2301. ギルバート・グレイプ
夢を持つことは素晴らしい。青年は夢に向かって進むべきだともいう。だが本作の主人公は違う。きっと彼にも夢はあっただろう。何もかも捨てて夢を追う選択肢もあったはずだ。しかし彼はそれを選ばなかった。知的障害のある弟、病的肥満の母親が彼の足かせになったのだ。昨日と変わらぬ今日を生き、今日と変わらぬ明日を生きる。その繰り返しの毎日。そんなある日、旅の途中の少女と彼は出会った。自由に生きる少女。彼女に惹かれたのは必然だったのかもしれない…。彼女との出会いが、彼の心を少しづつ自由にしていく。だからといって彼の足かせが無くなる訳ではない。これからも現実と折り合いをつけて彼は生きていくのだと思う。ただラストシーンの彼の笑顔を見ていると、きっと今日と違う明日が待っている。そういう気がしました。 [DVD(字幕)] 8点(2006-04-20 23:26:53)(良:1票) |
2302. メメント
この作品、「新感覚」映画ということで、一時期話題になりました。主人公の体に残されたおびただしい言葉の数々(まるで耳なし芳一)。これが主人公にとっての「記憶」。なぜなら主人公は記憶が10分程度しか持たない「前向性健忘症」だったのだ!このような困難な状況の中、体に刻まれた「記憶」を頼りに妻を殺した犯人を追う主人公。断片的な記憶の映像がフラッシュバックされ、徐々に時間を遡っていく。そこに待っていた驚愕の事実とは…。これ、面白そうです。書いていて改めて思いました。しかし自分には合いませんでした。一番難点だったのはフラッシュバックの多用でストーリーを追いきれなかったことでしょうか。ただ手法は斬新、結末も意外ですので、はまる人にははまると思います。 [ビデオ(字幕)] 5点(2006-04-20 21:32:00) |
2303. エイリアン2
個人的には前作より本作の方が好きです。展開にメリハリがある。特に序盤の組み立て方は上手いと思います。SFアクション大作として十二分に楽しめる。ただ、『エイリアン2 完全版』を観ると、本作では物足りないです。完全版未見の方は、ぜひご覧ください。コクが違います。 [地上波(吹替)] 8点(2006-04-20 12:59:19) |
2304. スーパーサイズ・ミー
《ネタバレ》 本作で真に訴えたかったのは、“マックの食品は有害だ”ではありません。ファーストフード全般に見られる中毒性、高脂高糖食品を大量摂取するリスクについて。つまるところ、「食育」の重要性を説いているのだと思います。マックがヤリ玉にあがったのは、ファーストフードの代名詞であったこと。そして子供を取り込む販売戦略が問題にされたのでしょう。企業倫理が問われた訳です。この倫理というのがクセ者。企業が営利を求めるのは当たり前。その戦略に乗るほうが悪い。結局は消費者の自己責任ですよ。その理論で随分と企業は擁護されてきたと思う。自己責任を否定する気はありませんし、マックを訴えたアメリカ人などは論外です。しかし、だから企業は何をやってもいいということにはならない。肥満予防はもはや国策です。日本でも真剣に取り組まれるようになってきた。理由はハッキリしています。医療費増は経済に悪影響を及ぼすから。健康な国民が多いことは、国力のひとつ。消費者が不健康になって一番不利益を被るのは企業だったりします。企業倫理とはそういうこと。本作の主張は正しいと思います。ただ、手法が適切だったとは思わない。実験の比較対象は過去の自分。それなら少なくとも今までと同じライフスタイルにしなくては。運動頻度が極端に落ちていたら、その影響も少なからずあるでしょう。食べてからすぐ寝ていない?規則正しく生活した?大切な判断材料が示されていません。それこそ倫理に反します。ただし想像だけで語る評論家もどきや、したり顔で説教するテレビショウの司会者に比べれば随分マシ。当たり前でも確かめてみることに価値はあります。 [DVD(字幕)] 7点(2006-04-20 00:26:50)(良:1票) |
2305. ゴッドファーザー
