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221.  江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 《ネタバレ》 
石井輝男監督の映画は「網走番外地」シリーズを中心に10本以上見ているが、今まで石井監督の手掛けたカルト映画を見る機会がなかった。(初めて石井監督の名前を聞いたのがカルト映画の有名な監督としてだったにも関わらず。)この映画で初めて石井監督のカルト映画を見たことになるのだが、冒頭の精神病院のシーンからもう怪しさ満点ですぐに引き込まれた。主人公(吉田輝雄)が精神病院を抜け出してからの前半のストーリーだけを見ればミステリーによくある展開で、この部分はそこまで過激かなあと思いながら見ていたら、後半の島が舞台になるあたりから雰囲気がやばめになり、その後はこれぞカルト映画という展開で目が離せなくなった。とにかく孤島で奇形人間を作り出した主人公の父親(土方巽)の完全にイってしまっているキャラが強烈でインパクトがあり、彼が作り出した奇形人間という発想自体が衝撃的で、冒頭の精神病院のシーンを含めていろいろ狂っているとしか言えない映画だ。(もちろん誉め言葉。)江戸川乱歩の複数の小説をミックスさせて書いた脚本らしいが、今まで見た乱歩原作の映画がどれもカルト映画的だったのである程度予想していたのだが、これは想像以上で、石井監督のカルト監督としてのすごさはコレ一本見ただけでじゅうぶんすぎるほど理解できるし、実際、すごく面白かった。(しかし、他人に薦めようとはぜんぜん思わないし、今までソフト化してなかったのも納得できる。)それに石井監督の「網走番外地」シリーズをすべて見終わってすぐに見たせいか、監督の両方の側面を期間を置かずに見られたのは良かったと思う。回想シーンでカニを踊り食いするシーンもなかなか衝撃的だった。ラストの花火のシーンは悲しいシーンなのに笑えるとのうわさを聞いていたのだが、見た直後は笑わなかったものの後からなぜか笑いがこみ上げてきた。明智小五郎も登場しているが、演じているのが井上梅次監督の「黒蜥蜴」と同じ大木実なのはちょっと嬉しい。7点にしようか迷ったが、やっぱり初めて見た石井監督のカルト映画ということで敬意を表して8点を。DVD化ありがとう。
[DVD(邦画)] 8点(2018-02-25 01:45:53)(良:2票)
222.  網走番外地 吹雪の斗争 《ネタバレ》 
シリーズ第10作で1作目から2年間にわたってずっとこのシリーズの監督と脚本を手がけていた石井輝男監督(この手のシリーズものをローテーションを組まずに2年で10本も一人の監督でというのはけっこうすごい。)による最後のシリーズ作品で、健さん演じる主人公の名前が「橘真一」である最後の作品でもある。しかし、今回は石井監督最後の登板(シリーズ自体を終わらせるつもりだったとも聞く。)ということもあって今までと違うことをしようとしたのか、時代設定が変わるなどこれまでと雰囲気の異なる作品になっている。前半は刑務所に入れられた42号こと真一が脱獄するまでを描いているが、同じく前半刑務所が舞台だった「大雪原の対決」と比べると、ムショ仲間が一新されたこともあってか、真面目だがやや地味で、なにか物足りないし、今年になってずっとこのシリーズを連続で見ていたせいか、やはりこれまでレギュラーだった大槻(田中邦衛)や鬼寅(嵐寛寿郎)がまったく登場しないのはさびしい。前半のエピソードが後半にちゃんとつながっていくという構成も「大雪原の対決」のほうがうまかったような気がする。それでも後半は「荒野の対決」あたりから始めた西部劇のようなアクションシーンなどこのシリーズらしい活劇としての楽しさはちゃんとあり、やはりこの部分はそれなりに楽しめる。前半登場する真一のムショ仲間の一人として東映に入ってきたばかりの菅原文太が出ていて、明らかにほかの連中よりも風貌的に目立っていて、オーラも既にある感じだが、あくまでチョイ役なのが惜しい気がする。でも、この翌年にマキノ雅弘監督の「ごろつき」で健さん演じる主人公の友人役としてメインキャストで登場し、やがては健さんと同様に東映を代表する俳優のひとりになっていくんだなと考えるとなにか感慨深いものがある。
[DVD(邦画)] 5点(2018-02-10 17:08:09)
223.  家族はつらいよ2 《ネタバレ》 
