201. 恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ
《ネタバレ》 非常に高い得点分布に期待して、苦手なラブストーリーのはずなのに鑑賞。思わずウィスキーが進む素敵な映画でした。勝手にジャズピアニストコンビの兄弟がボーカルのミシェル・ファイファーを取り合う映画かと思ってたんですが、そういう展開じゃなくて驚きました。兄のフランク(ボー)は結婚してて、弟のジャック(ジェフ)との駆け引きなんだね。 そして、この映画はラブストーリーだけじゃなくて、兄弟コンビの危機も到来する人間ドラマでもあるのが更に美味しかった。実務家のフランクの気持ちも分かるし、天才肌のフランクの気持ちも分かるし、対等な2人で仕事をやるって難しいだろうなと思った。 ジャズが好きなら外せない映画だろう。ほろ苦いラストも心地よい(=酒が進む)。僕も結婚できなかったら将来は黒のラブラドルを買おう。 久しぶりに素直に楽しめたラブストーリーだった。でもまあ結局評価の平均は若干下げちゃってるんですが…。無粋な僕には7点が限界です。 [DVD(字幕)] 7点(2011-01-10 21:32:21) |
202. キック・アス
《ネタバレ》 悪がはびこる世の中に正義の鉄槌を下すべくコスプレしてヒーロー活動を開始する主人公(キック・アス)だが、有名になり過ぎてマフィアのボスから目をつけられてさあ大変。といういかにもコミックっぽいストーリーだけを予備知識に鑑賞した。基本的にはコメディかと思って観ていると、意外とハードなバイオレンスシーンやアクションシーンも多いのが予想外だった。ただ、このおかげで映画にメリハリがついて、結果としてはとても良かったと思う。 まず、軽快なストーリー展開やユーモアあふれる台詞回しが素晴らしい。ビッグ・ダディとヒットガールの親子関係って、シリアスに映すととんでもなく辛気臭くなりそうなんだけど、そこはコミックだけに、うまくエンタメに昇華させている。また、主人公と友人や父親との関係、マフィア親子の関係など、巧みな台詞回しや構図で人と人との心理的な距離感が表されていた。 演技面では、ヒットガール役のクロエちゃんがまずとにかく可愛くて可愛くて仕方が無い。「童貞ウォーズ」に出演していたプラッセのオタク演技も堂に入っていてにやついてしまう。オタクの動き方の特徴って洋の東西を問わないね!しかし、中でも最高だったのはニコラス・ケイジ。嬉々として、というかノリノリでビッグ・ダディを演じていてかなり笑えた。こういうちょっとブチ切れた役はまさにはまり役だ。 あとは、音楽も良い。ガツンと来る爽快感のあるロックチューンを中心に選曲されているが、個人的にはヒットガールが敵の本陣を衝くときに流れる「荒野のガンマン」にシビれた。やっぱりバイオレンスはウェスタンの心意気を受け継いでいないと面白くない。初心を忘れない選曲が泣ける。 ただ、最後にひとつだけ。近年すごい勢いで娯楽映画の暴力描写がエスカレートしている気がして、内心ハラハラしてしまう。原作のアメコミからして凄いらしいので、しょうがないっちゃしょうがないのだけど、そんなにやらんでも…という気もする。マフィアによる指切りとか人間電子レンジのくだりは無くても良いんじゃないかと思う。隠せば良いというものでもないかもしれないが、映画の本筋からしてそれほど必要なシーンとは思えなかった。どこが肝になったか知らないが、とにかくR指定になってしまったのは残念だ。これくらいでR指定かよ!という弁護をしたくもなるが…。 多少のグロに耐えられる人なら絶対面白いよ、この映画!必見! [映画館(字幕)] 8点(2011-01-09 21:14:40)(良:3票) |
203. リトル・ランボーズ