これだけ有名で、かつ評価の高い作品にもかかわらず、なかなか観ようという気になりませんでした。ちょっと退屈かもしれないなと思って敬遠していたからです。実際、本作には、笑いも、涙も、アクションもありません。手っ取り早く面白い要素がないのです。しかし、めちゃくちゃ濃い!こんなに濃いと思った作品は今までありません。これぞ大河ドラマです。鑑賞後はどっと疲れますが、観ている間はまったく時間が気にならないぐらい引き込まれます。マーロン・ブランドの紙ヤスリボイス(コピーライト伊集院光)とあの有名なテーマ曲は一生忘れることは無いでしょう。続編2作もすぐに観てしまいました。所詮はマフィアの話と思わずに、ぜひ1度ご覧いただきたい。ただし、2度見るには心身ともに余裕がない無理かもしれません。 [DVD(字幕)] 8点(2006-04-19 20:00:02)(良:1票) |
2306. マシニスト
オチが分かってしまうと「何だそんなことか」となってしまいそうですが、それはこの手の作品の、ある種宿命なので仕方がないことでしょう。主演の俳優さんの役作りは素直に凄いと思いますし、サスペンスとしても悪くないと思います。血気盛んな若者には、ぜひ観てもらいたい作品です。 [DVD(字幕)] 5点(2006-04-19 19:23:52) |
2307. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 最終的に選んだ人生は、主人公が思い描く最高のものではなかったはずです。愛する人と結ばれない人生。その選択には切なさを感じます。でもどうなんでしょう。主人公は、自分の人生だけでなく他人の人生もいじっています。もともと意図した行為ではなかったとはいえ、その責任はやはり重い。やり直しが出来ないからこそ、それぞれの人がそれぞれの選択を正しいと信じて、割り切って生きていくしかない。やっぱり“もし”という願いは叶わないからいいのだと改めて思いました。とはいえ、“後悔”という名の脳内タイムトラベルは、意味がないと思いつつも時々やってしまいます。それだけ自分はまだ若いということでしょうか(笑)。エンターテイメント作品としての完成度は高いと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2006-04-19 19:03:39) |
2308. トータル・リコール(1990)
原作未読のうえでの感想です。この作品は高校時代に初めて観ましたがTV放送のたびに何となく見てしまいます(コマンドーとかシュワの作品には何故かそういうのが多いです)。ストーリー自体は典型的な近未来型SFの趣きなのですが、物語の解釈の仕方が2通りに出来る(自分はそう感じました)、なかなか面白い作品です。ちょっとグロイ表現があるので、そういうのが苦手な人や、SFにある程度の現実味を必要とする人には向かないかもしれませんが、気楽に観られる冒険活劇SFです。 [地上波(吹替)] 6点(2006-04-19 18:28:28) |
2309. 真夜中のカーボーイ
未知だから、若いからできる事がある。大人から見れば、それは無謀なこと。悪いことは言わないからやめておけ。だが若者には夢がある。だから旅立つ。それがあまりにも甘く世間知らずな夢だったとしても。本作の主人公の夢は、ジゴロとして生活すること。田舎では無理でも都会ならそれが叶うと信じていた。しかし待っていた現実は…。あまりにも苦く、切ない若者の生き方を愛情にも似た「男の友情」と共に描きます。物語冒頭の未知な主人公の笑顔と、エンディングで人生の苦さ、又素晴らしさを知った主人公の表情の違いを見て欲しい、心に残る作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2006-04-19 18:25:44)(良:1票) |
2310. ビューティフル・マインド
全然予想していたストーリーと違ったなというのが第一印象です。この作品はどう書いてもネタバレしてしまうというか、レビューが難しい作品ですね。何の予備知識もなく観ることをお勧めします。参考までに言うとサスペンス好きの人は腹が立つかもしれませんが、ヒューマンドラマが好きな人には楽しめると思います。自分はどちらかというと前者なのですが、観て損はないです。 [DVD(字幕)] 6点(2006-04-19 01:08:28) |
2311. クロコダイル・ダンディー