山田洋次監督が「東京家族」のメインキャスト全員を起用して手掛けた喜劇映画シリーズの2作目。前回が単純明快な喜劇だったのと比べると無縁社会がテーマの今回はちょっと湿っぽくなってしまったような気がするが、それでも(前作までとはいかないまでも。)けっこう楽しめた。家族から運転免許の返納を薦められた周造(橋爪功)のその後の態度など今回も前回同様に「男はつらいよ」シリーズを思わせる部分もあるのだが、今回はそれ以上に寅さん以前のハナ肇が主役をつとめていたころの山田監督の映画のようなブラックな笑いが多く、まだ山田監督にそういう部分が残っていたのかとちょっと驚いた。とくに周造が家に泊めた友人(小林稔待)が翌朝突然死していたあたりからの展開が死体を使ったギャグなど「運が良けりゃ」や「喜劇 一発勝負」を思わせるブラックな笑いが中心になっていて、個人的には山田監督の寅さん以前のこういうブラックな面も好きなので、この部分も面白かったし、ちょっと嬉しい面もある。だが、反面、やっぱり今更そこまで戻るのかという気がしないでもないし、そのブラックな笑いが独居老人の孤独や、交通事故につながる高齢者ドライバーの問題という「死」を意識したどちらかといえばシリアスなテーマとはどうしても相容れない気がしてしまうのも正直なところではあった。(シリアスなテーマを喜劇で描くこと自体には抵抗はない。)前回で登場しなかった次男(妻夫木聡)の妻(蒼井優)の家族(母親と祖母)が登場しているが、この妻の実家の家庭環境が平田家とまったく逆なのはいかにも対比的な感じがした。(無いと思うけど、このシリーズをずっと続けていくなら、次男夫婦が主人公になるんだろうなあ。)前回はキレイに終わっていたのだが、今回は終わり方が唐突で、とくに前半の主題だった周造の運転免許返納の話が解決されないままだったのがちょっと不満だったりもするのだが、まあいいか。それにしても「男はつらいよ」シリーズで満男役でレギュラーだった純(=吉岡秀隆)に続いて蛍(=中嶋朋子)も山田監督の喜劇映画のシリーズのレギュラーになるとは思ってもみなかったなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-02-03 19:34:59)
224.  網走番外地 決斗零下30度 《ネタバレ》 
シリーズ第8作。一作目に出演していた丹波哲郎や、シリーズ初期作で毎回悪役を演じていた安部徹が久しぶりに出演していてなにやら懐かしい気になるし、冒頭に真一(高倉健)の殴り込みシーンが回想的に入っているのもちょっと集大成的な感じがしなくもない。(その中で出てくる「七つの子」を歌う男は杉浦直樹かと思った。)そんな今回は真一が列車の中で出会った父親を捜す少女とともに向かった炭鉱が舞台になるわけだが、例によってその炭鉱ではいざこざが起きていてという筋立て。健さんと炭鉱といえば「幸福の黄色いハンカチ」をどうしても思い浮かべてしまうのだが、やはり東映アクション映画である本作は当たり前だがまったく違う映画になっている。今回も健さんはかっこいいのだが、それ以上にかっこいいのが丹波哲郎扮する喫茶店のマスターで、もちろん一作目とは違う役柄だが、出てくるだけで画面のすべてを持って行ってしまいそうな勢いを感じた。少女の捜していた父親が大槻(田中邦衛)というのはシリーズを連続してみているとどうなのかと思う部分もなくはないが、前後のつながりを重視するシリーズではないのでこれでいいのだろう。(東映のシリーズものでこれを気にしていたらキリがない。)ドラマとしてはシリーズの定番ともいうべき真一とこの大槻の娘との交流がみどころとなるはずであるが、今までのこのパターンの回と比べるとその部分はちょっと弱い印象があり、そこが残念といえば残念。でもこの少女のませたキャラクターはよく立っていた。今回面白かったのは冒頭の列車の中でのマジックシーン。手に火がついて慌てる真一がなかなかお茶目で、後年の出演作では見られないような健さんの演技もこのシリーズの見ものなのかもしれない。同じく列車のなかで登場する由利徹も持ち前のコミカルな味をいかんなく出している。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-31 01:19:49)
225.  網走番外地 大雪原の対決 《ネタバレ》 
シリーズ第7作。沖縄が舞台だった前作の反動からか今回はこのシリーズらしく雪の北海道が舞台。それも前半の大半が刑務所を舞台にしている。そこでのエピソードがけっこうしっかりと描かれていて、登場する囚人たち(田中邦衛、由利徹などシリーズおなじみの面々。)もそれぞれ個性的で、ここだけでも面白い。後半の出所した真一(高倉健)の行動理由も刑務所の中で起こった集団脱走事件の濡れ衣を着せられて死んでしまった刑務所仲間の汚名を晴らすためという前半の刑務所でのエピソードを活かした構成になっていてかなり原点回帰を意識した作風になっている。このおかげで見てて久しぶりにこのシリーズに刑務所映画らしさを感じることができた。今回の悪役の親玉(上田吉二郎)が鬼寅(嵐寛寿郎)の名を騙って悪事を働いているというのもシリーズものでは定番の偽物登場編で、見ていて楽しいし、真一の指摘からそれが露見し、その場にいた本物がニセ鬼寅を吊るし上げるという展開もこの手のパターンだと定番で、そこにやっぱりカタルシスを感じずにはいられない。(鬼寅にこんなカタルシスを感じるのはたぶん初めて。)クライマックスの対決シーンも真一の目的はあくまで脱走の真の首謀者である白熊(内田良平)にあるというのもブレがなく、徹底していて、この親分には直接手を下さないというのも、異例だとは思うがあまり気になることはなかった。でも、敵役は白熊だけでも良かったような気もしないでもない。