《ネタバレ》 「銀河ヒッチハイクガイド」の時も感じたが、この監督のユーモアセンスは正直に言ってちょっと僕のセンスと合わないし、理解しにくい。この映画でもディディエのキャラクターがよく理解できなかったし、カーター兄が急に素直になるラストのご都合主義も鼻についた。ウィルの母親がプリマス同胞教会から抜ける過程もちょっと唐突だ。 ただ、人が何かに一生懸命に打ち込んでいる姿は美しい。主人公のウィルとリー・カーターがカメラを担いでキラキラした笑顔で走り回っている。共に父親が不在である彼らが、「ランボー」に感化され、ランボーの息子として父親を救出するというストーリーに熱中し、正反対の性格でありながら互いに協力して何とかして良い映画を撮ろうと奮闘している。その彼らの姿を観ているだけで泣けて泣けて仕方がなかった。映画作りに目覚め、挫折し、最後にその経験こそが人生の転機になるという流れは、王道であるが故の気恥ずかしさもあるが、感動的でもあった。「ランボー」の原題である「First Blood」(「先手」、「先制攻撃」の意)という言葉を台詞回しでうまく利用した中盤の喧嘩シーンも忘れがたい。7点はつけざるを得ない。ああ、子供の映画にはどうしても甘くなってしまう。 [映画館(字幕)] 7点(2011-01-09 18:56:36) |
204. ランボー
《ネタバレ》 この作品はエンタテイメントの部分とシリアスな部分の配合が絶妙だと思う。ベトナム帰還兵の疎外感・孤独感と田舎警察の排他性が最悪な形で衝突するというシリアスな筋立てであるのに、アクションシーンはド派手で主人公は非現実的に強い。一見、リアリティが殺がれるようなつくりになっているのに、むしろ相乗効果のような面白さがある。トラウトマン大佐というキャラクターの使い方がうまいのと俳優としてのスタローンの魅力に負うところが大きい。 シーン別に評価すると主人公目線ではない、襲われる保安官側に立って描かれた森林のシーンが出色だ。緊迫感がものすごい。ロケットランチャーによる爆破シーンに続く洞窟のシーンはサービスシーンとして悪くない。都合よく石油が見つかるのはどうかと思うが、ネズミに襲われるスタローンはお茶目である。ラストの慟哭シーンも心に残る。戦争という非日常にしか居場所がない男の悲哀が伝わってくる。慰める大佐の複雑な表情も印象深い。ただし、ラスト手前の町への侵入は、いくら警察が役立たずでももう少しきちんと防いで欲しかったのでマイナス1点。 総括すると、短くまとまっていて良い映画だったと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2011-01-08 00:48:37)(良:1票) |
205. トロン:レガシー
こういうレビューは良くないかもしれないけど、「六本木ソルジャー」さんとまったく感想が同じです。2つ下のレビューをご覧ください。本当に仰るとおりです。そして、奇しくも点数も同じ。初めて体験したIMAXにはちょっぴり感動したけど、それは映画の実力じゃないしねえ。 あ!ダフトパンク出てた!でもこれも別に加点要素ではない。音楽だけじゃ映画は救えない。 [映画館(字幕)] 5点(2011-01-05 23:41:37) |
206. 銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)
おい!全然面白くねえぞ!でも、不愉快ではないからこれ以下はつけられない。 [DVD(字幕)] 4点(2011-01-05 23:32:25) |
207. ぼくのエリ 200歳の少女
《ネタバレ》 映画の開始時刻を勘違いしていて、少し遅れてあわてて館内に入った。館内は真っ暗で静まり返っていた。通路の隣の席も見えない真の闇だった。僕は立ったまま待っていた。しばらくすると音もないままスクリーンに雪が降り始めた。その仄暗い雪の中でようやく僕は席を見つけることができた。 この神秘的で静寂に包まれたオープニングはこの映画の全体の雰囲気をよく表している。12歳のいじめられっ子オスカーと永遠に12歳であり続ける吸血鬼エリ。それぞれのやり方で相手を想う2人の思いは強いが、吸血鬼というテーマとは裏腹に映画は常に静かに展開する。2人の、圧倒的に美しいが同時に繊細なたたずまいを前にしては、多くの言葉は必要ない。 一方で、この美しいエリの存在に実在感が薄かったのも事実だ。