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1.  グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 《ネタバレ》 
 Atmos上映で視聴。前作グラディエイターは好きだったものの(ラッセル・クロウは好きな役者さんなので)本作はビジュアル的にもパッとしないし歴史スペクタクル映画ってとても金がかかる上、前作と同レベルでも評価が下がるいばらの道で、とはいえ好きな題材ではあるのであまり……というかまったく全然期待せずに見た感じです。   期待されてそれ以上に乗り越えてくるのはバーフ・バリくらいのものでしょうか。マッドマックス怒りのデスロードもどうか。いずれにせよエネルギーをタメにためて前作を上回る期間が要るので、なんでいまさら続編と思わなくもなかったですが、水準以上の続編を作るのに期間がかかるのもわからなくはないと思ったりなんかしていました。    で、率直な感想としては、意外と良かったです。    中盤のあの運命の対決辺りからギリシャ悲劇的なドロドロした展開に突入し、そこで目が覚めた感じです(そうでなくちゃ! と思った)。   そこから先、主人公が様々なしがらみから英雄として成長していき、見た目も凛々しく見えるようになってくるのが、主人公の成長物語としてわりと違和感なく観られました(私は)。   エンドがエンタメ的にカタルシスが足りないと言われるだろうけど、本作は悲劇物語的、史実に多少は準拠した歴史ものなので、安易に王座について終わりとかだと歴史改変になっちゃうし、今の時世、完全なフィクションではなく史実に準拠したような話が安直に悪い奴をぶっ倒してハッピーエンドというのは、現実に鑑みて全く共感しがたい所があり、あのような結末を選ぶのは、私自身がそういう話が好きなのもあって絶妙に良い感じに収まって良かったと思います。   加えて、歴史スペクタクルものに現代的価値観の夢を語らせる話って、本当に実現しちゃったら歴史が変わっちゃうので、結局悲劇的終わりで夢絶たれるんでしょう? と個人的に冷めちゃう部分がいつもいつもあるのですが、本作はもう一歩踏み込むところまで描いてるのがちょっと革新的かなーと思い、挑戦として面白かったです。   ただまあ物語としては面白いけど、リアルな状況を考えると、あの物語が終わった直後に周りにいた人々があの先どうするかというとどうしたらいいかわからず国全体として混迷せざるを得ないのではないか、巨悪は倒したからあとは知らないっていう終わりは主人公自身がテロリストそのものじゃないのか(笑)というのもあって、そこはメッチャ批判されるだろうなあと思います。   あとアクション部分については、とてつもなく金がかかるのでスケールダウンするだろうなと予想してたのですが、各種趣向を凝らして盛りだくさんでかなり楽しい感じになってたので、わりと満足できました。   それから、デンゼル・ワシントンは素晴らしい怪演で際立ってて良かったです。  敵役の二皇帝も含めて、悪役がそれぞれ個性味あふれて良かったですかね(主役が地味目なのもあり、補って楽しまされたかなと)。   あと、要所要所で前作のテーマ曲でもある「Now We are Free」がガシガシ鳴るのが、私のとても好きな曲なので非常に嬉しかった感じです。   それから「R-15」と付いてる通り表現が少々グロ目なので苦手な方は注意されると良いかもしれません。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 8点(2024-11-18 06:32:20)★《新規》★
2.  ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ 《ネタバレ》 
 ドルビーシネマ視聴(音響良し、入場料高め)。  前作の「ジョーカー」は観て面白いと感じたのと(ニューシネマ的なものも割と好きなので)、その下敷きと言われる「タクシードライバー」も割と面白いと思ってた口です。   観終わった感想としては「うーん、どうなんだろう」という印象でした。   別に悲劇的な物語でも良いし、「ジョーカー」の時から、アメコミのガワを付けてるがリアル寄り、悲惨で不遇な話と了解してたので、低予算でマイナーだけど刺さる人には刺さる作品として出てきたなら、ああああああと思いつつ受け止めたと思うのですが、いちおう仮にも「ジョーカー」の名を冠した作品として出てきてしかも人気ディランの「ハーレイクイン(しかもレディ・ガガ)」まで登場し、そうするとその名前だけで惹かれて見に来る一般の人が多数発生すると考えられ、またネームバリューで日本の大手配給会社が買い取るので、作品の出来に関わらず、多数のスクリーンを全国的に占有してしまうわけですよね。   で、作品テーマがメタ的で、「ジョーカー」という悪のヒーローをダシに、儲かればいい中身とか知らんという制作陣への批判的内容も含み、かつ「ジョーカー」を悪のヒーローと崇め奉る視聴者/ファンへのあざとい批判もする、という作品に見えるので、そういうのでわざわざ多数の劇場を占拠し、他の前向きでより良い作品が広まっていくのを阻害するのは、その存在自体がはた迷惑ではないかと。製作費が300億円とか言われており、そんなに大々的迷惑行為をやるのは許されるんだろうか? よく制作OKになったなー、という印象でした。   演出は素晴らしく、ミュージカルシーンは凝っていて、歌も良いし、主演の鬼気迫る迫真の演技もすごくて、楽しまされるんだけど、そもそものメインの話で伝えんとする内容がいかがなものかという感じで。   個人的には「ジョーカー」「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」の2つを合わせて「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の超豪華再構成版と思ったのですが(裁判シーン、ミュージカルシーン等)、だからこういう話って、許されない罪を犯した以上、死刑なり悲劇的なエンドになるのは仕方ないとしても、主人公の内心の救いみたいなものは寛容にも許そうとか、キリスト教的教えとしては、来世ですべての罪が許され幸福になることが決まってるので、そういう赦しは許容しようみたいなのがあって、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「タクシードライバー」では、作中現実は悲惨だが、主人公の最期の妄想の中では幸福になるのは赦されるみたい描かれ方をして、視聴者としてちょっとだけほっとし実に味わい深かったりするのですが、本作ではそういう内心のちょっとした救いみたいなものまで否定しにかかるので「えー……」って感じでした。   いちおう、監督側としては、最後のジョークの辺がやさしく救いのある場面だったということらしいので監督自身はそれで救われたのかもしれませんが、私には伝わらなかったかな(笑)。   あと、リアル寄りの話として本作の主人公の話は、現実の男性弱者の風刺の部分もあって、実際現実に大変になってると思いますが、それが前作「ジョーカー」ではちょっとスッと爽快な部分があって、それで救われた人もいたかと思うのですが、本作のオチだとそういう現実の不遇な人にも三下り半を下してるかのように見え、それってエンタメとしてどうなのか。芸術系の作品でも金と時間を取ってみせる以上、多少は視聴者を楽しませる部分はあるべきと思ってて、ましてや「ジョーカー」の名を冠したら期待度が上がるのはわかり切ってるのに、楽しませる気がない、誤解も許さない、みたいな表現はどうなのかと思いました。   それが、マイナー映画でやってるならまだマシなんですけど、メジャータイトルで多数劇場を占有してると、マイナーだけど前向きな良い作品が広く伝わるのを劇的に阻害することがあって、個人的に大迷惑だと思っており、昔の作品でも同じような事態があって、いまいちなメジャー作品が多数劇場でそれなりの興行収入を得たので"てきとう"にその時の賞を受賞したんだけど、同様のテーマのすごい良い作品がマイナーであるがゆえに審査員に観てもらう事さえされず、無視された事態があって個人的にメチャメチャ、イラっとしたんですが、本作でその時の嫌な気分を思い出してしまいました。これよりは「侍タイムスリッパー」「エストニアの聖なるカンフーマスター」みたいな前向きなおもろい作品がもっと上映館増えて欲しいですね。   ということで、本作は演出とか映像表現とか素晴らしいんですが、内容的にいかがなものでしょうと思いました。  もうちょっと主人公が内心だけでも救われて欲しかったかな。
