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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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181.  そして友よ、静かに死ね 《ネタバレ》 
悪事から足を洗ったヤクザ者が、仲間への仁義から再び犯罪の世界に戻らざるをえなくなるという『カリートの道』のような映画ですが、なんとこれが実話。伝説の犯罪者・エドモン・ヴィダル本人が書いた自伝が本作のベースとなっています。ヴィダルはジプシー出身であるがゆえに幼い頃から差別を受け、冗談半分でサクランボを盗んだ件で服役させられたことから(書類送検で済む事件だったにも関わらず、彼がジプシーであったために通常では考えられないような厳しい刑が課せられたようです)、本格的に悪の道へと入っていきます。映画では、現在のヴィダルの物語と、彼の生涯の物語が平行して描かれるのですが、そのどちらもが激シブの完成度。ヤクザ映画が好きな人には堪らないドラマとなっています。。。 問題点を挙げるならば、ヴィダルと相対するセルジュの人となりの描写が不足していたことでしょうか。彼はいつから仁義の道を踏み外していたのか?その点が曖昧であったため、セルジュの本性を見抜けなかったヴィダルの物語として、やや腑に落ちない内容となっています。
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-04 23:42:46)
182.  388 《ネタバレ》 
タイトルは舞台となる家の住所を示しており、郊外で暮らす平凡な男が恐怖の犯罪に巻き込まれることが本作の内容です。犯人が仕掛けた隠しカメラの映像のみで全編が構成されており、犯人目線で映画が進行するという点が本企画の特徴なのですが、この点においては概ね製作者が意図した通りの効果があげられています。ムダを省きつつも犯罪の全貌を捉えることに成功しているし、犯人はカメラの後ろ側にいるため決して顔が映らないという構図が置かれたことで、犯罪の不気味さがより際立っています。その他にも、不安定な映像が主人公の心理状態を反映していたり、主観映像によってチェイスシーンのスピード感・緊張感が飛躍的に向上したりと、多くの点でこの仕掛けが功を奏しています。主観映像を用いた映画は増える一方ですが、本作はそんな作品群の中でも成功した部類に入ると思います。。。 また、脚本もよく練り上げられています。幸せな日常をコンパクトに描写した後、徐々に恐怖のシチュエーションが出来上がっていくという過程にはスリルがあるし、主人公が焦れば焦るほど犯人の術中にハマっていくという展開の不快度数もかなりのもの。犯人が仕掛けるワナにはこの手の映画にありがちな論理的破綻がないし、被害者側の心理描写にもリアリティがあります。ヴィンチェンゾ・ナタリが製作に関わった成果か、不条理サスペンスとして実にうまくまとめられているのです。。。 【注意!ここからネタバレします】 唯一問題に感じたのは、オチの付け方です。ここまでの完成度で推移しておきながら、オチが「愉快犯の犯行でした」ではガックリきます。謎解きに主眼を置いた作品ではないため必ずしもオチは重要ではないのですが、それにしても納得感の薄い終わり方でした。
[DVD(吹替)] 7点(2013-03-23 03:02:27)(良:1票)
183.  闇を生きる男 《ネタバレ》 
タイトルが示す通り、真っ暗闇の人生の中で孤独に生きる男が、そのとどめとも言える最悪の事件に巻き込まれて破滅へと向かうという、ポール・シュレイダーもかくやという暗い映画です。鍛えすぎてパツパツの体の上に、生気のない顔が乗っかっている男・ジャッキーが本作の主人公。このジャッキーが温厚そうな老人を容赦なく恫喝する場面から映画ははじまり、「これは何事か」と思わされるのですが、その後、ジャッキーがなぜこのような人格になったのかが明らかにされると、この男の悲惨な運命に同情せざるをえなくなります。。。 本作の理解に必要な情報として、牛成長ホルモンとホルモン・マフィアの2点が挙げられます。飼料を節約しながら食肉牛を大きく成長させたり、商品価値の高い赤身部分を増やすことを目的に、欧米諸国では牛にホルモン剤を投与するということが行われていました。しかし、人体への影響が懸念されることから規制の動きが活発化し、欧州では1981年に一切のホルモン剤の使用が禁止されたのですが、これに目を付けたのがマフィア達でした。いまだ合法とされるアメリカから仕入れたホルモン剤を畜産業者に提供し、利益をあげはじめたのです。禁止されている薬剤が密かに使用され、国民の健康を脅かしている。当局はホルモン・マフィアの捜査と食肉汚染の全容調査を開始するのですが、その過程において獣医検査官が殺害されるという事件が1995年に発生します。この一連の流れが、本作のモチーフとなっています。。。 主人公・ジャッキーは、人用ホルモン剤の投与によって成り立っている男です。外部から男性ホルモンを摂取することで男性性を維持し、強いコンプレックスによって攻撃性が定着した彼は、人為的に作り上げた男性性によって破滅へと向かいます。本来の彼はおとなしく、かつ冷静で正しい判断を下す男なのですが(ホルモン・マフィアと関係を持つことにもっとも慎重だった)、男性性をコントロールしきれなくなって起こした2、3のトラブルによって、その人生はどん底へと叩き落とされます。もし、クラブで会った男や自動車修理工に暴力を振るっていなければ、彼は幼い頃からの片思いを成就させて、幸せな人生を送れていたかもしれないのです。主題とドラマを完璧に一致させたこの設定は、本当に見事だったと思います。演技の質も極めて高く、必見のサスペンスドラマとなっています。