映画を通じて、オスカーとエリの間にはほとんど人が介在しない。オスカーの母親はエリと直接関係しないし、介在するのは結果的に死んでしまう人ばかりだ。僕は心の中のどこかで「エリはオスカーの作り出した幻影ではないか?」とずっと感じていた。「強さ」を願うオスカーの心が作り上げた架空の存在だとしたら?エリに襲われた人々もまた実は存在しないのではなかろうか?実際にはオスカーはプールで死んでしまうのではなかろうか?エリの存在自体の危うさが、この映画の魅力である儚さをより際立たせているようにも感じる。 吸血鬼映画に仮託して、監督は、思春期特有の純粋な気持ちや強さへの憧れを撮りたかったのではないかと僕は感じたし、それはそれで紛れもなく成功している。エリをどう解釈しても、素晴らしい映画だということに変わりはない。エリの「保護者」として成長していくオスカーの未来には破滅しかないが、それがまたラストを一際美しくしている。実際にオスカーが生きているとしても死んでいるとしても、ラストのオスカーとエリの旅は黄泉の国への旅なのである。 [映画館(字幕)] 8点(2011-01-05 21:57:45)(良:1票) |
208. なま夏
吉田監督の原点(ダメな男の物語)を見るという意味では、とても面白い作品だったが、いかんせんラストがちょっと強引で稚拙さを感じる。最新作の「さんかく」は非常に洗練されているだけに、これから先が楽しみな監督だ。個人的に蒼井そらの起用はばっちりはまっていたと思う。 [DVD(邦画)] 5点(2010-12-25 19:24:16) |
209. ロビン・フッド(2010)
うーん、歴史アクション大作とすれば文句は無い出来なんですが、やっぱりロビンフッドには義賊的な立ち回りを求めてしまいます。一部の登場人物以外、脚本はすべてフィクションなので、腹も立たないのですが、ロビンがイギリスの未来を担ってフランス軍と戦っちゃうような展開は正直期待していなかったです。やっぱり緑の衣装に身を包んで敏捷に森の中を駆け巡り、愉快な仲間達と共に弓矢で悪代官を悩ませる昔ながらのロビンフッドが観たかった。まあ、だとしたらごっつい体のラッセル・クロウは絶対にはまり役じゃないですけど(この映画でははまり役!)。 キャストでは誰が良かったかって、やっぱりケイト・ブランシェットでしょうか。この年でツンデレして許されるのは世界広しといえども彼女くらいでしょう。可愛すぎ。彼女の出演作をもう一度きちんと観直してみたいと思います。他には悪役のマーク・ストロングとジョン王のオスカー・アイザックも良かった。 それにしてもこの監督は相変わらずズレた独裁者を描くのが好きですね。「グラディエーター」の皇帝とジョン王のキャラが被りすぎじゃないかと思いました。 [映画館(字幕)] 6点(2010-12-21 22:12:42)(良:2票) |
210. ゾンビランド
「ゴ-ストバスターズ」は観たことないし、ビル・マーレイに思い入れが無いし、ゾンビ映画のウンチクもないもので、元ネタに対する理解度がゼロな割には楽しめた。ホラー映画が大の苦手なので、序盤は怖がらせシーンが多くて(406号のゾンビ化とか分かってても怖い)びびっていたが、中盤からはあまりのアホさ加減に笑いながら観てしまった。つくりの大雑把さや安っぽさはあるが、人生に対するポジティブなメッセージを含んでおり、個人的に好きなタイプのコメディ映画だ。こういう未来では、ウディ・ハレルソンと是非出会いたいものだ。 [映画館(字幕)] 7点(2010-12-21 21:25:49)(良:2票) |
211. ボーイズ・オン・ザ・ラン