[映画館(字幕)] 6点(2024-10-24 19:44:36)
3.  侍タイムスリッパー 《ネタバレ》 
 全国上映展開されたすぐ後に地元で観に行ったのですが初回は「SOLD OUT」で視聴できず、後日再チャレンジしてやっと観られた感じです。観た日もほぼ席はいっぱいで盛況でした。   情報的にはSNSで話題になって、東京1館でしか上映されてなかったのが連日満席で全国展開が決まったというのは認識しており、観たいなと思ってました。「カメラを止めるな!」と比較されてインディーズ映画でも面白げな話なのかなあと思いつつ。   率直な感想としては、メチャメチャ面白かったです!   ハラハラする超カッコいい本格的な鬼気迫る殺陣に、タイムトラベルネタ的な笑いあり(劇場中が笑いに包まれてみんなで映画観て楽しんでるなあって感じが非常に良かったです)、ホロっと泣ける話もあり、あと、個人的にはそれだけで十分インディーズ映画として元が取れて大満足だったのですが、その先にさらなる驚愕の展開があるという予想を上回る出来で、インディーズどころか全映画の中でエンターテインメントかくあるべき、時代劇エンタメ最高! と快哉を叫びたくなるような素晴らしい作品でした。   映像的には、時代劇としてあまりにもクオリティが高く「これ本当にインディーズ映画なのか!?」と疑ってしまったのですが、インタビュー記事など見ると脚本を気に入った東映が全面的にサポートしてくれたみたいで(ただ予算節約のため舞台のオフ期に撮影されたとのことです)、映像的には本格的時代劇とまったく遜色ないレベルの作品となっておりました。   特に"殺陣"の部分が、主人公が斬られ役の殺陣師に入門する設定なのもあり、どこもかしこも殺気立った緊迫感のあるカッコいいものになっていて、あの抜刀して刀を鞘に納めて"チャキン!"てやるだけで、ああたまらん! と思ってしまうのですが、これが主人公は当然として、端役の隅々まで行きわたっててみんなカッコいい。主人公の当て馬的、チャラい二枚目俳優の心配無用ノ介すらも、漫画チックなコテコテな役をしてるのに刀の扱いはクソかっこいいという、もう大満足でした。   最近は時代劇というとほぼ地上波では放映されておらず、BSで往年の名作が再放送されるか、多少新しめの新作が出てくるものもあるのですが昔ながらのチャンバラ劇のようなものはあまりやられなくて(役者が殺陣を身に付けるのが難しいというのもあり)人情ものが主流だったりして、こういうバキバキのカッチョ良いチャンバラのある作品てすごい久しぶりだなあと思って……いや、NHK大河ドラマでは考証含めてしっかりやってますか。映画も何だかんだ毎年ちょっとずつは作られてきてますね(今年は"碁盤斬り"ですか)。   あと、時代物タイムスリップネタだと定番的なお笑いのネタについてですが、ケラケラ笑って楽しく見られたのですけど、同時にこういう純粋な、単純な感動の感覚ってすっかり忘れてしまっていたなあと思い起こさせられました。新興国の新しい映画作品とか見てもしばしば認識させられるんですけど、ごく単純な、人が死んだら悲しいとか、食べ物がおいしくて平和なのはなんて素晴らしいことなんだろうとか、親子の情愛は泣けるなあとか、妙に斜に構えてしまって、そういうシンプルな原点の感動を見失ってしまっているというか、そういうのはダサいとか感動ポルノとか言って叩き回ってるのはどうなんだろう、というのをしみじみ考えさせられた感じです。   あと、インタビュー記事で監督氏がヒロイン役の人に「めがねをしたら最強だから」と言ってて、めがねをした役としてヒロインの人は出演していたのですが(当人はあまり気に入ってないようでしたが)(同時にリアルでも助監督をしていたそうです)、これについてはめがね好きとしては監督に大賛成で、とても良かったです。あからさまに度のない伊達めがねなのと、めがねに慣れてない人にありがちなしばしば微妙にめがねのかけ具合がズレてるのを直していただけたら完璧なめがね女優になっていただけるかと、今後にとても期待を持たされる出演となっていました。   いいぞ(超ウザい)。   そんな感じで、時代劇愛の感じられる実に良い作品でした。  ちょうど真田広之の「SHOGUN 将軍」が同時期にエミー賞受賞とのことで、これからこういう時代ものの波は来るのでしょうか。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 10点(2024-10-03 11:55:52)(良:1票)
4.  きみの色 《ネタバレ》 
 ネットでIMAX視聴が良いよ? という情報があったのでIMAX視聴しました。  映画の宣伝は劇場でよくされてて青春音楽もので良さげな雰囲気で観たいと思ってました。   端的な感想としてはとても良かったです。   青春ものとして私的に欲しいものはみんな詰まってた感じ。  あと事前情報として全く知らなかったですがテルミンが最高でした。   音楽で色が見えるというと「共感覚」というものが有名で音から色を想起するのかと思っていたら、人の印象が色に集約して感じ取れるみたいな話でちょっと違ってました。主人公から見て"きみ"は青に見えて、"ルイ"は緑に見える……というのは、あとあと振り返ると色の感覚が戦隊シリーズものの感覚かなあとか思った(笑)。   人と人の交流とか、音楽ものなので相手が作ってきた曲に自分の楽器で合わせてみる音楽的交流を、色と色が交錯し合う(混じり合うのではない)みたいな描き方をするのは、実にサイエンスSARUっぽい言葉を介さない映像による表現でアニメとして非常に良かったと思います。   と、同時に「音楽もの」なので言葉を介さない音による交流は「音」で勝負して描くべきではないかというジレンマもあって、好みの問題ですが、本作は映像寄りにしたのかなあと思いました。   あと音楽的リアルみたいなのは、主人公は元バレエをやってたのでその流れでピアノのレッスンも受けていた(しかしいまはやってない)というのは非常に良くある状況なので、ありかなあと思い、ライブでも1本指で済むごく簡単な演奏しかしてないのでまあ納得。ギターの彼女は、出てくる場面出てくる場面ひたすらギター練習してるし高頻度で集まって練習してた描写もあるのであれくらい弾けてもありえるかなあと思い(歌はそこまで技巧を使っておらず)、テルミンの彼は、テルミンなんてマイナーな楽器をわざわざ取り寄せてまでやろうっていう人間が気合が入ってないことなどありえないだろう、テルミンて最近は雑誌の付録で販売入手できるようにもなってるしテルミンが今風でなく古式ゆかしい伝統的な形状の本格的テルミンになってるのはまあ医者の家で金持ちなのだろう、で納得、……というわけでライブの演奏があまりに素晴らしいんですけど、彼らは本当にがんばってたので、これくらい弾けるのもアリだよな、と思いました。   最近の音楽を主題にした作品ではほぼなくなったと思うんですけど、ろくに練習もしてないのにライブシーンだけ演奏がすごい(作品の都合とは言え)とかあると、ちょっといかがなものかと思ってしまうので、本作ではそんなことはなくて良かったかなあと。   私は知らなかったのですが監督が「けいおん!」の監督さんだそうで、そういえば曲の感じが「けいおん!」ぽいなあとは思いました。   あと、映像作品って、どんなに身につまされる身近な表現をされても、あくまでスクリーンとかディスプレイの向こう側の話で現実の我々を侵食しては来ない印象がありますが、音楽とかSEって劇場で聞いてるリアルな我々の世界に入り込んできて、例えば本作が金曜ロードショー上映されると、あの美麗なテルミンの演奏が全国的お茶の間に入り込んでくるわけですよー! というのがあり、あれがメタクソかっちょ良くて素晴らしかったので、実にありがとうございますという感じでした。元々好きでしたが、テルミン良いよ、テルミン。   ストーリーとかキャラクターについては、華々しいわかりやすいドラマがあるわけではないのですが、それぞれがちょっとした鬱屈を抱えていて、明確に解決するとは限らないんだけど音楽の交流(色の交流)でそれが表現され受け止められることでちょっとだけ救われたりし、主人公たちにとって「いま自分たちに取ってやるべきこと、やりたいこと」が世間の枠組みとズレてて、まったく悪意ではないんだけど、切実にそうしなければならないからやると社会的に悪いことをしたことになってしまって、だけど、その青春期にはそういうことってあるよねえと受け止めてくれる世界のとても優しい描き方が観てて気持ち良かったです。   そんなところです。   あと、テルミンが最高にカッチョ良かったです(3回目)。