[DVD(字幕)] 7点(2013-02-15 13:40:59)
184.  キック・オーバー
“Gringo”とはヒスパニックの人々がアメリカ人を指して使う言葉であり、原題は「そのアメリカ人を捕まえろ」という意味です。このタイトルが示す通り、舞台はアメリカではなくメキシコ。メキシコの巨大刑務所に収監されたアメリカ人犯罪者がサバイバルのために立ち回っているうちに、2大マフィア間の抗争の中心人物になっていくという、クライムアクションとしてはありがちなお話です。ただし、オスカー監督であるメル・ギブソンが脚本を書き、恐らくは実質的な監督権をも掌握して製作された作品だけあって(クレジット上の監督であるエイドリアン・グランバーグは『アポカリプト』で助監督を務めた人物であり、組合の規定によって本作の監督にクレジットされたと思われます)、過去の類似作よりも頭一つ抜きん出た仕上がりとなっています。雑多な登場人物が入り乱れる複雑な内容でありながら、脚本の交通整理が抜群にうまいので大きな混乱をもたらしていないし、グロとユーモアと男らしさのブレンドも絶妙なサジ加減となっています。また、見せ場の数は多くないものの、ひとつひとつの見せ場は面白く作りこまれており、しっかりとした基礎を持つ製作チームならではの安定した仕事が作品のクォリティに大きく貢献しています。さらには、精神疾患を患い、ほとんど引退状態にあったメル・ギブソンが依然としてスターオーラを維持しており、気の良い犯罪者にピタリとハマっています。すべての要素において破綻がなく、完成度の高い作品であると感じました。。。 そして、本作がもっとも光っていたのは、悪名高きエル・プエブリートを舞台として設定したこと。エル・プエブリートとはメキシコに実在した刑務所であり、内部では犯罪者が家族と同居し、自由な商業活動までが行われていました(通常の商店のみならず、麻薬や売春関係も堂々と営業していたとか)。刑務所内での待遇は金で買うことが可能であり、さらには犯罪者同士の殺し合いも日常の光景だったようで、これはもはや現実世界の『ニューヨーク1997』。2002年に刑務所の破棄が決定した際には軍隊までが動員されたという、まさに悪の巣窟だった場所です。こんな場所が今の今まで映画のネタにされていなかったことが驚きですが、本作ではエル・プエブリートが影の主役としての機能を果たしています。とにかく、このありえない環境が面白すぎるのです。
[DVD(吹替)] 7点(2013-02-15 13:39:53)(良:1票)
185.  遊星からの物体X ファーストコンタクト
全米での度重なる上映延期、そして、その全米公開から1年も空けての日本公開というあんまりな扱いを受けた本作。古典のリメイクは興行的にも内容的にも失敗するケースが圧倒的に多いため、本作についても失敗作なのだろうかと思っていたのですが、これが意外な程よく出来ていました。映画とは、自分の目で観るまではわからないものです。現在では傑作とされている82年版だって、公開当時には「ハワード・ホークスの名作に泥を塗る駄作」などと言われていたわけですから。。。 『遊星からの物体X』の前日談という設定にはなっているものの、その内容は82年版を忠実になぞったものであり、実態はリメイクであると言えます。『ニューヨーク1997』と『エスケープ・フロム・LA』のような関係でしょうか。82年版を上回る要素は少ないものの、同等のものはきっちりと作ってきているので、あの世界にまだまだ浸りたいという方には最適な映画だと思います。疑心暗鬼のサスペンスや飛び上がるようなショックシーンなど、必要なものはすべて揃っています。82年版と同じ雰囲気を作るためにCGは極力排除し、わざわざ機械仕掛けのモンスターを製作したという気合の入れよう。機械の動きがあまりに滑らかで、CGに見えてしまっているのはご愛嬌です。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-01-29 01:03:07)(良:1票)
186.  センチュリオン
