221. ドント・ルック・アップ
《ネタバレ》 トランプ大統領誕生から露わになった分断と、扇動するメディアを総括した2020年代の『アルマゲドン』。 彗星衝突という非現実な事態なんて周囲は信じずエンタメとして消費し、 ディカプリオを始めとする超豪華スター大集合で大真面目にバカ騒ぎを広げていく。 巨大企業との癒着を優先するという初手さえ間違えなければこのようなラストを迎えなかったものの、 自らに事態の深刻さが及ばない限り、誰もが真実を受け入れないものである。 難を上げるなら、2時間半に及ぶ内容をもっと短くできた気がする。 制約がないが故に却って引き締まらない印象を受けた。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-01-01 15:34:54) |
222. マイティ・ソー
ケネス・ブラナーが何故監督を?と思うくらいストーリーは薄っぺらいし、ソーのお供の存在意義がよく分からない等、ツッコミどころが多く大味すぎるのだが、ソー役のクリス・ヘムズワースの魅力によって成り立っていると過言ではない。傲慢ながらチャーミングで憎めないし、異世界出身の雷神という設定上、大根演技もそこまで気にならないわけでこの役をやるために生まれたようなものだ。一時的に過ごしたニューメキシコでの生活にもっと時間を割いても面白かった気がする。 [DVD(字幕)] 5点(2022-01-01 01:54:39) |
223. アイアンマン2
シリーズものならではの弊害で作品の勢いが感じられないのは言うまでもなく、シリアスな要素を必要以上に詰め込みすぎて、上手く収拾できていないことに尽きる。陽のアイアンマンには肩の荷が重すぎて似合わないから、もう少し軽快に描いても良かったはず。ミッキー・ロークにはもっと暴れて欲しかった。 [DVD(字幕)] 4点(2022-01-01 01:33:58) |
224. デンマークの息子
《ネタバレ》 テロがきっかけで台頭する極右団体。 彼らのヘイトクライムに抗うアラブ系過激団体に入った少年の視点で描かれるかと思いきや、 少年を騙した潜入捜査官の苦悩がメインだった。 そのため、アラブ系過激団体の影が後半から薄くなり、中弛みを感じなくはない。 国に馴染んだ移民でありながらテロを防ぐ潜入捜査官という半端な立場な故に、 極右団体の危険性を訴えてもデンマーク警察は上の空、 むしろ彼らが支持する政権を許してもまあ良いんじゃないという事なかれな空気。 これは移民政策に対して保守的なデンマークでさえ、ルールを守れない移民を持て余している現実がある。 欧米でも日本でもそう。 それ故に潜入捜査官の家族に悲劇が訪れる。 もはや失うものがない彼が下した行動にはカタルシスもなくただただ虚しい。 暴力以外の解決方法がないあたりに限界を感じる。 ミニシアターだけで留まるのは勿体ないし、多くの人に見て欲しいが、 閉鎖的な日本では入管法改正による強制送還ラッシュを加速させていくだけだろうな。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-12-31 23:54:39) |
225. パワー・オブ・ザ・ドッグ
《ネタバレ》 漢らしさ溢れるカウボーイが弟の婚約相手である女性とその連れ子を邪険に扱う。自分の世界を異形の存在に侵されたくなかったのか、はたまた同性愛を隠すために虚勢を張るしかなかったのか・・・。やがて青年に対する内なる想いに気付いたカウボーイは、次第に好意を露わにしていくが、その青年の恐ろしさに気付かないまま破滅していく。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と『ベニスに死す』を合体させた芸術点の高い逸品であり、ベネディクト・カンバーバッチとコディ・スミット=マクフィーの憑依したような怪物性が浮き彫りになっていく。ただ、作家性の強い映画を受け入れるネットフリックスだけあって万人受けしないのは確か。作品賞は無理でしょうね。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-12-31 23:30:58) |
226. ホーム・アローン
悪童vs泥棒コンビの仁義なき戦い。多くのことは既に語られているので割愛するとして、やりすぎとも言える泥棒への扱いはかなりギャグ漫画的で変にリアリティがないだけ許容範囲であり、ドタバタコメディのツボを的確に押さえる。また細やかなところでは、一人になってしまった設定の説得力や家族の向き合い方にハッとするものがあって、改めて映画の出来の良さに感心。それだけ30年前の映画なのに古臭さを感じられない普遍性があった。 [地上波(字幕)] 7点(2021-12-24 23:59:05) |