[DVD(邦画)] 7点(2018-01-27 17:22:47)
226.  網走番外地 南国の対決 《ネタバレ》 
シリーズ第6作。高倉健といえば北国、雪というイメージが強く、このシリーズもタイトルどおり舞台は北海道なイメージだが、今回は「南国の対決」というサブタイトルで「網走番外地」シリーズなのに沖縄が舞台、というところに突っ込まずにはおれないが、当時返還前だった沖縄でロケをしているという点でシリーズでは初めての海外ロケということになるのかな。まあそれはおいておいて。今回は橘真一(高倉健)が組長の不審な死がきっかけで沖縄に真相を探りに行くといういかにもな任侠映画定番の筋立て。先週見た「荒野の対決」が任侠映画という感じがあまりしなかったのと比べると対照的だ。健さんと沖縄というのが見る前はミスマッチな感じがしていたのだが、実際見てみるとそれがむしろ新鮮な感じがした。真一と子供の友情を絡めているのもこのシリーズらしく、今回は船の中で出会った少年の母親探しというエピソードがサイドストーリーとしてあり、少年と母親との再会というのがハイライトになっているが、見つけた母親(三原葉子)のけばい姿を見て逃げてしまい、(気持ちは分かる。)真一が母親を説得するのだが、真一が真顔でさりげなくギャグを言い放つもんだから本当はしんみりしないといけないシーンなのに思わず笑えてしまった。それに谷隼人と大原麗子が敵に捕まって大ピンチというときにどこからともなく現れる鬼寅(嵐寛寿郎)。パターンではあるが、今回鬼寅の出番が前半になかっただけに思わずお前どっから現れたんだと笑いながら突っ込んでしまった。それでも演じるアラカンの殺陣は老いていても素直にかっこいいと思えるところがすごい。健さんももちろんかっこいいのだが、今回はクライマックスの対決シーンがえらくあっさりとしているのが物足りないといえば物足りない。でも、少年の父親である悪の親玉(河津清三郎)が少年に真実を告げぬまま死んでいくシーンはありがちなお涙頂戴シーンではあるが、やはり少しほろっとさせられる。でも、この映画、やはり沖縄が舞台のせいか見ていて途中から「網走番外地」シリーズの一篇であることを忘れそうになる部分もあった。さっき書いたように健さんと沖縄という組み合わせは新鮮だったんだけど。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-20 18:27:24)
227.  網走番外地 荒野の対決 《ネタバレ》 
シリーズ第5作。約1年ぶりにこのシリーズ見るのだが、今回は「荒野の対決」というサブタイトルどおりかなり西部劇を意識した作風で、北海道が舞台のはずなのにちゃんと西部劇らしい雰囲気が出ているのがまずすごいし、話のほうもヤクザではなく、牧場のイザコザというあたりも任侠映画ではなく西部劇を思わせている。この話を「日本侠客伝」シリーズや「昭和残侠伝」シリーズでやってしまうと違和感がすごそうなのだが、「網走番外地」シリーズの場合だと先の二つに比べると任侠映画というよりアクション映画という印象が強いせいか、そこまで抵抗なく楽しめる。それに東映の映画で馬に乗っている高倉健というのもなかなか新鮮だった。(かつて時代劇スターだった鬼寅役のアラカンが西部劇調の作品に出演しているのもけっこう新鮮な感じ。)今回のドラマ部分のハイライトは健さん演じる橘真一と彼になつく仔馬 花子とのふれあいなのだが、これが動物相手だからか見ている方としては感情移入しやすく安心して見ることができ、この辺は動物映画のようでもあった。しかし、今回は敵側に殺されるのが主人公側にいる人間ではなく、敵である河津清三郎たちと対立している牧場(主人公側)の馬というのが意外だった。馬たちを目の前で殺されたヒロイン(大原麗子)の泣き叫ぶ姿が悲痛で印象に残る。ここから殴り込みシーンになだれこんでいくのだが、さすがにライフル片手というわけにもいかず、いつものようにドスを片手にというのがやっぱり東映の健さん映画らしい。杉浦直樹がこのシリーズでまたもインパクトの強い役柄で登場していて印象に残るが、彼の正体が明かされるのが最終盤であるというのはちょっとまずかった気がして、もう少し早く明かせていればよかったかなと。それと敵ボスである河津清三郎がとどめを刺されないで終わるのもこの時期の東映のシリーズ映画では珍しく思う。カタルシスはないかもしれないが、たまにはこういうのもアリだ。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-13 16:20:10)