『ドゥームズ・デイ』でやりたい放題やった挙句に赤字を出してしまい、各方面からお叱りを受けたニール・マーシャルですが、後続の本作では心機一転、個性を殺してマジメにお仕事なさっております。。。 序盤の目玉である「ローマ第9軍団出動→不意を突かれて壊滅」の展開はなかなかの迫力と面白さで、小っちゃいリドリー・スコットとも言える素晴らしい演出を披露。1,200万ドル程度の小規模作品とは思えないほどの見せ場を楽しむことができました。基本がしっかりしている監督は、こういう丁寧な仕事ができるので有難いのです。ただし、大きな合戦があるのは序盤のみであり、以降の展開は生き残った7人の兵士による将軍奪還作戦、及び、敵陣からの脱出作戦。思わぬ裏切り者が現れたりと、古代版『荒鷲の要塞』みたいな話になってきます。ここでいきなりスケールが小さくなってしまうのでガックリくるのですが、映画の出来自体は引き続きしっかりとしています。きちんとノンストップアクションになっているのです。ラストの決戦シーンのショボさには再度驚いてしまいましたが、それでも大自然を活かしたアクション、美しい撮影と激しいゴア描写等、マーシャル監督本来の持ち味が活かされているのは、前半よりも後半パートの方だったと思います。水準作ではありますが、観るべき点は多い映画だと思いました。
[DVD(吹替)] 7点(2013-01-18 01:15:41)
187.  るろうに剣心
一応はどんぴしゃの世代なのですが、なぜか一度も触れてこなかった作品であるため原作もアニメも未見。登場人物も設定もよく知らないという真っ白な状態でこの実写版に挑んだのですが、これが意外な程よく出来ていて驚きました。。。 まず感動したのが、マンガから抜け出てきたようなキャラクター達の完成度の高さ。佐藤健や吉川晃司の演技はそれほどうまくはないのですが、彼らが本質的に持つ個性をうまく活かすことにより、演技の巧いプロの俳優には出せないような特有の味、常人離れした存在感を出すことに成功しています。場面によっては、彼らのヘタさ加減までがキャラクター造形に反映されており(例:剣心の語尾の「~でござる」の取ってつけたような不自然さ)、このキャスティングと演出は完璧だったと思います。本作の監督を担当した大友啓史氏は、長年NHKでドラマの演出をやってきた人物。必ずしもプロの俳優が主演を務めるわけではないテレビドラマの世界で活躍してきた大友氏だったからこそ、タレントの長所を的確に捉えた演出が出来たのでしょう。。。 そして凄いのが、アクションの充実ぶり。乾いたバイオレンスではないド派手な娯楽アクションとは、邦画界が長年に渡って不得手としてきた分野。そんな鬼門に挑み、これ一本で世界レベルに追いついてしまった本作スタッフの仕事は驚異的だったと思います。マンガらしい派手さはあるが、やりすぎとなる一歩手前で踏みとどまったバランス感覚、感情が高ぶったところで見せ場を投下するという間の取り方なども見事であり、アクション大作としては期待以上の仕上がりでした。。。 問題点ですが、この内容にしては上映時間が長すぎるために中弛みが発生しています。ドラマパートを簡潔にまとめ、120分程度に収めるべきでした。また、原作にある基本設定だから仕方がないとは言え、剣心が人を斬らないという大原則は活劇の勢いを著しく奪っています。人斬りだった過去の凄惨さをより強調する等、この弱点を克服するためのうまい方便を捻り出して欲しいところでした。最後に、佐藤健が武井咲を抱きかかえるラストは、どうしても前田敦子を連想して笑ってしまいます。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2013-01-08 16:59:27)
188.  ザ・レッジ -12時の死刑台- 《ネタバレ》 
「リブ・タイラーが脱ぐ!」という煽りのみに釣られてDVDをレンタルし、ロクな予備知識もなく鑑賞したのですが、これが正解でした。ソリッドシチュエーションスリラーの体裁をとりながらも、実はスリラーを意図して作られていない本作。DVDジャケットから受ける印象を期待して観ると確実に裏切られるのですが、その一方で本筋の内容はなかなか深淵なものであり、配給会社によるヘタな宣伝に惑わされなければ、きちんと楽しめる作品となっています。。。 脚本・監督を担当したのは、サスペンスドラマの佳作『ニューオーリンズ・トライアル』で知られるマシュー・チャップマン。本作においても『ニューオーリンズ~』同様の抜群の構成力を披露しています。何の前フリもなくいきなり事件が発生し、その後の回想により薄皮を剥がすように登場人物達の素性や事件の背景が明らかになっていく前半部分は圧倒的な面白さに包まれているし、一見すると無関係に思えるテーマとシチュエーションを見事に一致させた構成力にも恐れ入りました。ドラマパートの出来も上々であり、リブ・タイラーに15年ぶりのヌードを決意させただけの脚本力は確かに実感できました。。。 問題に感じたのは、本作が投げかける難問について、監督自身が答えを出してしまっているという点。アメリカの銃社会を批判し、それに対して脱法行為をとる市民運動家をヒーローとして描いた『ニューオーリンズ~』を見れば分かる通り、チャップマンはバリバリのリベラル。そんなチャップマンは、信仰の不寛容を描いた本作においてはキリスト教原理主義をかなり厳しく批判しており、最終的には「信仰を捨てましょう」という結論に至ってしまっているのですが、本作の主張は観客に対する問題提起に留めておくべきでした。なぜなら、信仰が持つ良い部分を無視し、形式主義的で不寛容な部分だけを論って「信仰とは害悪である」と断罪する行為こそが、まさに不寛容そのものだったからです。言ってることとやってることに矛盾が生じてしまっているという市民活動家的な弱さがドバっと出てしまったラストによって、映画は説得力を失ってしまいました。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-24 00:59:17)(良:1票)
