2161. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 ヒロインをいじめるのはこの監督の趣味でしょうが、逮捕されて死刑になるまでの描写がちょっと雑な構成だと感じました。ビョークがD・モースを撃つシーンでは、正直言って私はモースの行動がさっぱり理解できなかったです。それに、この映画はミュージカルと呼ぶにはちょっと抵抗がありますね。名曲“My Favorite Things”をあんな使い方するとは、さすがに恐れ入りました。わざわざ、「ミュージカルでは恐ろしいことは起きない」なんてセリフをヒロインに言わせるところなぞ、もう悪意以外のなにものでもありません。ラース・フォン・トリアーという人、きっと幼少期の育てられ方に何か問題があったのではないでしょうか。でも悔しいけど、人間味はないけど知性と才気は認めざるを得ませんね。 [DVD(字幕)] 5点(2010-04-11 02:57:00) |
2162. ライフ・イズ・ミラクル
《ネタバレ》 “ケダモノバカ一代”クストリッツァ、とうとう熊まで登場させてしまいました。そう言えばこの映画、息子さんも出演しているのですよ、これは“オヤバカ”ですかね。この息子、セルビア軍の将校役ですが堂々たる大男で結構渋い演技でした。お話しとしてはボスニア内戦中のセルビア人とモスリム人の男と女が運命に翻弄される悲喜劇で、前半はお約束のクストリッツァ調で快調なのですが、後半内戦が激化してからはちょっと失速気味なのが残念です。そう言えば本作もそうですが、クストリッツァの映画には鉄道が重要なモチーフになっている作品が多いですね。この人意外と鉄道オタクではないでしょうか? [DVD(字幕)] 6点(2010-04-10 00:37:20) |
2163. ウディ・アレンの重罪と軽罪
《ネタバレ》 いつもなら“姉妹”が主人公であることが多いアレン映画ですが、“兄弟”にスポットを当てているのが珍しいですね。M・ランドー兄弟のキャラの色分けが特に印象的です。あの半分極道みたいな弟は、インテリの兄の情けなさが際立つだけに、『ブロードウェイと銃弾』の用心棒チーチの原型みたいな人物だと思いました。内容はアレンにしてはシリアスですが、どことなくユーモアを感じさせる語り口は健在で陰惨な感じにはならないところはさすがです。また彼としては珍しくカット・バックを多用しているのもちょっと新鮮。アレン演じる主人公はラストシーンでは踏んだり蹴ったりの状態で良心の呵責から解放されたM・ランドーと相まみえるわけですが、確かに「何も悪いことしていないのに、なぜ神は手を差し伸べてくれないのだ」という自己憐憫が傲慢の様に感じられます。私としては『神の不在』という問題にようやくアレンなりの決着をつけたシーンではと思います。そう考えると、結構この作品は奥が深いかも。 [DVD(字幕)] 8点(2010-04-09 22:50:25) |
2164. ショック・トリートメント
《ネタバレ》 『ロッキー・ホラー・ショー』のキャスト・スタッフが再集結して作った、『ロッキー・ホラー・ショー』のスピン・アウト・ストーリーといったところでしょうか。R・オブライエン、C・グレイ、P・クイン、N・キャンベルが『ロッキー』と同じキャストです。アメリカの田舎町デントンのローカルTV局が舞台の、『トゥルーマン・ショー』や『エドTV』を先取りした様なロック・ミュージカルで、『ロッキー』のブラッド・メイジャース夫妻の後日談になっています。障害者ネタが多いので日本では公開は無理だったのかなと思いますが、当時としては斬新なプロットも諷刺が利いていない演出のためにあまり面白くない作品になっています。オブライエンとクイン姐さんは『ロッキー』に続いて怪しげな兄妹医師を演じて楽しませてくれるのですが、肝心の楽曲がやはり『ロッキー』に比べると見劣りしてしまいます。見どころはJ・ハーパーのパフォーマンスがたっぷり観られることで、いろいろコスプレしながら歌ってくれます。ファンは必見でしょう。それにしても彼女、眉毛が太いなー。 [ビデオ(字幕)] 4点(2010-04-09 02:13:00) |
2165. ヒンデンブルグ
《ネタバレ》 「ヒンデンブルグ号の爆発は反ヒトラー勢力の破壊工作が原因」というプロットがそもそもこの映画の欠点でしょう。船内での「誰が爆弾を仕掛けるのか」という「オリエント急行殺人事件」の様なサスペンスも、名匠ロバート・ワイズが監督とは思えない緊迫感のなさで、終いには探偵役のジョージ・C・スコットが共犯みたいになっちゃうのがちょっと変です。ハリウッド映画ですから反ヒトラー勢力を「悪・テロリスト」として描けないのは当然で、そうなると結末が判っているだけにカタルシスどころではなくなります。また、その反対勢力がユダヤ人の組織でなければ観客にはリアルに感じられず、なぜヒンデンブルグ号が爆破されなければならないのかがイマイチ伝わってきませんでした。ということですがオスカー受賞した特撮は見事で、ロバート・サーティースのカメラと相まって今の眼で見ても遜色がありません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-04-07 01:05:59)(良:1票) |
