221. 變臉~この櫂に手をそえて~
《ネタバレ》 子役が可愛くてその演技が真に迫っていることは巻頭から最後まで変わらず、この作品の内容では当然とも言えるので軽く書いておくだけにして、作品中に登場する老人のペットの猿の表情がその時々に応じて時には哲学的といえるような表情で老人の感情や境遇を反映しているのが印象的でした。こういう猿の細かい表情は訓練してやらせているのでしょうか?それとも、飼われていて表情豊かな(と飼い主が思っている)猿からオーディションでこの採用した?あるいは、表情でコミュニケーションをする猿の群があってそこから抜擢したのでしょうか?四川劇の女形のスーパーヒーロー的なアクションでハッピーエンドとなるのですが、今までなじみのなかった四川劇を垣間見させてくれたのも良かったです。北京の京劇と異なって超自然的な役柄には隈取ではなく仮面を使い、演技もパターン化されていないようです。 8点(2004-04-14 00:24:13) |
222. 楢山節考(1983)
家を出てから楢山に達するまで無言で息子を励まして行く先を指図するおりんが神域に達した人のようで神々しく見えました。 10点(2004-04-13 03:34:19) |
223. 愛のイエントル
どうせフィクションなのだからどうでもいいと思うのも結構ですが、アビグダーや周囲の人間がイェントルの男装を見破っているのかいないのかがわからず、「ここで見破ったんじゃないかな・・・。」なんていろいろ想像するのが面白いと思います。裸で川に飛び込んで「君もやれよ・・・。」と挑発したりするのは、学問はしっかり身につけているのにひげも生えていない成長不全でひ弱(?)なイェントルをからかっているのか、あるいは正体を見破った上で困らせているのかのどちらともとれますよね?結婚の件にしても「ここまでやればさすがに正体を白状するのでは・・・。」と考えて提案しているような気がします。建前の上では女は学問をやってはいけない時代だったけれど、本人が完全に男として扱われるよう学問に励み、周囲も男として扱っている分には実害はないわけだし・・・。ユーモアたっぷりでしかも守るべき節度はきちんと守るアビグダーは私が抱くユダヤ人の男性のイメージにぴったりです。東欧の美しい風景とユダヤ人男性の黒づくめの服が対照的で美しく、バーブラの歌も子供の頃から歌っているだけあってすばらしいです。ミュージカルに私がつける最高点の8点を献上。 8点(2004-04-11 09:53:16) |
224. 始皇帝暗殺
イエス・キリストは 1. ローマに布教に行く途中で病死した。2. 磔にあって刑死した。3. 天寿をまっとうした・・・の答えと同じくらい司馬遷の史記のこのくだりは日本人の知識人、特に男性にとって長い期間、常識と言える事実だったのことです。「・・・だったとのことです。」という断定を避ける言い方をしたのは源氏物語の中で光源氏のライバルが燕の皇太子が決意に煩悶する史記のくだりをあてこすりで暗誦する場面があるのを思い出したからで、私自身は史記は「覇王別姫」の元になった「垓下の戦」を高校の漢文の時間にちょろっと舐めた程度ですが・・・。コン・リーがやはり出演していますね。この人は強い女しか演じられないと私は思っているのですが、趙夫人のような強い女の役をどんどん演じてほしいです。でも、男と言い争った後でくるっと踵を返して肩を怒らせてスタスタ歩いていくようなのは止めてほしいです。もっとも「女の三従」なんていう道徳律が一般化されたのは後世のことで、この時代の女性がシャネル、ではなくてしゃなりしゃなりと歩いた、なんていう記述が「史記」あるとは思えないので、地のままでいくしかなかったのでしょうが・・・。日本の新石器時代の年代をこの頃だったのかな・・・などと推定するのに放射性炭素のお世話にならなければならない紀元前3世紀に、お隣の国では貨幣や度量衡の制定、交通路の整備、北方民族の侵入阻止などのために強大な指導力が必要とされるほど商工業が発達し、もちろん文字もあればウーマン・リブ運動もあった・・・というのは一番最後だけ未確認です。 7点(2004-04-07 02:46:19) |
225. クレオパトラ(1963)