[映画館(邦画)] 9点(2024-09-05 11:07:34)
5.  劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re: 《ネタバレ》 
 信者的に必ず観るのですが、ようやく視聴。  上映前の注意喚起動画はぼっち&喜多ちゃんバージョンでした(公開当初は山田&虹夏だったらしく)。   今回は9-12話の4話のみの総集編で余裕があったため作品を補足するようなエピソードが多数追加されて非常に満足度の高い総集編になってたかと思います。   総集編というよりは別アレンジですね。   音楽のアルバムでも名曲って、同じアーティストの同じ曲の別アレンジばかり多数封入された特別なアルバムが出ることが時々ありますが、この「ぼっち・ざ・ろっく」という物語の、ぼっち&喜多ちゃん2主人公による別アレンジかなあと思いました(パラレルワールドみたいな、あるいは同じ世界だけど別視点から見た話みたいな)。   前作の「Re:」も、こちらはぼっち&虹夏の夢をかなえていく過程を描いた別アレンジの物語だったと思うんですが、「Re:Re:」はぼっちが日常に帰っていく、普通の人にとっての日常(幸せ)を獲得していく話かなあと。   音楽ものの話って、成功して注目されてメジャーになって社会的にも成功する話になりがちなのが、ある意味個人的に常に気に入らないのですが、なぜかというと初期のまだ誰にも注目されてなかった頃に、"お前の音楽は素晴らしい"って信じて応援してくれた身近な人たちを、メジャーな超人になってしまうがためにすべてかなぐり捨てていってしまって遠い人になってしまうのが何だかな、って思うわけですが、「ぼっち・ざ・ろっく!」が物語的に革新だったのは、人間関係的に限りなくマイナスだった主人公が、普通の人のごく普通の日常的幸福を得ることが、こんなにもドラマチックで素晴らしく、身近で応援してくれた人を捨てて別世界に行っちゃうんじゃなくて、まさに身近で応援してくれた人とより深い絆を築いて幸福な日常を獲得するのが、感動的である、っていうのを思い知らせてくれたところで(私が救われた)、そう思って観てたら劇場版エンド曲が、たぶん未来と思うんですけど、めちゃギターがうまくなった喜多ちゃんとぼっちちゃんのツインギターの、メチャメチャカッコいい曲で、うおおおおおおおお!!!!!! ってなった感じです。   良かった。  ※私は視聴時知らなかったのですが映画版のエンド曲もアジカンの「Re:Re:」のアレンジらしく。   で、エンドの辺のオリジナルの演出はいわゆる「行きて帰りし物語」の「(日常に)帰りし」に見事に着地するこの物語の、「帰りし」の演出としてあったかなあという事で私的には非常に納得して受け入れられた感じでした。   ほんとに好きな曲のアルバムって、終わってしまうのがあまりに名残惜しくて、何度も何度もヘビロテして何も聴いてなくても全曲の流れが頭の中で全部なぞって行けるようになるまで聴きまくるじゃん。それでも想像だけじゃ思い出せないかけらがいっぱいあるのに気づくから、また実音で何度も何度も聞きなおすじゃん。   そんな風に私は感じました。   あと、喜多ちゃんの中の人が、歌がうまくなりすぎちゃって加減してくださいみたいな演出がされたというインタビュー記事などがあったのですが、それでも非常に力の抜けた余裕ある歌いぶりに変貌しており、そこら辺も今回の劇場版に合わせて撮りなおしたんだなあと感動した次第です。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 8点(2024-08-22 10:52:50)
6.  ルックバック 《ネタバレ》 
 観るかどうか迷ってたのですがネット上の評判が非常に良かったのとタイミングが合って視聴。  原作も最初のWeb版で読んで、当時非常に評判良くて、たしかに良作と思うけど自分はそこまでかなあって印象で詳細は忘れてました。   映像は素晴らしいクォリティで音楽も良くて、若干ノスタルジックな曲が感動を押しつけがましく押し付けてる感じがしてどうかとも思ったんですけど、要所要所のブラックなオチの4コマ漫画のキレがすさまじくて実にうまいなあと思いました。   例の事件に触発された描写については雑誌掲載時にその改変がネット上で紛糾してたのが映画では元の表現に戻ってて良かったと思うんですけど、本作はその事件に触発されたとはいえそこが主題ではないと思ってたので、個人的にはどっちでも良いかなという感じでした。   で、映画を観て思い出したのですが本作が良作ではあるけど個人的にはあんまり刺さらなかったのは、本作って「いじめっ子視点の贖罪物語」かなあって思ってしまったからで、映画を観てもその認識は変わりませんでした。最近だと、有名人が「昔はやんちゃなことをしてしまったことがある」的な違法スレスレな悪事を武勇伝みたいに語るのがメチャメチャ叩かれたりしていますが、やってることはそれと変わらんかと(あくまで私の個人的な印象ですが)。   重要なのは主人公が、ののせこそが絵の天才で一生かけてもその技量に追いつけないと思っていて、にもかかわらずののせが引きこもりで表に出られないのを利用して漫画の背景を手伝わせて、背景描いてるだけなのは大したことないと貶め、ののせが独り立ちして絵の勉強をしようとしたのを邪魔したということへの嫉妬心と罪悪感を、普通創作家コンビの話だと歳を取った後に、実は君こそが天才と思っていた悔しいから絶対言いたくなかったんだけど、とか告白するんですけど、本作では相手が亡くなってしまったので一生告白できなくなって、でも向こうにとっては自分こそが漫画の天才だと言ってずっと応援してくれてたので今も漫画描いてるみたいな話で、結局最後まで  「君こそが天才なんだ」  とか一言も言えずに終わるので、それが実にいじめっ子の贖罪話だなあって感じるわけです(誰しもなにがしか罪悪感のいくつかは抱えているものなのでそこが味わい深い所ではありますが話としては100点満点中80点には届くかもしれんけど決して100点にはならないよなあみたいな)。   そんなところでした。
[映画館(邦画)] 7点(2024-07-27 13:47:57)
7.  お隣さんはヒトラー? 《ネタバレ》 
 ちょうど日程が開いててちょうどいい感じの映画がないか探しててパッと目について飛び込みで観た感じです。  個人的にはナチス/ホロコースト関連の話は興味を持ってよく見るのと、劇場で予告も見てたりしたんですけど、ちょっとコメディタッチ(タイトルからしてそう)なのも私の好みでした。  あと、題材が今まさにホットな内容でなかなか攻めてるなあとも思ったり。   キャッチコピーで、今までにない視点のナチス/ホロコースト系の話ということで、確かにいろいろこれまでと逆転した設定になっており、なるほど! という感じでした。   中盤の調査を進めていくところが「陰謀論というのはこのように醸造されていくのか」という詳細なドキュメンタリーみたいになってて、非常に興味深く観られました。   最終的に完全なハッピーエンドにはならないんですけど、救いみたいなものがあって、そのよすがが「チェス」「絵」なのがなかなか粋で良かったです。特に「絵」が素晴らしい。   そんなところでした。
[映画館(字幕)] 7点(2024-07-27 13:43:00)
8.  デッドプール&ウルヴァリン 《ネタバレ》 