2166. プロフェッショナル(1966)
《ネタバレ》 この作品は、西部劇というよりはメキシコ内戦が時代背景になっており、『荒野の七人』と『ワイルドバンチ』の中間に位置する様な作風です。『ワイルドバンチ』にはかなり影響を与えたと思われ、列車を使った戦闘シーンなど雰囲気が良く似ています。ロバート・ライアンが出演している点も同じですし。ですが、アクションの盛り上げ方は平板ですし、とうてい『ワイルドバンチ』には及ばない出来です。敵役に当たるジャック・パランスやラルフ・ベラミーが思ったほどワルではなく、ラストの対決のあと良く観ると誰も主要人物が死んでいないという珍しいパターンなのが面白いと言えます。 ま、とにかく、脂の乗り切ったリー・マーヴィンとバート・ランカスターの「男の色気」が堪能できるのがお得です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-04-07 00:33:25) |
2167. A TIME OF WAR タイム・オブ・ウォー 戦場の十字架
《ネタバレ》 原題は“Passchendaele(パッシェンデール)”。第一次世界大戦の激戦地で、日本人にとっての日露戦争の203高地と同様に、カナダの人には忘れられない戦場だそうです。監督・製作・主演はP・グロスというカナダの俳優ですが、監督としてもなかなかの手腕で結構観られる佳作に仕上がっています。邦題になっている『戦場の十字架』とは、捕虜になったカナダ兵が十字架に貼り付けになって戦場にさらされていたのを見た、という当時カナダ兵の間で広まった噂が元になっていますが、映画の中でも伏線になっていてラストで「あっ」と驚かされます。戦場よりもカナダの田舎で展開するドラマの方が圧倒的に長いのですが、雄大なカナダの自然が堪能できます。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-03 12:19:32) |
2168. ブロードウェイと銃弾
いわゆるバック・ステージものとしては、まれに見るほどの面白さ! また星の数ほどあるコメディ映画の中でも飛び抜けた完成度の高い脚本です。そして脇を固める三人(ウィースト、バルミンテリ、ティリー)の個性あふれる演技が楽しい。普段は癒し系の役柄が多いD・ウィーストですが、派手な大女優を見事に演じていてオスカー受賞も納得です。アレン・コメディの最高峰と言えるでしょう。 [DVD(字幕)] 8点(2010-04-02 00:47:07) |
2169. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 “主人公がクイズに回答出来たのには誰もが驚く奇想天外な秘密があった!”という映画だと思っていたので、意外とまっとうな語り口でちょっと拍子抜けしてしまいました。ラストのダンスを見て、やっぱりこれはインド映画なんだな、と納得しました。非常に洗練されたポリウッド・エンターテイメントと言えるでしょうが、でもなんでこれをD・ボイルが監督しているのかなという“?”は拭えません。最近のボイルさんは、SFもの作ったり、ゾンビもの撮ったり、どういう方向に行きたいのか良く判りません。『シャロウ・グレイブ』や『トレスポ』の頃のD・ボイルは良かったな、と思うのは私だけでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2010-03-31 00:28:07) |
2170. DISCO ディスコ
《ネタバレ》 80年代にフランスの港町ル・アーブルでディスコ・コンテストを荒らしまくった“ビー・キングス”も、メンバー3人とも今や40代。リーダーのディディエはイギリス人の奥さんに逃げられ母親と同居する無職男、他の二人もクレーンの運転手と家電量販店の店員として平凡な生活を送っていた。かつてのヒノキ舞台だったクラブ“ジン・フィズ”がディスコとして再オープンして、コンテストが開かれることになった。優勝賞はオーストラリア旅行、奥さんにとられた息子にカンガルーを見せてやりたいとディディエは“ビー・キングス”を再結成し、体型も毛髪も変わり果ててしまった中年3人組が再びミラー・ボールの煌めくステージに帰って来た! と、まあ『フル・モンティ』を彷彿させるプロットなのですが、『フル・モンティ』ほどの社会性もなくひたすらおバカに徹するドラマがいさぎよくて気に入りました。