189.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
非常にややこしいという評判は聞いていたので事前に粗筋を確認、さらには人物相関図を手元に置いてこれを眺めながら鑑賞を進めていくという重装備で臨んだのですが、ここまでの準備をしていればさすがに映画の理解はスムーズに運ぶもので、この苦み走った大人のサスペンスを存分に楽しむことができました。銃撃戦もカーチェイスも熱い舌戦もなし、ひたすらに淡々としたドラマが続くだけなのですが、これが異常なまでに面白いのです。役所から文書一枚持ち出すだけでひとつの見せ場を作ってしまうのですから、この監督の演出力の高さには驚かされます。また、国際的なスパイ戦争を舞台としながらも、非常にパーソナルな着地点を設けてみせた意外性ある構成も面白いと感じました。硬派な官僚ドラマとドロドロの愛憎劇をうまくブレンドしてみせた脚本家のバランス感覚は非常に優れています。。。 以上、大変に満足のいく鑑賞ではあったのですが、やはり気になったのが本作の不親切さ。各キャラクターの紹介場面は一切なしのままいきなり本筋が始まり、キャラクター達はコードネーム、ファーストネーム、ファミリーネームの3通りの名前で呼ばれます。現在、ちょっと前の過去、随分前の過去の3つの時系列を舞台としながらも、服装やメイク等で視覚的な変化を付けるようなことはしていません。おまけに、死んだとされていた人物が実は生きていたという展開がサラっと流されたりするので、予備知識なしでの鑑賞はほぼ不可能という壮絶な状態となっています。巻き戻しのできる自宅での鑑賞ならともかく、一度でも遅れをとった時点で即終了という映画館での鑑賞は、もはや自殺行為。映画館での鑑賞を想定していない映画を評価していいものかと悩んでしまいます。。。 考えてみれば、本作の主要キャラクターは10名程度。実は007やミッション:インポッシブルよりも少ない人数しか動いていないのです。いくらでもわかりやすく作れたであろう話なのに、それをわざわざ複雑に撮った理由が理解できません。
[DVD(吹替)] 7点(2012-11-15 01:45:39)
190.  エクスペンダブルズ
映像技術の発展によって俳優がアクションを演じることが容易になり、トム・クルーズやジェレミー・レナー、リーアム・ニーソンといったイケメンや演技派がアクション映画の最前線に立っているという昨今(並べてみて気付いたのですが、なぜか全員アイリッシュ)、筋肉のみに特化したアクション俳優は急速に活躍の場を失いつつあります。そんな状況で立ち上がったのが『ロッキー』と『ランボー』の最終作を連続して成功させたスタさんであり、もはや世界で彼にしか為しえない1億ドルバジェットの筋肉祭りを開催しています。商業的な計算もあるにはあったと思うのですが、それ以上に強かったのはファンを喜ばせたいという思いであり、同業者に活躍の場を与えて再びこのジャンルを盛り上げたいという願いだったように感じます。実際、女に惚れて判断を誤ったり、敵に捕らえられて仲間に助けられたりといった損な役回りはスタさんが積極的に引き受けており(裏切り者役でメインの戦闘に参加できなかったラングレンも同様)、ベテラン勢が現役勢のために美味しい見せ場をお膳立てしてやるという配慮には、なんだか胸が熱くなりました。。。 内容は良くも悪くも80年代風。中米の小国で特殊部隊が大暴れという何とも『コマンドー』な設定の下、我らがエクスペンダブルズがロクな作戦もなしに「おりゃ!」と暴れて一国の軍隊を殲滅してしまうという、リアリティのかけらもないお話しとなっています。戦場で仁王立ちでもまったく弾の当たらないエクスペンダブルズに対し(どこが消耗品なんだ)、敵は気持ち良い程バタバタと倒れてくれます。直前に『ランボー/最後の戦場』という最先端のアクション映画を撮っているという背景から考えて、本作における偏差値の低さはスタさんが意図したものであり、これは80年代アクションを懐かしむおっさんの為だけに作られています。金曜ロードショーに育てられた私は、もちろんハートを打ち抜かれましたとも。バカって最高! ただし、問題もあります。これだけのメンバーを集めたエクスペンダブルズに対して、敵がジュリア・ロバーツの兄貴では見劣りしすぎ。マチェーテの敵にセガールを持ってきたロドリゲスの判断を見習ってほしいところです。また、ウィリスとシュワルツェネッガーという宣伝の時点で大フィーチャーされていた大物が1シーンしか出てこないのも、なんだか詐欺に遭ったような気がしました。
[DVD(吹替)] 7点(2012-10-21 00:19:17)(良:1票)
191.  カンパニー・メン
