Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さん
ザ・チャンバラさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順123456789101112
投稿日付順123456789101112
変更日付順123456789101112
>> カレンダー表示
>> 通常表示
181.  機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ミラーズ・リポート 《ネタバレ》 
全10話(+番外編1話)から成るOVAの要約版で、しかもそのシリーズが完結していない段階で製作・公開されたという奇妙な立ち位置にある劇場版。50話に及ぶテレビシリーズなら要約の価値もあるというものですが、全部見ても4時間強で終わってしまうコンパクトなシリーズを要約する必要性がそもそも低い上に、元のシリーズ自体が完結していないために明確なオチをつけられない、シリーズ中もっとも盛り上がったグフ・カスタムとの戦闘は未収録と、残念な要素しか見つかりません。さらに問題なのは、本劇場版オリジナルキャラであり、タイトルロールでもあるアリス・ミラー少佐に魅力がないことで、仮に彼女がしっかりとしていれば劇場版にも幾ばくかの価値が出ただけに、この部分の手落ちは致命的でした。 元のOVAシリーズは良作です。兵器としてのMSという面を極限まで追求し、第二次世界大戦やベトナム戦争を連想させる戦場に、その兵器のひとつとしてMSを介在させるというコンセプトが優れていたし、作戦行動は細かく考えられていて隙がありません。泥で汚れ、過去の戦闘で受けたダメージが残された状態で登場する量産型MSには、シャアやアムロが乗るピカピカの最新鋭機とは違うかっこよさがあったし、ジオン軍のMSの損傷が特に酷いことから全体の戦況を伝えるという演出も気が利いていました。 他方、主人公・シロー・アマダの個性については、概ね低評価となっています。ジオン軍のコロニー落としで家族と故郷を失ったという背景を持ちながら、本編中ではジオンに対する憎悪を見せることがなく、さらにはジオンの名門・サハリン家出身であるアイナとの恋愛にも迷いがありません。その設定と劇中での行動が整合していないため、感情移入が難しい人物となっているのです。 また、表面上は部下思いの隊長のようでいて、その実、軍法会議ものの独断作戦に部下を巻き込んだり、小隊を捨ててアイナの元に走ったりと直情的な面があり、隊長として大局を見る目が備わっていません。さらには、本人の戦闘スキルが高いことから無茶な行動が多く、付き合わされる部下にとっては厄介なタイプの上司だと言えます。部下に対して「とにかく生きろ」と繰り返すものの、敵を倒すことこそが隊長としての責任であり、部下を生きて帰すためにも有効な手段であるという認識が欠けており、そもそも軍人としての適性に問題があったように思います。
[DVD(邦画)] 4点(2015-08-07 18:20:26)
182.  ピアノ・レッスン 《ネタバレ》 
美しい撮影に美しい音楽、俳優による渾身の演技と、ポテンシャルの高い映画であることは認めるのですが、私としては共感できる点が少なかったため、評価は低めです。 主人公・エイダは聾唖者ではなく、6歳の時に話すことをやめて音楽での表現にすべてを委ねたという設定。そんな彼女にとってピアノは体の一部なのですが、一方スチュワートはエイダにとってのピアノの重要性を理解できず、また理解しようともせず、重いピアノは家まで運べないと言ってピアノを海岸に放置した後、勝手に土地と交換してしまいます。ここでエイダのスチュワートに対する感情は致命的に悪化します。一方、ベインズはピアノを所有した直後に自発的に調律師を呼び、それまで野ざらしだったピアノのコンディションを整えます。また、興味本位でピアノを雑に扱ったりせず、このピアノを扱えるのはエイダだけであるという態度を示します。エイダはここにグッときたわけです。一家の大黒柱としての責任を果たしてくれるが、その価値観は狭く固定されて奥さんの感情に寄り添えない男と、社会的には不安定だがちゃんと配慮してくれる男と、どちらがいいですかという話です。 そんなエイダの気持ちは分からんでもないのですが、じゃあ、あなたはスチュワートの気持ちや立場を理解しようとしたんですかという点が引っかかりました。エイダは嫁いだ当初からスチュワートを毛嫌いする態度をとっていた上に、娘が分身のように寄り添っているため、夫婦の営みどころかキスすら交わせないという有様。夫婦とは、夫婦らしい行動をとり続けることでその関係が作られ、維持されるという側面があるのですが、エイダは初っ端からそれを拒絶していたわけです。「慣れるまで待ってあげよう」というスチュワートの気遣いを裏切ってベインズに走るという行為は、さすがに受け入れがたかったです。浮気がバレた後には、一応、夫婦関係修復の態度を見せるものの、「お触りはなしよ」という業者チックなルールを設けたもんで、「ベインズは本番OKだったのに、俺には無しかい」とスチュワートの自意識を余計に傷つけます。 その他、家の前で子供を待たせて浮気相手と事に及んだり、身動きがとれない場面では子供を伝令に使ったりと、浮気に子供を巻き込んでしまう点も受け付けませんでした。そこにいちいち噛み付くべき映画でないことは分かるのですが、人の親としてはどうしても気になりました。
[DVD(吹替)] 4点(2015-08-04 14:24:12)
183.  クイック&デッド