“ビー・キングス”と言う名前からして“ビー・ジーズ”のパロディですし、ディディエという男がまた傑作で、普段はジャージ姿でショッピング・カートを引っ張って歩くのがトレードマーク。でも“ジン・フィズ”のオーナー役のジェラール・ドパリュデューの怪演にはみんな負けます。アフロのカツラをかぶり、「みんな、乗ってるかー」とステージでわめく姿には抱腹絶倒です。そして私の世代には感涙ものの80年代ディスコ・ナンバーの名曲の数々。決勝戦では『セプテンバー』を使ったのはまさに期待通りでした。トラボルタ風の振り付けのことを、“愛の風車”と言うのには爆笑です。シャレてるなと感じたのは、ディディエと振り付けの先生エマニュエル・べアールがお約束通りいい仲になるのですが、結ばれるのかなと思いきやラストは何もなくべアールはNYに帰ってゆくところです。ハリウッド製のラブコメとは一味違うフレンチのエスプリが心地よかったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-03-30 00:42:38)(良:1票) |
2171. バックマン家の人々
《ネタバレ》 良いお話しと言えばその通りですが、いかにもアメリカ的なホーム・ドラマでした。群像ドラマでもありますが、中でも私が気になったのは、ジェイソン・ロバーズとトム・ハルスの関係でした。悩んだ挙句に、せっかくロバーズ親父がハルスの借金を肩代わりしてやったのに、ハルスは親父の会社で働くという条件を反故にして逃げちゃうわけです。それでもロバーズは良い歳の息子に小遣いまであげちゃう、この展開にはちょっとびっくり。このシーンはどう観ても肯定的に描いているので、自分の価値観とはあまりに違いびっくりしました。そして、この映画に流れる「すべては主の思し召しなのだ」という価値観にも、“いかにも”というアメリカ的なものを感じました。ダイアン・ウィーストをはじめ、演技陣はみないい仕事しているのは確かですがね…。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-03-29 00:17:20) |
2172. マッチポイント
《ネタバレ》 この脚本は、ウディ・アレンのフィルモグラフィ中でも屈指の出来の良さです。前半は今まで観たことのある良くあるお話しで、いつ事件が起こるのかなと多少いらつくぐらいでした。その分、妖艶なS・ヨハンソンを堪能できるのですが、結構気性が荒い役柄なのでだんだん鬱陶しくなってくるのです。そして事件が起きてからの急展開した物語があのような結末になるとは、思わずうなってしまいました。警察がちょっとアホすぎるかなとも感じましたたが、なるほど妊娠がウソだったという解釈もあるのですね(もっとも、映画上ではそういう伏線は全くなかったですが)。そもそも、出てきた刑事がユエン・ブレムナーだったので、こりゃだめだと思いましたが(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2010-03-28 22:44:38) |
2173. コンドル(1975)
《ネタバレ》 派手なドンパチと判りやすいストーリーが全盛だった70年代では、このミステリー仕立ての展開はけっこう斬新だったと記憶してます。今観直してみても、プロに徹して依頼されない殺しはしないマックス・フォン・シドーはキャラが立っていますね。突き放した様なラストも、いかにも70年代のニュー・シネマ全盛時代らしくて味があります。この事件の後もR・レッドフォード演じる“コンドル”はCIAに勤務して、25年後に退職するときの騒動を描いたのが『スパイ・ゲーム』です(もちろん、ウソです)。 [映画館(字幕)] 7点(2010-03-27 01:24:28) |
2174. ロッキー・ホラー・ショー
昔、名画座で『ファントム・オブ・パラダイス』と二本立てで良く上映してましたね。今から考えると、豪華なプログラムですこと! この歳になっても、♪スィ~トトランシルベニヤア~を聞くとアドレナリンが噴き出しますよ。低予算とは思えないカラフルな画面構成の素晴らしさは現代でも全く色あせていません。武道館で上映して、みんなで米まいたり、“タイムワープ”を踊ったりしたら楽しいだろうな~。ミュージカル映画の中で一番好きかも。 [DVD(字幕)] 9点(2010-03-26 23:50:50) |
2175. Tommy/トミー
《ネタバレ》 70年代テイスト炸裂です。エルトン・ジョンの名曲“Pimball Wizard”を聞くと、この曲が大ヒットしていた当時のことが懐かしく思い出されます。当時のピート・タウンゼントは、今で言うとカーリー・ヘアーのヒュー・グラントみたいです(笑顔なぞそっくりです)。若きジャック・ニコルソンの珍しい歌声も堪能出来ます。映画の前半はケン・ラッセル風味が濃厚で飛ばしてくれますが、トミーが回復して教祖さまになってからがどうもいけません。この頃のケン・ラッセルの特徴ですが、途中でプロットが狂いだしてラストがハチャメチャになってしまいました。思うに、後半ピート・タウンゼントに演技させ過ぎたのが原因では。 [ビデオ(字幕)] 6点(2010-03-25 22:42:06) |
2176. シャドウ・オブ・ヴァンパイア
《ネタバレ》 発想は良いんですけどね、この作品。その発想をスタッフが消化しきれていないのですよ、これが。ウィレム・デフォーはメイクも演技も文句なしで素晴らしいのですが、途中まで観ていて、この映画は実はホラー・コメディなのかと思うほどノスフェラトゥが滑稽に見えてしまう。いっそのことコメディに徹した方が良かったと思うのですが、ラストはなんか途中で放り出した様な終わり方で、がっくり。突っ込みどころも多いのですが、そもそもサイレント映画の時代に、あの程度の照明設備で夜間撮影が出来るはずがないでしょう。現実の『吸血鬼ノスフェラトゥ』は、私は未見ですが、異様に白っぽい映像だそうで、当時の技術では闇を撮影するのは無理だったみたいです。そういうことを踏まえたうえで脚本を書かないと、いくらフィクションでも説得力がないでしょう。私のセオリーは、「オスカーの演技賞に出演俳優がひとりだけノミネートされている映画に当たりなし」ですが、この作品でも適中しました。 [ビデオ(字幕)] 4点(2010-03-24 01:45:41) |
2177. パパは、出張中!
《ネタバレ》 本作はクストリッツア初期の作品で、その後のクストリッツア印がほとんど見られませんが、『ドナウ河のさざ波』のフレーズをしつこく使うところなど「らしさ」はあります。全体主義国家の中で繰り広げられるある一家のホーム・ドラマというところですが、密告・相互監視社会の恐ろしさは伝わってきます。そんなユーゴでも庶民の猥雑なヴァルカン気質はたくましく、主人公のメーシャも流刑されながらもしぶとく生きてゆく姿が楽しいです。ミーシャが自分を投獄した義兄から許しを請われて、「忘れよう、許すのは神だから」と答えますが、後年『アンダー・グラウンド』では「許そう、でも忘れない」という最も印象的な台詞になります。この「許す」「忘れる」という言葉には、クストリッツアのユーゴ・スラヴィアという国家への思いの変遷が込められているのではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 8点(2010-03-21 21:54:30) |
2178. 未来世紀ブラジル
ジョージ・オーウェルの『1984』をモチーフにしていますが、この映画の世界観はギリアム独特でいいですね。基本的に自分はディストピアSFが好みですが、数あるディストピアものでも本作は最高峰ではないでしょうか。まあこういう作品では、監督の提示するイメージが合うかどうかで好みが別れるものですが。登場人物たちのスーツや帽子姿を見ていると、この世界が赤狩り時代のアメリカをパロっている気がしますね。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-03-21 01:16:51) |
2179. パール・ハーバー
脚本からしてデタラメ、史実がどうのこうのというレベルじゃない。出てくる男は頭カラッポばかりだし女は尻軽だらけ、これじゃいくらなんでもアメリカ兵に対しても失礼でしょう。文句なしに史上最低の戦争映画。それにしても、日本でも公開されてカネをかっぱいでいかれたと思うと、ほんと日本人として情けない限りです。 [DVD(字幕)] 0点(2010-03-21 00:44:18)(良:1票) |
2180. U-571
《ネタバレ》 史実ではUボートを捕獲してエニグマ解読に成功したのは英国海軍なのですが、それは別にしてもこういう特殊作戦ものはどうも米軍がやるのは自分にはイメージが合わない。またマシュー・マコノヒーは明らかにミス・キャストで感情移入出来ないし、歴史を変えることになる重大作戦の遂行とひ弱な将校の成長物語を並行させるという脚本も無理があります。そもそもそれだけのプロットを消化するには上映時間が短すぎで、Uボートを乗っ取ったと思ったらすぐに最後の駆逐艦との対決シークエンスになりあっけなく映画が終わっちゃったと感じました。普通なら、この間にもうひと山緊迫したエピソードが入るのがドラマとしては王道ではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-03-20 01:34:40) |