個人のパフォーマンスが芳しくなかったり、業界の景気状況が悪化したりすれば簡単にクビを切られる世界で働く身としては、他人事とは思えない映画でした。MBA持ちで30代にして大企業の部長を務める主人公が、リーマンショックの影響によって呆気なくクビに。主人公に非があったわけではなく、部門の統廃合によって運悪く余剰人員の一人となってしまったという点が同情を誘います。そして、リストラ後に繰り広げられるのはサラリーマンにとっての地獄絵図。「自分にはまともな学歴と職歴があるし、きっとすぐに再就職先が見つかるはずだ」という見当は外れて無職の期間がどんどん長引き、親や子供、親戚やご近所さん達にも自分が無職であることが知れ渡ります。家族には迷惑をかけまいと思っていても月々の支払いは容赦なく迫り、家や車を手放すことに。空気を読んだ子供達が家計に気を使うに至っては、申し訳なさと情けなさで胸が張り裂けそうになります。親戚に頭を下げて仕事をもらっても不慣れな作業にはまったく馴染めず、不甲斐なさと自己嫌悪はさらに増長するのみ。観ている間中、こちらまでが胃の痛むような思いをさせられました。。。 監督のジョン・ウェルズは主にテレビ界で活躍してきた人物であり、中でも『ER』では長年に渡って脚本・監督を務めてきました。テレビで培った構成力やリサーチ力は長編デビュー作である本作においてもいかんなく発揮されており、リストラサラリーマン達の姿は驚くほどにリアルです。さらに、個人の物語をメインとしながらも時事的な大企業批判もうまく織り込んでおり、その構成力の高さには舌を巻きます。本作は非常に上質なドラマだと思います。その一方で映画的な抑揚に欠ける点もあり、悪い意味でもテレビ的な面が出てしまったことが残念です。サラリーマンにとっては身近な話であっても、主婦や学生さん達が本作を観てどの程度感情移入できるのかについては疑問が残ります。
[DVD(字幕)] 7点(2012-10-09 01:19:49)
192.  デビル(2010) 《ネタバレ》 
本作は、シャマランが書き溜めてきたアイデアを若手クリエイターが映像化する「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第一弾。これまでシャマランは自分のオリジナル脚本を他人に委ねることがなかっただけに、本作の出来がどうなるのかは気になっていたのですが、幸いなことにこの試みは成功しています。。。 内容は「お天道様は見ていますよ」といういつものシャマラン映画なのですが、若手クリエイターの力によって、これまでとは一味も二味も違う作品に仕上がっています。従来シャマランが不得意としてきた悪人の描写が充実し、サスペンスホラーとしての奥行きがしっかり出来ているのです。シャマランは悪人よりも善人の描写に力を入れる監督なのですが、一方、本作の監督を担当したジョン・エリック・ドゥードルは善人にほとんど関心を示していません(ラストでは善人に救いがもたらされるのですが、その救いをほとんど描かずにさっさと映画を切り上げてしまうという有様)。それに代わって「正常に見えていた人間が、実は悪人だった」という点の描写に力を入れたため、サスペンス映画としてちゃんと面白くなっています。。。 本作の構成は独特で、オカルトと犯罪ミステリーという相反するはずの二つの要素が食い合うことなくうまく共存しています。犯人は悪魔であることがはっきりしているのに(そもそも、タイトルが『デビル』だし)、その前提でもなお犯人探しのミステリーを成立させてしまった脚本力・演出力には脱帽なのです。抜群の発想力・構成力を持っているものの、監督としての引き出しの少ないシャマランと、勢いのある演出はできるものの、ともすれば緻密さに欠ける若手クリエイターが、お互いの短所を補完しあうことで作品を完璧なものとしたようです。本作は興行的にも成功した様子なので、「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第2弾にも期待です。
[DVD(吹替)] 7点(2012-09-02 02:31:25)
193.  プロメテウス 《ネタバレ》 
IMAX3Dにて鑑賞。初挑戦ながらリドリー・スコットは見事に3D技術を使いこなしており、3D料金を払う価値のある映像に仕上がっています。この辺りの柔軟性、技術に対する積極性は、さすが巨匠といったところです。。。 本編もまた、良くも悪くもリドリー・スコットの映画でした。とにかく映像美は完璧で、VFXの使い方も完璧。『アベンジャーズ』でコテコテのCGを観た直後だっただけに(あれはあれで楽しいのですが)、ロケーションとVFXが違和感なく融合し、あたかもそこに存在するかのような映像のリアリティには驚かされました。『ブレードランナー』以来30年ぶりのSF映画ですが、この監督のセンスはまったく衰えていません。その一方で、脚本はかなり適当。『エイリアン』の登場人物が7人だったのに対して本作の登場人物は17人に増やされているのですが、不要な人間が何人もいます。特に要らないのが科学者グループで、専門性を発揮することもなくただワァワァ騒いでいるだけ。肝心の研究・調査は同行したロボットがたった一人で進めているという有様であり、これならば科学者グループを丸ごと切ってしまい、代わりにプロメテウス号の操縦クルーを主人公にしてしまった方が映画全体のまとまりが良かったように思います。創造主に会えば寿命を延ばしてもらえると思ったウェイランド社長や、せっかく育てた人類文明を滅ぼそうと考えたエンジニアの行動原理は理解不能であり、これらについてはより突っ込んだ説明が必要だったように思います。製作スケジュールに余裕がなかったためか、スコットは映像表現に全精力を注いで物語は二の次・三の次としているようです。ジェームズ・キャメロンのような完璧主義者とは違い、ある程度のところで割り切ってしまう適当さがスコットらしいと言えます。。。 人類の起源とエイリアンを結び付けようとするそもそものアプローチが、個人的には好きではありません。「出会ってはならない二つの種族が出会ってしまったことによる悲劇」というオリジナルシリーズのアプローチの方がしっくりきます。