本作の製作当時、シャロン・ストーンはキャリアの絶頂期にあったし、ジーン・ハックマンは言わずもがなの名優だし、ディカプリオはネクストブレイク俳優の筆頭だった。そんな中にオーストラリア出身のよく分からん俳優がいることには当時大変な違和感を覚えたのですが、これが後のグラディエーターなのですから、本作のキャスティングセンスには恐れ入ります。また、初のハリウッド大作というアウェイな環境下、高い知名度を誇る共演者に囲まれての仕事でありながら、きちんと存在感を発揮してみせたクロウの心臓の強さにも感銘を受けました。。。 本作ではラッセル・クロウのかっこよさが光りまくっているのですが、その他の要素は見事にグダグダ。ハックマンは3年前の『許されざる者』とまったく同じ演技をしているし、ディカプリオもやる気なし。一方でプロデューサーも兼ねたシャロン・ストーンのみ演技に力が入りまくりで、これはこれで変な感じになっています。同年公開の『カジノ』で得た高評価をこれ一本で帳消しにした破壊力ある演技ですから、ある意味見ものではありますが。。。 監督を担当したサム・ライミも、本作では持ち味を発揮できていません。この題材であれば、遊び心溢れる見せ場と独特のユーモアで自分のフィールドに持ってくることも可能だったと思うのですが、キャリア初の大作、おまけに名優に囲まれているという重圧や、空回り気味のストーンからの指示に右往左往してなかなかペースを掴めなかったのか、ただ撮ってるだけという状況になっています。早撃ち前のキリキリとした緊張感などはホラー監督であればうまく演出できるような気がするのですが、そういった要となる演出も落としているので、これでは評価できません。おまけに、脚本も変です。この題材であれば、女だからと舐められていた主人公が、物凄い腕前を見せて男たちに目に物見せるという点に最大のカタルシスがあったと思うのですが、主人公は技術的にも精神的にもかなり脆いのです。すぐに動揺するし、すぐに泣く。最初の決闘で雑魚相手に緊張しまくっている描写なんて、必要なかったでしょ。。。 さらに、今回見たDVD版には、昔見た時には確かにあった、ストーンとクロウによる濡れ場が入っていませんでした。ストーンの意向によりカットされたようなのですが、見るべきものの少ない本作において、あの濡れ場こそが最大の見せ場だったんですけどね。
[DVD(字幕)] 4点(2014-07-22 22:28:45)
184.  ロボコップ2
続編の製作を急ぐスタジオに対して、良いアイデアが出るまで続編は作りたくないと主張した前作の監督・脚本家達は全員切られ、代わって脚本家として雇われたのが、なんと『300 』や『シン・シティ』のフランク・ミラーでした。漫画家に映画の脚本を任せるとは凄い人選ですが、実際にミラーが書いてきた脚本は相当に素晴らしかったようで、前作の脚本家なしでも企画にはすぐにゴーサインが出ました。しかしいざ企画を進めてみると、ミラーの脚本はまったく映画向きではなかったようで、急遽、『ワイルド・バンチ』のウェイロン・グリーンが雇われて脚本の書き直しが行われました。ここで、本企画に致命的な問題が発生したように思います。前作は奇跡的に良く出来た脚本を、その意図を完全に理解できる監督が映像化したという見事な連携によって、歴史的な傑作となりました。一方本作では、前作の独特な作風を引き継ぎつつも、フランク・ミラーによって内容はさらに複雑化し、そしてそれを別の脚本家によって再び簡素化するという作業が行われたために、作品に「精神」なるものが宿らなかったのです。。。 完成した作品を見ると、バーホーベンの作風を露骨にマネしようとしている場面が目立つのですが、悪徳警官が処刑される場面や、ケインの開頭場面等、なぜこんなに悪趣味なものを見せるのだろうかと首を傾げてしまう場面も多々ありました。前作も悪趣味で残酷でしたが、きちんとその意図は理解できたし、必然性もあったと思います。一方、本作にはそれがなく、ただやりすぎているだけ。また、子供が麻薬組織のNo.2の座におり、しかも後に殺されるという究極のタブーにも果敢に挑んでいるものの、その試みが作品内容と連携していないために、ただただ不快感を与えるだけの結果に終わっています。本作は万事がこの調子で、刺激的な場面は多いものの、そこに意味が伴っていません。ミラーによる脚本にはそれがあったのでしょうが、グリーンによる脚色によって多くの意味が失われています。。。 本作で唯一誉められるものと言えば、フィル・ティペットによりクリエイトされたロボコップ2号の大暴走でしょうか。まだまだCGが使い物にならなかった時代、ロボコップ2号はパペットのコマ撮りにて作られたのですが、かなり複雑な動き方をする2号が20分間に渡って延々と暴れ回るクライマックスの凄まじさには度肝を抜かれました。
[DVD(字幕)] 4点(2014-03-14 01:42:13)
185.  ハード・トゥ・キル