 ネット上で割と評判良かったので観ました。  デッドプール1、2は観てました。  ネタに出てくる作品は3分の1くらいしかわからなかったかな。  ロキのドラマは観てません。  ネット上に各ヒーローキャラクターの配置とか関連配給会社を整理した図が流れており、何となく見て把握はしていました。  あとデッドプールの日本語版コミックス版(新作)も観てました。   感想としては、わりと良かったです。いちおうハッピーエンドだし、あの終わりは個人的にホットでお気に入りでした(自己犠牲的なものへのアンチテーゼとして)。劇場では各所で笑い声が巻き起こり、個人的には序盤からケラケラ笑いながら観てた感じになります。   雰囲気としてはテリー・ギリアムとかエブリシングエブリウェアオールアットワンスの、チープな未来SFの味わいがあって、個人的にデッドプールって劇場版で妙に高尚な良い話にされちゃったみたいなところがありどうだろうと思ってたのですが、本作は安っぽくベタに俗悪的になっててまさにこれこそデッドプール! って私は思いました(偏見)。   内容的には、アクションがあの2人が組んで存分にアクションすると到底お子様に見せられない凄惨なものになるので出番が減ったみたいな話があったんですけど、本作では容赦なくやり切ってくれてたのでなかなか良かったです。山場はイーストウッドの『ガントレット』を思い出したりなんかしました。   あと、マルチバースはもういい加減にしろネタについては調子に乗って最近流行りの生成AIネタまで混ぜてきて「デッドプールの概念実装」みたいなところまで見られてなかなか楽しかったです。   サプライズの辺は、私はあの辺けっこう好きだったので単純に嬉しかったのと、結局大御所まで出せないのは予算の都合だろうという所までデッドプール的で良かったですかね。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 7点(2024-07-27 13:30:55)
9.  ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉 《ネタバレ》 
 ウマ娘はゲームもTV版も観てなかったのですが、ネット上の評判が良かったのとちょうどタイミングが合ったので観てみた感じです。   だいぶ前に知人がTV版が流行った頃に「ウマ娘は良いぞ」と勧めてきたことがありました。実際の競馬の競走馬の歴史や設定を踏襲しており競馬が好きな人には熱いという話も聞いてました。個人的認識としてはウマ娘って擬人化してるけど馬なので、馬などの動物と人間というものは別物でどんなに親しく感じても究極的には相容れないものがあり、しかも日本における馬の扱いって馬視点で見ると結構、過酷で極端に偏った状況になっており、ウマ娘が外見が人間(的)なので、人間と思って考えるとものすごい極端な扱いをされた高級奴隷みたいなところもあって、私自身はとても平静に観られないだろうという事で避けてたところがあります。競馬を扱った話としては「風のシルフィード」という大昔の漫画が好きだったりしたこともありました。   日本の馬とは何かについて個人的趣味で色々調べたことがあるんですけど(なぜに)、まず日本では極めて特殊な歪んだ状況にあって、現代だとほぼ2種類しかいないと言われてます。競馬に出てくる(種ですらないごく限られた分類の)「サラブレット」と、北海道の「ばんえい種」です。ヨーロッパなど海外だっともっと多様な種がいるのですが。戦国時代頃に生息していたという在来馬は今ではほぼ絶滅していて戦国時代ドラマの合戦に出てくる馬は現存してないので全て間違っているとか、あるいは「風のシルフィード」を観てると、脚を怪我した馬はその血が引き継ぐに値するものであれば種馬として残る場合もあるけど、さもなければ生きて世話する労力も足りないので殺処分するしかない、というような殺伐としたイメージしかないです(超偏見)。あと近場の馬牧場の馬に乗りに行ったこともあります。メチャ高くて怖かったです。   ……という偏った前提知識がありつつ観たのですが、熱血闘争ものとしてメチャクチャレベルが高く熱かったです! 極限を追求するがゆえに常に怪我との背中合わせで、特にサラブレットは競走馬として極限まで特化された馬なので、勝利してもケガで去ってく者がいるし、ライバルがいていつか勝とうと思っても相手はリタイアして未来永劫勝つことはできないことはしばしばある。世間の評判でどんなに実績を積み重ねても、あの馬がもし引退せず走り続けてたら絶対に勝ってただろうと言われ続ける。しかし現実には例え評価は二番手であっても生き延びて走り続けられた幸運な者が現実の1番になる、みたいな極限の勝負の"あや"が描かれて非常に良かったです。バトルものとしては最高に熱く、良かったかな。   一方、「ウマ娘」ってそもそも何なの? というのが一部の面しか描かれないので、そもそもどうやって生まれてきたのかわからないし、この親しげに話してる間柄のウマ娘は血のつながった親子関係とかかもしれないし、そもそも現実には雌の馬って走らないのじゃないのか、にもかかわらず走ってるのは外見女性系ばかりなのは何なのかとか、怪我して走れなくなった馬ってリアルでは生きてないのじゃないかとか、映画中の「走るのが本能なんだ。走らずにはいられない」みたいなのが妙にリアルに馬的・動物的だったりして、すごい気持ち悪いっていうか得も言われぬ違和を覚えたのですが、あの最後になんでか知らないけど突然コンサートを始めるのは何なのだろう(話には聞いてたが)、過酷なレースで息も絶え絶えなのにそこまで酷使するのはいかがなものか、とか思ってしまいました。それまで競争してたりいがみ合ってたのは何だったのかて感じに何事もなかったかのように揃って歌い始めるし。イカれてます(笑)。   そして、エンド曲はあの伝聞で何度も何度も聞かされた「うまぴょい」で、これが世にいううまぴょいという奴か、正真正銘狂ってるなとしみじみ感じました(うまぴょい! うまぴょい!)   そんなところです。
[映画館(邦画)] 9点(2024-06-13 10:51:39)
10.  マッドマックス:フュリオサ 《ネタバレ》 
 IMAX音響で視聴。   怒りのデスロードの前日譚という事で「怒りのデス・ロード」に熱狂したのと、主演のフュリオサを、以前から応援してるアニヤ・テイラージョイが演じるという事で、非常に期待して観に行った感じです。   端的な感想としては、マッドマックス世界をバリバリ描いてイカレタ世界観とか、激しいアクションシーンの数々とか、各役者の熱演とか新登場キャラも良かったし、ストーリ展開や落ちはマッドマックス世界らしい展開と落ちで良い感じと思ったんですが、フュリオサの敵役のディメンタス将軍がショボくて、せっかくいいお膳立てをされても悪役が映えないとメリハリが付かないよなー、ということで、実に惜しい感じでした。   あと、アニヤ・テイラージョイ演じるフュリオサが美しすぎる(笑)。   幼少期のフュリオサは子供なのに肝が据わってたくましく美しく将来の成長が楽しみな感じで非常に良かったし、母親のスナイパーもメチャカッコいいし、フュリオサを助けてくれる警護隊長ジャックもカッコいいし、あと、今回はまだ負けないイモータン・ジョーが悪役だけどクソカッコイイというのが驚きでしたか、アニヤ演じるフュリオサも中盤恒例の難しいダンプのカーアクションで大活躍で熱演してしており、それぞれ良かったんですけど全体のまとまりとしてどうかってところで。   クリス・ヘムズワース演じるディメンタス将軍は、いろいろ非常に難しい役柄と思われて長台詞や見せ場が多数あって熱演されてたと思うんですけど、マッドマックス世界的なありがちな残虐な悪役かというとそうでもなく、それは意外性として悪くはないんですが、文明が失われた世界で過去の文学とか知識を身につけた知的な悪役ならそれでも良いかと思ったらそうでもなく、意外と簡単な騙しにすぐ引っかかって間抜けな面を見せ、逃げたフュリオサを追うため閉じた門をどう知的にクリアしていくかというと知性のかけらもなく力推しで巨大ジープで無理やり門を押しつぶして進むとか、フュリオサに追われて逃げる時も姑息にせこく立ち回って、小物臭が半端なく、言ってることも行動も支離滅裂で一貫性がなく、全然復讐に値しないっていうか、全体の構成が復讐相手の悪役さえ引き立てばそれだけで全体が締まるようにおぜん立てされてたにもかかわらず、悪役として煮え切らないため、いまいちまとまらなかった印象を受けました。   クリス・ヘムズワースは悪役はあんまり向いてないのかもなーって思ったり。   