181. トゥヤーの結婚
「再会の食卓」が面白かったので、同じ監督の作である本作品も鑑賞した。 金熊賞はやりすぎだと思うが、ヒロインの想いを想像しながら見ると感じるところもある。ただし、ストーリーがあってないような展開は苦痛だった。やっぱり起承転結のある物語が観たい。 [DVD(字幕)] 5点(2011-03-23 17:30:03) |
182. ハート・ロッカー
戦争に賛成とか反対とかどうでも良くて、ただ単に戦場での爆発物処理班の日常を淡々と描いた作品。ほとんどドキュメンタリーの域だが、主義主張のしっかりしたなかなか面白い「映画」だと思った。 主人公は危険も顧みず粛々と爆発物を処理していく。平和な国で暮らす人間から見ると、自分の命を驚くほど軽々しく扱うという意味で、彼の行動はどちらかというと狂人のそれに近い。ただし、この映画はそのような人間が存在するということを何ら特殊なこととして映し出さない。そして、観客はなんとなく彼の心理状態を推測し、その行動に納得してしまう。自分も戦場に送り込まれて、爆発物の処理が任務だとすればこういう風にやってしまうかもしれないと思う。そう思わせる主人公の描写がうまい。 爆発物処理班という眼の付け所も良い。テロとの戦いでは、突撃や狙撃などの戦闘行動よりもこのような分野こそがリアルでスリリングだろう。 [DVD(字幕)] 7点(2011-03-23 17:26:08)(良:1票) |
183. 愛する人
《ネタバレ》 家族の絆とは「血」か「時間」か。養子制度をどう考えるか。とても興味があるテーマであり、期待して鑑賞した。いつも友人と議論になるが、恵まれない孤児がいるのなら、子供を作るよりも養子を受け入れるほうが、最大多数の最大幸福という観点上、素晴らしいことであり、養子制度は日本にもっと根付かせるべきなのではないか。 それはさておき、映画の出来としては今一歩及ばずという印象だった。演技派をそろえており、それぞれの演技がアカデミー賞候補になってもおかしくないほどだが、どうも脚本が欲張りすぎた印象だ。この映画は3人の女性が中心となって話が進行する。それぞれに個性豊かでもっと色々なことを知りたくなるキャラ設定なのだが、深い部分まで掘り下げた描写がされていない。というか時間的な制約により、そもそもそこまで掘り下げることが不可能なのかもしれない。原作があってその映画化だからかなと思っていたが、そうでもないようだ。 黒人夫婦のエピソードは養子制度を考える上で重要だが、エリザベスの少女時代を丁寧に描くことで補完可能だろう。思い切ってここを丸ごと省き、その分、親子の話に焦点を当てた方が良かったかもしれない。 登場人物一人ひとりに魅力あっただけに、それが裏目に出てしまった。そういう意味で残念な作品。だが、一見の価値がある。アメリカに比べて養子に抵抗感の強い(?)日本では、どう受け止められるのかが興味深い。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-13 21:15:17) |
184. 442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍
日系人で組織された第二次世界大戦当時のアメリカ軍部隊のドキュメンタリー。低予算のためか、つくりの安っぽさはあるが、それを上回る感動を得られた映画。あまり民族主義的な見方は好きではないが、忠誠心や勤勉さで優れる日本人部隊はそりゃ強かったろうさと鼻が高くなる。一方で、その戦争が彼らに齎した苦悩にも光が当てられており、これにもとても共感できた。表にで来ることが少ないトピックだけに、この機会に多くの人に観ていただきたい作品だ。 映画のなかでダニエル・イノウエという人を一目見たときから、こりゃ只者じゃないと思って、帰宅後にwikipediaで調べてみたが、やっぱり只者じゃなかった(笑)。強烈なオーラが出ていた。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-13 20:20:00) |
185. ソルト
え?まじ?そんなのあり?お塩姐さんオイタが過ぎますぞ!ろくろく変装もせずに葬儀会場に紛れ込むあたり、逆に惚れた。 [DVD(字幕)] 5点(2011-03-13 19:55:43) |
186. ヒア アフター
期待して鑑賞したものの、よく分からなかったというのが正直なところ。監督の意図が分からなかった。僕が死後の世界というのにピンと来ない(興味が無い)せいもあるかもしれない。絶対に分からないから考えるだけ無駄だ。監督の保守的でまじめな作り方は好きなので、この点数だが、正直に言って失敗作だと思う。 [映画館(字幕)] 5点(2011-03-13 19:54:00) |
