチリア系の大親分はサクッと9秒で終わりますし、メインストーリーの悪人側の兄弟(これは契りを交わした義兄弟?)の関係性の説明もお手軽。ラストも「10分くらいで終わったんちゃうか?」というくらいお手軽に兄貴が粛清されてしまいます。まあこれに関しては映画という2時間枠の企画の限界を感じますが、もうちょっと意味づけしてくれないとあまりにもお手軽すぎました。 今回は謎の女エマ・コリンズ(ダコタ・ファニング)が割とフューチャーされていますが、ラストの種明かしをされても全く判らず。で、Webで検索して事情を理解してもなお全くもって思い出せません。Webでは一作目に主人公を助けてくれた元同僚の娘とのことですが、それを確認するために一作目を再鑑賞する気も起きず・・ あと、少しだけ粗を指摘しておくと、中盤ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)が手を上げて出てきた時に、悪人側はすぐ射殺するか両足でも撃っておくべきでした。序盤の悪人側の鬼の所業を考えると、一斉にライブ中継されていたとしてもそのまま尻尾を巻いて逃げ帰るのはあまりにも予定調和的すぎました。 色々と文句も書きましたが、シンプルかつスマートで良い映画でした。シリーズ初見の方でも見て損のない作品です。 [インターネット(吹替)] 7点(2025-05-02 17:31:59) |
15. フェラーリ
個人的に期待していた作品でしたがイマイチでした。いえ決して悪くはないのですが、近年見た「ハウス・オブ・グッチ」などと同様、よく出来た凡作といった感想が一番しっくりきそうな映画でした。 評判が良いラウラ(ペネロペ・クルス)がちょっとウザ目立ちし過ぎているように感じました。エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)のシックな立ち居振る舞いと並べてしまうと一人浮いていたように感じます。ここは無名俳優のほうが本作のドラマ部分にもっと集中できたような気がします。ただ、本作のメインプロットとしてはエンツォ自身のキャリアで最も試練が多かった1957年を描きたいという流れで、そうなると正妻ラウラとの関係も密接に描かざるを得ず、ペネロペ・クルスを高く評価している批評家の意見も判らなくもないところでしょうか。 本作の車に関しては一貫して硬派で泥臭く描かれていて見ごたえは十分でした。事故の惨劇もかなりリアルに描かれていますが、これが現実でしょうからシッカリ描いているは正解だと思いました。車といえば個人的には1957年でしたら250カリフォルニア(スパイダー)が見たかったところですが、時系列的にはこの映画の後に発売されたモデルでしょうし、レースとは基本的に関係ないモデルですよね(笑) 映画の題材が史実を元にしている以上、全ての物事がミッレミリアの事故に向かって突き進んで行くドラマは少々重たく、時限爆弾的かつ予定調和的でもありました。ここをどう評価するかで意見も分かれそうですが、少なくともマイケル・マンが監督する作品ではなかったのかもしれません。決して悪くはないのですが、、よく出来た凡作の域を出ない仕上がりになってしまったような気がします。期待していただけに少々残念でした。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2025-04-29 18:01:58) |
16. グランツーリスモ
《ネタバレ》 本作が実話ベースだというのだから驚きますが、本編のレースシーンもほとんどがCGを使わずに実写撮影されているという事実には本当に驚きました。レースは終始ゲーム画面のような構図で進みますが、まさかこれがほとんど実写であったとは・・ 私はほとんどがCGだと思い込んでいただけに余計に驚きました。 で、本編ストーリーの方は極めて無難かつトントン拍子に進みます。この辺りは2時間枠の映画の限界を感じますが、TVゲームを一切プレイしない層にはちょっと現実離れしすぎていて、よく理解できないままアカデミーのシーンに突入してしまいます。ぶっちゃけ、5歳の時からモータースポーツに憧れていたのであれば、普通の感覚ならゲームにのめり込むのは明らかに道を誤った行為で、違法な公道レースなりゴーカートに明け暮れるなりしているほうがよほど正常な思考回路といえます。この辺の描かれ方が浅いせいで、ゲームをプレイしない層にはチョットついていけないストーリーラインになってしまっています。