228.  怒り 《ネタバレ》 
殺人事件から一年後、容疑者に特徴の似た三人の男がそれぞれ東京、千葉、沖縄に現れ、周囲の人々と関わっていく様を描いた群像劇だが、この中に犯人はいるのか、それは誰なのかというよりも、三人と関わる人々の人間模様を中心に描いていて、豪華なメインキャストの熱演もあってドラマとしてはそれぞれに見ごたえのあるものになっていると思う。それに犯人は誰という観客がもっとも興味を引くであろう部分にもミスリードを多くして最後までその興味を持続させるのもよく考えたらありがちに感じるもののそこそこうまく、そのおかげで引き込まれた部分もある。犯人のモンタージュ写真は三人の特徴をよく捕らえたものになっているが、モデルとなった実際の事件の犯人にも似ているあたりは細かい。ただ、脚本としては主題のほかにいろんな要素を入れているためにやや散漫な印象が残るものになってしまった感があるのも事実で、とくに沖縄パートの米兵によるレイプ事件はデリケートな問題ゆえに群像劇のエピソードの一つとして描くには無理があり、これをやるならこのテーマだけで社会派映画を別に一本作ったほうがいいような気がする。殺人事件の犯人は最後に判明するが、犯人の突然豹変するその姿はそれまでのふるまいからするとどうしても違和感を感じさせるものであり、なにかやや強引に犯人を定めてしまった感がある。またその犯人が殺されるという結末も強引に後味の悪い方向に持っていこうとしてる感じで好きになれない。ほかの二つのエピソードが後味もそんなに悪くなく終わっただけに、このパートの後味の悪さが際立ってしまい、見た後はなにか微妙な気持ちになってしまった。せめて、群像劇ではなくオムニバスだったら印象は違っていたかもしれない。それにいっそこの三人の中に犯人はいなかった結末でも良かった気はする。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-06 20:52:52)(良:2票)
229.  ウホッホ探険隊 《ネタバレ》 
森田芳光監督が脚本を担当した離婚がテーマのホームドラマ。コミカルな雰囲気のタイトルとは裏腹にネタとしてはシリアス。でも、見ていてそこまで深刻な感じはなく、どこかコミカルでからっとした印象が残るのはやはり森田監督の脚本によるものなのだろう。しかし、森田監督と根岸吉太郎監督の作風の違いか同じく家族を描いた森田監督の「家族ゲーム」と比べてしまうと、あくまで正統派な感じで毒気がなく、そこが物足りなく感じてしまい、本作への森田監督の脚本での参加は根岸監督からの依頼だったそうなんだけど、もしも森田監督が自ら監督も手掛けていたらまったく違う映画になっていたかもと思わずにはいられない。でも、根岸監督の演出は丁寧で、傑作・名作とまではいかないもののドラマとしてはそこそこよく出来ていて、森田監督の脚本に多くを求めなければ普通に見られる映画ではある。十朱幸代演じる妻が悩んで疲れていくくだりはなかなかにリアルだし、彼女が小学生の息子たちに向かって「私はあなたたちの悩みを聞いて解決することができるのは自分も経験したことだから。あなたたちが私の悩みを聞いても解決できないのはまだ経験がないから。だから一人で悩んで一人で解決するしかないの。」という言葉を放つのは一見八つ当たりのようにも聞こえるが、思わず同情してしまう部分もあり、印象に残る。それにすべてを描くのではなく、離婚後に愛人と別れたことを夫が「元」家族に告げるところでパッと終わらせるのはそのあとのことを見る側がいろいろ想像できる余地を残しているのがいい。(今どきの映画であればたぶんこうはいかないだろう。)しかし、藤真利子演じる愛人の人物設定はよく分からず、相手の妻に嫌がらせもしておきながら、いざ離婚したとなると途端に別れてしまう神経は意味不明だった。ここをもうちょっと何とかしてほしかったな。夫役の田中邦衛は「北の国から」の五郎とはキャラ的にまったく違う役柄なのだが、「北の国から」とは逆に自らの不倫が原因で離婚をする役柄というのが面白い。
[DVD(邦画)] 6点(2017-12-16 23:55:05)(良:1票)
230.  CURE キュア 《ネタバレ》 