《ネタバレ》 何なんだろうなあ。何でみんなタニシに共感できるんだろうなあ。結婚式であんな馬鹿なことを言うやつなんて、そうそういないと思うんだけど、「気持ちが痛いくらい伝わってきた」みたいな感想が多いってことは、みんなあんな馬鹿をやらかしそうになる自分を必死に抑えて生きてんのかなあ。若者が「空気を読む」時代って言われてるけど、みんな「空気を読んで」あんな蛮行に走らないように自分をセーブしてるのかなあ。だとしたら、自分は少数派なわけで、それはそれでけっこう怖い。 僕はどんな失恋をしてもあんなことは絶対にやれないし、やりたくもない。自分の勝手なわがままで何の責任も無い他人の結婚式をぶち壊すなんて考えただけでもゾッとする。だって誰も得しないじゃない。こういう言い方をすると、「感情が無い」とか「冷たい」とか言われるのだが、それなら逆に「無感動上等!」って言いたくなる。 こういうタイプのお話を観るといつも「水戸黄門」とかのお約束の時代劇を思い出す。だいたい悪代官や大商人に貧乏かつ善良な人間がいじめられているのだが、この貧乏人どもが犯罪的に純粋でそして必ず頭が悪い。悪代官の明らかな罠にはまり込んだり、絶対に勝ち目の無い戦いを挑んでは黄門様に助けられるのだ。うんざりするほど陳腐な筋立てだ。この映画には助けに来る黄門様がいないのが救いだが、その構図は「水戸黄門」と瓜二つなのである。青山が嫌なやつで子供っぽい(ちはるを寝取る辺りとか)のは分かった。確かに腹も立つ。でも、そこに金持ちかつ大企業社員という要らぬ属性を付加するのが何と言うかキャラ設定があざとい。 僕がタニシと青山のどちらかと友達として付き合うのを選べと言われたら、迷わず青山を選ぶ。腹立たしい野郎だが、少なくとも話していてイライラはしなさそうだ。ラストの「やらせろ」展開は恋愛(性欲)の馬鹿馬鹿しくかつ生々しい側面を見事に表現していて良かった。でもそれだけだな。 [DVD(邦画)] 3点(2010-12-21 21:00:31) |
212. サイコ(1960)
《ネタバレ》 恐怖映画の教科書となった作品。やっぱりこの映画は凄い。翌日早いのに時間を忘れて観てしまった。 血がいっぱい出るわけでも、観客を脅かしまくるわけでもない。比較的淡々と物語は進んでいくのだが、序盤で完全にマリオンに感情移入させ、その後、一気に落す展開がまずうまい。途中に出てくる不気味な警官やその後土砂降りの中運転するマリオンの表情、焦燥感を煽る効果的な音楽によって、観客は4万ドルを持ち逃げする犯罪者であるヒロインにすっぽり感情移入してしまう。逃げなければ。でも、犯罪者になる覚悟はあるのか?迷う彼女はベイツ・モーテルにたどり着く。そこでノーマンの不気味さに触れた彼女はお金を返し、もう一度やり直す決心をする。だが、ヒッチコックは容赦しない。あっさり彼女は殺されてしまう。ここまでの淀みない一連のシーンが本当に素晴らしい。簡潔で無駄がない。 その後の謎解きもそれはそれで衝撃だが、この後散々使い古されたテーマだけに現在ではだいぶ陳腐化してしまったのが残念だ。ラストのノーマンの不気味な表情および独白は出色だが。 観客すべての「サイコ(精神)」に強烈な印象を残す。「めまい」はよく分からなかったけど、これは本当に凄いと思った。 [地上波(字幕)] 9点(2010-12-21 20:24:28) |
213. L.A.コンフィデンシャル
《ネタバレ》 憎らしいほど良くできている。原作は未読だが、長編でかつ複雑と言われる原作を見事に纏め上げている。脚本は練り上げられている上に、シーンの構成にも無駄がない。2時間を超える大作だが長さを全然感じさせない。 俳優陣の演技も凄い。ラッセル・クロウの出世作だが、ケヴィン・スペイシーとガイ・ピアースもしっかりとキャラクターを打ち出していた。全員がはまり役で非の打ち所がない。個人的にはガイ・ピアース演じるエドに最も共感した。こういうタイプってもてないんだよなあ。 公開時は確かまだ中学生か高校生で恋愛とかよく分かっていない時期(今も分からないが)だったので、リンのキャラクターがよくつかめていなかったのだが、今観なおすと強くてはかなくてとても魅力的な女性だということが分かった。アカデミー助演女優賞を取るほどの演技だったとは思えないが、円熟した魅力プンプンで最高だった。 細部にまでこだわった演出も見事で、エドは実は2度目の突入の際にも、メガネを忘れているんですよね。でもそれを吹っ切って突入する際の表情に惚れた!いや、女にはもてないんだけど、そこにもまた共感する。一般的にはノワール映画の持つ魅力や興奮を存分に堪能できる素晴らしい映画なんですが、僕にとってはやっぱりエドの映画だ。 いずれ原作も読んでみよう。 [DVD(字幕)] 9点(2010-12-05 18:26:57)(良:1票) |