[映画館(字幕)] 7点(2012-08-26 01:28:24)(良:2票)
194.  アベンジャーズ(2012)
IMAX3Dにて鑑賞。この映画の3D効果は非常に素晴らしく、IMAX料金に3D料金も加算されて二人で4,400円というえらい入場料を取られたものの、それだけの価値のある体験はできたと思います。。。 単独主演作のなかったキャラクター達にまず見せ場を持たせ、続いて主役格のヒーロー達に各々ド派手な再登場シーンを与える。この序盤の構成だけでワクワクさせられました。オタクの神様ジョス・ウェドンは多くのキャラが入り乱れるこの物語を愛をもって丁寧にまとめ上げており、その仕事は驚異的と言えます。また、各キャラに対して均一に見せ場を与えるというサジ加減も絶妙。雷神ソーやハルクと比べると、凡人をムキムキにしただけのキャプテン・アメリカなんてのは圧倒的に見劣りするヒーローなのですが、そんなキャップにもかっこいい見せ場がちゃんと与えられているのです。ドラゴンボールで言えば、サイヤ人達が入り乱れる中でヤムチャや天津飯にも活躍の場が与えられているという状態であり、それを思えば、この映画の脚本がいかに優れているかがわかります。。。 と、キャラクターものとしては素晴らしい作品ではあるのですが、キャラクターの交通整理に終始して映画全体としてはイマイチだったように思います。原作がそうだから仕方ないとは言え、ヒーロー達の仲間割れが延々と続く中盤の展開はめんどくさかったし、クライマックスの大バトルはパラマウントが昨年製作した『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』を下敷きにしていることがモロバレとなっています。世紀の超大作を謳う割にはサプライズが少なく、やや拍子抜けさせられました。。。 この映画が不幸だったのは、日本公開が全世界同時公開から3か月も遅れてしまったこと。もちろん世界最遅公開。このタイムラグで自分の中では熱が冷めてしまい、お祭り騒ぎに参加するという心境で鑑賞することができませんでした。もし熱狂の中で観ていれば、前述した欠点も「見過ごすべき小さな問題」として捉えられていたかもしれないと思うと、この手のイベント映画には鮮度が重要であるということを再認識させられました。2015年の公開が予定されている『アベンジャーズ2』ではそこんとこよろしくお願いしますよ、配給会社のみなさん。
[映画館(字幕)] 7点(2012-08-25 02:18:50)(良:1票)
195.  ヒミズ 《ネタバレ》 
古谷実による原作は未読。古谷氏といえば『行け!稲中卓球部』の作者として知られていますが、常に楽しいこと、面白いことを要求されるギャグ漫画家は精神を病むことが多いらしく、例に漏れず古谷氏の書く物語も相当病んでいます。『稲中』の次に発表した『僕といっしょ』などはギャグ漫画の体裁をとりながらも家庭崩壊や自殺などのテーマを扱っており、本作『ヒミズ』はそれらをより直球で表現した作品なのだろうと思います。。。 本作に登場するのは不登校児、ホームレス、精神異常者、スリ、ヤクザと普通ではない人たちばかり。世の中に確かに存在してはいるが、私たち"普通の人々"が見ないようにしている人たちです。これらの人々が繰り広げるドラマには何やら圧倒的なパワーがあって、脂の乗り切った園子温監督の手腕を存分に味わうことができました。その一方で、観ている間はこの映画が何を言いたいのかを掴みきれず、物語との共感の接点を見出すことができなかったこともまた事実。監督が東日本大震災のイメージを持ち出した理由もわからず、奇人たちのドラマをただ傍観するのみでした。。。 しかし、ラストシーンでようやく監督の意図が理解できました。犯した罪を償うために警察へ向かう住田に対して、茶沢が叫ぶ「夢を持て!」というセリフ。これは序盤に登場した教師のセリフのリピートなのですが、序盤では空虚に感じたこのセリフが、一転してラストでははっきりとした意味を持ちます。大きな苦痛と苦悩を経て、それでも前へ進もうと決意した者の口から発せられる「夢を持て!」というセリフの、いかに重いことか。これこそが、東日本大震災を経た日本に対して監督が贈ったメッセージだったようです。平時においては毒にも薬にもならないこの励ましが、今の日本には本当に必要とされているのです。。。 演技のレベルは総じて高く、ヴェネチアでの高評価も納得です。ただし、10代の男女がここまでの熱演を披露したことは痛々しくもあります。園子温は役者を徹底的に追い込み、真っ白になったところで役柄を注入するという演出方法をとっているのですが、10代の男女がこの方法でコッテリと絞られたんだと思うと、かなり気の毒な気持ちにさせられます。
