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ザ・チャンバラさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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201.  イナフ 《ネタバレ》 
午後のロードショーでやってたのを録画して鑑賞しました。往年の名作からD級アクションまでを幅広く扱う午後ローでは必然的に視聴者の懐も広くなるものですが、そんなオープンな気持ちで鑑賞してもこの映画はよく理解できませんでした。DVに苦しむジェニロペが子供を連れて旦那から逃げるという話なのですが、その行動がいちいち頭悪すぎ。警察に届ければ根本的な解決に至らなくとも一応の歯止めにはなるし、届け出の事実によって後の親権裁判も圧倒的有利に進むはず。なのに彼女は「子供を連れて姿を消す」という最悪の方法をとってしまいます。逃げるなら逃げるで旦那が仕事に出ている昼間に姿を消せばいいものを、深夜にこっそり夜逃げしようとして案の定旦那に気付かれてしまうという大馬鹿ぶりを披露。以降は旦那による常軌を逸した追跡が開始されるのですが、これについても「警察に駆け込めば解決するだろ」の連続で呆れてしまいます。バカとバカの追いかけっこの末いよいよ追い詰められたジェニロペはようやく弁護士の元に駆け込むのですが、すると「あんたの行動がメチャクチャすぎたんで、今さら裁判やっても勝てませんよ」と至極当然のことを言われます。ひどく落ち込むジェニロペ。しかし、DV男にかわいい娘を渡すわけにはいかない。そこで思いついたのが「格闘技を習得し、旦那とサシの勝負でケリをつける!」。もう理解不能でした。つっこみすら入れられない驚愕の展開。訓練に励むジェニロペの表情が真剣そのものなのが、さらにトホホ感を高めます。旦那の殺害に無事成功し、駆けつけた警察もうまく誤魔化し、笑顔を失っていた娘も元の良い子に戻り、次の旦那候補は良い人そうだし、すべてめでたしめでたしで映画は終わるのですが、格闘技の特訓をしていたことが分かれば故殺は成立しますよ。。。この映画、DVという重いテーマを扱っているのにその理解があまりに不足しています。DVは「逃げれば済む」という単純な話ではなく、被害者である女性と加害者である男性が精神的に依存し合っているために、逃げればいいのに逃げないという点が問題だったりします。「やられたらやり返せ!」と斬り返せる女性は一般的なDV被害者の人物像からはかけ離れています。そもそもジェニロペはたくましすぎて「耐え忍ぶ妻」には全然見えないし。テーマがテーマなので、もっとマジメに作るべきでした。
[地上波(吹替)] 3点(2011-01-19 22:21:48)(良:1票)
202.  レクイエム・フォー・ドリーム 《ネタバレ》 
あらすじ欄にパブロン中毒さんが書かれた「これさえ見れば、あなたはヤクに溺れることは決してない!」とのコメントはダテではない、超絶鬱ムービーです。お彼岸名物「火垂るの墓」の如く毎年地上波放送すれば、日本国内において麻薬をやる人間は激減することでしょう。。。物語の顛末は衝撃的であり、それを見せるビジュアルの作り込みはハンパではない。怖くて気持ち悪いんだけど、とにかく見せる見せる。脚本・演出には観客の目を背けさせない圧倒的な牽引力があります。そして、この映画はキャラクター造型が非常に巧い。多くの観客が登場人物のいずれかとの共通点を見出せるように作られており、対岸の火事では終わらせないことが後味の悪さをさらに助長しています。地獄に墜ちるキャラクターのうち若者達は自業自得と言えばそれまでなのですが、それでも彼らは根っからの悪人ではなく、人並みに親を思う気持ちもあれば、将来の幸せを願う気持ちもある。ただ彼らは心が弱く、「ドラッグ中心の生活を続けているとどうなるのか?」という想像力に欠けているだけなのです。そんな彼らが行き着いたのは完全な破滅なのですが、マリオンが麻薬を抱えて眠りに就き、その脇には夢だった服飾のデザイン画が散らばっているというラストカットはドラッグというものの本性をよく表しています。しかし、そんな彼らもハリーの母親サラに比べればまだマシ。「麻薬でひとヤマ当てる」という完全に腐り切った発想ではあるが、それでも将来のための行動を起こしているのですから。一方サラは将来に向けての一切の行動を諦め、「大事なひとり息子がヤク中である」「自分自身もヤク中である」という事実からすら目を背けます。ひとり暮らしの老人である彼女の毎日はただひたすらに退屈で、高齢であるため将来に対する漠然とした夢も希望も抱けない。「何の生き甲斐もないのなら、せめて幻想に溺れたっていいじゃないか」と自分を許容してしまうのです。久しぶりに実家に戻った息子は母親の変化に気付くのですが、母親を幸せにする力を持たない自分では「せめて幻想は見させてよ」と訴える母親を止めることができず、帰り道で涙します。母親が破滅する様を見てしまったことのショック、そしてそれを止めることができない不甲斐なさ、このカットには胸が苦しくなりました。
[DVD(吹替)] 8点(2011-01-19 21:08:58)(良:2票)
203.  バッドボーイズ2バッド 《ネタバレ》 