当時ちょっと話題になっていた記憶がある映画だが、あまり期待しないで今さらながら初めて見た。(黒沢清監督の映画を見るのもほとんどこれが初めて。)サイコキラーのマインドコントロールによる連続殺人事件を題材にしているが、このテーマがいかにも90年代の終わりごろのスリラー映画らしさがあるし、また同時に当時とてもタイムリーなネタでもある。前半は間宮(萩原聖人)の登場後から彼が出会う人々を次々に暗示にかけていく様が描かれるのだが、あまりに簡単に暗示にかかりすぎと思えてしまい、これはちょっとと思いながら見ていた。それに間宮の「あんた誰」で始まる暗示方法も最初はインパクトがあるのだが、2、3回繰り返されるとイライラしてフラストレーションがたまってしまう。(病み上がりで見てたからよけいに。)でも、後者は観客に対しても間宮への憎悪を募らせるという黒沢監督の意図があったのかもしれないと感じた。後半はこの事件を捜査する刑事 高部(役所広司)と間宮の対峙が描かれているが、ここからは引き込まれた。精神を患っている妻(中川安奈)を持つ高部は間宮と対峙していくうちに彼に影響されていく(「妻が人生のお荷物」と言い切るあたり、いつ間宮の暗示にかかってもおかしくない。)わけだが、最終的には間宮の伝道師としての役割を高部が継いだともとれるラストのレストランのシーンはいやでも印象に残るし、はじめから終わりまで説明的な部分がほとんどなく、いろいろ考察できるのがいい。でも、本作ではそれが作り手が映画を見る人を信頼しているというよりは、なんか挑戦的な感じがして少し鼻についた。「犯罪者の心理なんてたとえ本人であっても分からない。」という言葉にはいろいろ考えさせられるものがある。とても完成度の高い映画だと思うけど、やっぱり個人的な好みでいえば苦手な映画かもしれない。
[DVD(邦画)] 6点(2017-12-10 13:03:02)(良:1票)
231.  大空港2013<TVM> 《ネタバレ》 
三谷幸喜監督が「shortcut」に続いて手掛けたWOWOWの単発ドラマ。今回も一度もカットを割らずにすべてワンカットで撮影しているが、山の中が舞台で基本的に二人芝居だった前作に対し、今回は空港が舞台で10人以上の人物が登場する。これだけで前作以上の撮影の大変さが伝わってくるのだが、同時に前作同様に舞台人である三谷監督ならではの作品とも思う。ストーリーは天候不順のため松本空港に緊急着陸した羽田便の乗客たちを出発までの間、竹内結子扮するグランドスタッフが対応するというもので、「THE 有頂天ホテル」のような群像劇にしようと思えばできたところを、主人公が対応する乗客を一組の家族に限定したことで、逆にシンプルになっているのが良かった。(ワンカット撮影で本格的に群像劇をやろうとしたら撮影はもっと大変かも。)その家族はそれぞれ事情を抱えているのだが、ひとりひとりの描き方が強烈で個性的なのも三谷監督らしく、安心して見ていられるし、楽しい。そんな家族に振り回される主人公を演じる竹内結子もハマリ役で、とくにラストのヘリを見送るシーンの笑顔がなんとも言えず、印象的だった。それともう一つ、本作はワンカット撮影に加えて、劇中の時間を実際の時間と一致させているみたいなのだが、それもなかなか効果的だったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2017-12-03 17:28:52)
232.  short cut<TVM> 《ネタバレ》 
溝口健二監督や相米慎二監督など長回しを多用することで有名な監督はたくさんいるが、なんと三谷幸喜監督によるこの作品は始めから終わりまでの112分間一切カメラが止まることなくすべてをワンカットで撮影するという実験的なもので、その発想に舞台演出家である三谷監督らしさを感じずにはいられないし、またそれを映画ではなく、テレビドラマでやっていることにもすごさを感じる。内容はというと山道で迷った夫婦(中井貴一、鈴木京香)の会話劇であるが、それを飽きさせずに最後まで見せきる脚本と、主演ふたりの演技が巧妙で、すごく面白かった。とくに山に入って野生化したようになってしまう妻とそれに対する夫のリアクションが最高で、それ以降この二人のやりとりを見ているだけでもうずっと笑いっぱなしだった。(三谷監督の作品の中でも本作はとくにかなり笑える部類だ。)でも、この夫婦の仲は円満ではなく、冷めている設定。それを思うと、ひょっとしたらこの夫婦の設定は自分と小林聡美を参考に書いたのではと思えてくる。(下の方も仰られているように本作は三谷監督が離婚をした年に出した作品。)エンドロールをバックにしたラストの河原のシーンからの幸せそうな二人を見て、三谷監督なりの夫婦に対する理想のようなものを感じることができた。
[DVD(邦画)] 8点(2017-11-23 17:15:55)
233.  TRICK トリック 劇場版 ラストステージ 《ネタバレ》 