(私は親友は映画とゲームだけですが) ただし、アカデミー以降はきちんと正常なレースドラマになっていて、無理がない流れは万人に受け入れられるストーリーとなっています。事故のシーンもリアルだし、その後の精神的な葛藤も綺麗に描かれています。FIAライセンスを取得するまではとても上手く描かれていますが、その後がちょっと突飛。シムレーサー(ゲームオタク)だけでルマン3位はあまりにも映画的過ぎます。個人的にはほろ苦いラストであっても十分ドラマチックなので、無理のないシナリオに仕上げたほうが良かったような気がしました。 個人的にはツンデレの鬼教官ジャック・ソルター(デヴィッド・ハーバー)の出来がすこぶる良くて、本作の陰の主役であったように感じます。彼の過去も素晴らしいし、現在の境遇も最高でした。それらを経て主人公と共に勝利を手にするなんて胸アツすぎます。映画自体は凡唐な作品でしたが、真実の物語であったこと、レースが実写撮影であったこと、(脚色)鬼教官が大活躍であったこと、これらのおかげでかなり面白い映画に昇華した珍しい作品です! [ブルーレイ(吹替)] 7点(2025-04-29 17:58:27) |
17. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 名作と名高い本作、私もやっと見ることができました。結論から申しましたら本当に素晴らしい映画でした!狭い部屋の中で12人のオッサンがグダグダと議論しているだけの映画でこれほど面白いものは他にありません。ただし脚本に関しては、後出しじゃんけんのように徐々に核心を突く情報が出てくるので、いかようにも転ばせられるズルさは感じました。それでもそれを差し引いて余りある構成力とプロットの素晴らしさだったと思います。 ウマいのは私たち観客側に与えるファーストインプレッション。「ナイフが得意なスラムの若者」「折り合いが悪い父の胸にはナイフ」「複数の目撃者がいる」こうなると観客も明らかに有罪だと感じる訳ですが、証言を一つ一つ細かく分析していくと途端に粗が見えてくる流れが本当に素晴らしいです。しかし前述の通り、仮に全ての情報が最初から提示されていたとすれば、私たち観客も推定無罪の方向に傾くのが妥当で、そういった意味ではかなり危うい脚本であったのもまた事実です。 本作は12人の男たちが見せる多様な価値観も見どころの一つで、複数回鑑賞すれば奥深さが増す素晴らしい作風になっています。一見すると8番の正義感は文句のつけようがないように感じますが、彼はかなりズルいテクニックを多用します。最初に「たった5分で人の死を決めてしまっていいのか」というド正論でブレーキを掛けますが、実はこれは無罪かどうかには全く関係ない論点ずらしテクの典型です。またそれに続く流れも「有罪の証明は検察側にあり、合理的な疑いがある限りは推定無罪であるべき」を貫きますが、これも無罪の証明には全くなっておらず、8番のズル賢さ(というか強引さ)が垣間見えたりします。8番はこれらの詭弁を堂々かつ平常心で語っており、これが彼の上手さでもありました。 それにしても非常に面白い作品であったことは疑いようのない事実です。理屈っぽい方は是非一度お試しください! [DVD(吹替)] 9点(2025-04-29 17:54:59) |
18. DUNE デューン/砂の惑星 PART2
パート1に続き、本作もまあとにかく面白くなかった。私自身、心底ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が嫌いなことを確信しました。。しかし監督が嫌なだけではなく、本作のバックボーン自体も難し過ぎるところがあり、にわかファンやただのSF好き程度では全く話についていけません。まあ100歩譲って「砂の惑星」は良しとしても、旗の振り方や服装、宗教色、フレメンの価値観などなど、、なんとなく某○○国みたいで嫌でした。結局この映画の骨組みはあの地域の世界観なんだろうなというところが垣間見えてしまいます。(勘違いがあったらごめんなさい) 個人的にはやはりスパイスよりはフォースのほうがまだ分かり易くて良かったです。まあしかしデューンもスターウォーズもあまり好きな作風ではないのでどっちでもイイ訳で・・ 原作本にハマっているファン限定の作品かなといった印象が強い作品でした。壮大な映像美に免じて少々甘めの点数といたします。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2025-04-29 17:53:55) |