内容らしい内容はなく、アクションをコラージュしただけの作品。ヴァンダムやセガールを嗜む私にとっては嫌いなタイプのジャンルではないのですが、そんな私でもこの内容で2時間半はかなり厳しく感じました。まず、展開があまりにメチャクチャ。本作の最大の見せ場である前半のカーチェイスは本筋とほとんど関係ないし、クライマックスの人質奪還も唐突すぎます。「俺の知り合いのCIAが協力してくれるぜ」「キューバで反政府ゲリラやってる弟に連絡とってやるよ」「元特殊部隊員を集めてやるぜ」って、マイアミ市警の刑事ったら人脈すごすぎ(笑)。ヴァンダムやセガールの映画でも、もっとちゃんとしてますよ。しっちゃかめっちゃかな映画なので緻密な物語である必要はないのですが、さすがに「ありえねーよ」とつっこむしかない物語で2時間半も引っ張るのは厳しすぎます。そして、「トランスフォーマー」シリーズにも引き継がれているまったく笑えないコメディパートはもはや拷問レベル。30分にも渡ってグダグダのやりとりを見せられる中盤は酷いにも程があります。コメディ経験の少ないメル・ギブソンとダニー・グローバーの掛け合いであってもほのぼのとした空気を作ることが出来ていた「リーサル・ウェポン」と比較すると、プロのコメディアンであるマーティン・ローレンスとコメディ経験も豊富なウィル・スミスを使いながらクスリとも笑えない本作はちょっと出来が悪すぎます。死体がゴロゴロ転がるカーチェイスや蜂の巣にされるピーター・ストーメアなど、笑わせようとしているのに悪趣味すぎてまったく笑えない場面も多くあり、マイケル・ベイはコメディをやるのをやめた方がいいと思います。アクションパートが良いだけに、コメディパートの出来の悪さが余計に目立っています。
[DVD(吹替)] 2点(2011-01-17 00:24:05)
204.  ホワット・ライズ・ビニース 《ネタバレ》 
1999年、ロバート・ゼメキス監督は「キャスト・アウェイ」という企画を抱えていました。同作は主人公が無人島に漂流する前のパートをまず撮影し、半年かけてトム・ハンクスをダイエットさせてから残りを撮影するというスケジュールとなっていましたが、ダイエット待ちの間ヒマになったスタッフを率いて撮影したのがこの「ホワット・ライズ・ビニース」なのでした。ゼメキスにとって本命は「キャスト・アウェイ」だったのでこちらはかなり適当な仕上がりで、誉めるべきところがほとんどありません。「ヒッチコックがCGを使える時代に生まれていたら?」というコンセプトで製作されたらしいのですが、伏線も何もかなぐり捨て、最終的に殺人鬼が追っかけて来るだけの映画なんてヒッチコックは撮らないでしょう。前半40分もかけたお隣さんのエピソードが本筋とまったく関係ないとか、しっぽを掴まれた途端に人格が豹変するハリソンさんとか、聞いてもないのに長々とネタバラシを始めるハリソンさんとか、人間とは思えない生命力で妻を追いかけるハリソンさんとか、「監督はちゃんと考えて作ったのだろうか?」と首を傾げたくなる要素が盛りだくさんです。その他にも、異常な形相で喚き散らすミランダ・オットーや、尋常ではない物忘れをしていたことが判明するミシェル・ファイファーなど丁寧な説明を要するはずの部分に限って何事もなかったようにスルーされたり、辻褄が合わなくなってくると幽霊を出して話の方向転換をしたり、安直な姿勢がかなり目に付きます。ヒッチコックならこんな杜撰な映画は撮らないでしょう。不思議なのは、この程度の映画にハリソン・フォードとミシェル・ファイファーが出演を承諾したこと、上映時間の9割が家という地味な物語でありながら製作費が1億ドルもかかっているということです。
[DVD(吹替)] 3点(2011-01-13 19:33:53)(良:3票)
205.  ザ・スナイパー(2006)
午後のロードショーで放送していたのを録画して見たのですが、期待値の低い午後ローで見ても退屈するほどの完成度の低さ。モーガン・フリーマンにジョン・キューザック、おまけに撮影監督にはダンテ・スピノッティまで動員する豪華ぶりに「バイオレンスの隠れた佳作かも」と期待した私がバカでした(「ドライビングMissデイジー」の監督の作品なので、モーガン・フリーマンは企画の良さよりも人間関係で本作に出演した様子ですが)。反抗期の息子に良いところを見せたいおやじの奮闘、その親子を好きになってしまう悪党の親分、その親分を取り戻しにやってくる怖い子分達という要素はまんま「3時10分、決断のとき」なのですが、作品の出来は「3時10分~」とは比べようもありません。すべての要素の煮詰め方が甘いのです。事件が発生する前の時点で親子はすでに仲直りしちゃってるので家族の再生のドラマになっていないし、悪党の親分は最初から最後まで素直に言うことを聞いてくれるので親子の姿に感動して態度を変えたというドラマも発生していません。子分達は異常なまでに弱く、ヘリコプターに乗りスコープ付きのサブマシンガンで武装しているにも関わらず、ちっちゃい拳銃一丁持ってるだけのド素人に簡単に反撃されてしまうという体たらく。主人公一行が途中で合流するカップルやFBIに振り回される田舎保安官など明らかに必要のないキャラクターも何人か紛れ込んでいて、とにかく脚本が緩すぎます。おまけにアクションも緊張感がなく、誉めるべき点がほとんど見つかりません。さらに追い打ちをかけるのが作品内容とはほぼ無関係の邦題。この映画はどうなってるんでしょうか。