劇場版にサブタイトルがつくようになってわずか2作目での完結編となってしまった。冒頭に一か月前に呪いをかけられ死を宣告された男(石丸謙二郎)が出てきたり、舞台となる異国の元首が菅井きんだったりと、連ドラファーストシリーズ第一話の「母之泉」を思わせる部分があって、最後にして原点回帰を目指しているようにも思う。印象としてはこれまでと変わらず山田(仲間由紀恵)と上田(阿部寛)のとぼけたやりとりや村上ショージを使った薄ら寒いギャグなどこのシリーズらしさは健在。(深夜枠時代のような雰囲気はもはやないが、シリーズが長く続くと作風の変化は致し方ない。)今回は最初で最後の海外ロケに出ていて、それがこのシリーズには少々不似合いのような気もするのだが、長年の関係者の慰労も兼ねてたんだろうなぁ。仲間由紀恵と朝ドラ「花子とアン」で夫婦を演じていた吉田鋼太郎が出演しているが、もし朝ドラ放送後の公開だったらこのシリーズのことだからそれに関するネタを絶対にやっていただろうなぁ。でも、そういういつもと変わらない軽い気持ちで見ていたからこそ山田が呪術師ボノイズンミ(水原希子)の代わりに自らを犠牲にして村を救うことになるあたりから突然目が離せなくなった。ここは本当に今までのシリーズを見ているとこみ上げてくるものがあり、山田を必死に説得する上田に感情移入しないはずがない。そして、事件が終わった最後の10分ほどこそが本作最大の見どころで、とくに主題歌の「月光」(やっぱりこの「トリック」という作品の主題歌は鬼束ちひろでないとしっくりこない。)のバックにしたこれまでのダイジェストを見て、シリーズが終わることを実感し、さびしい気持ちになったし、その後のいちばん最後のシーンで上田の前に現れた山田が「母之泉」で上田の前で初めて披露したコインと封筒を使ったマジックを始めるところで思わず泣きそうになってしまった。堤幸彦監督の作品では「ケイゾク」でも「SPEC」でも男女バディのコミカルなやりとりが面白いのだが、やはり「トリック」はそこがいちばん安心して見られる。今まで見続けてこれたのはそのためかもしれない。これでこのシリーズも見終わってしまったわけだが、実際、堤監督のバディものシリーズを最後まで見てこれほど名残惜しさを感じるのは初めて。それほどこの山田と上田というコンビがずっと見ていくうちにいつの間にか親近感がわいて好きだったんだろうなあと思えてくる。(あまり「ファン」という意識なく見ていたつもりなんだけども。)リアルタイムでずっと見ていたわけではないのだが、それでも最後まで見続けて良かった。
[DVD(邦画)] 6点(2017-11-18 18:21:01)(良:1票)
234.  TRICK トリック 新作スペシャル3<TVM> 《ネタバレ》 
スペシャル版第3作。ドラマシリーズはこれで一応完結なのだが、この後に劇場版が一本あるため、そういう雰囲気は一切なくいつも通り。今回も山田(仲間由紀恵)と上田(阿部寛)のコンビのやりとりは相変わらず安心感があって楽しい。今回は「犬神家の一族」を元ネタに話が展開するのだが、もうここまでくるとネタ切れ云々ではなく、それもこのシリーズらしさだと思えてきてあまり気にはならなかった。見始めてすぐは前回のスペシャル版のパターンから犯人は三姉妹の中の誰かかと思っていたのだが、三姉妹は殺しの標的であるという点で、完全に「犬神家の一族」の模倣にはなっておらず、そのおかげか前回のスペシャル版よりは面白かった。(誰が犯人かは分かりやすすぎる気もするけど。)でも、このシリーズは単なる犯人当てよりも超常現象の解明や、自称霊能力者との対決の話のほうが面白いかな。「スケキヨ」というセリフが出るなどのこのシリーズらしい小ネタも相変わらず楽しいのだが、毎回思うけどやはり細かすぎる。舞台となる水神家の顧問弁護士を上條恒彦が演じている(しゃべる時に時折自分の持ち歌の一節を歌う小ネタあり。)が、そういえばリメイクの「犬神家の一族」(2006年)で古舘弁護士を演じていたのは中村敦夫だったなと思い出した。これもやっぱり「木枯し紋次郎」つながりのキャスティングなのだろうなぁ。
[DVD(邦画)] 5点(2017-11-11 23:12:27)
235.  殿、利息でござる! 《ネタバレ》 
この砕けたタイトルと、ポスターやDVDパッケージの印象からはっちゃけたコメディー映画を想像してしまうのだが、これが実話がベースのけっこうシリアスな話。でも、語り口は先週見た同じ中村義洋監督、阿部サダヲ主演コンビの「奇跡のリンゴ」とは対照的にそこまで深刻ぶることなく軽妙で明るい雰囲気で描いていて、それだけで個人的には「奇跡のリンゴ」より好み。それにこのタイトルは非常に映画の雰囲気とマッチしていて、それでいて話としてもなかなか面白く、そのバランス感覚も絶妙。磯田道史原作で「武士の家計簿」同様にお金がテーマになっているが、そこは千両を三億円など現代の円でナレーター(濱田岳)や劇中テロップで随時解説しているので見ているほうとしては実感がわきやすく、分かりやすかった。ドラマとしては親子や兄弟の確執という人情ものではありがちなストーリーが展開するが、このドラマも丁寧に描かれていて、また、映画の軽妙な雰囲気を壊すようなものではないのがうまく、思わずほろりとさせられた。それに「どこを見て仕事をしているのか」という劇中のセリフも考えさせられるものがあり印象に残り、前向きな気持ちにさせてくれたのは嬉しい。ちょい役でラスト近くに登場する殿様役をフィギアスケート選手の羽生結弦が演じているのがかなりのサプライズだったが、俳優としての演技にとくに違和感はなく、むしろ堂々としていてなかなか良かったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2017-09-24 15:04:56)(良:1票)