あと気になったのは、アニヤ・テイラージョイが美し過ぎるせいでついつい綺麗に見せるカットを長めに撮ってしまうというのが本作でも発揮されてしまってるのが、フュリオサって性別を隠して潜伏してるはずなのに目立ちすぎるのはどうかというのがあり、緊張感を削いでたかと。あと警護隊長ジャックが人生経験豊富で思慮深そうなのにすぐにフュリオサに恋に落ちてしまうのがちょっとどうかというのと、アニヤ・テイラージョイ演じるキャラクターが素直に恋愛関係になると必ず相手はしぬ(苦笑)展開がすごいベタに来て、またかー><と思ってしまいました。  あとフュリオサって完全に自立して力強い印象だった(幼少期もそうだったし)のが、女性的な弱い一面がちらほら各所に見えてしまったのがどうかとも思ったり。   逆に良かったのはイモータン・ジョーが終始一貫筋が通ってて悪の魅力に満ち満ちてたのと、アクションシーンも相変わらずの迫力に新アイデアも盛り込まれて素晴らしかった(パラシュート最高!)ってところですか。   落ちについては、個人的にはマッドマックス世界的にとても良かった(マッドマックス世界ならそう来なくっちゃ!)んですけど、ああなるには悪役がバチクソにキレキレに引き立ってないとなあ、ということで実に惜しい印象でした。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 7点(2024-06-11 13:53:43)
11.  劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re: 《ネタバレ》 
 公開翌日視聴。   TVアニメ版は大ファンで円盤・動画等で20周以上は観ましたか。原作のコミックス版は個人的に正直音楽シーンも1枚絵だけでほとんど描かれないので音楽もの漫画としてどうなんだろうという微妙な評価だったのですが(最近の4,5巻の辺は割としっかり目に描かれてきてる気がしますか)、アニメでライブ部分が過剰にがっつり描かれて補完されて化けた印象の作品です。   劇場版は「総集編」というようにTVアニメ版8話までをメインストーリーを見せ場をきっちり押さえつつざっと一通り流しており、話の導入が「そこから入るのか」とちょっと意表をつかれたのですが最後までキッチリまとまって満足な内容でした。TV版を観てない人にも理解可能かは私自身はわからないのですが、映画版で初見だったらしい人が「めっちゃ良かった」と言ってたので未見の人でも一通りの話の流れがわかる作りにできてたかと思われます。   新規要素については新規映像は細かい部分であったらしいのですがどこかまでは私には正確にはわかりませんでした。オープニング曲とエンド曲が新曲でこれまた非常に良い曲でファンの人にもおすすめと思いました。あと路上ライブの演奏シーンがフルバージョンで一通り聴けるので、おお! って思ったかな。作品外ですけど映画館のマナー動画でぼっちざろっく版マナー動画が劇場版と合わせて公開してこれまた楽しいのでお勧めです。   上でも書きましたが、ライブ部分の音響が劇場環境だととにかく素晴らしく臨場感があるのと、個人的に家環境なんかだとロックバンドの演奏ってメロディラインはわかるけど裏方的なベースの低音が聞きづらく背景になってて良くわからないというのがありますが、劇場版ではがっつりカッチョええのがしっかり聴けるので非常に良かったです。個人的に人間的にはクズ扱いだけど音楽的には先導者であるリョウさん推しなので、リョウさんのかっちょええベースががっつり聞けるぜヤッハー! て感じでした(俺得)。   で、総集編なので色々端折られて、練習部分などはぼざろの名曲を流しつつTV版のカットをガーっと流してく感じの演出をしてて、この手法がハリウッド映画のアニメで出てきたときは手抜きだろうと思いつつ笑っちゃったんですが、音楽系作品で総集編で圧縮するには非常に良い手法だなあとしみじみ思ったりしました。   あとTV版はメインの成長物語だけでなく枝葉のくだらない演出でも笑わせるという日常系的な面白さもあるのですが、総集編だとさすがにそこはカットせざるを得ないという事でぼっちちゃんの恥ずかしいあれやこれやは綺麗にぼかされてるのでそれらも観たい方はTV版視聴されることをお勧めします。   ちなみにダムはありません(笑)。
[映画館(邦画)] 7点(2024-06-09 13:15:55)
12.  マルセル 靴をはいた小さな貝 《ネタバレ》 
 アマプラで観ました。   昨年上映されて、各賞にノミネートされるなどちょっと話題になってたりはしており、ただ海外のアニメ作品って上映館が少ない上に、面白そうと思ったらもう地元では終わってたり、まだ上映してても第2週目から朝一上映に切り替わったりで仕事帰りに観に行こうとしても夜にはやってなかったりで(対象年齢が子供とかだったりするのもあって)、わざわざ視聴のために県外の大都市圏に行くのも交通費だけでとんでもないとかあって、観ること自体が著しく困難だったりして先送りにしてしまうことがよくあります。逆にアマプラ等の動画配信サイトで割と早めに出てきたりするので気が付いたら観たりします。   アニメと言っても、非常に多様な表現があって、加えて海外ものだと日本の主流からするとかけ離れた様式のものが多々あるので実際観てみないと全然わからないことがよくありますが、本作はモーションキャプチャーのアニメーションに、普通のリアルな人間もいっしょに登場するという独特の表現をしており、人間どころかリアルの動物や虫なんかも登場して、虫に一体どういう演技をさせるのか!? という驚愕の表現などもされてて表現としてかなり面白かったです。自然にあるものや現実の人の家にあるものを、ちっぽけな貝の視点で見直してみると人から見えるものとは別世界が切り拓かれて非常に面白かった。スケートのシーンとか良かったです。   キャラクターの方も、タイトルの通り小さな巻貝にちょこんと2本足と手を2本をくっつけただけの簡素なもので、映像がしばしば人間スケールだったりするので大きな画面の中で、虫のようにごく小さなマルセルとおばあちゃんがチマチマ動くだけで、最初は昔の教育番組なんかでやる人形を出してやるすごいレトロな表現に近くてアニメ表現としては古めかしいあまり新しさのないものかと思ったんですけど、巻貝の穴の部分に目がついて、口のところが切れ込みが入って細かく動き、手足も表情豊かに実に繊細に動いて、加えて主人公のマルセルの声が実にかわいらしくしゃべって(吹替え版で観ました)、終わってみたらあの小さくチマチマ動く手足のついた貝たちが可愛くいとおしく見えてくるという、昔アバターっていう映画で非人間的な異星の種族たちが観てるうちにどんどん魅力的に見えてくるようになるという、同じような感覚を本作品でも味わいました。   ストーリー的にはとにかく主人公のマルセルとおばあちゃんのやりとりが終始ほほえましく、特に終盤の、大事な孫のマルセルのためにやる数々の行いに心を震わされて、ぐぐぐぐってなってしまいました。本映画は作業中に、ながら見であまり集中してみようとしたものではなかったんですけど、思わずぐっと引き込まれてしまって、これは他ごとしながら観るようなものじゃなくて、ちゃんと観た方が良いですよと書き残しておきます。
[インターネット(吹替)] 8点(2024-06-09 12:40:43)
13.  バジーノイズ 《ネタバレ》 