[地上波(吹替)] 2点(2011-01-12 00:08:35)
206.  HERO(2002)
カンフーをここまで美しく撮った作品は前例がなく、芸術的には満点に近い作品だと思います。カンフーといえばB級娯楽のイメージが強い中、重厚な時代劇でこれを見せた監督の腕前は驚異としか言いようがありません。また、ジェット・リーを演技派に見せてしまう演出力も大いに評価するところであり、良い監督の良い仕事を見られる作品として一度は見る価値のある作品だと思います。。。ただしこの映画、構成に大きな失敗がふたつ見られました。第一の失敗は、ジェット・リーvsドニー・イェンという作品中最高の見せ場を序盤に持って来てしまったこと。達人級の二人の対決を超える見せ場など作れるはずもなく、序盤をピークとして尻すぼみにテンションが落ちていきます。もうちょっとうまく配分して欲しいところでした。第二の失敗は、同じ場面の回想を三度も繰り返したのはしつこすぎたこと。トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーはみな素晴らしい俳優なのですが、同じ場面を何度も何度も見せられるとさすがに飽きてしまいます。オチを知ってから振り返っても回想を重ねることの意義を感じることができず、あんなに手の込んだ回想場面を作る必要はなかったように思います。
[映画館(字幕)] 7点(2010-11-27 22:40:53)
207.  英雄の条件 《ネタバレ》 
公開当時「史上最悪の人種差別映画」と言われただけのことはあって、この映画のアラブ人差別は凄まじいものがあります。100人近くのアラブ人を殺した海兵隊長が無罪になるという物語なのですが、「アラブ人は殺されて当然の野蛮人です」という描写のオンパレード。なぜ彼らが反米なのかという複雑な中東情勢を微塵も匂わせることなく、大使館に押し寄せるアラブ人が当然の如く悪人扱いされており、小学校にもあがっていないような女の子が銃をガンガン撃ちまくるという常軌を逸した描写までがあります。どこの馬の骨かもわからないインディーズスタジオならともかく、パラマウントという大企業が突如こういう映画を作ってしまうという辺り、アメリカ人というのは油断ならん連中だなとあらためて気付かされます。。。と大きな問題を抱えた内容ではあるのですが、映画としてはなかなか面白く仕上がっています。腐ってもオスカー監督、こういう硬派な題材を扱わせるとフリードキンは良い仕事をします。前半の戦闘シーンの圧倒的なテンション、後半の法廷シーンにおける言葉の応酬戦など、見るべきものは少なからずあります。事件を都合よくコントロールするため政治家が証拠を葬ってしまうという展開も、現在の日本では非常にタイムリーで興味深く見ることが出来ました。欲を言えば、命の恩人を刑務所に入れようとすることに良心の呵責を覚える大使とその奥さんをキーパーソンに据えれば法廷ものとしてさらに面白くなったと思うのですが(せっかくベン・キングスレイに演じさせたのに、彼を有効活用しなかったのは勿体ない限り)、それでも本作は十分に良い出来だと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2010-11-27 22:17:12)
208.  アドレナリン(2006)
エロくてグロいんだけど、笑える程度の適度なサジ加減。バカバカしい話なんだけど、しんみりとしたドラマパートも味がある。すごくバランスの良い作品だと思います。特に素晴らしかったのが冒頭で、死を宣告され絶望の淵に立たされたと思いきや、「なんだと~~!!」とブチ切れて残された時間で仕返しに走る主人公。ここで一気に物語が疾走を開始し、以降はバカバカしくも勢いのあるアクションがノンストップで繰り広げられます。見せ場における画面作りはカッコ良いし、アドレナリン切れで命の灯が消えかける主人公の描写もうまいものです。この監督さんのことはよく知りませんが、なかなかセンスのある人だと思います。また、ジェイソン・ステイサムも作品の本質をよく理解した怪演を披露。普通の俳優であればかっこつけようとしたり、感動的な演技を披露したりしようとするもんです。しかしこの人は最後までバカ。このプロ根性には頭が下がります。
[DVD(吹替)] 7点(2010-10-28 21:14:31)(良:1票)
209.  LIMIT OF LOVE 海猿
前作には比較的好意的な評価をしたのですが、続編の本作はダメでした。緊張感の欲しい時にダラダラしてしまう演出、感動させようとして上滑りするセリフ、ねちっこい演技、青春映画だった前作においてはこれらの欠点にも目をつむることができたのですが、一転してアクション大作を目指した本作においては、これらの欠点が映画の足を引っ張りまくっています。沈没までのタイムリミットを設定したにも関わらず登場人物が誰も焦っていない、ちょっと進むと休憩して人情話をはじめてしまう、挙句の果てには長い長いプロポーズ、本当にいい加減にして欲しかったです。背後には置き去りにしてきた仲間がいるのに、そんな一刻を争うタイミングで恋人にプロポーズだなんてどういう神経してるんでしょうか。