214. 机のなかみ
《ネタバレ》 吉田監督のものはこれで3作目だが、「純喫茶磯辺」と同様、お笑い芸人を使ったのが裏目に出ている印象がある。あべこうじの演技力云々ではなく、少しあべこうじっぽいキャラクターを演じさせたのが良くない。お笑いのときと真逆のキャラクターなら、これほどの違和感は感じなかったと思うが、お笑いでもこういうネタをやりそうだなと感じた瞬間から演技が嘘くさく見えて仕方がなかった。 とはいえ、秀逸な脚本や吉田監督独特のユーモアを感じさせる映像は健在で、それなりに楽しめた。鈴木美生の演技力についてはよく分からなかったが、無難に演じていた(ラスト付近の号泣シーンでは言葉が聞き取りにくいが)ように思う。吉田監督お得意の「リアル」感を十分に堪能できたという意味で面白い作品だった。 [DVD(字幕)] 6点(2010-12-05 17:52:07)(良:1票) |
215. 乙女の祈り
《ネタバレ》 なんともねちっこい映画ですね、これは。「女臭い映画」という意味で邦画の「ストロベリーショートケイクス」を思い出したが、あちらがあくまでも大人の物語であるのに対して、こちらはもっと閉鎖的で異質な子供の世界がテーマになっているところが大きく異なる。 登場人物はあまり多くなく、主役二人の演技力に負うものが大きいが、二人ともきちんとやり遂げている。自分の能力を過信するジュリエットと彼女を崇拝するポウリーンの奇妙な共依存関係が恐るべきエネルギーを生み出す様は、観ていて恐ろしくなる。子供対大人という構図に中二病と同性愛という新たなテーマも盛り込まれているから観ていて飽きない。子供のころは何で先生や親は子供の心が分からないのだろう?と不思議だったが、僕も大人になったらやっぱり分からなくなっている。子供対大人の緊張関係の描写が秀逸だ。 邦題も素晴らしい。原題を徒に改悪するものが多い中で、この邦題はなかなかのアイディア賞だと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2010-12-05 17:26:28) |
216. 最前線物語
《ネタバレ》 戦闘シーンはリアルなのだが、脚本らしい脚本がないため、どうしてもとっ散らかった印象を免れない。北アフリカ、シチリア、Dデー、フランス、ベルギー、ドイツと戦場の舞台は豊富で、戦闘シーンも砂漠、市街戦、精神病院や古城など様々であり、エピソードはそれぞれ面白いのだが、それらにあまりつながりがない。これは登場人物の造形がしっかりしていないのが原因として大きい。小説家、農家の息子、サックス吹き、臆病な名射手、鬼軍曹となかなか面白そうなメンツが揃っているのだが、その設定を十分に活かしきれていない。監督の実体験が元になっているそうだが、ただ体験だけ映し出されても映画としては面白くならない。もっと人間ドラマが見たかった。オープニングとエンディングの対比は唯一良かったと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2010-11-23 23:05:53)(良:1票) |
217. ガルシアの首
《ネタバレ》 うーん、「戦争のはらわた」や「ワイルドバンチ」には劣るかな。主人公が最後の行動に出る動機付けが少し薄い。ペキンパーだから、当然そうなるだろうという予測は立ったけれど。 生首を必死で奪い合うギラついた男どもの滑稽さ、ジリジリと照りつける太陽と生首の腐臭で頭がおかしくなっていく主人公、スローモーションの銃撃戦で飛び散る血しぶき。ペキンパー印の生々しさは溢れている。生首と次第に奇妙な友情を通わせる展開も独創的で面白い。 ていうかそもそも生首もって飛行機に乗れるのか?ノンノン、テロリストが跋扈し、手荷物検査が厳しくなるのはもっと後の時代ですよ。この時代も最早「古き良き時代」だ。 [DVD(字幕)] 6点(2010-11-23 20:02:47) |