[DVD(邦画)] 7点(2012-08-14 20:32:30)(良:1票)
196.  エンジェル ウォーズ
既存コンテンツをピカピカに作り直すことで成功してきたザック・スナイダーが、はじめて挑んだオリジナルストーリー。今回は自ら脚本も執筆しており、並々ならぬ意気込みで製作された本作なのですが、完成した映画はかなり独特。面白いと判断するか、そうではないと判断するかはまさに紙一重であり、実際、劇場公開時には興行的にも批評的にもかなり苦戦しました。とはいえ新しい試みに対して拒否反応は付き物であり、かつて『フィフス・エレメント』や『V・フォー・ヴェンデッタ』がそうであったように、時とともに評価は安定していくタイプの映画だろうと思います。。。 かく言う私も、最初の見せ場である鎧武者との対決にはポカンとしてしまいました。アクションとは物語の中に存在してこそ盛り上がるものであり、文脈から切り離された所で派手なアクションを見せられても感情がうまく乗っからないのです。しかし、映画を見進めていくことで徐々にこの映画の鑑賞方法が分かり、それからは素晴らしいアクションの連続を楽しむことができました。本作の製作にあたって、監督は『ムーラン・ルージュ』からの影響についてしばしば言及しています。つまり、これはアクション映画というよりもミュージカル映画に近く、本作におけるアクションはミュージカル映画における歌と同様の位置づけにあるようです。それまで普通に喋っていた人が、感情の高ぶりとともに突然歌い出すというミュージカル映画でお馴染みのアレを、本作ではアクションに置き換えているのです。。。 ザック・スナイダーにとっては物語すらその圧倒的なイマジネーションの枷となっていたようで、ミュージカルの手法を採り入れることでその制約から解き放たれた本作の見せ場は圧倒的な迫力と面白さに溢れています。これは駄作と切って捨てるには惜しい完成度であり、今後本作を受け入れる人が増えればいいなと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2012-08-14 20:28:07)(良:1票)
197.  メランコリア
『メランコリア』とはズバリ鬱病のこと。重度の鬱病を患う天才監督による鬱病をテーマにした映画ということで、大変興味深い仕上がりとなっています。。。 この映画はかなりシンプルな構成となっており、ラース・フォン・トリアー監督作品としてはわかりやすい部類に入るのではないでしょうか。第1部で描かれるのは、結婚式という人生の一大イベントの中で奇行を繰り返す鬱病患者の姿。第2部で描かれるのは、人類滅亡という狂気の日を迎え、完全に理性を失ってしまう一般人の姿。第1部における主人公ジャスティンの姿にはかなりイライラさせられるのですが、第2部との対比によって鬱病患者の置かれた状況がよく理解できるという面白い構成となっています。。。 鬱病患者にとっては狂気の世界こそが日常であり、普通の人たちの輪の中に入れられ、普通に振る舞うことを強要されるということは激しい混乱を生むようです。愛する花婿と二人っきりの冒頭では幸せいっぱいだったジャスティンですが、大勢の客人の前に引きずり出されるとその笑顔は曇ってしまいます。家族が良かれと思って設けた宴なのですが、状況は彼女の許容範囲を完全に超えてしまっていたのです。結果、制御不能となったジャスティンは奇行を重ねるのですが、それは彼女に無理を強いた周囲に責任があったはず。にも関わらずすべての人から責められたのはジャスティンであり、愛する花婿も、生き甲斐だった仕事も失ってしまいます。。。 第2部は、「今日で世界が終わります」と告げられた一般人の物語。常識人だったジョンは妻と息子への義務を放棄して服毒自殺を図り、残された妻クレアは息子を連れて右往左往するのみ。人類滅亡という状況は秩序の中で生きる一般人の許容範囲を超えてしまっており、混乱した彼らはひたすらに奇行を繰り返すのみなのです。結婚式という場に引きずり出されたジャスティン同様に。鬱病患者は好んで奇行に走るのではなく、彼らにとって受け入れがたい環境に置かれたことによる避けられない反動として奇行が表れてしまうということを、監督は訴えているようです。。。 一般に、精神病患者を社会に戻すことが”治療”と言われていますが、我々とはまったく違う世界に生きる彼らを無理矢理に我々の世界に引き込むことが本当に正しいのか?この映画はかつてない構図でそのことを訴えてきます。この監督の圧倒的な構成力には相変わらず恐れ入りました。
[DVD(吹替)] 7点(2012-08-10 14:42:17)(良:3票)
198.  宇宙人ポール