そんなトンチンカンなプロポーズを聞いて感動している司令部の人間達も異常で、前作に登場した鬼教官が聞いたらブチ切れてるところでしょう。その他にも、本作は明確に指摘できる欠点が盛りだくさん。まず、冒頭の航空機事故で主人公の仙崎はトラウマを負うのですが、その苦悩がまったく表現できていません。トラウマがきっかけで仙崎は結婚を延期しようと言い出すのですが、ビヤガーデンで大騒ぎする様子からは苦悩を抱えた人間にはとても見えず、そんな描写の後で「僕は悩んでるんです」と言われても納得できません。その後にもトラウマに絡めた話がいくつか出てくるのですが、セリフで「あいつは悩んでる」と言われるだけで当の仙崎がトラウマに苦しむ表情をしていないため、まったくドラマチックではありません。次に、大塚寧々が妊婦である設定がまったく活かされていません。身重の彼女がレスキューを難航させる原因となるのがこの手の映画における定石だと思うのですが、設定だけ準備しておいしい要素を素通りしてしまった脚本には首をかしげます。バカ丸出しのテレビリポーターや、難しい顔をしてるだけの石黒賢など、余分な登場人物が多いのも本作の特徴。絞れば90分程度で終わる話を120分弱に引き延ばすために、必要のない描写、必要のないキャラクターが付加されたようにしか思えません。そして本作が犯罪的なのは、前作では魅力的だった加藤あいをウザい女にしてしまったこと。どんな場所にもフラっと現れては、「私が私が」と騒いで場の中心に立ってしまう様は呆れるばかりでした。
[地上波(邦画)] 3点(2010-10-01 21:11:26)
210.  キス・オブ・ザ・ドラゴン
アクションはなかなか見ごたえがあります。ジェット・リーの個性を殺してしまっていたジョエル・シルバー作品と比較すると、ベッソンの方がマーシャルアーツの扱いは上。小柄なリーがデカイ白人をぶちのめす大興奮のアクションなど、カンフー映画に求められているものをよく分かっているなぁと感心しました。しかし、お話があまりにボロボロで映画としての体をなしていません。殺人を隠蔽することが事の発端だったのに、高級ホテルでマシンガンを乱射するわ、観光船で大捕りものをやるわとやりたい放題。仮に殺人の隠蔽には成功しても、別の件で大問題になるだろと呆れてしまいます。あくまでカンフーを見せるための映画なので緻密な設定である必要はないものの、見ている者に疑問を抱かせない程度の作りにはしておくべきです。また、チェッキー・カリョ扮するリチャードと、ブリジット・フォンダ扮するジェシカの関係も理解不能。自分の彼女を娼婦にするなんて金目的のヒモがやることなのですが、大臣に接触するほどのエリート刑事であるリチャードが、娘を人質にとり、ジェシカをヤク漬けにしてまで彼女に客をとらせている理由がよくわかりません。思いついた設定を適当に繋げただけなのか、何もかもがメチャクチャなのです。さらに、脚本がメチャクチャな一方で役者がしっかりしているせいで、ジェシカが暴力をふるわれたり暴言を吐かれたりする場面が妙に生々しく、見ていてかなり不快になりました。。。「フィフス・エレメント」の資金を調達するために即興で作った「レオン」が思いのほか好評だったためか、ベッソンはアクション映画について誤った認識を持ったようです。アクションを見ている人間はストーリーなど気にしていないから、強引な設定でも特に問題なし。そこにメロドラマをトッピングすれば観客は大喜び。実際、本作以降もベッソンはお手軽な人情アクションを続々とプロデュースしていきます。ベッソン、目を覚ましてくれ。
[DVD(字幕)] 3点(2010-09-23 23:45:44)(良:1票)
211.  サラマンダー 《ネタバレ》 
マッドマックス2みたいな世界で凶悪ドラゴンと軍隊が戦うという男子の大好物が詰まった奇跡的なコンセプト、「reign of fire(炎の統治)」という尋常じゃなくかっこいい原題、主演はクリスチャン・ベール、製作開始がアナウンスされてから、これほど見たいと思った映画は他にありません。しかも、全米公開から日本公開までに相当な期間があり、その間に期待はさらに膨らみました。そうしていよいよ劇場に足を運んだところ、これが驚異的につまらなくてずっこけそうになりました。大好きなジャンルなので好意的な目で鑑賞していたのですが、それでもこのつまらなさには勝てませんでした。。。本作の最大の敗因は、力の序列がデタラメだったことにあります。マシュー・マコノヒー率いるケンタッキー義勇軍は出会うドラゴンを片っ端から退治しながらイギリスに上陸してきたという設定なのですが、その割に一頭の雄ドラゴンによって呆気なく壊滅させられるし、その雄ドラゴンはほとんど素手の3人組によって意外と簡単に倒されるし、そもそもドラゴン達は地球を滅亡寸前にまで追い込むほど強力には見えないしと、設定と描写がまったく噛み合っていません。これについては脚本上の不備というよりも、監督にセンスがなかったことが原因だったと思います。雄ドラゴンの描写を例に挙げると、雄ドラゴンは通常のドラゴンの数倍もの巨体という設定であり、その巨大さ・強力さを示す描写は初登場時に示すのが常套手段です。「なんだ、あのバカでかいのは!」という煽りのセリフと共に登場し、圧倒的な火力でケンタッキー義勇軍を壊滅させるという演出がなされるべきなのですが、本作では初登場時に「こいつは特別強い」ということを示す演出が入らないために、ラスボスとしての存在感をアピールしきれていません。そのため、壊滅するケンタッキー義勇軍が弱く見えるという事態に陥っているのですが、本来は「あれほど強いケンタッキー義勇軍がなす術もなく全滅するとは」という描写でなければならなかったのです。。。VFXはよく頑張っているし、エイドリアン・ビドルによるカメラワークは相変わらず素晴らしく、破滅を象徴するようなドラゴンのデザインも秀逸、役者も悪くないので、監督の無能を原因とするこの出来は本当にもったいないと思います。