セガール2作目にして、初めて全米1位を獲った作品。今ではVシネマ俳優と化し、一体誰が見ているのか分からない作品を濫造しているセガールですが、この頃は少ない制作費で堅実に稼ぐ、優秀なマネーメイキングスターだったのです。。。 前作『刑事ニコ/法の死角』は後のセガール映画の基礎を確立した作品でしたが、一方で本作は、セガールにとっては異例尽しの内容となっています。ケツを揉み、乳を頬張るという激しいラブシーンを演じた後に、不意を突かれて凶弾に倒れるセガール。セガールも人の子、ベッドでは無防備だったのかという、いろんな意味で衝撃的な展開を迎えるのです。また、ベッドシーンでは、明らかに緊張しているセガールの顔を拝むことができます。さらに、肉体を晒すことに消極的なセガールが、本作では上半身裸を見せているという点でも、妙なお得感があります(ホモじゃないよ)。ステロイド漬けのムキムキが基本だった当時において、ノンステロイドの肉体はどこか味気ないのですが(ホモじゃないよ)、その一方で、見せるために筋肉をつけているわけではないという武道家としての飾り気のなさがかっこよくもあります。。。 内容の方は、それなりにしっかりしています。とにかく適当だった当時のアクション映画の中では、よく作りこまれている部類に入るのではないでしょうか。とはいえ、セガール作品としては微妙。セガール作品を見る者は、セガール無双を見に来ていると言っても過言ではないのですが、本作では「セガールやられる→鍛え直してパワーを取り戻す→仇に復讐」という3部構成を90分強という短時間に詰め込んでいるため、セガール無双の時間がとても短いのです。また、セガールに惚れたヒロインが強力な保護者兼支援者となるという作品の要の部分が、「んなわけねぇだろ」とツッコミを入れたくなるほど説得力がないという点も、思わぬ弱点でした。なんせ、彼女が惚れたセガールは、ヒゲ伸び放題で仙人状態ですからね。こんなのに惚れるだなんて、この人の感性はどうかしちゃってるでしょ。セガールに意識がないのを良いことに、ち○こをチラ見して「ひゃっはー」ってテンション上がってるし、セガールの枕元に子猫を置くし、完全にイっちゃってますね。これを演じたケリー・ルブロックさんは本作での共演を機にセガールと結婚したそうですが、セガールの意外なバカップルぶりにもガッカリさせられました。
[地上波(吹替)] 4点(2014-03-07 23:32:10)
186.  ブロークン・アロー
見せ場の連続なのにまったく手に汗握らないという、なんとも残念なアクション映画。物語にまったく感情移入できず、しつこいくらいに繰り返される爆破シーンをただ眺めているだけという状況に陥ってしまいました。。。 まず、主演二人がミスキャストでした。本作の中心にあるのは男の対決であり、親友同士でありながら内心では見下されていたヘイルが、一方で何をやらせても優れていたディーキンスに対して目に物見せるという点に本作最大のカタルシスがあったと思うのですが、その物語を描くにあたって、スレーターとトラボルタの間でまったくバランスがとれていないのです。年齢も風格もトラボルタが断然上であり、ヘイルとディーキンスが上司と部下にしか見えないのでは、主題部分がまったく伝わってきません。せめて同世代の俳優を配置して欲しいところでした。。。 次に、この対決に絡んでくるパークレンジャーの戦力描写がおかしかったので、彼女の存在がアクション全体のバランスを崩しています。彼女は田舎の国立公園でのどかに働く女性であり、自然環境や動植物に関する知識は豊富であっても、犯罪者を追いかけたり、悪人を倒したりといったスキルは持ち合わせていないという設定だったはず。にも関わらず、中盤より彼女はディーキンス一派に対して果敢に戦いを挑み、プロの傭兵との格闘までをこなしてしまうというスーパーウーマンぶりを披露しはじめるので、そのことが、見せ場におけるご都合主義ばかりを際立たせるという結果をもたらしています。土地勘を活かしてヘイルをサポートするという当初の立ち位置に徹していれば、彼女が人質になった際の緊張感などは、また違うものになっただろうと思うのですが。。。 以上を総括すると、本作の敗因は『スピード』の成功体験に引きずられ過ぎたという点に尽きると思います。若く爽やかな主人公カップルと、頭脳の明晰さゆえに誇大妄想に陥った悪人との対決を軸とし、ヒロインは単なる添え物ではなく、事件の解決のために重要な役割を担うこととする。本来、この脚本はそんな内容ではなかったはずなのに、後付けで『スピード』の図式を当て嵌めてしまったがために、全体のバランスがおかしなことになっています。 
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2014-01-13 02:46:36)
187.  救命士
マーティン・スコセッシとポール・シュレイダーがタッグを組み、さらには飛ぶ鳥を落とす勢いだったニコラス・ケイジが主演。公開前にはかなり注目度の高い作品だったのですが、出来上がったものはどうにもハンパな代物でした。。。 深夜の仕事、管轄は最悪の地域、そして、そんな中で美しい女性と知り合う主人公。本作の構成要素は『タクシードライバー』と酷似しているのですが、完全にイってしまったトラビスとは違い、本作の主人公・フランクはどんなに辛い思いをしても真面目に仕事に取り組み、仕事の枠内で救済を得ようとします。本作は『タクシードライバー』とネガとポジの関係にあり、20年間でスコセッシとシュレイダーが大人の作家に成長したことを示す作品だったと言えます。何度助けてやってもバカなことをしでかして病院に戻ってくるヤク中や異常者を相手にし、「俺は一体何をやっているんだ?」と日々悩みながら、それでも「自分の仕事は、何か良いことに繋がっているはずだ」と信じて仕事を続ける主人公の姿には、多くの人々が自身の職業について抱える徒労感を代弁するだけの普遍性があったと言えます。そういった点で、本作は決して悪い映画ではないのですが、如何せん、映画として面白くなかったことが致命的でした。下町のちょっと良い話を撮ろうとしているのに、ジョン・グッドマンやトム・サイズモアが異常にパンチの効いたキ○ガイ演技を見せるもんだから、ドラマとしてのバランスがメチャクチャ。話がうまくまとまらないまま2時間が経過してしまうので、見終わった後の満足感はとてつもなく低いです。結局、スコセッシとシュレイダーが撮るべきはどうしようもないキ○ガイが社会に迷惑をかけまくった挙句に野垂れ死ぬような映画であって、本作は彼らが扱うべき映画ではなかったようです。