 原作ファンです(漫画)。   主演の川西拓実氏が男性アイドルグループ・JO1のメンバーっていうのは全然知らなかったのですが、人気あるのか結構観客は多かったです。しかもわりと若い人もいて驚いたのですが、SNSで感想を呟いたらプチバズるくらいの反応があってファンの人が多いんだなと思いました。   ちょっと前の作品(2018年~2020年くらい)なので、正直、なぜいまさら実写映画化されたのかと思いました。しかし、これ昔大好きだった音楽もの漫画の一つが実写映画化された奴じゃん、じゃあ、ぜひにも観に行かないと! と行った次第です。   あと作品の位置づけ的にも面白い状況になってると思ってて、近年、音楽もの漫画が映像化される事態が頻発していて、だいたいアニメなのですが、しかもそれぞれ作品のためにストーリーに合わせてわざわざ作曲したものが出ており、音楽は気合が入ってて素晴らしく、ストーリーもよくできているという、この2年くらい日本で未曽有の音楽もの作品の映像化がレベルが上がっててすごいって認識なのですが、その中で個人的に音楽もの漫画の中でもかなり出来が良くて好きな作品が、アニメとかではなく、実写でやるっていうのがどれくらいのレベルに達してるのか、期待半分、もし外れでも原作ファンとしては見とどけなければならない、という心持で臨みました。   原作の方も漫画の音楽表現として独特の様式をしていて、音楽漫画の音の表現って、演奏してるプレイヤーの動きを描くとか、サビの部分の曲イメージを大ゴマや見開きページにでかく描くとか、曲の歌詞をベタに描くとかいろいろありますが、「バジーノイズ」は音のイメージを抽象的な、シャボン玉みたいな多数の円と、のたうつ曲線とかで描く独特の方式をしていて、シャボン玉と曲線の入り乱れる中に、演奏者と、聴衆がすごい心地よさそうな音空間で体を揺らしてるっていう、これは「バジーノイズ」がパソコンで曲を打ち込む音源もシンセや自然音のサンプリング音源なども使って作る電子音楽的曲だからそういう表現が似合ってたというのがありました。   で、今回の実写の映像化で、その独特の新しい(原作公開時には斬新だった)音空間が、実写映画の中でいかに気持ちよく表現されるか? が原作ファン的な最大の関心事だったと言って過言でないでしょう。   しかも原作では音楽家同士のコミュニケーションも描かれていて、音楽家同士のコミュニケーションって「アレコレ言葉で説明するより実際いっぺん一緒にやってみればわかる」っていう領域があり、漫画やアニメなら抽象図形で雰囲気を視覚的にわかりやすく見せたりできますけど、実写だとそういうのもないので、本当に音だけで心地よさを視聴者にわからせないといけない、それが本当にできるのか? ってのも注目ポイントと思ってました。   それで実際観た感想としては、めっちゃ鳥肌立った! すげえ! って感じで、あの清澄と陸が音合わせた時のゾワゾワ感が見事に表現されててマジで感動しました。素晴らしい映像化を実現してくれてありがとう! って思いました。   あと、配役も川西拓実氏はまさに清澄という感じで、純粋で孤独で儚い雰囲気で良かったし実際JO1でミュージシャンとして活躍してるので演奏場面のリアル感はすごく良かったし、桜田ひよりさんの岸本潮もまさに潮やあって感じで良かったです。   ストーリー内容については、全5巻の内容を2時間に圧縮するので単純化されたり端折ってたりはするけど、ちゃんと結末まで走り切ってくれるので満足できました。いくらか改変もあるけど、それも良し。   またこの作品は、ミュージシャンの話を描くんですけど、それだけでなく聞いてくれるファンのことも描いていて、それが特殊と思うんですが、ミュージシャンものって基本メジャーになって海外遠征とか行って遠くの人になってしまうと、最初の地元の地方で初めに良いねって言って応援してくれた人ってそこまでついてこれず置いてけぼりになってしまいがちなところがあると思うんですが、本作は、レーベルを介さなくてもDTMで個人で曲を作って売り出していける時代になって、最初のファンともごく身近な人として有名になっても関わっていけるという所に着地するのが好きで、そのファンとミュージシャンの関りも相似形に描いた改変になってて、あの陸の前のバンドのリーダーが、長く人生をやってる者の悲哀を感じさせつつ、しかしファンを大切にする心は忘れない結構いい人に変更されてるのが味があって実に良い改変だなあと思いました。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 8点(2024-05-20 11:36:41)
14.  アイアンクロー 《ネタバレ》 
 ケヴィン・フォン・エリックが好きでした。  身体的には細く小さいけれども、イギリスの貴公子と見まごう気品のある細い顔立ちに鍛え上げられた身体。そしてあの過酷で危険なリングに常に裸足で参戦する、気品と野性味が入り混じった唯一無二の存在で、ヨーロッパ出身のレスラーなのかと勘違いしてました。   本映画で米国で一家でやってたのがわかったのと、誰かが亡くなって日本のTVに登場しなくなってなぜなのかと思ってたら、こんな大変なことになってたのか、というのを映画で知った感じになります。   なのでケヴィンが主役になったのは私的には非常に嬉しかったんですけど、訪日の話がケリーが一人で行ったみたいに描かれてるのがちょっと違うなと思ったのと(タッグでタイトル取ってたはずだし(混乱))、あと、ケヴィンが髪型を似せて裸足なのは良いとして、ちょっと身体は大きいし骨格ががっちりしすぎててイメージがちょっと違うかなーと思いました。   あと個人的にはアイアンクローは好きなので(めっちゃ真似した)タイトルになってるのは良いんですけど見せ場があまりなく物足りなかったのと、あと一家の中で何故ケヴィンだけ裸足でリングで上がってたのかとか、興味深い深掘りしてほしいエピソードがいろいろ足りない印象で全体的に物足りなかった感じでした。   とはいえ昔の好きだったレスラーの話がわざわざ映画化されたのは嬉しかったです。
[映画館(字幕)] 6点(2024-04-19 12:04:39)
15.  オッペンハイマー 《ネタバレ》 
 IMAXにて鑑賞。音響はド迫力でした。   本映画関連で大昔にNHKのドキュメントがあり(マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪)、ニューメキシコのすさまじい実験の映像とか、赤狩りの対象になり地位から追われた話は何となく知ってました(最近再放送)。   本映画で個人的に一番興味があったのは  ・オッペンハイマー氏が核兵器反対に転じたきっかけは何か?  でした。期待しつつ観たのですが、それっぽい要素は丁寧に漏らさず取り込まれてましたが、巧妙に恣意的に時系列を混乱させごまかされてるため、結局よくわかりませんでした。   たとえば、有力候補で「終戦から数カ月後、広島・長崎の状況視察者の報告会が開かれたそれを見て改心?」という説があり、その場面もあるのですが(直接映像は悲惨すぎるため映画中では見せられないのですが)、一方、氏の主観的場面で講演時にフラッシュバックで人が焼き尽くされる映像が出て衝撃を受けるんですけど、順序が入れ替わっており、  ・論理的展開:報告映画を観る→それが印象に残って講演時にフラッシュバックをする ・映画の表現:講演時にフラッシュバックをする→報告映画を観る  て感じに、実に巧妙に順序を入れ替えた問題の焦点をごまかす印象操作がされてるので、なんだかなあと。   あるいはですね、核実験のすさまじい結果であの甚大な大量殺りく兵器に対する罪悪感を醸造したというごく人間的な説も考えられます。しかしオッペンハイマー氏の女性関係の節制のなさ罪悪感のなさ子供に対する無関心から、全然まったく氏に一般的な倫理観があるように見えずどうなんだろうっていう。まあ、(既婚ですが)以前付き合ってた女性の自殺への強い罪悪感の表現があるので「死」に対しては罪の意識があったのかもしれませんが。   で、実験結果で罪悪感を覚えたとすると、本映画では、爆発映像が大きな花火を打ち上げたかのような実に美しい絵柄で描かれ、時間差のすさまじい爆音と衝撃波でその恐ろしさが表明されるのですが(爆音・衝撃波のフラッシュバックは何度も出てくる)、これも恣意的に「被害」を隠ぺいした表現になっていて、もちろん実験は人を避難させてたと思うんですが、ドキュメントの映像などであるように、近隣の建築物がすさまじい爆風で吹き飛んでたわけですけれども、映画中ではそういう「被害」も一切見せないわけです。だから、人ではないけど、人の作った構築物への甚大な被害を見て、これは良くないと、見識を変えたのでは? と想像したくなるのですが、そのような映像も全て隠蔽される。   あと、世界初の核実験なので認識は甘く(実際、投下時の被害者数見積も大幅に少なく)、日焼け止めクリームにサングラスしただけでは到底足りず被爆してしまった人もいたと想像するんですが何も説明はなく(水爆実験の被爆者は大問題になりました)、本作で一番無神経な演出と思ったのは「実験が無事終わったらシーツを家に取り込んでくれ」てのがあって、映画では家が実験場からそれほど遠くない場所に見えたんですが(勘違い?)