[映画館(字幕)] 4点(2010-09-22 23:44:05)
212.  海猿 ウミザル
テレビ局製作の映画は商売のうまさばかりが目立って肝心の質が伴っていないものが多く、例に漏れず本作も多くの欠点を抱えています。ラブコメの基本みたいな演出は見ていて恥ずかしくなるし、生きるか死ぬかの場面でも空気が妙にモッサリしていて緊張感に欠けます。テレビドラマみたいな安い音楽は時に場面を殺してしまっているし、ラストの安直なハッピーエンドも疑問です(口裏合わせをして事故を揉み消すことがハッピーエンドだなんて)。そもそも本作のプロットは「トップガン」と「愛を青春の旅立ち」からの借り物で、シナリオは著しくオリジナリティに欠如しています。もうちょっと工夫して、この映画ならではのものをいくつか入れるべきでした。なのですが、現場スタッフやキャスト達が精魂込めて作ったということも同時に伝わってくるため、私は本作については好感を持っています。お手軽品質の他のテレビ局制作映画とは、ちょっと毛色が違うかなと。水中撮影なんて役者にとってもスタッフにとっても相当過酷だっただろうし、海上保安庁の全面協力にしても、粘り強い交渉がなければ実現しなかったはず。よく頑張って作られているのだから、アラを探すよりも良いところを見つけてあげたくなります。。。この映画、邦画にしては役者が良いんですね。鬼教官役の藤竜也は抜群の存在感で、オスカーを受賞した「愛と青春の旅立ち」のルイス・ゴセットJrにも引けをとっていません。伊藤英明はきちんと体を作ってきていて、水中撮影における身のこなしには説得力があります。邦画において「体を張った演技」というものはあまり見かけないだけに、彼のようにアクションに向いた性格の俳優は貴重だと思います。そして素晴らしいのが加藤あいです。彼女の役柄はステレオタイプなヒロインで、並みの女優さんがやっていれば言動がハナにつくウザい女になっていたことでしょう。しかし、彼女は美人の割に性格の悪さを感じさせないという希有な個性によってこのキャラクターを観客から好まれる人物に変身させていて、彼女の起用によって本作は救われたと思います。ひとつ欲を言えば、彼女にはちゃんと広島弁をしゃべって欲しかった。広島の訓練所にひと夏しかいない海猿と地元の女の子の恋愛が本作の横軸であり、この夏が終わると彼氏は遠くへ行ってしまうという切ない恋を描くためには、彼女の役柄は方言を喋るべきでした。
[地上波(邦画)] 6点(2010-09-22 23:38:59)
213.  60セカンズ 《ネタバレ》 
2時間は退屈しないので最悪な映画ではないものの、ストーリー展開及び作品の方向性について「なぜそうなるの?」という疑問点が多すぎて、決して良い映画とは言えません。。。タイトルの「60セカンズ」とは、たった60秒で車を盗んでしまうという盗みのプロフェッショナルのことを指しています。そんなタイトルである以上は、主人公が華麗な技を駆使して車を盗み出すことが作品のハイライトになると思うでしょ?普通。しかし驚いたことに、この映画では60秒で車を盗むという技が一度も登場しません。このことが象徴するように、本作は「車を盗み出す」という物語の芯の扱いが非常に軽く、そのために作品全体がまとまりに欠く結果となっています。盗みの場面における緊張感のなさは異常で、泥棒達が大声で喋るわ、車をボコボコぶつけるわとやりたい放題。警察に見つかるかもということは誰も気にしていないようです。「メルセデスのキー」など物語の前半部分で張っておいた伏線が主人公達を苦しめることもなく、驚くほどスムーズに、かといってプロらしい技を披露することもなく高級車50台を盗んでしまいます。窃盗団のメンバー達の描写も軽く、ヴィニー・ジョーンズやチー・マクブライドは訳ありげに登場したものの、彼らはどんな技を持っていて、作戦の中でどんな役割を果たすのかの説明は一切なく、ヒロインであるアンジェリーナ・ジョリーすら活躍の場を与えられていません。その一方で、ライバル窃盗団との抗争とかドラッグの隠蔽とか犬のフンとか本筋とはまったく関係のない描写が異様に多くて、贅肉ばかりで骨のない映画となっています。そして最悪なのがラストで、嫌な予感はしていたものの、本当にその通りにしてしまったプロデューサーのセンスには恐れ入りました。主人公は、物語の発端を作った悪党のボスを殺してしまうのですが、こいつを殺してしまったのでは車を50台も盗んできた意味がなくなってしまいます。最初からこいつを殺していればよかったわけですから。さらに、主人公達の犯罪がすべて見逃されるという都合の良すぎるオチには唖然。作品中にケイジと刑事が心を通わせたり、お互いを認め合う描写があったのならこんな展開にも必然性が生まれるのですが、そういった描写が一切ない中で、今までケイジを必死で追いかけていた刑事が、突如心変わりして彼を許すという展開は不自然にも程があります。