[DVD(吹替)] 4点(2013-12-23 01:42:03)
188.  クロッシング・ガード 《ネタバレ》 
交通事故で娘を亡くした父親が、出所した加害者の命を狙うという、どうやっても面白くなりそうな最高の題材なのですが、これが何とも言えない中途半端な出来でガッカリさせられました。まず、キャスティングがいい加減すぎます。娘を交通事故で亡くした父親役がジャック・ニコルソン、母親役がアンジェリカ・ヒューストンなのですが、二人とも歳をとりすぎておじいちゃん、おばあちゃんにしか見えません。また、ニコルソンがヒューストンに向かって「君は相変わらず綺麗だ」と言う場面があるのですが、ここでもまた混乱。ヒューストンは美人扱いを受けるタイプの女優さんではないので、これがどういう意図をもった発言だったのかを直感的に理解できないのです。映画の序盤では、誰が何のことを話しているのかがサッパリ分からないほど混乱しました。若い俳優が演じるべき役柄に無理やりジャック・ニコルソンを当ててしまい、そのニコルソンとのバランスをとるために他の出演者の年齢層も上がっていった結果として、上記のような混乱が発生したのではないかと思います。。。 映画全体としても、バイオレンスにも人間ドラマにも振れていない中途半端な内容で、イマイチ感情が乗りませんでした。例えば、ラストの追いかけっこ。この場面は中年親父の悲哀を出すためにあえて鈍重に、滑稽に撮られているのですが、これが笑えるわけでもなければ涙を誘うわけでもなく、どういう心境で見ればいいのかを掴みかねました。本作は万事がこの調子で、あえて外した演出をしたはいいものの、その意図がうまく観客の心情に届かずもどかしいことになっています。その後、『プレッジ』『イントゥ・ザ・ワイルド』で素晴らしい手腕を披露するショーン・ペンも、本作の制作時点では映画という媒体をうまく使いこなす術を持っていなかったようです。。。 最後に、ブルーレイのジャケットに書かれた「サスペンスに満ちたアクションスリラー」という一文は一体何なのでしょうか。ジャック・ニコルソンとデビッド・モース共演の復讐アクションと聞けば、たいていの映画ファンはあらぬ期待を抱くでしょう。作品の本質から乖離したこの宣伝文句は、もはや詐欺的とも言えます。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-06-22 01:52:19)
189.  ボーン・コレクター 《ネタバレ》 
90年代はシリアルキラーものが量産された時期でしたが、一部の成功作を除くと大半が駄作でした。その理由は簡単で、どうすればラストで観客を驚かせるか、オチの意外性のみにこだわった結果、論理を積み重ねて真相にたどり着くという推理もの本来の面白さが置き去りにされた本末転倒な企画ばかりになってしまったからです。本作は、そんな90年代最後の年に製作されたシリアルキラーものですが、老舗スタジオであるユニバーサルが直接製作し、オスカー俳優を2人も投入。さらには、この手の映画としては史上最大規模の予算が投入され(『セブン』の2倍、『羊たちの沈黙』の4倍)、ジャンルの決定版を作ってやろうという只事ではない期待が込められていました。流行に便乗して作られたそこいらのB級サスペンスとはまるで次元の違う企画だったというわけです。。。 果たしてその出来はと言うと、これがダメなサスペンス映画がやらかしそうな失敗を全部やってしまっていて、お世辞にも出来の良い映画とは言えませんでした。オチが唐突すぎて本編の推理がほとんどムダになっているし(主人公が犯人を追い詰めるのではなく、主人公の元に自らやってきた犯人を射殺して終わりという展開はあんまりでは?)、観客に対してダミーの容疑者が与えられる終盤の展開についても、情報を提示するタイミングのマズさから、これがミスディレクションとして機能していません。さらには、若い女性警官と全身麻痺の天才刑事がコンビを組むという設定も、中盤から置き去りにされています。弱点を持つ者同士が互いに補い合い、二人で一人の刑事として動くということがこの企画の骨子だったと思うのですが、中盤以降は「上司からの命令を忠実に実行する部下」程度の関係性になってしまい、それが後半では「二人は恋仲にある」という訳の分からんゾーンへと突入していき、そもそもの設定が完全に死んでしまっています。安楽死を望むデンゼルと、父親の自殺が大きなトラウマとなっているアンジーという、序盤で提示されるドラマを途中で切り捨ててしまったことがその大きな要因であり、この映画はプロットの取捨選択を間違えています。。。 本作の監督を務めたのはフィリップ・ノイス。正直言って才能を感じさせない監督さんであり、多くの要素が複雑に入り乱れる本作の演出には不適格だったと言わざるをえません。 
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-06-16 01:39:07)
190.  8mm 《ネタバレ》 