こういう肩のこらない作品好きです。レンタルして観ることは無いですが、TV放送の時は必ず観てしまいます。ストーリーはいたって単純で、田舎男と都会娘の出会いを、それぞれの生活環境の違いから生じるギャップを絡めて描いています。ただそれだけの話なのですが、これがいいんです。何がいいって品が良い。アメリカのコメディとは思えない品の良さです。笑いにイヤミが無く、恋愛の部分も心が暖かくなります。こういったコメディ、意外と貴重です。 [地上波(吹替)] 7点(2006-04-18 20:33:52) |
2312. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦
このサイトであまりに評価が高いので観ることにした作品です。いやー驚きました。もともと初期の宮崎駿作品や劇場版ドラえもんの質の高さは知っていたので、アニメに対する偏見はなかったつもりですが、劇場版のクレしんがまさかこれほど素晴らしいとは。笑いあり涙ありの感動作で大人の鑑賞に十二分に堪えます。さらに驚かされるのはその時代考証の精密さ。下手な時代ものを遥かに凌駕するものでした。たぶん本来のクレしん映画からは外れる(ルパンシリーズにおけるカリオストロのようなもの)のかもしれませんが、こういう一般大衆を引き付ける作品がシリーズに1本あるだけで、他の作品を芋づる式に鑑賞する観客もいることを考えると、クレしんシリーズ作品としても非常に価値が高いと思います。自分にとってはこの作品をきっかけに映画だけでなくクレしんを観るようになった非常に大切な作品です。 [DVD(邦画)] 9点(2006-04-18 18:26:51) |
2313. ストレイト・ストーリー
《ネタバレ》 自分はこの話を美談だとは思いません。老人が一人で長旅をする。それもトラクターで。結果無事にたどり着けたから良かったようなものの、そうでない可能性のほうが大きかった。その時に家族や周囲の人々に及ぶ非難や苦労を考えると、手放しでこの話を肯定する気にはなれません。しかし、それでもなお、自分はこの物語が好きです。正確には主人公のアルヴィン・ストレイトが好きなのです。アルヴィンは“自分の力で行く”ことに決めました。金銭的な制約があったにしても、もっと楽な方法が他にあったはずです。でも“自分の力でいく”ことが重要だった。そこにあったのは、自分の力を確かめたいという気持ち、兄に対する誠意、あるいは単純にトラクターの旅は楽しそう、だったかもしれません。でも最終的に決断したきっかけは、止めておけという周りの声に対する“意地”だったと思います。大人気ない。でも人間には意地がある。馬鹿げたことかもしれません。褒められた話でもありません。でも小利口な人間ばかりが得をし、意地やプライドが感じられない今の世の中を考えると、こんな意地っ張りがいてもいいと思います。頑固な爺さんが愛おしい。(実際、リチャード・ファーンズワースはすごくチャーミングです。)自分はこんなに素敵な爺さんになれる自信はないけど、こういう年の取り方をしたいと思います。あまりに美しい星空がいつまでも心に残るロードムービーでした。 [DVD(字幕)] 9点(2006-04-18 18:17:48) |
2314. ゴーストワールド
これは痛いです。たぶん10代とか20代前半ぐらいの時に観ていたら、あまりに痛くて布団でジタバタしていたことでしょう。30代でよかった(笑)。周りをバカばかりと蔑んで、自分が特別と思い込んでみたり、自分がどこに行きたいのか判らずイタイラしたり。主に思春期に経験するどうしようもない複雑な感情を味わったことのある人なら主人公に共感はできなくても理解はできると思います。結構コメディの要素もあるので笑えるのですが、意図しなくても周りの人を傷つけてしまう主人公の姿は、ちょっと切なくもあります。暗示めいたシーンもラスト付近にあり、思いのほか深い作品なのかもしれません。この作品、悪くないです。 [DVD(字幕)] 7点(2006-04-18 00:30:59)(良:1票) |
2315. ドーン・オブ・ザ・デッド
ゾンビものは食わず嫌いだったため、本作が自身初のゾンビ体験でした。(そのため、この時点でオリジナルのロメロゾンビは観ておりません。その後、しっかり観させていただきました)。先入観で、エグイ映像にショッキングな描写のみが売りだと思っていたのですが、少し違いました。それも重要な要素ではありますが、それ以上にアクションサバイバルの要素が強く、十分にエンターテーメントとして楽しめるものでした。極限状態の人間性の描写という点では本家に譲りますが、娯楽性ではこちらが上かと思います。オチが好みではないのでマイナス1点です。 [DVD(字幕)] 6点(2006-04-17 17:39:31)(良:1票) |