[DVD(字幕)] 5点(2010-09-22 21:10:30)
214.  9デイズ 《ネタバレ》 
最初から最後まで止まらないクリス・ロックのマシンガントークに疲れました。面白黒人という設定は必ずしも悪いわけではないのですが、冗談を言ってもいい場面とシリアスに徹するべき場面の区別がまったくなされていないために、「なんでこんな時におしゃべりを続けるの?」と度々不快な思いをさせられます。また、彼のアマチュア感覚が最後まで抜けず、エージェントとしての活躍を見せる場面がないことにも違和感を覚えます。主人公が少しずつ成長を見せ、クライマックスで大仕事をやってのけるというのがこの手の映画の常套手段ではないのでしょうか。最後の最後まで私情しか考えず、核爆弾がカウントダウンをはじめても「彼女を探す!」と言い続けるに至っては本当にイライラしてきます。主人公のみならずCIAの描写もお粗末で、国防の最前線に立つ彼らが無知な素人に悪態つかれっぱなしでは格好がつきません。プロとしての凄まじい技量を披露したり、窮地に陥った主人公の盾となってミッションに対する覚悟の違いを見せつけるような場面は必要だったと思います。そっくりさんを潜入工作員に仕立て上げるという物語では「アサインメント」という映画がありましたが、あちらでは工作員の世界をストイックに描写することで映画全体が引き締まり、主人公のドラマも充実させることに成功していました。そんな先例と比較すると、本作はすべての要素が緩いために見ごたえのない作品となっています。。。ブラッカイマーは「ビバリーヒルズ・コップ」の成功をもう一度と90年代以降も黒人主演のアクションコメディを何本か手掛けているのですが、クリス・ロックやマーティン・ローレンスは、エディ・マーフィーと比較するとスターとしての力量がまったく及んでいないように感じます。エディの場合はベラベラと冗談を言っていてもそれほど邪魔には感じなかったし、軽口を止めて真剣な顔をした瞬間に映画全体がグっと引き締まっていました。彼には映画全体の空気を支配するような並外れたオーラがあり、シリアスな場面に対応できるだけの演技力が備わっていたのです。一方ロックの場合、コメディアンとしての資質はエディと同等であっても基本的ににやけ顔であるためシリアスな場面に対応できないし、演技の引き出しも少ないためにコメディ部分でしか個性を発揮できません。彼にエディの代わりをさせようとしたこの企画は、根本的に誤っていたと思います。
[DVD(吹替)] 4点(2010-09-22 21:09:41)
215.  フレディVSジェイソン
「13日の金曜日」も「エルム街の悪夢」も何作かは見たことがあるものの、シリーズにそれほど思い入れはありません。どちらのシリーズもホラー映画の割には怖くなくて、強烈なキャラクターによる殺人ショーを鑑賞するものだという印象を持っていました。両者が初共演した本作についても同様の印象で、良く言えばオリジナルの特徴をきちんと踏襲した番外編なのですが、悪く言えばオリジナルの欠点を乗り越えることができず、オリジナルと同等の完成度に甘んじてしまった作品。どちらの印象を持つかで本作への評価は大きく変わるのですが、残念ながら私の印象は後者でした。。。本作の脚本を担当したのはデヴィッド・S・ゴイヤー、オリジナルシリーズに関わっていた監督・脚本家よりもレベルがふたつくらい上の人材を捕まえてきたわけですから、私は本作に期待していました。オリジナルの良い点は残しつつも、弱点はきちんとカバーするような出来にしてくるであろうと。しかし、出来たものはオリジナルと同等のレベルだったので、これにはガッカリでした。もちろん、ゴイヤーらしい仕事は見て取れます。両シリーズの設定を擦り合わせ、お約束を物語にうまく活かすという丁寧な仕事は相変わらずです。しかしそれだけで終わってしまっていて、本作をオリジナル以上の番外編にしようという工夫や努力がなかったのは残念でした。
[DVD(字幕)] 4点(2010-09-19 22:24:37)
216.  3時10分、決断のとき 《ネタバレ》 
多額の借金を抱えた上に長引く干ばつによってその返済の目途も立たない、さらには鉄道会社に大事な土地を奪われそうな状態にあり、身体的には戦争で足を不自由にし、長男からは腰抜け、嫁からは負け犬と思われていて、おまけに次男は重病持ち、、、主人公ダンの境遇はいくらなんでも酷過ぎるでしょう(笑)。そんな切羽詰まったお父さんが、家族を幸せにするため多額の報酬を得られる囚人護送に参加する物語なのですが、家族のためならお父さんはいくらでも泥にまみれるし、身の危険だって厭わない、無口なダンの背中から漂うそんな思いにはグっときました。お父さんというのは奥さんや子供が思っている以上に家族の幸せを願い、もし家族が幸せでなければ自分を責め、そして家族の幸せのためならいつでもわが身を危険に晒すことができる健気な生き物なのです。そんなお父さんの律儀な思いがこの映画では十分に表現されていて、それだけで涙が出そうになるくらいに感動します。毎年父の日には、日曜洋画劇場でこの映画を放送して欲しいと思ったほどです。