1999年は映画史的に重要な年で、一般の観客には馴染まないとされてきた難解なSF映画『マトリックス』が大ヒットしたり、暴力をテーマにした問題作『ファイト・クラブ』に大スター・ブラッド・ピットが主演したりと、映画界の常識を打ち破る映画が続々と登場した年でした。そんな中でも、本作『8mm』の異色ぶりは際立っていました。『セブン』以降は他人の脚本のリライトばかりを務めてきたアンドリュー・ケビン・ウォーカーの4年ぶりの新作にして、テーマはポルノ。これをメジャースタジオであるソニーピクチャーズが直接製作し、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったニコラス・ケイジを主演させたのですから、どんなものが出来上がるのか誰も想像出来なかったのです。。。 かくして、大きな注目を浴びる中で完成した本作ですが、内容は実に中途半端でした。テーマがテーマだけにスタジオ側も相当な覚悟をもって製作したのかと思いきや、どこまでやるべきかの迷いがはっきりと見て取れるのです。アングラの世界はステレオタイプで面白みに欠けるし、主人公が暴力に飲まれていく様には深みがありません。この企画で観客が期待したものは、我々が住む社会のすぐ隣に存在するであろうユニークでグロテスクな世界だったはずなのに、そういったものを徹底的に見せてやろうという気概がまったく感じられません。事の発端となるスナッフフィルムの内容や、怒り狂ったニコラス・ケイジがジェームズ・ガンドルフィーニを殴り殺す場面など、作品の要とも言える描写を編集で誤魔化している辺りの腰の引け具合には失望してしまいました。極めつけは、取ってつけたようなハッピーエンド。このラストで、重苦しい作品は完全にぶち壊しにされてしまいました。。。 オリジナルの脚本はもっと凄かったようなのですが、内容に恐れをなしたスタジオが勝手に書き換えてしまい、最終的にはアンドリュー・ケビン・ウォーカーが「あれは自分の作品ではない」と言い出すほどに形を歪められてしまったのだとか。前述の成功作が作家性を信じて振り切った結果として歴史に名を刻んだのとは対照的に、本作は商業的打算の末に、興行的にも批評的にも記録を残せなかったようです。唯一の救いは、メジャースタジオがノウハウを投入した作品だけあって、探偵ものとしてはそれなりに面白く出来ていたということです。残酷描写の大半はカットされているので、安心して楽しむことができます。
[DVD(吹替)] 4点(2013-04-16 01:50:24)(良:1票)
191.  エアフォース・ワン 《ネタバレ》 
『ダイハード』をまんまなぞったシナリオなのですが、残念なことに本作には『ダイハード』程の緻密さがありません。大統領は素手でテロリストを倒して回るという荒唐無稽ぶりだし(現役刑事のマクレーンですら、テロリストとの格闘では終始劣勢だったというのに)、対するテロリスト側はロクに連絡を取り合っていないために事態の把握が著しく遅れてしまうという間抜けぶりを晒します。おまけに、機内に敵がいるとわかった後にもまともな対応をとらず、「荷物室に閉じ込めときゃいいさ」と悠長に構えているのだから困ったものです。乗員リストを確認して、敵の素性を特定する努力くらいはしましょうね。互いを出し抜き合う高度な駆け引きなどここにはなく、あるのは熱血バカの大統領と戦略ゼロのテロリストの泥仕合。これでは面白くありません。さらにはイベントの詰め込みにも失敗していて、ところどころは派手なシーンがあっても、全体としてはスリルも興奮も持続していません。。。 主人公が大統領であるという肝心の設定に至っては、これがまったく活かされていません。公人としての責任と個人としての感情の板挟みになることこそがこの企画のキモだったはずなのに、どいつもこいつも私情の垂れ流し状態なのです。妻子の生命を二の次にしてでも自身の安全を確保することが公人たる大統領の責任であるにも関わらず、ハリソン大統領はシークレットサービス達が捨て身で作ってくれた脱出のチャンスを棒に振り、クライマックスでは駆け付けた救助隊の手までを煩わせる始末。副大統領はさっさと指揮権を自分に移して事態への強い対応を図るべきだったのに、「こういうやり方は私の美学に反する」という理由で決断を遅らせてしまいます。凄いと感じたのは、登場人物たちのこれらの行動が、劇中ではあたかも立派な行為であるかのように描写されていること。個人としては美しい心がけであっても、公人としての危機対応としては最悪の行動です。結果、脅しに負けたハリソン大統領がテロリストの要求を飲むに至っているのですから、何ともお粗末な倫理観だと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2012-11-03 17:38:20)(良:1票)
192.  ビフォア・ザ・レイン 《ネタバレ》 
深いようで深くない映画。必ずしもまっすぐには進まない物語と復讐の連鎖というテーマはきちんとリンクしているし、美しい撮影に支えられて映画には終始重厚な雰囲気が漂っています。「これは何か賞をやらなければ」と思わせる佇まいはさすがなのですが、肝心の人間ドラマは意外と薄っぺら。第1部「言葉」の主人公である僧侶が、殺人を犯した少女を愛するに至った過程はかなり適当にすっ飛ばされているし、2年間も沈黙の誓いを守り続けてきた彼がついに言葉を発する場面の扱いも軽いものです。僧侶には多くの葛藤があったはずなのに、それらがすべて適当に流されているのはもったいない限り。第3部「写真」の主人公であるヒゲのおっさんは、この手の映画にありがちで面白みのないキャラクターに終始しています。第1部の僧侶とは対照的にこの人の悩みは観客に対して積極的に投げかけられるのですが、「かつて傍観者を決め込んだ結果として殺人に加担してしまったから、今度は積極的に声をあげます」という意見はすごくありがち。鋭い切り口や深い考察を期待するとガッカリさせられます。。。 