2316. ガタカ
この作品を「スタイリッシュな映像」という言葉で表現をすることがよくあります。確かにその通りなのですが、これだと単なるオシャレ系の作品と思ってしまい、敬遠される方がいるかもしれません(実際自分がそうでした)。また、SF作品としては突っ込みどころが満載です。時代とテクノロジーの設定に関しては、かなり粗さが目立ちます。しかし、これは些細なことです。この作品の持つ真の魅力は、「人は何のために生まれてくるのか」という人間が持つ根源的なテーマを、美しい映像と深みのある音楽、そして何より緊張感あるドラマで描いている点にあると思うからです。鑑賞後、切なさを含んだ複雑な感情を呼び起こす、素直に観て良かったと思える名作です。 [DVD(字幕)] 9点(2006-04-17 17:35:23) |
2317. コンタクト
こういう作品好きです。SFとしてはちょっと毛並みが違うというか、妙にリアリティがあるところが好きです。それにしても科学の分野で「神」が重要視されるあたりに違和感ありありです。西洋文化圏での「神」というものの捉え方には理解し難い部分がありますね。もっともそれが理解できると、もう少し深い地点でこの作品を楽しめるのかもしれませんが。 [地上波(吹替)] 7点(2006-04-17 01:13:53) |
2318. タイタニック(1997)
諸事情により、映画館で観た作品です。あまりに女性からの評判が良かったので、正直自分には合わないかなと思っていたのですが…ん~悪くはないです。大勢から支持されるということはそれなりに理由があるものです。観るべきシーンもあります。でも長い。長すぎです。長くても飽きさせない作品(最近だとキングコングとか)や長いことに意味がある作品(ベン・ハーとか)はいいのですが、この作品の場合、長さは必要ない気がします。これだけラブストーリーを全面に押し出しているということは、デート用の映画という側面もあると思うのですが、この長さはデートには不向きです(自宅デートの場合も同様)。「適度な長さ」というのも映画では重要なファクターだと思います。それにしても、現段階で700名以上のレビューが寄せられているとは、すごい作品です。 [映画館(字幕)] 5点(2006-04-17 00:42:46) |
2319. ギター弾きの恋
話としては、「自業自得だろこのダメ男め!」というものなので、共感を得られる類の作品ではないと思います。でも自分は結構好きなんですこれ。ショーン・ペンのバカ男っぷりも上手いですし、何よりサマンサ・モートンが可愛いい。最近流行りの純愛ものよりこういうダメダメな話の方がずっと好きです。ちょっと心にチクリとくる、たまに観たくなる作品です。 [DVD(字幕)] 6点(2006-04-16 20:40:42) |
2320. ショーン・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 ゾンビ映画は数々あれど、本作ほど“ゾンビとは何?”という問いに明確に答えている映画は無いと思う。いや、おバカ映画ですよ。くだらないです。それは胸を張って言える。でも一周すると、いろんなものが見えてくる。それが何とも楽しい。例によって原因不明のまま、いつの間にかゾンビで溢れる世界。圧倒的に人間の能力のほうが上なのに、多数に圧倒されて食われてしまう。これって実生活でも経験している気がする。多数決で負けたり、世論に流されたり。理不尽なことも多い。人間は群れると、集団という別の生き物に変わります。大いなる意思に従い、盲目的に動かされる。まさにゾンビだと思う。それが、人間という生き物の本質だと言われているよう。結末も皮肉が効いています。でも本作では終始一貫、人間とゾンビを並列に扱っています。ゾンビも人間も否定していない。愛すべき存在として受け入れています。エドなんか、生前の生活とちっとも変わっていません。人に対する優しさがある。だから嫌味がない。屈託なく笑えるのだと思う。 [DVD(字幕)] 9点(2006-04-16 19:52:32)(良:3票) |