227. パリ20区、僕たちのクラス
移民の集う中学校から見えるフランスのリアル。冒頭を除くとほぼ全編学校のみで展開される徹底さで、余計なドラマを排してドキュメンタリーのように見せる(そもそも主演は原作者の教師)。多民族国家だからこそ見える問題や、主張の強い生徒たちに対してどうすべきかの議論が最重視され、生徒を軍隊のように生産していく事なかれ主義の日本とは違う発見はあった。ハッピーエンドにはならない苦みのあるエピソードもあり、常にどうあるべきかの教師の奮闘はこれからも続く。外国ルーツが増えてきた日本はどうする? [DVD(字幕)] 5点(2021-12-09 21:59:30) |
228. 麦の穂をゆらす風
《ネタバレ》 アイルランドの歴史を知らないとかなり厳しい。ドラマティックな展開もないまま淡々とシビアに、自由を勝ち取ることにどれだけの代償と犠牲を払うかをリアルに突き付ける。妥協するか、完全な独立のために戦うかで自ずと引き裂かれていく兄弟の悲劇すらも。イギリスのEU離脱によってアイルランド統一の可能性はあるが、その"続編"は見てみたい。 [DVD(字幕)] 4点(2021-12-09 21:32:44) |
229. アイアンマン
《ネタバレ》 一言で言えば「気持ち良い」作品。『アベンジャーズ』に繋がる以上、ヒーロー誕生秘話に大半の時間を取るが、現在のパワードスーツに至るまでの制作過程にワクワクするし、トニー・スタークの明朗快活ぶりが彩りを与える。演じるロバート・ダウニー・Jrはそれまでダーティーなイメージが先行していたが、この映画ではむしろキャラクターに奥行きを与えるくらいのハマり役なのだ。どこか大人になり切れていないチョイ悪ぽさがあり、愛国者というアンビバレントさが魅力的。彼なしでは今後のマーベルユニバースの行く末も大きく変わっていたのではないか。最後も気持ち良く、「真実を言おう。私がアイアンマンだ」と自ら正体を明かす潔さには憧れる。 [DVD(字幕)] 7点(2021-12-02 21:07:51) |
230. インクレディブル・ハルク(2008)
アン・リー版は未見。ハルクになる過程は冒頭でサラっと描き、ブラジルの貧民街を俯瞰で捉えたカメラやハルクに頼らないチェイスシーンは良い。この勢いを保ってシンプルに90分でまとめたら佳品になりえたのに、舞台をアメリカに移してからはもうグダグダで記憶に残らないという。『アベンジャーズ』と絡める以上、当然ながら説明過多になりすぎる大人の事情。エドワード・ノートンを始めとする演技派俳優の無駄遣い。そもそも緑の巨人に魅力が感じられず、主役には向いてないと思う。 [DVD(字幕)] 4点(2021-12-02 20:50:46) |
231. キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
《ネタバレ》 『アベンジャーズ』への壮大なダイジェストを淡々と見せられている感じ。つまらなくはないが、教科書をなぞっているだけで大胆なアプローチがないのが残念。最古のマーベルヒーローを扱う以上、仕方ないか。 [DVD(字幕)] 5点(2021-12-02 20:32:30) |
232. アナと雪の女王2
《ネタバレ》 物足りない。前作で明らかにされなかった秘密を辿るのは当然の流れとしても、決定打と思える楽曲が見当たらず、インパクトのある新キャラが皆無なのが致命的。大団円の分かり切った完結のために、アナとエルサ以外のメインキャラを必要以上に持ち出しすぎて、物語のテンポが削がれ、作品のテーマがボケてしまった。そう、もっとバッサリ切る勇気も必要だ。例えば、ダム壊して全て収まるなら、この34年間でなぜ一度も巨人が壊さなかったのか、そして閉じ込められた王国の騎士団の服に継ぎ接ぎすらなくどう生活していたのか、全体的に説明不足なのでそこの言及に充てるべき。言わば、「あちらを立てればこちらが立たず」の状態に陥っていて、既にキャラを立たせた続編ものの限界かもしれない。 [地上波(字幕)] 4点(2021-11-19 23:35:42) |
233. 俺たちフィギュアスケーター
アメリカンバカコメディでよく見かける邦題の『俺たち~』は本作が発祥なのかなと思ったが、それがどうとでも良くなるほどちっとも笑えない。ベタな展開がダメなのではなく、単純に悪い意味で構成も小ネタもイマイチで、それが集まってできた品にしか見えなかった。男二人でフィギュアを組む設定は面白そうだったのに勿体ない。 [DVD(字幕)] 3点(2021-11-05 23:39:37) |
234. ミラーズ・クロッシング