エジプト王宮の豪華なセットやエクストラを多用したスペクタクル、エリザベス・テーラーを始めとする名優を投入した豪華キャスト・・・なのに「ベン・ハー」のように好きになれないのは、やはり、プトレマイオス朝エジプトやクレオパトラの生き方そのものにあまり魅力がないせいだと思います。クレオパトラを最後に滅亡したプトレマイオス朝エジプトは元来ギリシア人の征服王朝で、ギリシア系の王族や貴族の白い肌と彫りの深い顔立ちを維持するために近親結婚を繰り返したので、遅かれ早かれ王室や高級官僚にとんでもない劣性遺伝が顕在化して滅びる運命だったのです。それに王朝の存続だけを考えてローマの武将に肌を許すクレオパトラは女王というよりも超高級娼婦だし、シーザーにとってはクレオパトラを愛人にすることはエジプトを征服するのに自分の部下の血を流さずに済む一挙両得の方法だったし、アントニーに至っては悲しいかな、本国ローマでシーザーほどの人望もなく、帰国してもシーザーの養子のオクタビアヌスに頭を押さえられてうだつが上がりそうにないのでクレオパトラと結んでエジプト王になろう、と考えたのに決まっているのです。いくら名優でも史実を超えることはできないということだと思います。だったら、いっそのことレックス・ハリソン主演で「ジュリアス・シーザー」という映画を作り、「ブレイブハート」のような北方民族とローマ軍の戦闘もふんだんに描き、E.テーラーが助演としてシーザーの最後の勝利を恋愛で飾ったクレオパトラという女を演じたら(アントニーはコケになりますが)もっとダイナミックで納得のいく作品になったと思うのですがもう遅い。また、歴史に翻弄される男女関係の無常をテーマとしてストーリーを構築するのならスペクタクルではなく、女王や武将の地位を忘れさせるようなシンプルな舞台で照明だけを使ってシェークスピアの台詞を語るようなのがいいんじゃないでしょうか・・・? 5点(2004-04-07 02:17:43) |
226. Mr.レディMr.マダム
こんーな作品があったから「バードケージ」の点数が低いんですね。淀川長春さんもこちらのほうを評価していました。この作品はフランス映画らしく洒脱ですがフロリダ・ビーチを舞台にしたアメリカ映画で全く同じストーリーの「バードケージ」のほうが笑えますよ・・・。でもこちらを先に見た方には所詮リメークでしかないのかもしれません。この作品のアルバンのほうが「バードケージ」でネーサン・レインが演じたアルバートよりも女らしくて色っぽいですがネーサン・レインのほうが歌はうまいし芸達者です。芸達者すぎて品がないという感じがしないでもないですが・・・。男役のほうはどちらもマッチョ(「バードケージ」ではロビン・ウイリアムズ)でかっこいいです。息子役は「バ」のほうが大人っぽくて、こういう家庭で育ったら世の中の裏表を子供のころから知ってこうなふうに成長するだろうな、なんていう雰囲気です。二つの作品を比べるのは難しいですが先に見てしまったほうより1点低くします。 7点(2004-04-05 14:31:09) |
227. 恋の闇 愛の光
原題“Restoration”は「王政復古」の意味。原題が示すとおり歴史ファンには超お奨め作品ですが、今までのみなさんの感想が示しているように、ラブ・コメでならしたメグ・ライアンのファンには期待はずれの映画です。どうせ見ればわかることなのだから、中身を反映した邦題をつけてほしいものです。イギリスは17世紀半ばに、フランスは19世紀初頭にそれぞれ王政復古を経験しました。フランスで王政復古を遂げたフランスのルイ18世は愚王の典型で「共和政下で何物も学ばず、何物も捨てず。」と揶揄されましたが、作品中のイギリス王チャールズ二世は対照的で、この王様をストーリーの中心として見ないと面白くありません。チャールズ二世も最初は専制君主、その上に愚王で医者や科学者のことを屁とも思わなかったのが巻頭から登場する医師のロバートと平行して成長し、専制ぶりは生涯変わらなかったものの「王は君臨すれども統治せず。」というイギリス立憲王政の基礎を築くというお話です。「王は君臨すれども統治せず。」だったら実際は何をするのか、というのは作品を見てください。日本の皇室もこのストーリーのイギリス王と同じ道を地でいっています。泥臭いといっては何ですが頭と体の両方を使う学問、医学とか実験物理とか土木工学に関心を示す皇族方がいらっしゃればいいんですけれどね・・・。お茶目な雰囲気のメグ・ライアンはロマンチック・コメディーにしか出演しないのかと思ったら、なかなかいい味を出しているじゃありませんか。時代劇にどんどん出演してほしいものです。ニューヨーク・タイムスがこの作品を絶賛し、一般的に過小評価されていると言っていました。ジャーナリストになるような人にもお奨めできると思います。 9点(2004-03-31 13:48:27)(良:1票) |