218. シングルマン
《ネタバレ》 期待が大きかっただけに、脚本には肩透かしを食った印象だが、撮影方法や背景、音楽、そして登場人物たちのオシャレ感がすごくて、それなりに楽しめた。トム・フォードについては最新の007でボンドの着るスーツを手がけた人という知識しかなかったが、こういう映画も撮れちゃうとは多才な人である。この作品は同性愛の映画だが、それすらもかっこ良い。イカした顔の男どもなので、絡み合ってもあまり不快感がない。というか美しい。自分は同性愛者ではないが、こういうのなら同性愛ってありかもとさえ感じた。彼らだから許されるという面もあるとは思うが。 さて、映像についてだが、予告編でも映されるスローモーションを使った車の運転のシーンや海で泳ぐシーン、その後のジョージの家のシーンなどどのシーンでも監督の持つ美意識がビンビン伝わってきて思わず見惚れてしまった。そういえば、恋人が死ぬシーンや酒屋のシーンも良かった。そもそもジョージの家からしてオシャレですごく好きなタイプの家だ。完璧な背景でカッチリした構図。寸分の隙も見当たらない。ピアノを主体とした音楽も雰囲気によく合っていた。 だからこそ残念だったのは脚本。ジョージとチャーリー、ケニーとの関係性、ジムの思い出、それらがあくまでもバラバラに動いているのが残念だ。ジョージを中心として、彼らは周辺人物でしかない。ジョージと彼らの関係は完全に個別である。ジョージの意識の中だけでも彼らが溶け合って、もっと有機的に物語をつむぎだして欲しかった。ラストもコーエン兄弟っぽくて流行に流された印象が拭えない。 バーでBGMのように音を消して映像だけ流すには、最高の映画だと思った(悪口ではなく良い意味で)。ウィスキーを飲みながら観てみたい。最高に渋くて美しい映画。 [映画館(字幕)] 6点(2010-11-23 19:51:31)(良:1票) |
219. エグザイル/絆
《ネタバレ》 どうしても「ワイルドバンチ」の次にこれを観てしまうと、評価は上がらない。面白くないわけではないのだが、あの凄まじいギラギラ感を見せ付けられた後では、どうしても「軽く」感じてしまう。 序盤でいきなり死闘を演じておいてその後すぐに仲直りって言う時点でちょっとしらけたなあ。ラストの証明写真に代表される劇画チックな演出は好みが分かれるところだと思うけど、僕にとってはちょっと余計かも。だから、香港映画はあんまり合わないんだろう。 [DVD(字幕)] 6点(2010-11-21 18:09:50) |
220. ワイルドバンチ
《ネタバレ》 西部のならずものの男たちの死闘が延々と繰り広げられるだけなのだが、その爽快感、痛快感が半端ではない。彼らの生き方が次第に魅力的に見えてくるから不思議だ。飲む・打つ・買うの三拍子が揃った上に正義感にも欠ける、いわゆる古き良きカウボーイとは正反対のクソ野郎共(そもそもただの強盗)なのだが、こいつらのひり付くような生き方には嘘がない。エゴはあっても冷酷ではない。何だかんだ言いながら義理に厚い。タランティーノ監督もこういうのが好きで「レザボア・ドッグス」を撮ったんじゃないかな。 ペキンパー監督の容赦ない脚本・演出に痺れる。名シーンが多すぎるが、敢えて挙げるなら壮絶の一言に尽きるラストシーンだろうか。ラスト近くの"Why not?"はまさに名台詞だ。売春婦と支払いをめぐって揉めているゴッチ兄弟も笑える。マパッチ将軍で終わらないこいつらの覚悟も大好きだ。無駄なシーンがなく、観終わった時の満足感、充実感は何物にも替えがたい。今までの人生で観てきた映画の中でも五指に入る傑作。「戦争のはらわた」も良いが、いろんなキャラクターが活躍するこっちは更に好みだ。恋愛などの要素がなく、女性受けが悪いかもしれないが、是非もっと多くの人に見てもらいたい! [DVD(字幕)] 10点(2010-11-21 17:52:01)(良:1票) |