そして、最大の問題児が第2部「顔」。主人公は不倫妻なのですが、子供を身籠っているにも関わらず旦那に離婚を迫る不倫妻と、「俺の実家があるマケドニアに二人で引っ越そうよ。出発は明日。明日までに返事してくれないなら、あなたとはお別れだ」と凄まじい無茶ぶりをする不倫相手。乗車したタクシーの車内で真っ昼間からおっぱじめようとするなどやりたい放題の二人なのですが、こんな登場人物にどうやって感情移入しろと言うのでしょうか?この二人に振り回される旦那が不憫で仕方ありません。いったん旧ユーゴ以外に舞台を移し、作品のテーマに普遍性を持たせることを目的としたパートだとは思うのですが、消化不良でおかしなことになっている部分が多いのでパート丸々不要であったように思います。。。 マケドニア人監督がユーゴ内戦についての映画を撮ったという点と、当時はまだ珍しかった時間軸の解体という手法を社会派ドラマに持ち込んだという新しさ、これらが本作の高評価につながっているのですが、こうした外部的要因を外した場合、本作は大した映画ではないように感じます。
[DVD(字幕)] 4点(2012-08-16 17:37:38)
193.  2 days トゥー・デイズ
90年代に数えきれないほど製作されたタランティーノフォロワーとしては極めて標準的な出来。悪くはないが、決して良くもないといったところです。本家タランティーノの強みとは、既存の映画作りの枠を無視して自由に物語を組み立てることにあるのですが、本作を含むタランティーノフォロワーは「タランティーノみたいな映画を作る」という点からスタートして自らを枠にハメており、そのことが最大の弱点となっています。。。 「パルプ・フィクション」を研究したと思われる本作の脚本は意外なほど丁寧に練られていて、当初は無関係に思われたエピソードがひとつに収束してゆく様はなかなか楽しめました。しかし良かったのはそこだけ。これまたパルプ・フィクションを意識したと思われる風変わりなキャラクター達を監督が扱いきれておらず、コメディパートではあまり笑えません(訛りのキツイ英語しか話せなかった当時のシャーリーズ・セロンがスウェーデン人役という苦心の果ての設定には笑いましたが)。これこそがタランティーノ症候群の罠であり、無理しておかしなキャラクターなど登場させず、監督の引き出しに合わせたキャラクター作りをやっていればよかったのです。
[DVD(吹替)] 4点(2012-06-07 00:30:07)(良:1票)
194.  サイダーハウス・ルール 《ネタバレ》 
この監督さんの映画作りはうまいので鑑賞中はそれなりに楽しめたのですが、この映画の根本的な主張にはまったく共感できませんでした。。。リンゴ農園で黒人労働者が住まう通称「サイダーハウス」には小屋のルールがあるのですが、実際にサイダーハウスに住んだことのない農園主が考えたルールなのでその内容はあまりにバカバカしいものでした。それに対して黒人労働者達は「サイダーハウスのルールはサイダーハウスに住んでる人間自身で決めるべきだろ」と言い出すのですが、それこそがこのタイトルの由来。そんなタイトルが示す通り、本作の登場人物達は好き勝手にマイルールを考え出し、もっともらしい言い訳をしながら生きていきます。トビー・マグワイア演じる主人公は「自分こそがこの孤児院にもっともふさわしい人間だ」と言って学歴詐称、医師免許偽造を働き、マイケル・ケイン演じる老医師は、お気に入りの主人公が兵隊にとられてはかなわんと彼の病歴を偽装し、シャーリーズ・セロン演じる若いお姉ちゃんは、「寂しがり屋の私を置いて戦地へ行った彼氏が悪いのよ」と言って浮気をします。どいつもこいつも言ってることがメチャクチャ、こんな自分勝手な人間ばかりでは世の中は成り立ちません。特にシャーリーズ・セロン演じるバカ女には「パール・ハーバー」のバカ女に通じる突き抜けた頭の悪さがあって目が離せませんでした。お国のため必死に戦っている彼氏がいるのに、安全な祖国で被害者面して平然と浮気。本作の当時上映には「シン・レッド・ライン」をお勧めします。ガダルカナル島で必死に戦っている最中に、祖国の妻に浮気をされたスタロス大尉の雄姿に注目してください。
[DVD(吹替)] 4点(2011-05-08 22:24:19)
195.  ポストマン(1997) 《ネタバレ》 
物語の発想は良いし長尺の割には退屈しないので最低の評価は付けませんが、映画の出来は良くありません。流れ者がタダ飯を食いたくてついた嘘がひとり歩きするという物語と、ケビン・コスナーの英雄願望とが水と油だったため、主人公のキャラクターが不安定になったことが敗因だと思います。最初は情けなかった主人公が徐々に英雄らしくなっていくのなら話にも筋が通るのですが、例えばアビー救出のために勇気を見せたと思ったら、次の場面では「ケガして動けないよ~」とグータラしはじめるため、主人公の成長物語にもなっていません。後半になるとようやく英雄らしい行動をとりはじめるものの、主人公は最初のウソを取り消さないままリーダー面し、偉そうに説教までたれるので、見ている私達にとってはまったく説得力がありません。新政府を信じた若い郵便配達たちが次々と殺されはじめてもウソだと白状しない段階に至っては、英雄どころか大人としての責任感はないのかとイライラしてきます。「すまない、新政府の話は全部ウソだったんだ」「俺達はアメリカ中を旅してるんですよ。そんなことぐらいとっくに知ってますよ」ぐらいのやりとりを入れておけば物語の方向転換にはなったし、郵便配達たちの仕事への思いを強調することも出来たのではないでしょうか。。。