236.  奇跡のリンゴ 《ネタバレ》 
NHKの「プロジェクトX」あたりでいかにも取り上げられていそうな実話の映画化作品だが、中村義洋監督の演出も丁寧でオーソドックスに作られていて無難な感動作といったところ。主演の阿部サダヲはどうしてもコミカルなイメージの強い俳優だが、何年もかけて当時誰もやったことがない無農薬リンゴの栽培に挑戦する主人公を熱演していて意外と言っては失礼かもしれないが、良かった。中盤あたりの無農薬リンゴに取りつかれてしまったような姿はちょっと怖いものがあり、何もそこまでと思ってしまい、少しひいてしまったのだが、最初は病弱な妻を思ってはじめたことから諦められなくなり当初の目的を忘れて熱中してしまうというのは分からなくもない気もする。そしてついに離婚や自殺まで考えてしまうようになるに至るのは生々しいほどリアルで重く、見ているこちらまでどんよりと暗い気持ちになってしまった。しかし、自殺しようとした主人公がそれに失敗した直後に偶然無農薬リンゴ栽培の答えにたどり着くというのは脚色があるにせよ実話としては少々できすぎた話に思えてしまったのはちょっと残念で、さらにそこからの終盤30分ほどが少し長い気がした。良い映画なのは間違いなくて、さっきも書いたように作りも丁寧なんだけど、映画としてはせめて答えにたどりついた段階で終わっていても良かったんじゃないかなとも思う。それとあともう一つ。妻役の菅野美穂は悪くはないんだけど、朝ドラでいつも見てるのが原因でその役のイメージが強くなっているせいか、比べてしまうと朝ドラのほうがしっくりきている気がする。
[DVD(邦画)] 6点(2017-09-16 17:07:13)
237.  昭和おんな博徒 《ネタバレ》 
加藤泰監督最後の東映作品となる任侠映画。主演は江波杏子というのが東映任侠映画では珍しいのだが、本作の企画意図としては時期的に藤純子引退後に新しい任侠映画のスター女優をというのがあったのだろう。どうかなあと思っていたのだが、江波杏子は大映で任侠映画のシリーズを持っていたらしく、そのせいか特に違和感はなく、良かったと思う。主人公・お藤が雨の中、標的を仕留める冒頭からいかにも加藤監督らしい演出で格調高く、ここだけでも印象に残るものとなっている。(この冒頭の雨とタイトルロールの汽車を見ると加藤泰の映画だなあとすごく感じられる。)物語としては夫(松方弘樹)を殺されたお藤の復讐劇で、夫 新二郎が殺されるまでのエピソードを前半に回想形式で描き、後半の復讐劇につなげるという二部構成になっているが、脚本としては前半部分が丁寧に描かれているのに対して後半部分がちょっと急ぎすぎに感じるのは尺の都合上仕方がないとはいえ、なにか物足りない感じがしたのが少し残念だったのだが、前半の松方弘樹も後半の天知茂もお藤と関わっていくドラマがみごたえあるものになっていてあまり退屈はしなかったのでもう30分ほど長ければもっと良かったかもとも思った。ところで、DVD特典映像の予告編を見ると「新シリーズ」とうたっていて、最初はシリーズ化を計画してたのがうかがえるのだが、2作目は作られることはなく、東映ヤクザ映画は翌年から任侠映画に代わって実録路線へ。そして加藤監督は次回作から松竹を中心に映画を手掛けるようになる。やっぱこの時期(70年代初頭)の東映の任侠映画を見るとそういう移り変わりの時期だったことを思わずにはいられない。
[DVD(邦画)] 7点(2017-09-09 23:58:54)(良:1票)
238.  懲役十八年 《ネタバレ》 