、そうすると外に干したシーツが被爆して大変なことになるのでは、ってのがすごい観ててヒヤヒヤした。爆発・炎・爆音・衝撃波等「目に見える」被害は認識するけれど、放射線被ばくなどの「目に見えない(聞こえない)」被害への認識がまったく甘く、無神経な演出をついついしてしまう、という昔ながらの悪癖は全然直ってないな、て感じでした。   あと話の終盤オッペンハイマーがアインシュタインと実はこんな会話をしてた、というネタ晴らしがされるのですが、個人的意見としては、  「アインシュタインはそんなこと言わないんじゃないかな」  と思ってしまった。実際どうなんでしょう。   そんな感じに、まとめると、前世紀最大の発明であると同時に最大最悪の大量殺りく兵器を作り出してしまった「罪」に真正面から対面しようとして、結局対面できずごまかした作品かなあと、私は認識した次第です。   で、今年のアカデミー賞は本作と、大量殺りく兵器に真正面から立ち向かう「ゴジラ-1.0」が同時に各賞を受賞するという、非常に面白い巡り合わせになっており、現実では各地で戦争が巻き起こり、禁止されてたはずの非人道的兵器もバリバリ投入され、最悪、核使用の危機すらあり得る状況で、このような映画が高評価になったのは、世間への問題提議としては良かったのかも、と思ったりなんかしました。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 6点(2024-04-11 13:21:51)(良:3票)
16.  哀れなるものたち 《ネタバレ》 
 ロングランしてて、アカデミー賞も各賞とってちょうどいい時間にやってたので観ました。  スタイリッシュな芸術的作品も割と好きな口です。   R18なんで大人向けの寓話的な作品という事で、まあ面白かったんですけど、個人的にはコメディっていってるけど、ある種、今のリアル過ぎ、生々しすぎじゃね?(寓話的幻想的作品が、現実以上に現実的に見えてしまう瞬間があるみたいな)という感じがして、ブラックユーモアとして笑わせようとしてるっぽいけど笑えないかな(苦笑)て感じでした。フェミニズム的題材作品としてみると、今だとちょっと古めかしいというか、時代設定が昔なので仕方ないかもしらんけど、せっかく寓話的ファンタジー作品をやるならもっと先端的にえぐったのをやってくれると逆に痛快で好きだったりしますが、そこまで振り切れてはおらず、差し引き今の現代的感覚と同じくらいになっちゃったかな、という感じ。   斬新さがちと足らんかな?   あとはなんだろう、下世話ですけど、アカデミー受賞作で話題になった女優が2~3年後くらいに濡れ場とかの多い汚れ役をやり出すサイクルがありまして、典型的なそういうサイクルの作品だなあと思ってしまったのと(とはいえビジュアルは素晴らしいのに当たって各賞も受賞して良かったなというところではありますが)、主人公が子供から現代的な女性に成長して魅力的になってくのは良いんですけど、最終的にたどりついた安寧の地が自らの力で勝ちとったものではなく  「たまたま運よく獲得できただけ」  なので、じゃあこの話が終わって平和な人生が続いてくかというと次の瞬間無慈悲な理不尽によってすべてを失っても全く不思議ではない状況で、ハッピーエンドと言えるのかどうなのか何とも言えん終わりだなあと思ったのと、最後のオチは割とベタなブラックジョークなんですけど、中盤で不遇な人々に対する慈悲の心は学んだのに、キリスト教的な、  「汝の敵を愛せよ」  は学習しなかったんだなあという、精神的に成長して大人的人格を身につけたけど、それには欠陥があったみたいな、そんなようなことを思いました。   あと、(映像作品での)フランケンシュタイン的映像表現があるせいで、画面が結構グロテスクだったりして、私はグロいのは苦手なのでちょっと受け付けなかったのと、話のメインの動機や道標が、性的快楽とか結婚とかになってるのが、今だとセックスレスとか、そもそも結婚自体しなくなってきている現状を踏まえると、生々しいだけで、ちょっと価値観が古めかしいかなとも思ったり。個人的には、ペドロ・アルモドバル監督の「私が生きる肌」くらいやってくれたら、ひゅー! って思ったんですが。   とはいうものの、ビジュアル(衣装や舞台)は素晴らしいし(私は主人公の服のパフスリーブが赤毛のアン(映画)のスタイルなので時代は1920年代前後くらいかなあとか思ってたのですが)、エマ・ストーンの演技も素晴らしくて総じて楽しませていただいた感じです。   ああ、あと、主人公が「世界を見る」というので、もっとアレコレいろんな場所に行っていろんな経験を積むのかと思ったら、意外とそんなにどこにも行かなくて、物足りなかったかな。旅程は船に乗ってアフリカの辺? にちょろっと立ち寄ってお金無くなって、パリに舞い戻って、家に帰ってきただけですからね(上映時間は長いんですけど)。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 7点(2024-03-25 13:44:10)
17.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
 初日に観ました。   正直まったく期待しておらず観る気はなかったのですが、ネット上の感想が非常に良くタイミングも良かったので。  国内実写版ゴジラは「シン・ゴジラ」が大好きで6日間連続視聴とかしてました。もうあそこまでのものはできないだろうと思ってました。  本作に至るまでにアニメ版(TV版、劇場版)海外版もいくつか出ており海外版ゴジラはCG表現などド迫力で良かったですしアニメ版もTV版はSF的な非常に凝った仕掛けが面白く、楽しませてもらってた感じです。   で、今回は日本の実写映画でまさに王道を突っ切るゴジラもので、いやおうなく「シン・ゴジラ」と比較されるだろう状況でどこまで行けるだろうか? って認識でした。   結論としては、すごい良かった。   科学考証は微妙にゆるくツッコミどころがなくはないものの、創意工夫にあふれてワクワクする展開はとても楽しかった。  湿っぽい人間ドラマも、もともとゴジラ映画の初代からそうなので、個人的にはまあこれもアリと思い、いちおう価値観なり設定は、二次大戦の事情をあまり知らない人にもわかりやすくかみ砕かれ、かつ現代的価値観に刷新されたストーリーになってて、ハッピーエンドになるのもエンタメ娯楽映画だからなー、というので普通に受け止められました。というかめっちゃワクワク、ハラハラして、最後うまく行って良かったー! と気持ちよく終われる映画でした。   以下、個人的に特に気に入った点を書きます。  ・水中ゴジラ!  その手があったか! とのけぞりました。  ・ゴジラは核兵器の脅威の象徴的怪獣であることをきちんと描いている  海外ゴジラって「核兵器」の表現が生ぬるいと思うんですよね。  あの恐怖と絶望と根本的に受け入れ不可能な決定的断然がしっかり描かれてました。  ・就業状況がホワイトで、あるべき理想の組織論として素晴らしい  二次大戦の教訓として一番受け継ぐべき事項の一つとして、とにかく組織のリーダーが無謀で無計画で、無茶な命令ばかり出すので現場の人間が何万人も死んだ、しかもその責任をだれも取らない、という悲惨な状況があって、それは二度と繰り返すまい、って話があると思います。  「シン・ゴジラ」や本作では、理想のあるべき組織が描かれるのが良いと思うのですが「シン・ゴジラ」で唯一気に入らなかったのが、ブラック企業的ブラックな就業状況を「がんばってる」と礼賛する場面です。それは倫理観が壊れてるだろうと。  本作では、まずきちんと計画を立てます。絶対とは限らないが少なくとも成功する可能性のある計画を立てる。この時点でスゲエって思うんです。作中「生還する可能性があるんだよな? それなら戦中よりましだ」って笑う場面がありますが、わりとマジメに切迫した問題だったりして、たまりませんでした。  あと、絶対確実に生還できるか問われて「未知の挑戦なので、やってみないとわからない。可能な限り尽力し生還できる可能性はある」と説得する場面が、とにかく素晴らしいと思いました。新しい試みをする時って、当然やってみないとわからないことがある。数多のリスクや危険があるが、いっしょに協力してやってくれないだろうか、と正直に説明する。そして有志のみを募って計画を実行する。  