以上は完全に脚本上の不備なのですが、エリック・ロス(フォレスト・ガンプ)とブライアン・ヘルゲランド(LAコンフィデンシャル)という当時気鋭の脚本家を二人も起用しながら、なぜここまで酷い話になったのかと不思議で仕方ありません。不思議なのは製作費についてもで、こんな地味な物語において8,000万ドルもの製作費はどこに使われたのでしょうか?本作は一応SFではあるものの物語は西部劇に近く、自然の山々でロケを行っているため壮大なセットが作られた形跡はありません。また派手な戦闘シーンも大規模なモブシーンもないため、撮影にお金がかかっている様子もありません。ラストなんて、いよいよ最終決戦かと思いきやおっさん二人が殴り合うだけですからね。しかも、スローモーションや編集で誤魔化すという何とも腰砕けなラスト。莫大な製作費がかかっていることは予備知識として知っていて、映画のどこかしらにはド派手なシーンがあるものと思って観ていたので、最後まで何も起こらない肩透かしには驚きました。
[DVD(吹替)] 4点(2010-09-05 18:14:40)(良:1票)
196.  ウォーターワールド
90年代を代表する大コケ映画と言われていますが、1億7500万ドルの製作費に対して興行成績は全世界で2億6400万ドル(1995年の公開作中第9位)とそこそこのヒットとなっており、コケ方で言えば同年の「カットスロート・アイランド」の方が遥かに上。にも関わらずこの映画が(悪い意味で)私達の心を掴んで離さないのは、その出来があまりに惨たらしいからでしょう。。。作品を見る限り、脚本の出来はそれほど悪くありません。問題は監督とプロデューサーの腹が座っていなかったことで、本来はエッジが立っていたであろう脚本の良さをことごとく潰しています。破滅後の世界を扱った本作はダークに描かれるべきであり、その点、女性が物々交換の対象となっていたり、ミュータントに凄惨なリンチが加えられたりと、脚本上はきちんと毒が描かれています。しかしベラボーな製作費にビビったのか、監督とプロデューサーは観客に嫌悪感を抱かせかねないこれらの描写を中途半端に終わらせてしまい、そのために全体が締まらない印象となっています。また前半と後半でまったく別の映画となっていることにも違和感を覚えたのですが、これも主人公を観客から好まれるキャラクターにしようと後半で方向転換してしまったプロデューサーの判断ミスであり、前半の冷たいキャラクターで通すべきだったと思います。この方向転換を巡っては監督のレイノルズとコスナーが対立してレイノルズは途中降板、後半部分をコスナーが監督したことも後半が浮いてしまった原因となっています。。。さらに本作の足を引っ張っているのがSF感覚の欠如で、これも脚本レベルではそれほど悪くなかったにも関わらず、監督がSFオンチだったことが問題でした。衣装や小道具がとにかくカッコ悪く、そのために映画全体がダサくなっています。この手の映画はカッコ良いことがポイントなのに、そこで観客の心を掴めなかったのでは、いかにスペクタクルにお金を注いでも映画は良くなりません。コスナーが突貫工事で手を入れはじめた後半になると設定にも矛盾が発生しはじめますが(紙は高値で取引されていたはずなのに、後半ではまとまった量の雑誌が出てくる。前半では「俺達の先祖が世界をこんな風にした」と言っているのに、後半では過去の文明を知らないことになっているetc…)、SFにおいて細部に矛盾が発生するような雑な作りでは、観客に見透かされてしまいます。
[DVD(字幕)] 4点(2010-08-17 22:06:33)(良:1票)
197.  チェーン・リアクション(1996)
「沈黙の要塞」「ウォーターワールド」と並ぶエコアクション大作の本作ですが、環境問題を背景にした映画ってどうしてこんなに面白くないんでしょうねぇ。本作より10年後、キアヌは再び環境問題を背景にしたSF大作「地球が静止する日」に出演しましたが、これもやっぱり駄作でした。。。 この映画はスタジオ主導の足し算の論理で作られているのが丸出しで、結果として著しく統一感に欠ける作品となっています。「スピード」の爽やかカップルが好評だったから本作の主人公達もキスすらしないカップルであり、「逃亡者」のジェラード捜査官があまりにかっこよかったから本作のFBI捜査官はまんまジェラードでした。CGが急速に発展していた時期だったので映画全体のバランスを考えずにSF映画並みの爆破シーンを加え(同時期のデイライト、ロングキス・グッドナイト、ブロークン・アローも同じようなことをやってました)、他のアクション映画との差別化のために環境問題の要素を採り入れ、さらに世界的なスケールを持たせるためにCIAの陰謀論をぶち込み、脚本はごった煮状態です。一方で多くの要素を詰め込んだために作品の核となる謎解きや逃走劇の面白さが失われており、そんな肝心要の部分が二の次になってしまったためにつまらん映画となってしまったようです。「警察にみつかる→走って逃げる」を何度も繰り返すだけではさすがに飽きてしまいます。まだ前半は素人が機転を利かせて逃げ回っているという描写になっていたものの、後半になるにつれてオタク学者のキアヌが超人化し、複数人のCIAを相手に格闘して勝利するといういい加減さはどうなんでしょうか。陰謀の核であるモーガン・フリーマンとブライアン・コックスの関係はイマイチよくわからないし、資料も持ち帰らずに博士を殺害、研究所を爆破し、挙句に「この実験をもう一度成功させるためにはキアヌが必要だ」と言い出すわけですから、大して頭の良い組織ではないのでしょう。
[DVD(字幕)] 4点(2009-12-17 17:08:38)