また、凶悪犯ウェイドを目の当たりにして危険な仕事であることを認識したダンの奥さんが、旦那に対して「護送団からは降りるべきよ」と言う場面も妙にリアルでした。毎日仕事でボロボロになって帰ってくる旦那に向かって「そんな辛い仕事なら辞めちゃえば」と言うアレです。家族を養うというのは、身近にいる奥さんですら想像できないくらいに大変なことなんですね。。。カッコ悪くても家族のために必死で仕事をするお父さんと、派手に生き、金と自由を謳歌するアウトローとの対比が前半で描かれるのですが、後半になると映画は男と男の物語にシフトします。牧場には念願の雨が降り、さらには護送を完了しなくても200ドルやるという提案までなされ、ダンがこの仕事に命をかける理由がなくなります。家庭人であれば、このまま金を受け取って帰ってしまえばいいのです。しかし、ダンは男として息子に情けない姿を見せたくない、そして自分自身のプライドを取り戻したい、自分は負け犬ではないことを証明したいという思いから、この大仕事を最後までやり遂げようとします。その思いに乗ったウェイドとともに大勢の敵が待ち構える駅へ走り出す様は男泣き必死の名場面で、盛り上がるドラマ、高鳴る音楽、腹に響く銃声、良い映画を見たな~という気分を存分に味わうことができます。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2010-09-18 20:40:29)(良:1票)
217.  ポセイドン(2006) 《ネタバレ》 
ペーターゼンは「パーフェクト・ストーム」にて人間ドラマとスペクタクルのハイブリッドをやろうとして失敗したためか、本作においてはドラマ部分をコンパクトに納め、スペクタクルのみを特化させた形にしています。一方オリジナルは、ドラマとアクションが相互補完的な関係となる構造をとっていました。登場人物に感情移入するからこそアクションが盛り上がり、状況が逼迫するほどにドラマが深まっていく。リメイクにあたっては、そのオリジナルからドラマをスッパリ落としてしまったというわけです。そんな軽い作りでは面白くなるわけがありません。。。本作はドラマが薄いばかりか、理解に苦しむ展開が多々あります。例えば、カート・ラッセル演じるラムジーは、転覆直後において別フロアーにいる娘の様子を見に行きたいと船長に言いますが、船長は「各自が勝手な行動をとると混乱状態となるから、この部屋から動かないでくれ」と言います。ラムジーはこれに反対してサバイバルグループに参加することとなるのですが、物語の進行上、この場面では船長の言うことが間違っていて、ラムジーの願いに観客が賛同するという形にせねばならないはず。しかし、これをどう聞いても船長の言い分が正しく、元消防隊員にしてNY市長まで務めたラムジーはなぜこの理屈を理解できないのか、ワガママなだけじゃないかという印象しか持てません。この後、ラムジーはジョシュ・ルーカス演じるディランの提示するプランに従うことにするのですが、この場合、こいつは信用できる男なのか、船や災害についての知識を持った上で言っているのかを確認しようとするでしょ、普通。しかしラムジーは彼が何者なのかを確認することもなく、生死を分ける決断を実に安易に下してしまいます。また、ラムジーの娘は何らかの理由で父親を敬遠していて、この親子の和解が物語の横軸になるのかと思いきや、父親を敬遠する理由が最後まで説明されないという理解に苦しむ展開まで。謎の構成はまだあります。リチャード・ドレイファス演じるネルソンは、足にしがみついたバレンタインを蹴落として自分の命を守るという苦渋の選択をします。その後、彼が親しくなった女性が実はバレンタインの恋人だったという因果な展開を迎えるのですが、バレンタインの死が二人の関係にまったく影響を与えないという意味不明なことに。この脚本は一体どういうつもりで書かれたのか理解に苦しみます。
[DVD(吹替)] 3点(2010-09-15 22:36:03)(良:2票)
218.  アイ・アム・レジェンド
主人公は自らが定めた日課を黙々とこなし、人に見立てた物体に話し掛けることでかろうじて人格を維持しているが、3年間も一人で生きていればさすがにマトモではいられない。冷静な観察力や判断力が失われており、独自の社会を形成している感染者を依然としてただのバケモノとしてしか見ていない。彼らが知性と感情を有していることを理解していないために、感染者との間で戦争を引き起こすことに。。。これが物語の骨子なのですが、ネヴィルの精神には異常が発生していること、彼がパラノイア的に感染者を敵視していることをはっきりと示す描写がないために、作品の意図がイマイチ伝わってきません。主人公の描写は明らかに「キャスト・アウェイ」を参考にしているようですが、「キャスト~」においては裸のトム・ハンクスがバスケットボールに話し掛ける様を見れば、一目で「イっちゃってるな」ということは分かりました。一方本作のウィル・スミスは身なりをそれなりに整えているしそこまで異常な言動をとるわけでもないので、彼がマネキンに話しかけたところで、本当に頭がおかしくなっているのか、遊び半分で「他人がいるごっこ」をやっているのか、セリフなしでは困るという製作上の都合でマネキンに話し掛けているのかの判別が難しく、「こいつは頭がきている」という決定的な描写は必要だったと思います。