いきなり鷲掴みにされるオープニングに、スタイリッシュな画面構成で綴られる銃撃戦と二転三転する展開、裏切りが繰り広げられるマフィア映画にどこかとぼけた味があり、唯一無二の独特な雰囲気が形成される。この地点でコーエン兄弟の美学が完成されていて初期作品では完成度が高い。佳作には違いないが、そこまで記憶に残らないのは話があまりに入り組みすぎていたかと。 [DVD(字幕)] 7点(2021-11-05 22:19:42)(良:1票) |
235. ゴッドファーザー
《ネタバレ》 確かに映画史上最高の名作なのは事実で、重厚な人間ドラマや演出に目を見張るものが多い。 完璧と言っても良い。 ただ、完璧=見る側にとって最高の映画かと言えば否。 非合法な手で財力も権力も収めるマフィアに感情移入できるか。 男にしか分からない美学に酔いしれている感がある。 とは言え、堅気で生きてきたマイケルが次第にボスとして非情さが覚醒していく様に凄みがあり、 ファミリーを守るために手段を選ばない。 そこに深すぎる闇を感じる。 憧憬と畏怖が相反する矛盾した感情こそ、 綺麗ごとではない世界にジャンルを超えた共感として長く愛されているのではないか。 自分はどうしても距離を置いて見てしまいました。 [DVD(字幕)] 7点(2021-10-23 21:15:13) |
236. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 女優のために密かに抵抗を続ける体制側の男の一途さに釘付け。良い職に就いていても孤独で幸せに見えず、社会主義の建前だらけの腐敗に、壁の向こう側の恋人たちの幸福と自由な精神に、駒として動くことに疑問を持ってしまったのだろう。そこに彼の善性と葛藤が見え隠れする。叶わぬ恋だとしても、彼女には幸せになって欲しかったその矢先の悲劇。たとえ社会主義が崩壊しても、心の空疎さを埋められずにいた男が、劇作家の著した書籍に救われる、そのスマートな演出に静かな感動が広がる。 [映画館(字幕)] 8点(2021-10-23 20:30:34)(良:2票) |
237. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 邦題は『人類の子供たち』で良かったのではないか。ただのSF映画ではないのは事実で、キュアロンの作家性が遺憾なく発揮されている。複数のカットをワンカットの長回しに見せた当時の最新技術で、臨場感を生み出すことに成功している名シーンの数々。ただ、ストーリーと登場人物の掘り下げが浅く、細かい部分はあまり覚えていない。あれでは赤ん坊が世界の希望になるとも限らないディストピアな設定が上手く活かされないと思った。唐突でどうでも良くなっている感。後の作品群に大きく活かされたという意味では、監督のターニングポイント的作品。 [DVD(字幕)] 4点(2021-09-30 23:08:26) |
238. シックス・センス
"衝撃の結末"と話題になったもののそれは装飾にすぎず、オカルトホラーと見せかけて、登場人物の葛藤と救済を描いた、真っ当なヒューマンドラマとして仕上げたところが良ポイント。その後、シャマランは変に奇をてらって、本作を超える佳作を未だ作れていない。多分に本質はあちら側で、偶然マッチした産物なのかなと思ったりする。 [ビデオ(字幕)] 7点(2021-09-30 22:43:25)(良:4票) |
239. もののけ姫
《ネタバレ》 当時の宮崎駿による集大成であり、今後のジブリの方向性を決定づけたターニングポイント的作品。昔はシリアスで難解というイメージがあったが、久しぶりに見てみると意外にシンプルな筋書きであることに気付く。自然と人間との共存はナウシカにもあったが、綺麗事や善悪の二極化は鳴りを潜めている。必死に生き抜こうとする市井の逞しさと生活臭漂うリアリティが時代背景に厚みを生み出し、スムーズに物語を受け入れることができた。生きるため善意のための行為もどこかで犠牲を生み出し、度が過ぎればその対価は大きくなる。必要悪と絶対悪の違いでしかない。それに気付けない人間の愚かさと業を描きつつも、答えもなく矛盾だらけで、それでも距離を置きながら未来を模索するアシタカとサンの対話が味わい深い。 [地上波(邦画)] 7点(2021-08-15 23:55:49) |
240. ターミネーター3
《ネタバレ》 こんな続編は見たくなかった。無駄に派手なだけのアクションに、違和感ありまくりのコメディ描写と、素人目でも冒涜されたと思っても仕方ない。ダメ人間になったジョン・コナー役も完全にミスキャスト。ただ、時代に適合できなかった青年が救世主としての自覚と成長を感じさせる、バッドエンドすれすれのラストを評価する向きは分からなくはない。荒廃した未来から来たカイルの息子である以上はこうならざるを得ないわけで・・・。ターミネータの冠を使わず、完全なパロディとして製作されていたら違っていたと思う。 [地上波(吹替)] 3点(2021-08-06 22:34:23) |