198.  アンドリューNDR114 《ネタバレ》 
SFオンチの監督の手に渡ったのがお気の毒としか言いようのない作品。エスねこさんが詳しくレビューされていますが、本来これはほんまもんのSF作品。作り物が人間よりも人間らしくなった時、ホンモノとニセモノの境界はどこへ行くのか?というSF定番の問いかけを軸に、その境界の真っ只中に立たされるアンドリューの苦悩が感動的かつ哲学的に描かれる…はずの作品だったのですが、SFとしてはあまりに雑な仕上がりのためおいしいところはほとんどスルー、ロボットと人間が結婚して良いおじいちゃんとおばあちゃんになりましたという志の低い作品に終わっています。アンドリューと人間社会のつながりが本作最大のテーマと言えますが、肝心の社会風俗の描写があまりに杜撰なのです。彼らの世界ではロボットはどの程度普及しているのか(マーティン家は金持ちだったが、金持ちしか持てないものなのか?)、何の目的で家庭で使用されているのか(あのドン臭いデザインでは邪魔なだけにしか見えない)という極々基本の部分すらよくわからない状態。中盤より彼は自分で収入を得るようになりますが、どこが評価されて彼の商品が売れたのか、そしてあの世界でロボットが収入を得ることがどれほど例外的なことなのかがわかりません。勝手に進化をはじめたアンドリューに対する人々のリアクションも不自然で、彼が人間とタメ口を聞くようになろうが、マイホームを持ち服を着るようになろうが、金属からロビン・ウィリアムズの顔に変わろうが「あぁそうなんだ」程度で普通に受け入れられてしまうのは、作品のテーマとそぐわないのでは?人間になろうとするアンドリューと、その進化についていけない人間社会との軋轢こそが本作の主題だったはずなのに、200年があまりに順調すぎたと思います。ロボットとの愛情を育むこととなるポーシャにまるで葛藤がないのも不自然。ロボットと愛し合い、おまけにセックスまでするという人類史上誰も経験のないことをやってしまう女性なのに、普通の結婚とさして変わりのない様子。社会もふたりの結婚を素直に認めちゃってるし。どうしてここまでSF要素を切り取ってしまったのかと、不思議で仕方ありません。
[DVD(吹替)] 4点(2008-10-06 01:17:45)(良:3票)
199.  シーズ・ソー・ラヴリー 《ネタバレ》 
恋人のためなら触るもの皆傷つける痛々しいまでの愛情を描く映画かと思いきや、中盤辺りからどんどん雑になっていき、最終的にドタバタコメディで締めくくるという闇鍋状態の映画でした。前半はすごく面白かったんですよ。乱暴者のショーン・ペンが彼女に注ぐ愛情がよく描かれており、そんな大事な彼女がレイプされたなんて知れば、相手の男に対して何をするかわからない緊張感や危なっかしさもよく出ています。しかし短い尺のためか説明不足が多く、中盤以降は唐突な展開が何度も起こって話が怪しくなってきます。ショーン・ペンが逮捕される展開など、事前に彼の精神に異常のある描写がなく、ヤンチャのすぎるお兄ちゃんという印象しかないため、突如異常行動をはじめる展開にかなりの違和感。また彼の退院時。長い治療によって「カッコーの巣の上で」状態となっていたショーン・ペン。失われた時間の重みを感じさせる壮絶な場面なのですが、その後トラボルタ家に行く頃には、映画的な理由付けもないまま10年前と特に変わらない元の彼に戻ってしまいます。なんで?またトラボルタ家の描写も非常に浅く、クライマックスの決断と対比されるものが家族愛であることを考えると、その描写が薄いというのは映画としてのバランスがよろしくありません。前半が丁寧だった一方で、本来話のメインであるはずの後半パートが杜撰なのは残念です。とはいえこの映画の着地点は非常にユニークで私は嫌いではありません。クライマックス、ショーン・ペンがトラボルタに「彼女は俺のこともあんたのことも愛してないんだ!」と叫びますが、あれがこの映画の言いたかったことでしょう。女性というのは恋に恋してるだけで、別に男性に対して愛情を持ってるわけじゃないんだよと。しかし男は、女性から愛されようと必死になってしまう。そんな女性の身勝手さと、女性に右往左往させられる男のどうしようもなさがこの映画の主題ではないでしょうか。ベタベタなタイトルも、女性に対する男たちの気恥ずかしいまでの思いと健気さを表したものだと思います。話のキーとなるロビン・ライト・ペンの心情を後半においては一切描かなかったのも、これは女性に振り回され、それでも愛されたいと頑張る男目線のラブストーリーなので、意図的に彼女の心情は描かなかったのでしょう。そんなわけで、目の付け処は悪くないのにそれを活かしきれなかった本当に残念な映画でした。
[DVD(字幕)] 4点(2008-06-08 04:24:31)(良:1票)
200.  ウェインズ・ワールド2
アメリカローカルの笑いなので、残念ながらほとんど理解できませんでした。しかし見ていてここまで淋しくなった映画も珍しいです。画面では何か楽しそうなことが起こってるのに、それのどこが楽しいのかがわからないんですよ。私の頭からは終始「?」が出っぱなしでした。ただし、DVD版の吹き替えにはかなり救われました。声優陣がかなり頑張ってくれてるおかげで、いくつかのシーンの雰囲気だけは味わえましたから。って、やっぱり淋しい鑑賞。スクランブルのかかったWOWOWの画面を見ては、うらやましくて仕方なかった中学の時のような気分です。
4点(2004-09-04 01:32:46)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS