181. 嗤う伊右衛門
蜷川幸雄さんというのは、演劇では超一流かもしれないが、映画の作り手としては二流としか思えない。演劇と映画ではちがうのだ。 4点(2004-12-07 03:08:44) |
182. 半落ち
皆さん同様、樹木希林の出色のピカイチ演技に感動したので、いちおう6点入れますが、あれがなかったら、もっと点数は低かった。なぜかというと、「半落ち」を続けなければならない理由がよくわからんのだ。整理してこの映画が言っていることをまとめれば、「アルツハイマーで魂をなくして生きるくらいなら、臓器移植のドナーになりましょう」と言っているのではないのか?それではさすがに言い過ぎと思ったのか、「魂をなくして生きる」者に生きる価値がないかどうか、誰にも「裁くことはできない」と良心的判事に言わせて、主張をぼかしてしまった。だから、結局この映画は「泣きのための泣かせる映画」にすぎなくなってしまった。「ああ、泣いたな」という記憶しか、あとに残らないのではないですか。アルツハイマー者の描き方にも疑問が残る。彼らは「魂をなくした」ということなのだろうか? 6点(2004-11-08 04:36:22) |
183. ラスト サムライ
勝本のモデルが西郷隆盛だというのは、表面的な設定上のこと。本当は『王様と私』のユル・ブリンナーだ。『王様と私』も史実からするとむちゃくちゃな映画だったが、これもまたそうだ。結局、アメリカ人のアジアを見る視線は、半世紀間も変化なし。この映画も、根本の視点として目新しいことなし。のっけから、銃を使うのはサムライの恥だなどと......。信長の時代には日本は世界きっての銃大国だったことぐらい知っているだろう。本当は知っているくせに、アジアはこうであるべきだという願望に近い視点が、なかったことにして無視するのだ。というわけで、2点でもよかったが、渡辺謙は好きな役者だし、彼を世界に知らしめた功績に2点加えて、4点。 しかし、勝元の死からラストのあたりは、映画として良かったので、2点加えて、6点。 6点(2004-09-06 12:04:14) |
184. 青春デンデケデケデケ
大林宣彦のベストワン。ところで、寺の息子役、大森嘉文はデータベースで調べると、これ一本しか出てないようですが、こんな素晴らしい役者、どうしているんだろう? ─追伸:大森嘉文は大森嘉之の名で、「トキワ荘の青春」、「難波金融伝」などなど、出演作多数なのがわかりました。そりゃ売れっ子になるでしょうね。 10点(2004-08-01 05:26:01) |
185. アンダー・サスピション
これは一見サスペンス風だが、実は仮面夫婦が決定的に崩壊してゆく話です。中年男の中年男による中年男のための映画。ジーン・ハックマンも、モーガン・フリーマンも、リキがはいってましたね。 8点(2004-07-19 00:42:53) |
186. ユリョン
日米と戦争を開始するには、「まだ準備ができていない!」─ そうか、そういうことか。かつて大久保利通ら反征韓論者も当時似たようなことを言っていたな。こんな映画で韓国人がたまったうっぷんをはらし、溜飲を下げるだけのことなら大目に見ようが。しかし、こんなのが国内の賞をさらう国とは一体どんな国なのか。韓流ブームの背後で、われわれも心しておくには格好の映画なのかもしれない。 1点(2004-07-19 00:34:45) |
187. ひまわり(2000)
(黒澤明『生きる』+フェリーニ『世にも怪奇な物語・第三話』+大林宣彦)÷行定勲 というようなところですか。若手俳優たちが皆自然な演技でよかったですね。 7点(2004-05-17 01:15:46) |
188. バトル・ロワイアルⅡ 【鎮魂歌】レクイエム
平和ボケした日本人に衝撃を与えるという意図はわからないではない。それでもなんだこれは。『プライベート・ライアン』のパロディーだったり、単なる劇画だったり、深作組の悪い意味でのB級性が露呈している。名作『仁義なき戦い』は今思えば脚本がピカイチだったのだろう、どうしようもないリアリティがあった。深作欽二は名声を汚して去った。 2点(2004-04-20 20:59:48) |
189. ポストマン(1997)
この映画を観るには、ある態度が必要だ。まずケビン・コスナーという名前から来る先入観を捨てること。くれぐれも真面目な作品と思って観てはいけない。はじめからB級C級映画と思って観るべし。原作はどうだか知らないが、有名な西部劇か『七人の侍』あたりのパロディーとみて、笑いながら観ること。─そうすれば結構楽しく観られます。 6点(2004-03-07 14:57:24) |
190. シベールの日曜日
どこかへ連れてゆかれそうなほど、危険なほど、甘美で哀しい映画。アンリ・ドカエのモノクロ映像も素晴らしい。 10点(2004-02-10 03:10:44) |
191. 國民の創生
KKKの首領を主人公に置き、KKKの側の視点から描いた早期アメリカ史の物語。この映画ではKKKは社会の無秩序を救う英雄的救世軍である。反対側、つまり黒人やムラート(混血)の側に視点を移せば、当然これは差別と偏見に満ちた映画へと転化する。たしかにグリフィスの革新的な映画手法は映画史上、みごとなものなのにちがいない。してみると、映画的手法と作者の視点の取り方とは別問題であって、映画手法はどのような視点にも有効であり得るということ、映画というものは視点しだいで物事をいかようにも描きうる両義的なものだということを、この映画は如実に教えてくれる。 5点(2004-02-09 16:38:43) |
192. 紳士協定
勇気ある映画。キリスト教中心社会の裏面をかいま見せてくれる。これを日本社会に置きかえてみれば、こういったテーマをとりあげることの難しさがわかるだろう。傍観者でいてはだめで、自ら偏見と闘うことの必要さを説く、感動的な仕上がりになっている。しかし、この感動を呼ぶ闘う姿勢が、その後の赤狩り時代のエリア・カザンとすんなり結びついてゆかないのは、どう理解すればいいのだろう? 10点(2004-02-05 14:59:22) |