187. 英国王のスピーチ
吃音の英国王と言語専門家の心の交流という目の付け所は素晴らしく、アカデミー作品賞も受賞したため、期待にあふれて鑑賞したが、そこまでの感動は得られなかった。もっと面白く出来たはずの作品。当時のイギリス史をざっと理解していないと、ヨーク公と兄との確執などはちょっと唐突感があってわかりにくいかもしれない。王室という下手にいじれない題材のせいでちょっとつくりが保守的に過ぎる嫌いもある。 ただし、コリン・ファースとジェフリー・ラッシュそれにヘレナ・ボナム=カーターの競演はさすがで、主演男優賞は文句なしと思う。逆にあとの二人が受賞を逃したことが驚きだ。 会話の矯正というとどうしても「マイ・フェア・レディ」を思い出すが、やはりあの作品には及ばないと感じた。まあ、あれは主演がオードリーだから贔屓目もずいぶん入るのだけど。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-13 19:32:33) |
188. 冬の小鳥
《ネタバレ》 観終わってはじめて自伝的な作品だったと知った。道理で鬼気迫るわけだ。主役の女の子のひたむきな演技もさることながら、その周りを固めるキャラクター達の存在感、リアル感はそのせいだったのか。大きな事件は起こらない。レイプもなければ虐待もない。ただ、どんなに先生達が親切でシスター達が優しくても、孤児院にはやはり哀しみがある。大きな喪失感がある。その大きな存在(もしくは不在)から逃げる者、立ち向かう者、存在自体を否定する者。幼くして「人生」に直面せざるを得ない彼女達の姿は凛々しくそして儚い。 主役の女の子の真っ黒できれいな瞳が心臓に突き刺さった。ひりつく映画だ。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-10 21:27:25)(良:1票) |
189. ソウル・キッチン
《ネタバレ》 ちょっと間違ったらトレンディドラマになってしまいそうなぎりぎりのポイントで踏みとどまった作品。食堂を営むジノス(太ってるくせに彼女は美人)のもとにトラブルメーカーのイリアス兄貴が帰ってきて、さらに変わり者の天才シェフが絡んですったもんだあった末にまあるく治まるという限りなく陳腐な設定にもかかわらず、最後まで飽きることなく観られた。料理はおいしそうだし音楽は最高だし、それだけでもういっかと思えちゃう自分の鑑賞眼はまだまだ甘い。 外人って本当に自由だよなあ。20~30代のドラマなのになぜか大学時代を思い出した。おれも一旗上げたくなってきたぞー! [映画館(字幕)] 6点(2011-03-10 21:19:43) |
190. 再会の食卓
《ネタバレ》 ベルリン映画祭で脚本賞を取った映画。上京して鑑賞した。歴史の荒波に翻弄され、若くして離れ離れになった夫婦が40年の時を経て上海で再会する。お互いへの愛を持ち続けながらも、別離の間に積み重ねられた年月がもたらすしがらみから彼らは逃れられない。想いが強ければ結ばれるほど人生は甘くない。 邦題どおり食卓を囲むシーンが多いが、これらのシーンがこの映画の面白さの主要な源泉だろう。誰が誰に料理をよそうか。誰が誰にお酌をするか。誰が先に食べるか。誰が遠慮するか。登場人物たちの心理が行動に反映され、彼らの関係性が濃密に描かれる。脚本賞もうなずける。建築中の高層マンションでの会話シーンやラスト付近の送別の宴でのにわか雨など印象的なシーンが多いし、あのシーンを幕切れに持ってくる巧みさには思わず唸ってしまった。ナナ(孫娘)を登場させて、時代によって変わるもの、変わらないものというテーマを浮かび上がらせるテクニックもうまいと感じた。 僕は鑑賞中、深い深い悲しみに襲われ、涙がとまらなかった。メインキャスト3人の経験した運命の残酷さ、彼らの悔しさやもどかしさを思うと嗚咽をこらえるのがやっとだった。この映画には極端に良い人、悪い人は出てこない。再会を除いてはドラマらしいドラマは無い。抒情性を廃し、写実に徹しながらも、人生の機微を鮮やかに捉え、人間と人間の結びつきを丁寧に映し出すこの作品はとても愛おしく感じられた。人生にきちんと向き合った気持ちの良い作品だ。「日の名残り」が大好きな僕には特に堪えられなかった。 [映画館(字幕)] 9点(2011-02-24 21:59:17)(良:1票) |
191. 人生万歳!