『ホット・ファズ』のチームが手掛けただけあって、相変わらず丁寧な娯楽作に仕上がっています。スピルバーグ愛全開ではあってもオマージュやパロディは「わかる人がわかればいい」という程度に抑えられていて、80年代SF映画に関心のない人でも楽しめる間口の広い内容としている点には好感が持てました。娯楽作としてのバランスの取り方は絶妙で、速すぎず遅すぎず観客の生理に合わせた映画となっています。登場人物は多彩なのですが、振り返ると主人公2人以外のキャラはドン底とも言える人生を歩んできた暗い人たちばかり。ポールは60年間監禁生活を送り、脱出時には解体手術を受ける寸前のところだったし、かつてポールを助けた少女はキ◯ガイ呼ばわりされて60年間を孤独に過ごし、ヒロインとなる女性は30歳を遠に過ぎているのに家の外のことをほとんど知らず、イカれた父親から性的虐待を受け続けていることが暗に仄めかされています。こういうビターな設定を加えたおかげで映画は独特の味わいを得ているし、同時に「宇宙人騒動に参加する人間がマトモな社会人であるはずがない」という説得力ある設定にもつながっています。職を失い、妻子を捨ててまでUFO騒動にのめり込む男の姿を描いた『未知との遭遇』に違和感を覚えた私としては、本作のこの設定には大いに納得できました。。。 とまぁ全体的には満足できたのですが、不満な点が二つほどあります。一点目は、脚本が教科書的すぎて、伏線が見え見えになってしまっていること。作り手が意図したサプライズが観客にとってのサプライズになっていない場面がいくつかありました。二点目は、クライマックスに登場する宇宙船が手抜きだったこと。例えば『ギャラクシー・クエスト』は、クライマックスに本家『スター・トレック』をも超えるスピード感ある見せ場を準備して「SFは最高だ!」という思いを観客にも抱かせることに成功しました。このチームの前作『ホット・ファズ』も、クライマックスにバカバカしくも壮絶な銃撃戦を準備して観客を興奮させました。本作のラストにも、本家『未知との遭遇』と同等かそれ以上のスペクタクルが必要だったと思います。スピルバーグ映画を観た時と同じ感動を観客に味わわせてこそ、真のリスペクトであるはずです。
[DVD(吹替)] 7点(2012-08-07 01:10:51)(良:1票)
199.  インモータルズ/神々の戦い
脚本が平凡な上に監督がストーリーテリングに無関心なようで、お話しはまったく面白くありません。前半は「つまらん映画だなぁ」と思いながら観ていたのですが、ギリシャ軍vsハイペリオン軍の合戦がはじまると突如として面白くなりました。圧倒的兵力を見せつける敵にひよった自軍を鼓舞する演説はこの手の映画にありがちなのですが、本作はこれを意外なほどかっこよく演出してみせています。多くの兵が入り乱れる合戦は大迫力だし、満を持しての神様戦隊登場は笑ってしまうくらいかっこよく決まっていました。ここまでやってくれれば大満足、前半のつまらなさはクライマックスですべて帳消しになりました。。。 美しさを伴う残酷描写にスーパースローの多様と、ターセム・シンの画作りはザック・スナイダーとよく比較されますが、コミックのカットの忠実な再現を目指すザック・スナイダーに対して、動く絵画を目指すターセム・シンの画作りはより高度。『ザ・セル』を観た時には”小さなリドリー・スコット”という印象を受けたのですが、本作を観るにターセム・シンは映像派と呼ばれる監督群の中でも独自のポジションを確立しつつあるようです。そろそろまともな脚本を受け取って、ラッセル・マルケイ化する前に代表作を作って欲しいものです。 
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-07-16 16:46:53)(良:1票)
200.  シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム
前作に比べてアクションの比重が増し、よりジョエル・シルヴァー色の強くなった第2作。とにかく爆破アクションの連続なのですが、ひとつひとつの見せ場が緻密に作りこまれていて単なるバカアクションに終わっていない点がシルヴァーらしいと言えます。ハイライトである兵器工場での戦闘では、素晴らしい見せ場の連続に大興奮させられました。俳優のチョイスもシルヴァーらしく、前作のヒロインを早々に退場させ、代わってスウェーデン版『ドラゴン・タトゥーの女』のノオミ・ラパスをヒロインに据えるというチャレンジングなキャスティングがなされています。ブラッド・ピットやダニエル・デイ・ルイスの登板が噂されていたモリアーティ教授も蓋を開ければシェイクスピア俳優ジャレッド・ハリス(名優リチャード・ハリスの息子)に落ち着いたわけですが、この辺りにも「スターは一人か二人いれば十分。あとは実力ある中堅・ベテランで固めるべし」というシルヴァーイズムが現れています。こうしたキャスティング面でのこだわりも本作においては吉と出ており、作品としては一定のクォリティに達していると思います。。。 ただし問題もあります。前作と同じく観客が推理に参加する形となっておらず、ホームズの長台詞を一方的に聞かされるのみというストーリーの展開方法にはややストレスを感じました。ホームズはもはや19世紀のジェームズ・ボンドと化しており、シャーロック・ホームズである必要性がほぼなくなっている点も問題。映画としては面白いのですが、シャーロック・ホームズというコンテンツの扱い方には再考の必要があると思います。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2012-07-16 02:35:01)
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