193. T.R.Y.
ほかの方々も言っておられるように、まったくお粗末な『スティング』。こんな気の抜けたアホらし話をなんで緊迫するこの場所とこの時代に設定したのか。理解に苦しむ。大森一樹は自らの体験にもとづいた『ヒポクラテスたち』は良かったが、このところのゴジラものといい、これといい、がっかりだ。織田裕二もみんな青島刑事になっちまうのは役者としてどうか。 唯一見どころがあるとすれば渡辺謙だけだ。 0点(2004-02-01 22:15:09) |
194. 壬生義士伝
泣かせる映画。今NHKでやってるふざけた新撰組ドラマや、おおこけの『御法度』に比べて、当時の状況や雰囲気が描けているように思う。監督の滝田さんというのはこの作品からして真面目な人だとは思うが、ときに月並みな映画的サービスに寄りすぎるし、いまひとつ突き刺さるところに欠けるのが不満です。役者は文句ありません。中井貴一はよかったし、佐藤浩一は時に親父さんの三国連太郎そっくりの芝居を見せるのが面白かったですね。 7点(2004-02-01 21:45:41) |
195. 鳥(1963)
衛星放送で何度目かの『鳥』を観た。今回ようやくにしてこの映画の意味がわかった。断言して言う、これはヒチコックによる、あるタイプの女に対する復讐の映画である。主人公の女は、自分勝手で高慢ちきな美人、つまり容姿が美しいだけで嫌な女だ。この女に懸想する男も、色好みの軽い男にすぎない。ヒチコックは、このようなタイプの女を、鳥を使ってこれでもかといじめてみせる。陰険そうな姑は、意味深ぶったたんなる付け足しの道具立てにすぎない。町全体が鳥の被害に遭うのは、このような女が一人やってくるだけで町が嫌な雰囲気に一変し、攻撃性を増すといいたいのだ。これはヒチコックの、あるタイプの女への憎悪と復讐の映画である。嘘だと思われるなら、そういう眼で一度この映画をご覧あれ。 9点(2004-01-22 21:20:27)(良:4票) |
196. 日の名残り
《ネタバレ》 自分を殺して殺して、殺して生きる男。お互い惹かれあっているくせに、決定的な一歩が踏み出せない女、男は一歩踏み出すべき瞬間に、またもや自分の小さく堅固な殻に閉じこもってしまう。これでよかったのだ、と男は自分に言い聞かせる。けれど「人は皆人生に悔いを持っているものです」とも男は言う。本当にそれでよかったのか、それともいけなかったのか、わたしにはわからない。 こういったことはおそらく誰でも思い当たるふしがあるにちがいない。 アイヴォリー-ホプキンスの傑作、というより、なんとも心に響く映画。 アンソニー・ホプキンスは例のレクター博士役で広く有名になった。たしかにレクター博士もたいした演技だったが、こうした地味な役どころにこそ、彼の本領を味わうことができる。ちょっとした手の動かし方に、ちょっとした皮膚の動きに、すべてを表してみせる。 10点(2004-01-18 22:57:09) |
197. 阿弥陀堂だより
みなさん言うとおり美しい映画。ハリウッド製にはない落ち着いた人生の映画。前作は亡き師匠クロサワへのオマージュという性格が強かったんだろうと思うけれど、今回の作の方がずっといい。黒澤組からようやく独り立ちして自分の作品を撮ることができた監督に賛辞を送ります。ところでこの美しいロケ地は観光客がおしかけて大変らしいですね。しかたがない、私も訪れてみたくなった。 8点(2004-01-05 00:47:22) |
198. どら平太
市川崑の軽快さに黒澤明のいかんところが加わって相乗された駄作。黒澤明のいかんところとは、『用心棒』に顕著な荒唐無稽さ。『用心棒』も痛快なおもしろさ、興業成績の良さにかかわらず、やはり駄作だった。 3点(2004-01-04 20:37:31) |
199. K-19
アメリカ映画がロシア軍人をこう描くようになったか。冷戦時代は終わったんだなと実感する。 それはともかく、ヒューマンドラマとして秀逸。 それに潜水艦ものは甘ったるい恋愛ものとちがって、男しか出てこない男同士の世界でよろし。 8点(2003-12-28 08:46:43) |
200. 赤い橋の下のぬるい水
今村ファンには悪いが、今村昌平は嫌いだ。なによりこの男の人間観が嫌いだ。この男にはプラトン流のイデア的志向がかけらもありゃしない。とにかく嫌いだ。 1点(2003-12-27 05:53:42) |