228. パッション(2004)
娯楽系ならともかく宗教を題材にしたR-rated(18歳未満入場禁止)の映画なんてあってはならないし、映画館で鑑賞中に2人が死亡なんてことも、作る側にとっては不可抗力ですが、本来絶対にあってはならないことです。私は5、6歳のころから聖書に親しんで「イエス様は人間の罪を負って十字架の上で亡くなってくださった。」と観念的に理解していました。子供でもこのくらいのことは観念的に理解できるものです。それなのに、どうしてその様を如実に映像化する必要があるのでしょうか?生々しい血まみれの映像にも増して、どうして人があれほど残酷になれるのかが私には全く理解できず、シュ-ル・レアリズムの世界のようでした。リアルティーがある登場人物は良識家のローマの総督ピラトと博愛主義者のその妻、聖母マリアなどだけであとは全員、キリストを含めて人間の皮を被った異星人のようでした。これは私の理解力が未熟なせいではないと思います。「理解力が未熟であること」を根拠に映画の18歳未満鑑賞禁止が指定されるのならば、大人にとってもわけのわからないバイオレンスを扱った映画はたとえ宗教が題材であっても作るべきではありません。そもそもイエス・キリストの処刑そのものが、公正な裁判の結果での死刑などとは異なっていて全く根拠のない不条理なものなので、バイオレンスの部分の拡大描写を入れた作品として観衆に見せるべきものではないと私は個人的に思っています。「ラストまでにバイオレンスに慣れて涙が出なくなった。」と語っているキリスト教圏の批評家(Time紙)さえいます。これがメル・ギブソンが意図したことなのでしょうか。彼の製作姿勢は大いに疑問です。キリスト教徒の友人の強い薦めでこの作品を見て仏教の文化圏に生まれたことを誇りに思ったほどです。 0点(2004-03-31 13:23:45)(良:2票) |
229. マスター・アンド・コマンダー
この作品にはストーリーらしいストーリーや時間軸がないって・・・?それは当然でしょう。この作品は歴史そのものを描いているのですから・・・。「悠久の昔」という言葉が示すとおり歴史には始まりがないし、歴史の終点は「今、この瞬間」というのはナンセンスで終わりはやはりありません。だから、たとえは作品中で船の幹部がブラジル南部付近の海図を広げた時に「この少し上に1970年代にイギリスとアルゼンチンのドンパチの元凶になったフォークランド諸島があるな・・・こんな連中がユニオン・ジャックをおったてて一番のりを宣言したんだな。」と思ったり、ダーウィンを彷彿とさせる船医が孤島の生物に関心を示すシーンで、「キリスト教世界に衝撃を与えた進化論は海の覇権を握った国の学者で旅の機会の多い船医でないと思いつかない理論だな・・・。」と思ったり・・・いろいろと考える材料をこの作品は提供しています。彼らは太平洋と大西洋の島々にユニオン・ジャックを立てるか三色旗を立てるかを競いながら現在にまで連なる海洋の歴史を作っているのですから・・・ロマンがあるじゃないですか。ただ、船上の船長以下士官の制服が難点でした。ナポレオン時代ということでナポレオンが肖像画の中で着ている服と同じなのですが、フランスが当時すでにフッションの中心だったとしても敵国のファッションなんて採用したのでしょうか。色までフランスをイメージさせる明るめの青だったりして・・・英国海軍は色でいうと緋色か紺のイメージがあるのですが・・・。加えて、上半身の筋肉が発達したラッセル・クロウの体型がナポレオンにそっくり・・・。彼が制服と制帽で登場するたびに「待ってました、ナポレオン!」と声をかけたくなったりやなんかして・・・。この減点はキツイぞ・・・。 6点(2004-03-27 02:09:09) |
230. ドライビング Miss デイジー