問題組織では、無茶な計画を立て、担当にリスクなど何も説明せず、たまたまうまく行ったら上の手柄にし、うまく行かなかったら担当者の頑張り不足と現場の責任にし、上の問題が全く問われない状況がいっぱいあった。  それが本作では、上の人間は素直に窮状を包み隠さず公開し、それでもやってくれる有志を募る。現場の担当と上の指示者が一体のチームとなって、それぞれ「今やれることをやって」問題解決する。そういう姿勢が描かれて、全俺が泣いた感じです。素晴らしい、そう、そうですよって。  ・技術者が技術者としての矜持を見せる  オチの部分が伏線があからさま過ぎるとか、さんざん煽ってひっくり返すんかとか批判されてるようですが、個人的には、ちゃんとした技術者だったら必ずそうすると思うんですよ。自分の仕事に誇りをもった本物のプロフェッショナルであるならば。戦時中様々な事情でちゃんとした仕事ができず無念なことがいっぱいあったと思うんです。あの時こそ、今度こそ、ちゃんとした仕事ができるっていう悲願の時だったと思うんです。なので回想シーンで主人公以前の着陸してきた特攻隊員の思い出話のエピソードなどあると良かったと思うんですよね。……てところが足りないと思うものの、私自身が、そういう技術者的仕事をしてるのであそこは非常に共感した部分でした。   そんな感じで、非常に良いエンタメ作品で、邦画もやるなあ! って思いました。  以上です。
[映画館(邦画)] 8点(2023-11-07 15:20:20)(良:3票)
18.  ジョン・ウィック:コンセクエンス 《ネタバレ》 
 観ました。  音響は非常に良い所でした。   なんかもう始まりから最後までひたすらカッコいいアクションシーン、アクションシーンの連続でカッコ良さが飽和してて「かっこいいかっこいいかっこかこかかかかかか」みたいな、溢れてて、もうはい、ありがとうありがとうございます、素晴らしい素晴らしい……って感じでした。   上映時間がインド映画並みに長くてどうかと思ったのですが(なので上映回数とか限られて映画館側としては難しいだろうなとは思いつつ)、最初から最後まで息のつかせぬ展開がずーっと続いてくので、特に長いという感じもしませんでした。それから、これだけたくさんのそうそうたるアクションスターの歴々が登場されたら、それぞれしっかりした見せ場が要るだろうという欲求を余すところなく盛り込んで、すべてもうがっつりやってくれて、やり切ってくれるので、もう大満足でした。犬もありましたしね。   あの、合流シーンなんか激熱で、おおおおおおおお! っと叫んでしまいました(心の中で)。  〆も、そうきたか! という感じで、とにかく良かったです。   いちおう、敵役の人がアマプラの「コンチネンタル」から来てるようなので、事前に観ておいた方がより楽しめるかとは思いました(私は未見でしたが、初登場なのに悪辣ぶりが素晴らしく、映画だけでも十分楽しめましたが)。   エンドロールの後もシーンがあるので観ていただきたいですが、エンドについてはまあ、そういう世界だしねえで私は非常に納得した感じです。   素晴らしい作品ありがとうございました。   そういや、今回、大阪が舞台になるので(例のハリウッド風・日本ではありますが)、日本に宣伝にやってくるはずが、ハリウッドのストライキで来られなかったのはちょっと残念でしたか。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 10点(2023-09-27 19:30:38)
19.  君たちはどう生きるか(2023) 《ネタバレ》 
 観ました。  環境はIMAXのほぼ最上級環境で。宮崎駿作品なら映像&音響の良い所で見とどけないといかんなと思い。   率直な感想としては、宮崎駿監督、まだまだやるなあ!(感嘆)て感じでした。   絵が最後まで息切れせずに割としっかりしてたのは、他の人に描いてもらってたんやねと知ったりしました。  本映画についてはだいぶ前に情報がちらっと出ていて「君たちはどう生きるか」の漫画版が出てちょっと評判になった後に実はそのタイトルで映画を作ろうとしている、という話が出て、そのあとその小説の映画版ではなくて作中の主人公が愛読してる本が『君たちはどう生きるか』だってだけ、という情報が出たりなんかしてたのを見ながら思い出しました。  『君たちはどう生きるか』と本映画の内容が合ってるかというとほぼ関係なくて、『君たちはどう生きるか』って卑屈と罪悪感と裏切りの話じゃん、てのに対して本映画だと主人公が初期の宮崎駿作品のようにとてもしっかり主人公主人公してて強い意志を持って行動していくので、なんかもう心根が全然違うわけで、まあ別物です。  まあ、終盤のあの人……が深読みすればそんなような心境の人と言えなくもなく、監督の心情に近い人でもあってそこで共感したのかとか思いましたが元の『君たちはどう生きるか』の主人公の人ってまったく偉い立場の権力を持った人でもないただの普通の人であるのに対して、あなたはもうすでに絶大な権力を持ってて、何を泣き言言ってるんだと言わざるを得ず、なので主人公が話の途中で『君たちはどう生きるか』を読んで泣く場面があるんですけど、いやいやいやあなたのそのキャラクターでその本の話にどう涙できるかさっぱりわからんわ、て感じでしたか。   で、元の話が現実の普通の人の話なので、現実を舞台にした展開になっていくかと思ってたら、どんどん異様な様相を見せていき、まさにジブリワールド、宮崎駿ワールド全開の破天荒な展開になっていって、そういや宮崎駿監督って、メルヘン・ファンタジーの鬼才でもあったよなあと思いだしたりしました。そっち方向は『思い出のマーニー』ですっかり米林宏昌監督に追い抜かれたと思ってたのですが、いやいやまだまだやるじゃんと。   でまあ不思議の国のアリスばりのナンセンスな展開をしていくので、途中が、ええ!? なんでそんな風に行くの? みたいな電波的なご都合主義っぽい展開が多いんですけど、宮崎駿監督作品って物語的要請とか映像的説得力の剛腕とテンポの良さで違和感なく話を進めてしまう感性の達人で、ナウシカと同時期にやってた『シュナの旅』でもまさにそうだったわと思いだした感じです。   本映画で個人的に好きになったのは、いままで自分の言い訳ばかりして体よく装うことに終始してて自分のことでいっぱいいっぱいで勝手な人だと思ってたのが、本作では新進の存在に対して暖かいまなざしで見られるようになったような表現があって、丸くなったなあってところです。   あと、主人公の母親が主人公を抱きしめて、あんた本当に良い子だねえ! しっかり生まなきゃ! とかいう場面はホロっと来てしまいますね。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 7点(2023-08-30 15:10:09)
20.  リバー、流れないでよ 《ネタバレ》 
 ループ物のSF系映画には良作が多数ありますが、本作は劇場内で終始笑いの絶えない上映で、けらけら笑いながら観られました。とても楽しい映画で良かったです。   貴船を舞台にしてるので、だいたい場所の配置が行ったことあるのでわかってる中で、2分という時間制限があって、そこを場面を全く切らずに1ショットでずーっと回していく臨場感がありつつ、記憶は視聴者と同じく巻き戻らず連続してるので時間がループして大変なことになってるにもかかわらず「今ちょっと災害が起こってますが状況がわかるまで落ち着いて問題解消するまでお待ちください」みたいな、ループ物にあるまじき和やかさで、昔の辛口ショートショートにあるようなユーモアあふれるコミカルな展開でした。   話の主旨としてはタイムトラベルの仕掛けよりも、現実のせせこましい時間に追われる気の休まらないところから、ホッと一息ついて、時間の大切さとか、人と人とが触れ合うちょっとした時間の積み重ねが上で大切だみたいなところがにじみ出してきていて、ハッとするような、ほろっとするような部分もありつつ、最後の結末ではみんなの意思が一つに揃って、問題解決するっていう、実に気持ちいいさわやかな映画で素晴らしかったです。
[映画館(邦画)] 8点(2023-07-28 20:20:36)(良:1票)
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