感染者に対する異常な敵視についても同様で、例えば誘拐してきた感染者を極度に傷付けるような実験を行う描写があれば、主人公の認識に歪んだ部分があることを示すことが出来たはず。描写の不足は感染者側にもあって、彼らの知能や社会性を示す描写が弱いために、何も考えずに見ていると「孤立無援のヒーローがバケモノを退治する話」にしか見えません。これでは、原作と真逆の物語となってしまいます。そもそも感染者の設定には不明な点が多く、NY市にはどれだけの感染者がいて、何を食べて生きているのか(主食とされる人肉はすでにありません)、彼らは夜間何をやっているのかという基本的な設定すら説明されないため、映画の芯がボヤけてしまっています。無人のNY市の描写等ビジュアル面は非常に素晴らしいのに、設定面での煮詰め方が甘いために世界観が不十分なものに。そして世界観の弱さが映画の弱さとなっており、見た後にスッキリしない作品となっています。
[映画館(字幕)] 4点(2010-09-15 22:34:59)(良:1票)
219.  オーシャンズ11 《ネタバレ》 
オールスターキャストとは宣伝されたものの、出演者中本当にスターと言えるのはクルーニー、ピット、ロバーツ、デイモン、ガルシアの5人だけだし、その中でもデイモンとガルシアは久しくヒットがなくスターの座が危なかった時期にあり、本当にオールスターキャストと言えるのかどうかは疑問があります。一方で画面からは確かに豪華さが感じられたわけですが、これはキャストの力ではなくスタッフの実力によるところが大きいと思います。特にソダーバーグの貢献は大きく、インディーズ出身の彼にとって初のメジャー大作を任されたプレッシャーは相当なものだったはずなのですが、そんな中でも演出は非常に的確であり、時に余裕すら感じさせる素晴らしい腕前を披露。11人という大所帯チームが参加する犯罪計画は非常に複雑なのですが、流れるような演出と編集でこれを分かりやすく見せています。俳優達による軽快な絡みもうまく撮れていて、ケチの付けようのない仕事をしています。。。そんな監督の手腕にも関わらずこの映画が面白くないのは、脚本の出来がイマイチだったためでしょう。11人が参加する犯罪計画をわかりやすくまとめるという困難な作業に気を取られてしまい、各分野のスペシャリストである11人の特技を計画に活かすという重要な点が軽くなっています。まず、チームのブレーンを務めるのがオーシャンとラスティの二人なのですが、これはオーシャン一人でも務まります。ドライバーも二人は必要ないし、しかも高度な運転技術を要する展開がないため、二人とも必要なかったとも言えます。爆破担当とメカニック担当は通常であれば一人の人間がこなす役だし、スリの名人ライナスに至っては何のために存在しているのかがよく分かりません。そして、最大の問題がベネディクトの描写が浅いことで、観客が彼を敵として認識できるほどにダークな面が強調されていないため、オーシャンの計画に爽快感が不足する原因となっています。また犯罪者の妻だったテスがカジノ王であるベネディクトとどうやって出会ったのかも不明であるため(簡単に出会える相手ではありません)、テスとベネディクト、オーシャンとベネディクトの関係がはっきりしません。そのために、激しく憎んでいたはずのオーシャンの元に戻っていくテスの心境の変化もよくわからなくなり、見ようによっては感情的で頭の悪い女に見えてしまうという残念なことになっています。
[DVD(吹替)] 4点(2010-09-15 22:33:45)(良:1票)
220.  マインドハンター
前半、サクサクと人が殺されていく過程は面白かったです。さすがは「エルム街の悪夢」出身のレニー・ハーリンだけあって、ショックシーンを見せるタイミングや、無残な死体の描写などにはセンスを感じさせられます。しかし、舞台に残っている人数が少なくなり「次は誰が殺されるのか?」から「誰が犯人なのか?」に焦点が移ると、物語は一気に失速します。仕掛けのための仕掛け、観客を騙すためのドンデン返しが続くため、見ている側は冷めてしまうのです。脚本は観客の先読みを利用する形となっており、物語の中心人物となりそうなキャラクターを早々に退場させたり、観客から疑われるであろうキャラクターを意図的に作ったりとなかなか手が込んでいるのですが、そのためにストーリーテリング上のテクニックばかりが目立つ格好となっています。そうやって観客を騙すためのテクニックばかりを見せられると、真犯人は誰なのかを考えることがバカバカしくなってきます。設定上の必然性よりも、観客にとっての意外性で犯人が決められているわけですから。実際、クライマックスで判明する真犯人については、動機も手段も腑に落ちないものとなっています。また、ハーリンにはミステリーが向いていないことも作品の弱点を際立出せる形となっています。ショックシーンやアクションシーンは嬉々として演出しているものの、謎解き部分については脚本に書いてあることをそのまま撮っているだけで何の工夫もないのです。さらに、訓練島に独特の雰囲気を作れていないこともマイナスであり、もしサスペンスに慣れた監督が撮っていれば、そこそこの作品になったと思います。
[DVD(吹替)] 4点(2010-09-15 22:31:24)
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