高齢者の自立が云々言う前にこれはアメリカ版親孝行ストーリーですね。息子の厄介にはなりたくないというデイジーさんの意地はわかるけれど、運転手を雇えるような金持ち、しかも親思いに息子を育てた母ちゃんの勝ちですよ。全ての老人がこのとおりにいくわけはないけれど親子間の情愛は本当に良く伝わってきました。運転手が鮭缶を盗んだの盗まないのでもめる場面のオーバーな演出は爆笑ものでしたが、これも息子が財布からお札を取り出して「これで鮭缶買ってきな。」と水戸黄門よろしく解決・・・でも運転手のほうが上手だったりして・・・。親孝行に関してはどの民族も同じのようでユダヤ人が特別だという話も聞かないし、主人公がユダヤ人だということに何か意味があるのかと考えてみましたが、多くのユダヤ人は何十世代もの間、他の民族と商売をしてきたので商売相手や使用人を外見ではなく中身で判断する伝統があるのではないでしょうか。運転手が文盲だとわかってもデイジーさんは動じないでしょう・・・。運転手は運転手として優秀ならばそれでいいのです。ストーリーの舞台、アメリカのジョージア州はいわゆるディープ・サウスといわれる地域で、子供の頃に学校に満足に行けなかった文盲の人が珍しいくないそうです。人間はいつかは死ぬのだけれど、ずっと生きていて欲しいと思うような高齢者が近所にいるので身につまされました。自分の親のことに至っては年金をもらう年になっても高齢者だとさえ思いたくないのがどら娘である私めの本音です。 8点(2004-03-19 14:01:35) |
231. サヨナラ
アメリカの有名俳優が出演する日本ものはとりあえず見ておこうと思ってビデオを借りたのですが、期待したよりも良かったです。アメリカ兵が日本人女性を一時の慰みものにしないよう、日本駐留のアメリカ軍はアメリカ兵と日本人女性のデートを禁止しますが、アメリカ兵である主人公たちが日本人女性を真剣に生涯の伴侶として考え、また日本人女性も自分の人生を大切にする誇り高き存在として描かれているのが良かったです。「日本の男はどうした!」という方もご安心を・・・。作中に登場する歌舞伎俳優は、英語が巧すぎるのが少し気になるものの、アメリカ人女性をスマートにデートに誘って人生相談の相手にまでなるという国際性で満点をもらえるような紳士として描かれています。主人公ロイド(マーロン・ブランド)の歌舞伎と文楽で退屈した時の表情と和服を着流した時の姿がとてもセクシーでした。マーロン・ブランドのアカデミー主演男優賞ノミネート、ケリー役のバトンスの助演男優賞受賞、ケリーの妻役、梅木さんの助演女優賞受賞、音響賞美術賞受賞などの快挙が目白押しです。ラスト・サムライ以前にも日本を礼賛するまともな映画はあったのです。 8点(2004-03-18 03:17:48) |
232. マルタイの女
この作品は今までのいくつかの女シリーズでのテーマだった単純な善悪ではないと私は思います。全編から「おまわりさん、ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・(淀川長春のパロディーではありませんよ。)」という伊丹監督の叫びが聞こえてくるようで痛々しいです。考えてもみてください・・・「マルサの女」で血税をとる国税庁査察官の努力の姿を描きながら、「ミンボーの女」で暴力団をテーマにしたばかりに右翼に狙われ、妻宮本信子と夫婦ともども警察のご厄介になりながらの映画活動を余儀なくされたんですから・・・伊丹監督本人の生活を模写したこの作品の中で二人のスゴ腕の警官がその間他の仕事は全くせずに女優ビワ子に付き添い、当然のことながら結構な給料や超過勤務手当てをもらっているのですが、現実の社会では彼らの給与は国民の税金によって賄われているのです。「納税者のみなさん、私がやりたいことをやったばかりにみなさんの税金がこのように使われてしまっています。ごめんなさい・・・。」という伊丹監督の声も聞こえます。映画ファンとしては警官が10人付き添っても構わないからいい映画を作り続けてほしかったですが、その期待が伊丹監督の負担になったことは想像にかたくありません。「もう、勘弁してください。」とう伊丹監督の自殺予告の声まで聞くことができます。伊丹監督の自殺は惜しまれる死ではありますが、やるだけのことは果たした上での散り方だったと思います。合掌。 7点(2004-03-13 07:30:20)(良:2票) |
233. アラバマ物語
《ネタバレ》 フィンチ弁護士を演じたグレゴリー・ペックの威容と言っていいほどの貫禄と父親としての温かみが素晴らしかったです。フィンチ弁護士の論理は作品中で見る限り完璧だと思います。幼いスカウトは裁判の内容や父の論理を理解できるような年齢ではありませんが、それでも父親の正しさと勇気には触れることができ、また、努力にも関わらず敗北を喫した父親に黒人席全員が立ち上がって敬意を表したことで、きっと真の正義の観念が心に植え付けられたことでしょう。ただ、「誰かが汚い仕事をしなければいけないの。それがお父さんの役目だったの。」と兄妹に語った女性の言葉には納得できませんし、少なくともスカウトは納得していません。アメリカで今でも人気のある小説”To Kill Mocking Bird”の日本語の題名が「アラバマ物語」だということをこのサイトで知り、すぐに近所の図書館でビデオを借りてきました。子供のころ両親が購読していた「暮らしの手帳」の自社広告で、”つなぎ”を着たスカウトの写真と「貧困と無知のせいで強姦犯人にされた黒人が云々・・・。」という説明が全く一致しなかったせいで「アラバマ物語」のタイトルが印象に残り(「強姦」なんて言葉、当時理解していたのかどうか・・・?)、昨年グレゴリー・ペックが亡くなった際、彼が主演だった名作の一つとして紹介されたことで”To Kill Mocking Bird”に関心を持ちました。刑事がフィンチ弁護士に恨みを持つボブ・イーウェルが自殺したと知らせに来て、スカウトが「モッキング・バードを殺しちゃいけないんでしょう。」と父親に言うラスト近くのやりとりで誰がジェムに怪我をさせ誰が兄妹を救ったのかわかりますが、原作にはないスカウトの台詞は8歳にしてはちょっとかしこ過ぎるのではないでしょうか・・・。それにしても、フィンチ弁護士が言うとおり、人を見かけや噂だけで判断するのは間違っています。 9点(2004-03-13 07:15:53) |
234. 影武者
仲代達也は演技はうまいのですが、あのメーク、何とかならないっていつも思います。 そうそう・・・仲代達也に関して頭から離れないのは大昔に見た「新平家物語」の平清盛の役・・・クールなエリート・サラリーマンのイメージでした。だから武田信玄はやはり「座頭市(だったっけ、見たことないもんでスミマセン)」の勝新太郎のほうがよかったのでしょうか? 5点(2004-03-12 09:46:11) |
235. パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
痛快!アカデミー主演男優賞をもらい損ねた(私はそう思いたい・・・。芸達者な点では彼が絶対に一番だったと思います。)ジョニー・デップの演技、総督のお嬢さんの自立した行動、等々々・・・。でも、英国海軍が骸骨集団と戦って鬨(とき)の声を上げるシーンに感激するなんて、私ってちょっと単純かな・・・? 8点(2004-03-12 01:54:42) |
236. ミシシッピー・バーニング
黒人による公民権運動が盛んだった1960年代のアメリカでFBIが黒人に対するテロに対して何もしなかったとは思わないし命がけで仕事をしたとも思いません。普通に仕事をしたんじゃないかな・・・。極論を言えば私はアメリカには人種問題はないと思っています。もちろんアメリカ南部に黒人に対する差別待遇や公民権獲得阻止の運動があった(今でもある?)事実は否定しません。でも人種差別の形を取っている問題は本質的には貧困者や文盲に対する無理解(カラーパープル)や非熟練労働者間の縄張り争い(ウエストサイド物語)であり、黒人に関わっている点は南北戦争以前の奴隷制のせいでアメリカ南部に居住する黒人の中に貧困者や文盲が多いということだけです。アメリカに自主的に移住してきた黒人は南部に居住することを避けるかもしれませんがプエルトリカンやアジア系移民と同様「人種差別」は感じていないと思います。さて、結局この映画で問題なのは、黒人には(白人やアジア人種と同じく)ノーベル賞をもらうような優秀なのから刑務所だけを住処にしてほしいようなろくでもないのまでいろいろいる、という単純な事実を理解できない単細胞サイコ集団の存在であって、そこに公民権運動やら黒人に対する同情やら上述の社会問題を絡ませると何が何だかわけがわからなくなってしまいます。サイコ集団の標的は何でもよかったけれどもたまたま黒人だったというだけで、焦点は人種問題ではなく本人たちのオツムの問題です。また、サイコ集団の活動の取り締まりと首謀者の処罰は法治国家においては当然ですがそれだけのことで、それで社会問題が解決できると思ったら大間違いです。というわけでラストシーンでもしらけました。この作品に登場するFBIの捜査官と「アラバマ物語」の中で黒人を弁護して貧困と無知を糾弾した弁護士とは職種も違うということをお忘れなく。 3点(2004-03-11 04:33:05) |
237. ドクター・ドリトル(1998)
岩波書店から出ているドリトル先生シリーズ全12巻を読破、しかも各巻最低3回は読んだ上でレックス・ハリソン(「マイフェア・レディー」で中年の言語学者をやった俳優)主演のオリジナル版「ドリトル先生」を見た私が太鼓版を押します。面白い。オリジナルでは町医者だった先生が最新医療設備を完備した大病院の勤務医だということでどうなることかと興味をわかせました。原作を読破したせいで面白く感じるのでは、という意見は否定しませんが、この作品を見るのに予備知識は必用ないことも事実です。要は頭をファンタジー・モードに切り替えられるかどうかです。オリジナルでは冒険好きで女嫌いだったドリトル先生が恐妻家になっていたのでこの手の作品(子供向き、ミュージカル、コメディー)で私が付ける最高点の8点マイナス1点とします。今の世の中では女嫌い=ゲイになっているのがいけないんです、きっと。 7点(2004-03-10 07:48:28) |
238. ユー・ガット・メール
本作品中の書店経営の動向は現在、アメリカで実際に進行しています。書店チェーンB&M(バスタード・アンド・マスタード…仮名)は日本でも雨の後の竹の子のように店舗を増やしているムーン・フロント・カフェと提携して顧客を獲得し、家族経営の書店は息もたえだえなのであります。日本で小さな書店を見るとほっとしますが、日米の書店経営の違いの背景には言語の違いがあります。日本語とは異なり、ネーティブでも英語の本をハタキをかけられながら立ち読みで読破することはまず無理で椅子とコーヒーが用意してあってその上でトイレを我慢しながらハタキをかけてもらう必要があるのです。畢竟、字幕付の外国映画は欧米から東洋へ来るほうが反対よりも多くなるわけです。以上は無駄話。ニューヨーク市アッパー・ウエストサイドの落ち着いた雰囲気を伝える映像がGood。 キャスリーンが「現金のみ」のレジに並んで断られるグルメ・マーケットも実際に存在します。 6点(2004-03-10 07:41:15) |
239. 乱
日本の映画の中でこれほど外国人受けする映画はないと思います。統計をとったわけではないのですが・・・でも、外国人がこの映画を評価するのは色鮮やかな旗が乱舞する合戦シーンなどの日本趣味でしかないのかもしれません。また、この映画を一度しか見ないで出来不出来を云々する方の中には外人がこの映画を見る目とそれほど変らない見方で評価していらっしゃる方も多いのではないかと思います。でも、私はこの映画を二度目に見た時にはシェークスビアの原作にはない何か、日本的、あるいは仏教的と言ってもいいかもしれない何かを感じました。二度目には長男の妻と同じ経緯で一文字家に嫁いできたのにもかかわらず寛容な心でもって秀虎を許す次男の妻やピーターが演じた狂阿弥の台詞の一言一言に着目する余裕があったせいだと思います。参考になるかどうかわかりませんが、シェークスビアは「リア王」を書くに当たって作品をキリスト教と無関係なストーリーにしたいと考え、わざと舞台をキリスト教伝来以前のイギリスに設定したそうです。だとしたら、この映画は黒澤監督がシェークスビアの意図を受けてセンター前にヒットさせたような作品かもしれません。でも、私はやはりこの作品は「黒澤」で「日本」だと思います。 9点(2004-03-09 11:31:28)(良:2票) |
240. マスク・オブ・ゾロ
体制の変換期には豪快な人物がしばしば登場します。例えば幕末の日本の鞍馬天狗とか、フランス革命期のオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェとか(失礼、これは池田理代子の創作です)・・・。そのほとんどはフィクションか民衆の期待によって脚色された姿が伝えられているだけですから、コメディーを2割くらい混ぜたこういう映画もあっていいでしょう。バンデラスが演じるアレハンドロの剣を抜いた時の間抜けっぷりが見事ですが、それでも死んだりつかまったりしないで腕を磨いていくのが更にお見事。先輩ゾロに「魅力を身につけなくてはだめだ。」と言われて直後に出席した社交パーティーで外交官のような見事な弁舌でまくし立てたり令嬢と見事なダンスを披露したり、これがほんの少し前までこそドロをやっていた男か、と思わせますがバンデラスの演技は兎にも角にもお見事。お見事づくしで7点を献上。清涼剤として見る価値は多いにあります。それから全編に流れるメキシカンのムードが素敵です。 7点(2004-03-08 09:57:47)(良:1票) |