《ネタバレ》 ここに来て今までのどんな映画よりもアレンらしい王道の映画が出てきた!高IQだがいけ好かない偏屈爺さんと無邪気なピチピチギャル(死語)のラブストーリーを作って嫌味にならないのはアレンくらい。 この映画がアレン映画の中でも特に王道だと感じるのは、自由至上主義的なアレンの信条がここ最近で最も端的に現れているから。ギャルの母は一妻多夫の共同生活を始めるし、父はゲイに目覚める。徹底的に保守的で一神教的な価値観を馬鹿にし、嫌悪している。まさに「Whatever works!」(何でもあり!とはうまい訳だ)なカオス状況でラストを迎えるのだが、そういう世界こそ理想の世界だというアレンの強い思いが伝わってくる。何が正しいかなんて分からない!何をしたって、彼らが楽しければそれでいいじゃないか! ただし、同時におそろしく厭世的なアレンの一面が垣間見えるのもこの映画が彼の作品の中でも特に優れている理由のひとつだろう。根本的には彼は人生を悲劇だと見ているのではないか?例えば、アレンの分身である主人公はパニック障害で暗闇恐怖症という設定だし、自殺未遂の過去もある。彼には現世は苦しみでしかないのだろう。頭が鋭すぎて周りが馬鹿に見えてしまう上に頑固であるがゆえに、色んな人と衝突し、変人と呼ばれ、結局愛想をつかされてしまう。暇つぶしにチェスを教えてもいらいらしてしまう。でも、彼はギャルと偶然出会い、その愛に触れ、見えにくいが少しずつ変わっていく。その様子が僕を感動させるのだ。アレンが持っている「おもしろきこともなき世をおもしろく」の精神が僕の心を癒し、明日への活力を与えてくれるのだ。僕ももう少しがんばってみようと思えるのだ。 ただし、一緒に観た友達の評価は最低で、「あんなクソ爺、早くしねばいいとしか思わなかった。途中で寝た」と傑作なことを言っていた。確かにいけ好かないクソ爺であることはまったく否定しないが、だからこそ彼が少しずつギャルに惹かれていくところが面白いのだし、何はともあれ彼には皮肉の才がある。そんな堅いこというなよ、と彼に言ったが、同時にこれは絶対に分かり合えないなとも感じた。アレンの作品は嫌な奴か天使にしか理解できない。 最後に、ギャル役のエヴァン・レイチェル・ウッドが最高だった!観客を元気にするいい演技だった! [映画館(字幕)] 8点(2011-02-14 22:36:17)(良:2票) |
192. ウォール・ストリート
《ネタバレ》 国内の予告編はイマイチだったけど、海外の予告編は印象的な音楽と絶妙にマッチしていて期待感はいやがうえにも高まるばかり。で、実際に観て、映画が終わった瞬間、「うーん」と何ともつかない声でうなってしまった。そしてエンドロールが終わるまで呆然としてた。 何が拙かったんだろうなあ。意味不明なラストかな。何で急に主役2人が仲直りしたのか全くわけが分からなかった。1億ドルを返してもらっても娘は喜ばないはずでは?むしろ、拝金主義に嫌気がさしてた側ではなかったっけ?あのシーンでお金以外に彼女の気持ちを融かす何かがあったのかなあ。サッパリだった。赤ちゃんの使い方もよく分からない。主人公は取引材料として赤ちゃんのエコー動画をゲッコーの元に持ち込むんだけど、ゲッコーはそれを1回断って結局ラストで受け入れる(受け入れたのか?)。「これだけは受け入れられない」みたいなことを最初言ってなかったか?どういう心境変化があったのかがわからない。もしかしたら和訳が拙いのか?DVDが出たら再鑑賞必須だ。 「わが子を食らうサトゥルヌス」とか絢爛豪華な小道具も特に要らなかった。もっとシンプルな人間ドラマが見たかった。ゲッコーかっこいい!と言っていたかった。カネ対ココロの行き着くところを描いて欲しかった。残念な出来と言わざるを得ない。 いや、でも役者陣の演技は良かった!特にキャリー・マリガン!「わたしを離さないで」に期待が膨らむ。シャイア・ラブーフも、もちろんマイケル・ダグラスも、ワル顔ブローリンも良かった。だから点数は5点です。だからこそ脚本の不出来が気になる。 [映画館(字幕)] 5点(2011-02-11 00:56:56) |
193. ザ・タウン
《ネタバレ》 アカデミー賞作品賞や監督賞のノミネートも取り沙汰された作品ということで期待して鑑賞したが、それほど強烈な個性を持った映画とは感じられず、些か残念だった。色々と考えさせられるテーマを取り扱った前作(「ゴーン・ベイビー・ゴーン」)に比べると、脚本の面白さにおいては少し劣っている印象を受ける。 しかしながら、骨太なクライムサスペンスに仲間との絆やロマンスといった要素を盛り込みながら、全体を2時間にうまくまとめたベン・アフレックの監督としての技量は間違いなく進歩している。FBIの捜査に手ぬるさが目立つのは少し気になるが、アクションシーンの緊迫感は素晴らしかった。また、空撮やロケを多用して、チャールズタウンという街と彼らの紐帯を印象付ける演出もよく活かされていたと思う。 演技面でも主人公が新しい人生に踏み出せないもどかしさや主人公が親友か運命の女性かという究極の選択を突きつけられるあたりの役者陣の演技はさすがだ。所詮銀行強盗であり、同情の余地が無いはずである主人公たちの気持ちに寄り添えるような気がするのは、彼らの演技力に負うところが大きい。レベッカ・ホールのナチュラルな演技にも好感が持てる。 筋立てや構成に斬新さはないものの、全体的なバランス感から7点とする。次作にも期待したい。 [映画館(字幕)] 7点(2011-02-06 14:48:19)(良:3票) |
194. おいしい生活
ウッディ・アレンの映画の中でも特に軽い部類に入る。強烈な皮肉が利いていない分、誰にでも観やすい映画だと思うが、観終わった後も特に印象には残らない。人間の幸福にとっては、お金が全てじゃないよね!?というメッセージがあるにはあるが、その場その場のドタバタコメディの要素のほうが強い。ニヤリとクスリの積み重ねでラストまで引っ張っていくタイプの映画だ。上映時間が短いのが奏功している。 もっとアクの強い笑いが好きな僕には少し物足りなかったが、これでも楽しめてしまうのだからアレンの映画は止められない。 [DVD(字幕)] 6点(2011-02-06 11:14:33) |
195. ソラニン
《ネタバレ》 青春バンドものとしては悪くなかった。登場人物の年代が10代ではなく20代なので、それなりに自分の思いを投影しながら観ることができた。自分の才能への信頼感と不信感、定職に就いていないことの焦燥感、つまらない日々の仕事に対する徒労感などなど、登場人物の気持ちはリアルで親しみやすかった。 しかしながら、これらの感情はすべて既存の映画で描かれた20代の若者の感情の最大公約数でしかないと言うこともできる。特に、レコード会社でのやり取りは本当にくだらない。何の躊躇もなく冴木の提案を断るのはあまりに子供じみている。あとは演技面だが、宮崎あおいの感情を我慢しているときのあのたまらなく愛おしい表情がイマイチ好きになれなかった。泣く前も笑う前も同じ表情というのが、何となく観ていて怖かった。ラストの歌の歌唱力については、特に問題があるとは思わなかった。「ソラニン」という歌自体に特に思い入れを感じなかったせいもあるが…。彼女がブルーハーツの歌を口ずさむ近年のCMには本当に我慢できないが。 [DVD(邦画)] 6点(2011-02-06 10:56:15) |
196. デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~
常識人と非常識人の感覚のずれが巻き起こす騒動をロードムービーとしてコメディタッチでお届け!下ネタ、ゲイネタ、人種ネタ、ありとあらゆるネタ使いで執拗に笑いを取りに来る主役コンビはそのミスマッチぶりも相俟って非常に強力。ガリフィナーキスは本当に芸達者だし、ダウニーJr.のキレた演技が妙にリアルで笑える。脇役のジェイミー・フォックス、ジュリエット・ルイスの出演にもにやけてしまった。 ただし、劇中の一部で、常識人の考え方の酷薄さや冷淡さを浮き彫りにし(置き去りのシーン)、非常識人の情動を美しく描いて(トイレのシーン)いるのは面白かったが、欲を言えば、もっと根底的な「誰もが共有できる常識」を疑わせるような視点も欲しかった。「ハングオーバー!」の徹底的なおちゃらけ振りが中途半端になってしまっただけという印象が残るのは残念だ。腹を抱えて爆笑できたシーンはそれほど多くなかった。 笑わせるなら笑わせる。考えさせるなら考えさせる。そのメリハリが少し曖昧になってしまっている。 [映画館(字幕)] 6点(2011-01-30 15:54:04)(良:1票) |
197. ブリキの太鼓
現時点では生理的に受け付けないタイプの映画。ヨーロッパのエログロって何かマジだから怖い。本物の変態が製作していそう。だからこそある意味で面白い。よって5点。いつかこれを理解できる変態にぼくもなってしまうかもしれないという漠然とした期待感もある。 [DVD(字幕)] 5点(2011-01-30 15:17:58) |
198. ソーシャル・ネットワーク
《ネタバレ》 これは傑作。前評判が高すぎて、肩透かしも覚悟していたが、これなら文句無し。最も勢いのある業界を舞台にした人間ドラマという意味では、現代の「ウォール街」にも似ている。 まずは冒頭のマークと恋人エリカの高速おしゃべりから一気に引き込まれた。天才だから論理的ではあるが、同時にオタクであるが故にあまりにも歯に衣着せない、相手に対する配慮が足りないマークの怒涛のおしゃべりを堪能できる。本物のマークがしゃべっているところを見たことがないので迫真なのかどうなのかは分からないが、ジェシー・アイゼンバーグのリアル(そう)な演技はさすがだ。 登場人物を絞ったのも正解。マークと友人のエドゥアルド、ショーン・パーカー、ヴィンクルヴォス兄弟くらいを押さえておけば、だいたい理解できる。マークはもちろんその他のキャラクターもきちんと立っており、取り違えることは無い。全編を通じて会話量が物凄く、もっと英語が理解できれば!と何度も思ったが、キャラ立ちのおかげである程度字幕に集中できるのはありがたい。 ラストの盛り上がりに欠けるという意見もあるようで、それには納得できる。ただ、確かにクライマックスというわけでは無いが、マークと若い弁護士とのやり取りやその後のマークの行動は「天才の孤独」を象徴していて感動的だった。しかも天才なだけではなくとてつもなくお金があると、さぞかし生きにくいだろう。 最後に、本筋とは関係ないが、ハーバードの学生生活で一番驚いたのは「クラブ」(男性限定の排他的なサークルみたいなもの)の存在感。理不尽な入会試験がある閉鎖的な組織にもかかわらず、マークの友人エドゥアルドをはじめ、皆名門クラブに入りたいようで一生懸命なのが日本と比べて著しく異なっていてびっくりした。フリーメーソンとか結社系には欧米人は弱いのだろうか。日本人よりもよほど集団主義的だと感じた。 [映画館(字幕)] 9点(2011-01-15 23:29:00)(良:2票) |