19. マッドマックス:フュリオサ
同時に見たミッションインポッシブルレッドレコニングに迫る収録時間ですが、本作は時間の長さを気にすることなく楽しめました。むしろ本作は2時間28分でベスト、捨てシーン一切無しといったところです。とにかく、、ジョージ・ミラー監督はヤバイ。80歳にもなって前作よりずっと面白い作品を生み出すとは本当に驚きです。正直、イーストウッドより全然偉大な監督さんとして認定したいくらいです。(個人の感想です) 前作怒りのデスロードではキャラの生い立ちがよく判らず「そういうものですよ」といった押し付け前提でしたが、本作ではフュリオサ(シャーリーズ・セロン)の背景が全て判明します。また、本作初出のディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)もキャラの描き方が丁寧で分かりやすかったです。若きフュリオサ(アニヤ・テイラー=ジョイ)が、前作のフュリオサ大隊長にあまり似ていませんでしたが、しかしながらこの眼力を見せつけられちゃうと全然許せちゃいますね。むしろアニャ版のフェリオサは素晴らしかったです。 物語の構成的にも本作は良く練られていて、子供時代からバランスよく丁寧に描かれています。他の方もおっしゃっているように、本作のおかげで前作怒りのデスロードがより面白く感じられるくらいウマい物語を描いています。宿敵ディメンタス将軍のラストもこれはこれで正解だったと思います、嫌いじゃない。次作はぜひイモータン・ジョーと人食い男爵の生い立ちと成り染を見せていただきたいところです。 本作にはマックスは出てきませんが、パート2に並ぶ面白さだったと思います!(厳密にはマックスらしい人がワンカットだけ映りますが) 最後になりましたが、やはりジョージ・ミラーが撮る映画はとにかくカメラワークが最高!ということだけ付け加えたいです!文句なしに面白かった! [ブルーレイ(吹替)] 8点(2025-04-29 17:50:16) |
20. ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE
《ネタバレ》 「普通だった」そんなありきたりな感想が一番に出ました。最近流行りの上映時間が長い作風で、本作は二部構成のうちのパート1に当たり、本作だけでも収録時間が2時間43分もありました。正直、長くて込み入っている割にストーリーは面白くありません。MIシリーズも主人公イーサン・ハント(トム・クルーズ)の年齢を考えるとさすがに限界なのかもしれません。 長い割りには特筆すべき点は少なく、何となくダラダラと最後まで見てしまいました。イルサ(レベッカ・ファーガソ)から入れ替わりのグレース(ヘイリー・アトウェル)はベテランクラスの女優さんですが、イマイチ華が無いてインパクト弱めでした。ヨーロッパ系美女を集めるのがトムの趣味なのか映画のステージ上のリアリティなのかは謎ですが、色んな意味でさすがのトム・クルーズもしんどそうな印象です。(なんだかんだいっても60歳のオッサンですし) いつものお決まりで、IMFやCIA各陣営その他TOP連中のゲスさは100%健在でしたが、それもさすがに飽きます。今回の敵はAIな訳ですが、これも手垢が付きまくったネタで、次作でどう決着をつけてくれるのか気になるところです。今回出色だったのは二人の美女で、ホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)とパリス(ポム・クレメンティエフ)らのシーンは目を引くシーンが多かったです。彼女らのラストも二人ともにそれぞれがイケてたと思います。 個人的な意見ですが、トム・クルーズといえば「レインマン」や「7月4日に生まれて」など、若い時から性格俳優もきちんとこなせる俳優でした。無理にアクションに振らなくても年齢相応の落ち着いた作品もチョイスして欲しいです。続き物ですので次作も見ないと終わりませんので一応は見ますが、、まあでもそれだけの映画かもしれません。余談ですが、グレースはなぜ仮想通過を受け取らなかったのでしょうか?ここちょっと謎ですね。。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2025-04-29 17:46:17) |