加藤泰監督作で脚本が笠原和夫というのがまず珍しい。終戦直後に遺族を救うために仲間とともに非合法行為に手を出し、その仲間に後を託して服役した男 川田(安藤昇)と、彼が服役している間に考えが変わってしまったその仲間 塚田(小池朝雄)という構図はいかにも笠原和夫らしいプロットで、ドラマとしても骨太で、加藤監督の演出もリアリズムにあふれていて良く、見ごたえがあるものになっていてなかなか面白かった。「懲役十八年」というタイトルの割りには刑務所の中でのエピソードが本筋にあまり関係ないのだが、そこがやたら濃く、ここに登場する人物たちがみんなイキイキとしていて、加藤監督の演出もここにいちばん力が入っていて、刑務所映画としての面白さも損なっていないあたりはさすがといったところ。(ひょっとしたら本筋の二人の男の話よりもこの刑務所の中の話のほうが面白かったかも。)安藤昇の主演映画を見たのはこれが初めてのような気がするが、演技力はちょっと微妙かもと思うものの、主役としての存在感は抜群で、一方の小池朝雄も前半の主人公の仲間としての姿と、後半の豹変した悪役ぶりがうまく、やはり小池朝雄はこういう役をやっているとうまくハマる人だと改めて思う。本作の川田と塚田を見ているとこういう話は当時実際にあったのではと思えてくるようなリアリティーを感じることができ、そのあたりも笠原和夫や加藤監督らしく、またこの頃の東映作品としては任侠映画とは違った印象があるアクション映画でもあり、そんなところも本作の見どころの一つだ。
[DVD(邦画)] 7点(2017-09-03 00:33:14)
239.  骨までしゃぶる 《ネタバレ》 
借金のカタに廓に売られたヒロイン お絹(桜町弘子)の目を通してその地獄のような廓の実態を描いた加藤泰監督の映画。最初は天国のように見えた廓の仕組みをお絹が理解するに連れ、見ていてこちらまで居心地の悪さを感じるし、様々な事情で廓にやってきた女郎たちの生きざまも胸に迫るものばかりで、逃げようとして連れ戻されて拷問を受けたり、客に理不尽な理由で殺されたりといった女郎たちの末路を見るとやり切れない思いに駆られる。加藤監督はそんな廓の実態をリアリティを重視して描いており、ドラマとしてかなり見ごたえのある映画になっているし、加藤監督の映画の中でも傑作と呼ぶ声があるのもうなずける映画だ。廓の主人夫婦をを演じるのが三島雅夫と菅井きんというのは裏があるのが分かりやすすぎるキャスティングだが、この二人の悪役ぶりが実に良いからこそ、廓の恐ろしさもじゅうぶんすぎるほど伝わってくる。そして何と言っても主演の桜町弘子。東映時代劇でよく見かける脇役女優で、本作が唯一の主演作(本人は自分の名前が最初に単独でクレジットされるのを見て感動したという。)とのことだが、見事に熱演していてそれを感じさせず、本作は加藤監督の代表作であるとともに、桜町弘子にとっても間違いなく代表作だと感じる。ラストの恋人(夏八木勲)と一緒に橋を渡って廓を出ていくお絹のなんとも言えない明るい表情はこれまでの彼女の苦労を思うと、お絹がやっと幸せをつかめたことがわがことのように嬉しく、思わず良かったねえという気持ちになり、このラストには泣かされた。舞台が洲崎にある廓であり、思わず「洲崎パラダイス 赤信号」を思い出したが、あの映画でも舞台の少し先にある遊郭はひょっとしたらこんな状態だったのかもしれないと想像してみるのも楽しい。
[DVD(邦画)] 8点(2017-08-26 19:32:46)(良:1票)
240.  ルドルフとイッパイアッテナ 《ネタバレ》 
原作は20年以上前の小学生の頃に学校の図書室かなにかで読んでいたし、NHKで放送されたテレビ絵本も見ていたので、本作はそのストーリーを丁寧に映像化していてこんな話だったなあと懐かしさがありながら、うる覚えの部分がかなり多かったので新鮮な気持ちで見ることができた。間違って岐阜から東京にやってきたルドルフがイッパイアッテナやブッチーと出会うことによって広い世界を知っていく過程がよく描かれていて、ルドルフの成長物語としてはもちろんのこと、イッパイアッテナとの師弟関係も見ごたえのあるものになっていて、原作の良さは出ていると思う。イッパイアッテナがルドルフにかける言葉はどれも重みがあって深く、考えさせられるものがあるし、ルドルフとイッパイアッテナのそれぞれの飼い主への思いもしっかりと描かれ、それがきちんとドラマになっているのも良かった。ルドルフがたった一人(一匹)で岐阜を目指し、飼い主の家にたどり着いてからの展開は予想がついてしまうものの、やはり切なくついルドルフに感情移入してしまった。でも、そこから一人(一匹)で生きていくことを決意して東京に戻るルドルフの姿には勇気づけられた気がした。欲を言えばルドルフが東京から岐阜に帰るヒッチハイクの部分をもう少し見たかった気がしたくらい(この部分をロードムービー的に描いても面白いかもしれない。)であとは特に大きな不満はなく、最後まで楽しく見ることができたので、見て良かったと思う。そうそう、ヒッチハイク中のルドルフを乗せるトラック運転手の声をNHKのテレビ絵本で語りを担当していた毒蝮三太夫が演じていたのがなんだか嬉しかった。また機会があれば原作を読んでみたいなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2017-08-24 01:11:48)
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