199. アラビアのロレンス
リバイバル上映で鑑賞。この映画を観るのはもう何度目か分からないが、今までで観た全ての映画の中で最も好きな作品だ。僕がこの映画を好きな理由は、まずは全てにおいてこの映画が秀でていること。脚本もキャラクターの造形も台詞回しも音楽も映像美も何から何まで素晴らしい。特にキャラクターと台詞回しは本当に凄い!ロレンスはもちろん、アリもアウダもファイサル王子もアレンビー将軍もドライデンも!本当に素晴らしい躍動感だ。実在・非実在にかかわらず、本当に血の通った人間が歩き、話し、考えている。 しかしそれだけではない。「ゴッドファーザー」も「ローマの休日」も「ガタカ」もほぼ完璧な映画だと思う。それらに加えて最も大事な点は僕がこの映画で描かれるロレンス彼自身に心底愛着を覚えるからだ。 確かに僕は彼のような英雄ではないし、砂漠どころか海外にも大して行ったことはないし、戦争を戦ったことも無い。しかし、彼の栄光と挫折に至る過程における彼の心理状態にはことごとく共感できる。マッチの炎を指で消してみたり、将軍に無造作な口を利いたり、自分の居場所はここではないと感じていたり、名声に酔ったり、そういう自分を恥じたり、理想主義だったり。 僕にとって彼は、基本的には同じ考え方をもつ人間でありながら、僕がもって生まれた能力の低さや意志の弱さや慎重さ(消極性とも言う)から実現できないことを次から次へと実現していくスーパーマンなのだ。だから彼の欠点も含め、その行動一つ一つが愛おしく、そして同時に圧倒されるのだ。これを観ると僕も彼のように「生きた」人生を送りたい!と心から感じる。面白い映画であるとともに自分の気持ちを引き締めてもくれる映画だ。人生において大事なことを、観るたびに僕に改めて問いかけてくれる唯一無二の映画だ。 [映画館(字幕)] 10点(2011-01-15 22:18:31)(良:2票) |
200. アンストッパブル(2010)
《ネタバレ》 暴走した電車を止める。ただそれだけの話です。オチもクソもありません。大丈夫です。デンゼル・ワシントンですから。きっとSTOPPABLEです…。 最初、仲が悪くてその後仲良くなる凸凹ヒーローコンビという構図が王道なら、本社の運行管理部長は何も分かってなくて現場の操車場長のほうが頼りになるという「現場至上主義」な構図も王道。フーターズを除いては王道なので、そのシーンで一番興奮してた。今度上京したら絶対に行こう。フーターズに。 それにしてもアメリカ人ってちっとも仕事しねえな!発端となった怠け者二人は言うに及ばず、ヒーローもやたら電話してるし、注意されるとふてくされる。あのヒーロー面してた長髪のおじさんも最初は食堂で仕事をサボってただろうが!人事の仕事をしている者としてはこれは見逃せない。お母さん、日本の現場はまだまだ健全ですよ! ただ、上映中ずっと手に汗を握りまくっていたことは秘密だ。悔しいことに。これでは6点をつけざるを得ないではないか。映画館で観るかさもなくば・・・な映画。 [映画館(字幕)] 6点(2011-01-15 00:10:29)(笑:2票) |